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11章:喫茶店と人間模様です
125.喫茶店と店員達の成長。
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オババ様から呼び出された日から一週間ぐらい経ったある日。
紳士な新人さんことルトガーさんの気配り上手な動きによって格段にスムーズになったカロリーネさんやティエンミン君の動きに私はやっぱり指導者って重要だなぁと感心していた。
いや、本当に一ヶ月前と別人みたいなんだもの。
「ティエン、お茶の用意終わったらカウンター入って」
「はーい。あ、カロリーネさん、セット出来てる分カウンターに出しちゃいますね」
「ええ、お願い!」
「皿洗い終わりました。お二人は大丈夫そうですから、では、私は接客の方をやっていますね」
オーダーが数個重なっただけでわたわたしていた二人が、自然と連携して動いているのよねぇ。
お陰で私が暇になっちゃうぐらい……。
「ベル-、ぼうっとしてないであんたの出番よっ。カモミールティー三杯、よろしくね」
「はーい」
ハーブティーは相変わらず私の仕事なんで、ちゃんとやりますよ。
そうして忙しく働いていると。
久しぶりに顔を出したアレックスさんが、カウンターの端でケーキを食べながら届いたばかりのお手紙を読んでいた。
初めて見たわ、早文用の伝書……鳩? いやあれ猛禽類だったよね……。
まあとにかく、モンスターテイマーの契約獣だろう鳥が、冒険者ギルドにお手紙を持ってきたのだ。
ギルドに何故届いたかは、多分、お相手がアレックスさんの住所を知らなかったからだろうけど。
彼はタンポポコーヒーを飲みながらじっくりとお手紙に目を通し、シニカルな笑みを浮かべた。め、珍しい……。
「アレックスさん?」
お茶を淹れる手を止め、思わずまじまじと彼を見てしまった私。
「ああいや。ちょっと問題が予想外に早く片付いたようで、驚いたというか何というか、だな」
彼はさっと腰のポーチ型魔法袋にお手紙をしまうと、コーヒーのお代わりを私に頼む。
「はあ……」
何か、誤魔化された感が。
何だろう、アレックスさんに特急で知らせるような話って、悪い予感しかしないんだけど。
「しかし、冬だと料理も暖かいのが美味いよな、うん」
アップルパイを頬張る彼がそんな風に褒めると、カウンターの裏でカロリーネさんが「えへへ」 と照れ笑いをする。相変わらずこの兄妹は仲がいいねぇ。
「アレックスさんに好評って事は、これはお店に出してもいいかな。あと、ホットビスケットとかホットケーキなんかも考えてるんだけどね。アレックスさんのお腹の余裕はまだあります?」
「ふうん。まあ、味見しろってんならまだ入るけどな」
その頷きを待って、私は後ろを振り返る。
「だって、カロリーネさん。渡しておいた魔法袋に試作品ある?」
「ええ、ちゃんと作って来たわよ。……ちょっと待って」
カロリーネさんは作業台の下に置いた籠を探り、布鞄を開くと中からバスケットに入った試作品を取り出す。
彼女の分は、ギルドマスターにお願いして、従業員用の魔法袋を借りてるんだ。
鞄から出したバスケットの中身を手慣れた様子で皿に盛ると「お待たせ」 と言ってカウンターへ。
それはお試しサイズのホットスナックで。
ベリー系のコンフィチュールを掛けたホットビスケットと、蜂蜜とバター片を乗せた小さめホットケーキの合い盛り。
「ふうん。こっちは随分と見た目はあっさりだな」
「まあね。小腹が空いたとき摘まむ感じのものだし」
彼はフォークで切り分けるとさくっと口に入れる。
「んー、バターの香りがいいな。食感が違うから、まあ好きな方を選べばいいんじゃないか」
ふむ。こっちも大丈夫そうかなっ……と。
とかやってる時。
ギルドに繋がる扉の方から、慌てて駆け込んでくる影があり。
「何でしょう」
「さあ」
私達が、それを思わず見ると。
彼女は一直線にカウンターへと突き進んできて、悲鳴のような声をあげた。
「ベルー、やっと会えたか。お願いだよ、あいつに何とか言ってやってくれ」
