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三章 現実、月曜日。冷たい場所に閉じ込められました。

15話 現実、月曜日。待ち人来たり、鬼も来たり。

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 伊都からの話を聞いた二人の反応は、当然呆れが強いものだった。
「まあ、ないね。小心者の伊都が会社転覆の黒幕だったー‼︎ なんて。いやー、女性蔑視の社長にはめっちゃ腹立ってるし、本気でバトるなら喜んで付き合うけどさあ、そんなのやって伊都に何の得があるのよ。何もないよねー!」
「うん、そんなつもりは全くないから奈々ちゃんは穏便に、ね」
「織部さんが恋人達の仲を引き裂き会社を潰そうとしている……ね。何と言っていいか、ちょっと、無茶が過ぎる話で私にはわからないわ……」
 葉山は非常に困惑、といった様子で首を傾げている。
 流石に当人の名誉も関わるので、灰谷の無惨な振られ方の話題は避けたものの、二人にはのちのフォローを考え、現状について洗いざらい話してしまった。
「ええと、そんな訳だから、社長の私への当たりが、今後益々酷くなる可能性が高いの。そこのところ、こういう訳なのでフォローよろしくお願いします」

 ……そうして二人に快諾を取り付けると、事情を説明した伊都は、随分とすっきりした気持ちでバリバリと仕事を片づける。
 午後四時三十分。表玄関の引き戸を開け、白銀が入ってきた頃には今日の分の書類整理は綺麗に終わっていた。
 彼の顔を見ると、思わず笑顔が浮かんでしまう。伊都のその表情に隣からツンツンと軽く肘で突っつかれる。窘めるように見れば、ニヤリと笑う奈々の顔があった。

「伊都の白銀さん来たよ? 今日も格好いいねぇ」
「奈々ちゃん、聞こえるってば」
 ……まあ、この辺りは案の定の反応である。

 そんな二人を横目にスッと立ち上がり、入り口のカウンターに備えられたコーヒーメーカーへと向かう葉山。何事もそつのない彼女の事だ、来客へ茶を淹れるつもりだろう。
 それを見て慌ててじゃれるのをやめて、伊都も早足に玄関に向かう。

 ──それはサキが決め、伊都が進めた白銀への謝礼のようなものだ。
 彼が勤める広告会社の発行する地域密着型のフリーペーパーへの広告出稿。大型店舗のチラシ置き場や駅前のフリーペーパー置き場、或いはポストの投げ込みなどでよく見る、その地域のイベント情報や地域の個人店舗への取材記事などが掲載されている小冊誌だが、月刊誌であるそれに、三ヶ月連続でと枠を押さえた。
 
 白銀は突然に上司から、一銭の得にもならない、商店街のお祭り関連のサイト運営を任され……いや、ねじ込まれてしまった不憫な犠牲者だ。
 そんな彼に、一つも『アメ』 がないのはあり得ないだろうと。
 サキの代理で寄越されている葉山を通して社長に打診されて「地域の名士が、その土地の雑誌に取材を受けないなんておかしな事ですわ。広告は、そのための足掛かりに過ぎません」 などと上手い事を言い、社長の矜持をくすぐって、広告を出させたという訳だ。

 三ヶ月連続出稿とあり、先月は一ページ使って社長渾身の新作アイテムの記事も掲載されたので、Win―Winな感じでよいのではないだろうかとはサキの言である。
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