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三章 現実、月曜日。冷たい場所に閉じ込められました。

22話 現実、月曜日。冷たい場所に閉じこめられました。(2)

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「そういえば、驚きました」
「何がですか?」
 伊都は冷たくなった指先に息を吐き掛けながら、白銀の言葉に答える。
「動画の事です。何時から撮っていらっしゃったんですか」
「ああ……実は、あれはほぼハッタリでして」

 今日は彼らしくない物言いをよく聞く日だ。
 伊都は棚整理をする手を止めて彼に振り返る。

「ハッタリ?」
「ええ。連絡を受けてからこちらへ踏み込んで、奥の方を見れば、織部さんが工場長に押さえつけられているではないですか。とりあえず録画はしてみたものの、私も相当慌てていましたし、結構な早足で寄って行きましたから。多分画像はブレているでしょうし、音もどれだけ拾えているのか不安なところです」
 とにかく工場長の事をこちらに引きつけたくて、と言われて、伊都は唖然とした。

 彼はそんな伊都に笑い掛け、漬け物のパックを拾い上げながら話を続ける。
「本命はむしろこっちなんですが……」
 ひょいとつまみ上げ、彼が胸ポケットから見せたのは銀色の細いスティック状の……ICレコーダー。
「この環境で壊れてくれなければいいのですがね。まあ、何にしろ実害も被りましたし。私も容赦なく彼を追い詰めるつもりではあります」
 飄々とそんな風にネタばらしをする白銀は、どこか楽しそうですらある。
 あの状況で、二段構えで証拠を押さえていたというのだから、この人の底が知れないと伊都は驚くばかりだ。

 そうして話している間に、あれだけ荒れていた冷蔵室内は、粗方片づいてしまった。

 手持ち無沙汰な伊都は、重い扉の方を睨んで「あっ」 と声を上げた。
 あの扉の外で、灰谷に叩きつけられた白銀の私物を思い出したのだ。
 くるりと白銀の方へ振り向いた伊都は、彼に頭を下げた。
「あ、そういえば、あのタブレット……壊れてしまって。あの、私、弁償しますから」
 今更だがと、伊都が言い出す。
「いやいや。あれは工場長が壊したのですから、彼に代金は請求しますよ。これは私の権利ですから、是非とも行使させて下さいね?」
 彼は柔和とも言える笑顔で、伊都にきっぱり断りを入れた。
「ええっ、でも、私のせいで」
「いえいえ、勝手に相手を煽ったのは私ですから」
「でも、あの……」
 おろおろと両手を揉む伊都に、優しい声で白銀は言う。
「織部さん、落ち着いて下さい。これは自業自得というものですよ」

 そうして、押し問答をしていたところで……。

 ガタガタと、扉が軋むような音を立て。
「イトちゃん、助けに来たわっ!!」
 ……聞き慣れた声が、くぐもって外から聞こえてきた。
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