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第43話 事件の真実

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『実はね、この孤児院は他の人が買い取る事になったの。だから、ミレイさんも貴方達も出ていかないと行けないわ』
『え、ええっ!?』
『そ、そんなの嫌です!!』


唐突な話にネココとポチ子は驚くが、そんな二人に女性は母親のように優しい声音で語り掛けた。


『大丈夫、私の言う事を聞いてくれれば出ていかなくてもいいわ。それにミレイさんもすごく喜ぶわよ』
『先生が喜ぶ……』
『それなら頑張ります……』
『ちゃんと話を聞いて偉いわね。じゃあ、私の言う事をしっかりと覚えてね』


女性の話を聞いている途中でネココとポチ子は意識が朦朧とするが、不思議と女性の告げた言葉だけはしっかりと聞き取れた。女性は孤児院を守るためにある女性を連れ出すように指示した。


『近いうちに二人を外へ連れ出してあげる。その時に二人にはある女の子をこの孤児院まで連れてきてほしいの。そして私の言う通りに手紙を書いてくれたら後は何とかしてあげるわ』
『女の子……』
『手紙……』
『何も難しい事じゃないわ。全部、私の言う通りに従ってくれたらいいのよ――』





――数日後、女性は二人の元に現れて孤児院から連れ出す。彼女は冒険者ギルドの前で待ち伏せすると、ギルドから出てきたハルナを確認した。彼女が立ち去る前に女性は二人にした。


『あの女の子を孤児院に連れて行ってちょうだい。一緒に遊ぼうと言えばいう事を聞いてくれるわよ』
『あ、あの姉ちゃんを?』
『ど、どうして孤児院に連れて行くんですか?』
『大丈夫、私の言う通りに従えばいいの。ちゃんとできたらまたお菓子をあげるから頑張ってね』
『お、おう……』
『わ、分かりました』


二人は女性の言う通りにハルナの元へ向かうと、彼女の服の袖を掴んで話しかけた。


『な、なあ、姉ちゃん。あたしたちと遊んでくれよ』
『わうっ、美味しいお菓子もいっぱいあります』
『わあっ、獣人さんだ!!二人とも可愛いね~♪』


可愛らしい外見をした女の子達に話しかけられてハルナは警戒心を微塵も抱かず、彼女は二人の頭を撫で回す。その様子を見ていた女性は笑みを浮かべ、彼女の言われた通りに二人はハルナを孤児院へと連れ出した。

孤児院に到着すると二人はハルナを他の子供達に紹介し、彼女はすぐに他の子供とも仲良くなった。ネココとポチ子はハルナから離れると、事前に約束していた通りにお菓子を貰う。


『よく頑張ったわね、二人とも偉いわ』
『へへっ、どうってことないさ』
『あのお姉さん、すっごく優しい人です~』
『……そう、だけどあのお姉さんの正体は実は悪い人なのよ』
『『ええっ!?』』


女性の言葉に二人は驚くが、彼女は羊皮紙と万年筆を取り出して二人に渡した。


『二人は文字は書けるかしら?』
『え?一応、あたしは書けるけど……』
『わうっ……人間さんの国の文字はまだ書けません』
『そう、ならそっちの子に任せるわ。私の言う通りに書いてちょうだいね』
『お、おう……』


ネココは羊皮紙を受け取ると、女性は彼女の肩に手を触れながら優しく語り掛ける。


『あのお姉さんは実は凄く悪い人なの。この孤児院を潰そうとしている悪い人の仲間なのよ』
『あ、あの姉ちゃんが!?』
『そんなの嘘です!!』
『いいから私の言う事を聞きなさい!!』
『『ひうっ!?』』


