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五章 毎日、毎日、貴方を好きになる。
九話 彼は真相を語る(5)
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互いの体温が心地いい。
伊都は彼に全てを委ねて、うっとりと目を瞑っていた。
「……随分と脱線したな」
白銀の低い声が間近から聞こえる。すっかりと、何を話していたのか分からなくなっていた。
「俺の夢に巻き込んだ原因、か」
「それなんですけれど、多分、これなんじゃないかと思うんです」
伊都は彼の腕から抜け出して、隅に置かれた衣装ケースを探る。そこには、手芸店のロゴの付いた袋に入れられたままの、白銀へと編んでいた青銀のネッカチーフがあった。
編みかけのそれを、伊都は持ち出してベッドに広げる。
絵本の挿し絵の狼のように、青の混じる銀糸で編まれたそれはまだ最初の数段を編んだだけのものだ。
(日曜は平日に出来ない事とか片づけるので忙しかったし、月曜日は……まあ、ああなったし。時間がなくて全然進んでないのよね)
本当は完成してからラッピングしたものを渡したかったのだけれど、今はそんな事を言っている場合でもなく。
「恥ずかしい癖なんですけど、編み物する時に、ミュージカルの編み物魔女の歌を歌う癖があって……」
夢の中で検証した限り、魔女の魔法は、歌詞が適当でも内容が合っていれば発動するものだ。
「だから、もしかして……。夢が、交わるポイントがあったとしたら、それなのかなって。私は、白銀さんに……ジルバーへ贈り物をしようと、編んでいた訳なので」
推測に過ぎないのですが、と、頼りなく言う。
陳腐、かつ安直な。としか言えない推測だ。
そもそも、活字を読むのは好きでも、ファンタジーやSFなどのジャンルには疎い伊都であるから、発想もありきたりなものしか浮かばない。
頭にあるのは、ジルバーの絵本のみ。
恥ずかしそうにそう言い出したものの、自信はない。
(頭が固いと、こういう時に役に立てないのね……もう少し、SFやファンタジーも嗜んでおこうかしら)
以前は恋愛小説や軽い推理小説、最近は実用本ばかり読んでいるもので、読み慣れないジャンルなんて触れる機会もない。
もっと幅広く色々なジャンルを読もう、などと考えていると。
彼は考え込むようにして編みかけのネッカチーフを眺めている。
(なんだか恥ずかしいわ)
伊都はそわそわした気分だ。彼は銀糸を辿るよう長く節高の指先を滑らせて何事か考えているようである。
「あ、あの……間違っているならそう言って貰えると……」
思わずそう言うと、彼は顔を上げてじっと伊都の方を見つめてくる。
知らず、頬が赤らむ。
伊都は手芸店の袋をガサガサ言わせながら気まずげに両手を揉んだ。
しばらくして、彼はようやく話し出す。
「正直、あんたにこの荒唐無稽な話を信じて貰えるなら、真相が何処にあってもいいんだ」
いきなり、前提を覆すような事を言われて伊都は困惑する。
「ただ、原因があるとしたら、あんたの言うように絵本に関係する何か、なんだろうな……」
そう言って、彼はすっとベッドから立ち上がる。
伊都は彼に全てを委ねて、うっとりと目を瞑っていた。
「……随分と脱線したな」
白銀の低い声が間近から聞こえる。すっかりと、何を話していたのか分からなくなっていた。
「俺の夢に巻き込んだ原因、か」
「それなんですけれど、多分、これなんじゃないかと思うんです」
伊都は彼の腕から抜け出して、隅に置かれた衣装ケースを探る。そこには、手芸店のロゴの付いた袋に入れられたままの、白銀へと編んでいた青銀のネッカチーフがあった。
編みかけのそれを、伊都は持ち出してベッドに広げる。
絵本の挿し絵の狼のように、青の混じる銀糸で編まれたそれはまだ最初の数段を編んだだけのものだ。
(日曜は平日に出来ない事とか片づけるので忙しかったし、月曜日は……まあ、ああなったし。時間がなくて全然進んでないのよね)
本当は完成してからラッピングしたものを渡したかったのだけれど、今はそんな事を言っている場合でもなく。
「恥ずかしい癖なんですけど、編み物する時に、ミュージカルの編み物魔女の歌を歌う癖があって……」
夢の中で検証した限り、魔女の魔法は、歌詞が適当でも内容が合っていれば発動するものだ。
「だから、もしかして……。夢が、交わるポイントがあったとしたら、それなのかなって。私は、白銀さんに……ジルバーへ贈り物をしようと、編んでいた訳なので」
推測に過ぎないのですが、と、頼りなく言う。
陳腐、かつ安直な。としか言えない推測だ。
そもそも、活字を読むのは好きでも、ファンタジーやSFなどのジャンルには疎い伊都であるから、発想もありきたりなものしか浮かばない。
頭にあるのは、ジルバーの絵本のみ。
恥ずかしそうにそう言い出したものの、自信はない。
(頭が固いと、こういう時に役に立てないのね……もう少し、SFやファンタジーも嗜んでおこうかしら)
以前は恋愛小説や軽い推理小説、最近は実用本ばかり読んでいるもので、読み慣れないジャンルなんて触れる機会もない。
もっと幅広く色々なジャンルを読もう、などと考えていると。
彼は考え込むようにして編みかけのネッカチーフを眺めている。
(なんだか恥ずかしいわ)
伊都はそわそわした気分だ。彼は銀糸を辿るよう長く節高の指先を滑らせて何事か考えているようである。
「あ、あの……間違っているならそう言って貰えると……」
思わずそう言うと、彼は顔を上げてじっと伊都の方を見つめてくる。
知らず、頬が赤らむ。
伊都は手芸店の袋をガサガサ言わせながら気まずげに両手を揉んだ。
しばらくして、彼はようやく話し出す。
「正直、あんたにこの荒唐無稽な話を信じて貰えるなら、真相が何処にあってもいいんだ」
いきなり、前提を覆すような事を言われて伊都は困惑する。
「ただ、原因があるとしたら、あんたの言うように絵本に関係する何か、なんだろうな……」
そう言って、彼はすっとベッドから立ち上がる。
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