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六章 貴方と現実で抱き合う日

十九話 貴方と現実で抱き合う日(9)

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 伊都の言葉に応えるよう、彼は真剣な顔をして、矢継ぎ早に言葉を繰り出してきた。
「好きだ」
 その黒い瞳でじっと伊都を見つめながら。
「あんたを俺のものに……婚姻の形で結びつけたい」
 指輪の填まった左手を大事に両手に包んだまま。
「あんたに俺の子供を産んで欲しい」
 低く響く声で、囁くように言っては。
「今からでも、あんたのご実家に真剣に付き合ってますと報告に行くのもいい」
 伊都を真っ赤にさせ。
「俺の義両親にもあんたの事を報告したい」
 恥じらいもなく、伊都を追いつめてきて。
「あんたを、俺だけのものにしたいんだ」
 その整った薄い唇が、どこまでもストレートに言葉を連ねる。

 放っておいたら何時迄も、糸を羞恥まみれにするのではないか。
 そう嬉しいながらも恐怖した伊都は、慌てて両手を挙げると降参のポーズを取った。

「も、もう、いいわ! 私が悪かったわ……」
 これ以上ない程に頬を赤らめて、伊都は彼の直截な告白を制止する。
 そして力尽きたようにパタリと両手を下げて、その肩口に頭を預ける。
「貴方、本当に極端よね……」
「自覚はある」
「そう、あったんだ……出来ればまん中くらいにしてくれると嬉しいわ」
 呟いて、伊都はぐりぐりと額を擦り付け、ささやかな抗議を彼に示した。

 そしてむくりと起きあがると、ぺこりと頭を下げて。
「ええと……その。結婚を前提にお付き合いをお願いします」
 真面目に彼の言葉に、返事した。
「私も貴方の、いえ、理一さんだけのものに、なりたいのよ」
 貰ってくれる……? なんて、頬を赤らめ狼な本性を持つ彼に言えば。

 がばりと抱きついてきた彼に、ソファに押し倒されるのは定めというもので……。
「あんた、俺を煽るの本当に上手いよな。今夜も寝られないと思えよ」
 にやりと悪い顔で笑った彼を見上げて、伊都は呆然として。
(こ、言葉の選択を間違えたかしら……?)
 荒々しく唇を奪われながら、長い夜が始まった事を伊都は予感していた。
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