「あいつ?」
それは灰茶の髪をショートカットにした、何処かで見掛けたお姉さんの姿であった。
紳士な新人さんことルトガーさんの気配り上手な動きによって格段にスムーズになったカロリーネさんやティエンミン君の動きに私はやっぱり指導者って重要だなぁと感心していた。
いや、本当に一ヶ月前と別人みたいなんだもの。
「ティエン、お茶の用意終わったらカウンター入って」
「はーい。あ、カロリーネさん、セット出来てる分カウンターに出しちゃいますね」
「ええ、お願い!」
「皿洗い終わりました。お二人は大丈夫そうですから、では、私は接客の方をやっていますね」
オーダーが数個重なっただけでわたわたしていた二人が、自然と連携して動いているのよねぇ。
お陰で私が暇になっちゃうぐらい……。
「ベル-、ぼうっとしてないであんたの出番よっ。カモミールティー三杯、よろしくね」
「はーい」
ハーブティーは相変わらず私の仕事なんで、ちゃんとやりますよ。
そうして忙しく働いていると。
久しぶりに顔を出したアレックスさんが、カウンターの端でケーキを食べながら届いたばかりのお手紙を読んでいた。
初めて見たわ、早文用の伝書……鳩? いやあれ猛禽類だったよね……。
まあとにかく、モンスターテイマーの契約獣だろう鳥が、冒険者ギルドにお手紙を持ってきたのだ。
ギルドに何故届いたかは、多分、お相手がアレックスさんの住所を知らなかったからだろうけど。
彼はタンポポコーヒーを飲みながらじっくりとお手紙に目を通し、シニカルな笑みを浮かべた。め、珍しい……。
「アレックスさん?」
お茶を淹れる手を止め、思わずまじまじと彼を見てしまった私。
「ああいや。ちょっと問題が予想外に早く片付いたようで、驚いたというか何というか、だな」
彼はさっと腰のポーチ型魔法袋にお手紙をしまうと、コーヒーのお代わりを私に頼む。
「はあ……」
何か、誤魔化された感が。
何だろう、アレックスさんに特急で知らせるような話って、悪い予感しかしないんだけど。
「しかし、冬だと料理も暖かいのが美味いよな、うん」
アップルパイを頬張る彼がそんな風に褒めると、カウンターの裏でカロリーネさんが「えへへ」 と照れ笑いをする。相変わらずこの兄妹は仲がいいねぇ。
「アレックスさんに好評って事は、これはお店に出してもいいかな。あと、ホットビスケットとかホットケーキなんかも考えてるんだけどね。アレックスさんのお腹の余裕はまだあります?」
「ふうん。まあ、味見しろってんならまだ入るけどな」
その頷きを待って、私は後ろを振り返る。
「だって、カロリーネさん。渡しておいた魔法袋に試作品ある?」
「ええ、ちゃんと作って来たわよ。……ちょっと待って」
カロリーネさんは作業台の下に置いた籠を探り、布鞄を開くと中からバスケットに入った試作品を取り出す。
彼女の分は、ギルドマスターにお願いして、従業員用の魔法袋を借りてるんだ。
鞄から出したバスケットの中身を手慣れた様子で皿に盛ると「お待たせ」 と言ってカウンターへ。
それはお試しサイズのホットスナックで。
ベリー系のコンフィチュールを掛けたホットビスケットと、蜂蜜とバター片を乗せた小さめホットケーキの合い盛り。
「ふうん。こっちは随分と見た目はあっさりだな」
「まあね。小腹が空いたとき摘まむ感じのものだし」
彼はフォークで切り分けるとさくっと口に入れる。
「んー、バターの香りがいいな。食感が違うから、まあ好きな方を選べばいいんじゃないか」
ふむ。こっちも大丈夫そうかなっ……と。
とかやってる時。
ギルドに繋がる扉の方から、慌てて駆け込んでくる影があり。
「何でしょう」
「さあ」
私達が、それを思わず見ると。
彼女は一直線にカウンターへと突き進んできて、悲鳴のような声をあげた。
「ベルー、やっと会えたか。お願いだよ、あいつに何とか言ってやってくれ」
「あいつ?」
それは灰茶の髪をショートカットにした、何処かで見掛けたお姉さんの姿であった。
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