女性に初めて怒鳴られた二人は怯え、何故だか知らないが彼女の言葉には逆らえなかった。お菓子を貰った当たりから意識が徐々に薄れ始め、そんな二人に女性はを与えた。


『魔術協会にあの女の身柄と引き換えにお金を要求しなさい。この手紙を街にある協会の建物に持っていきなさい。そうすれば用済みよ』
『お、お金?』
『その手紙を渡せばたくさんのお金が手に入るの。孤児院を守るためには大金が必要なのよ。これはミレイさんのためにもなるわ』
『先生のため……』
『じゃあ、私はお暇させてもらうわ。また今度美味しいお菓子を持ってきてあげるわね』


二人を部屋に残すと女性は立ち去り、この後にレイト達が訪れてきた――





――子供達から全ての話を聞かされたレイト達は顔色を変え、何者かがハルナを利用して魔術協会に脅迫状を送り付けようとしていた事が発覚した。しかも何の罪もない子供達を利用していた事にミレイとバルルは激怒した。


「何だいその女は!?見つけ出してとっちめてやる!!」
「私の可愛い子供達になんて真似を……絶対に許せません!!」
「ご、ごめんなさい先生!!あたしたち、どうかしてたよ!?」
「ハルナお姉ちゃんが悪い人なはずないのに……くぅんっ」
「ねえ、君達はお姉さんの名前は覚えてないの?」
「そういえば名前は出てこなかった。その人の名前は知らないの?」


話を聞いていて気になったのは子供達は女性の名前は一言も話さず、本人達も言われてみて気付いたように戸惑う。


「あ、あれ?そういえば名前なんて一度も聞いてないかも……」
「わうっ、お菓子をくれるお姉さんとしか覚えてません」
「そのお菓子も怪しいね。話を聞く限りだとお菓子を食べるとその女の言う事を聞くようになるんだろ?」
「ま、まさか危険な薬が混じっていたのでは!?」
「いや、他の子もお菓子を食べてるけどなんともありません。仮にこの子達だけ薬が入ったお菓子を食べさせられていたとしても、話を聞く限りではお菓子を食べた後だけしかいう事を聞いていない。催眠効果を引き起こす即効性の高い薬を飲まされたんでしょう」
「食べ物と一緒に混じっている分、薬の量も大したことないかもしれないね。あんたたち、気分は悪くないかい?」
「い、今は平気だけど……」
「食べた時は頭がもやもやしましたけど、今はすっきりしてます」


二人が食べたお菓子に薬が盛られており、女性の存在を疑わなかったり、命令を聞いていたのはお菓子を食べたのが原因だろう。気になるのは職員と女性が知り合いという点であり、職員が一番怪しかった。


「先生、ここで働いている女性の職員は!?」
「私を除けば一人だけです。何故か先ほどから姿が見えないので探していたのですが、まさか……」
「きゃああああっ!?」
「……この声は!?」


会話の途中で窓の外から悲鳴が響き渡り、その声を聞いたレイトは驚く。聞き覚えのある女の子の声だったので真っ先に彼は窓に身を乗り出し、外へ出ると庭へと向かう。

他の者も慌ててレイトの後に続き、窓から飛び出して庭へ駆けつけると、そこには異様な光景が映し出された。それは一人の男がハルナを後ろから抑えつけ、彼女の首元に短剣を構えていた。男の傍には孤児院の職員と思われる女性が立っており、こちらは小さな男の子を抱えていた。


「ハルナ!!」
「レ、レイト君!?た、助けてっ!!」
「動くな!!動けばこの女の命はないぞ!!」


レイトはハルナが捕まっているのを見て助けに向かおうとしたが、男は短剣をハルナに構えているのを見て迂闊に近づけなかった。遅れてやってきたミレイは男の隣に立っている女性を見て顔色を青くした。


「カレハさん!?これは何の真似ですか!!」
「あら、ミレイ先生もご一緒だったのね。見ての通り、貴方の可愛い子供を預かってます」
「せ、先生!!助けてっ!!」


カレハと呼ばれた女性職員は一番年齢が低い子供を人質にしており、小さくて力が弱い者を人質にする彼女のやり方にレイト達は怒りを抱く。その一方で男性の方はバルルを見て醜悪な笑みを浮かべた。
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