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外の世界へ
第67話 白狼種VS赤毛熊
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「くそっ、何処に隠れてるんだ!?」
「ウル君の鼻で探せないの?」
「スンスンッ……クゥ~ンッ」
「はあっ!?分からないだって!?」
野生の狼よりも優れた嗅覚を誇るウルでさえも赤毛熊の臭いは感じず、前回の時のように川の中に隠れているのならばともかく、隠れ場所が存在しない草原で姿も見せずに臭いも感じさせずに接近できるはずがない。しかし、ウルとスラミンの生存本能が危険を知らせていた。
ナオも先ほどから嫌な予感がしており、以前にも似たような経験があった。それはサンドワームに襲われる直前であり、地中から出現したサンドワームを思い出した彼は地面を見下ろす。
「まさか!?皆、こっちに来い!!」
「ど、どうしたんだよ!?」
「何かわかったの?」
「兄貴、何処へ行く気ですか?」
「ぷるぷるっ!?」
「ウォンッ!!」
ナオは地面に掌を構えると、地上にステータス画面を展開させて全員を呼び寄せた。拡大化させた画面の上に全員が乗り込むと、上空へ移動させて地上から離れる。その直後、ナオ達が先ほどまで立っていた場所の地面が盛り上がり、地中から赤毛熊が出現した。
――ウガァアアアッ!!
地面から現れた赤毛熊を見て全員が驚き、もしもナオの反応が少しでも遅れていたら今頃は赤毛熊の餌食となっていた。赤毛熊は空中に浮かんでいるナオ達を見て驚くが、即座に画面に乗り込んでいる彼等に向けて飛び掛かる。
「ガアアッ!!」
「うわっ!?こっちに来たぞ!!」
「くっ!?」
「ナオ、落ち着いて!!」
「ここはあたしに任せてくださいっす!!」
画面の端にしがみついてきた赤毛熊に対してエリオは弓を構えると、彼は矢をつがえた瞬間に矢先に風の魔力が迸る。エリオはエルフだけが扱える「弓魔術」の使い手であり、彼が放つ矢は風の魔力によって威力が強化されるとナオは聞いていた。
「うらぁっ!!」
「ギャアアッ!?」
「やった!!当たったぞ!?」
エリオが撃ち込んだ矢は風の魔力を纏う事で回転力が加えられ、赤毛熊の右目を射抜いた。普通の熊ならば絶命してもおかしくはない一撃だったが、魔物である赤毛熊の生命力は野生動物の比ではなく、片目を失いながらも赤毛熊は画面から離れない。
「ガアアッ!!」
「うわっ!?上ってくるぞ!!」
「グルルルッ!!」
「駄目だ、画面の上じゃ戦えない!!皆、ウル君にしがみついて!!」
「ぷるんっ!!」
ナオの指示に従って全員がウルの身体に抱き着くと、赤毛熊が画面に乗り込む前にウルが地上に向けて飛び降りた。全員が何とか着地に成功すると、空中で画面にぶら下がる赤毛熊に対してナオは右手を振り下ろす。
「吹っ飛べっ!!」
「ギャウッ!?」
画面を高速回転させる事で赤毛熊を吹き飛ばし、地面へと落下した赤毛熊は悲鳴を漏らす。しかし、すぐに起き上がった赤毛熊はナオ達に目掛けて突進してきた。
「ガアアッ!!」
「ウォオンッ!!」
「うわっ!?馬鹿、まだあたしたちが乗って……うぎゃっ!?」
「はうっ!?」
「あいたぁっ!?」
「あうちっ!?」
「ぷるんっ!?」
迫りくる赤毛熊に対してウルは全員が自分にしがみついた状態である事を忘れて自らも突っ込む。白狼種と赤毛熊の激しい衝突に巻き込まれたナオ達は地面に転がり、二頭の激しい争いが繰り広げられた。
「ガアアアッ!!」
「ウガァッ!!」
ウルは赤毛熊の首元に食らいつき、金属のように鋭い牙を赤毛熊の身体に食い込ませる。その一方で赤毛熊はウルを押さえつけるように両手で首元を抱きしめ、鋼鉄よりも鋭い爪を突き立てる。
お互いに激しく動いて牙と爪を食い込ませ、互いの毛に血が滲む。その光景を見ていたナオは画面を手元に引き寄せて攻撃の好機を窺う。
(今は駄目だ!!ウル君が近すぎて攻撃に巻き込む!!あいつが離れた瞬間を狙わないと……)
ウルが傍にいるのではナオの考えた新しい攻撃法は試せず、二頭が離れる隙を待つ。赤毛熊は爪をウルの肉体に深く食い込ませると、苦しんだウルは牙を外してしまう。
「キャインッ!?」
「ウル!?この野郎、よくもあたしの友達を!!」
「あ、駄目っす!!危険ですよ!?」
「ネココ!?」
ウルが傷つけられたのを見てネココは激高し、先日にドルトンの店で頂いた鉤爪を装着して突っ込む。彼女は赤毛熊の背後から襲い掛かろうとしたが、野生の本能で気付いた赤毛熊はウルの巨体を持ち上げて振りかざす。
「ウガァッ!!」
「まずい!?エリオ!!」
「承知!!」
このままではウルの巨体でネココが叩き潰されると思ったナオはエリオに声をかけると、既に彼は矢を構えてネココに放つ。放たれた矢はネココの服に引っかかって彼女は空中で吹っ飛ぶ。
「うわぁっ!?」
「危ない!!スラミン!!」
「ぷるるんっ!!」
吹っ飛んだネココの元にミズネが投げ飛ばしたスラミンが迫り、彼女が地面に叩きつけられる前に下に潜り込む。スライムの柔らかな肉体がクッションとなってくれたお陰でネココは怪我を免れたが、その間にも赤毛熊にウルは地面に叩きつけられて悲鳴が響く。
「ウル君の鼻で探せないの?」
「スンスンッ……クゥ~ンッ」
「はあっ!?分からないだって!?」
野生の狼よりも優れた嗅覚を誇るウルでさえも赤毛熊の臭いは感じず、前回の時のように川の中に隠れているのならばともかく、隠れ場所が存在しない草原で姿も見せずに臭いも感じさせずに接近できるはずがない。しかし、ウルとスラミンの生存本能が危険を知らせていた。
ナオも先ほどから嫌な予感がしており、以前にも似たような経験があった。それはサンドワームに襲われる直前であり、地中から出現したサンドワームを思い出した彼は地面を見下ろす。
「まさか!?皆、こっちに来い!!」
「ど、どうしたんだよ!?」
「何かわかったの?」
「兄貴、何処へ行く気ですか?」
「ぷるぷるっ!?」
「ウォンッ!!」
ナオは地面に掌を構えると、地上にステータス画面を展開させて全員を呼び寄せた。拡大化させた画面の上に全員が乗り込むと、上空へ移動させて地上から離れる。その直後、ナオ達が先ほどまで立っていた場所の地面が盛り上がり、地中から赤毛熊が出現した。
――ウガァアアアッ!!
地面から現れた赤毛熊を見て全員が驚き、もしもナオの反応が少しでも遅れていたら今頃は赤毛熊の餌食となっていた。赤毛熊は空中に浮かんでいるナオ達を見て驚くが、即座に画面に乗り込んでいる彼等に向けて飛び掛かる。
「ガアアッ!!」
「うわっ!?こっちに来たぞ!!」
「くっ!?」
「ナオ、落ち着いて!!」
「ここはあたしに任せてくださいっす!!」
画面の端にしがみついてきた赤毛熊に対してエリオは弓を構えると、彼は矢をつがえた瞬間に矢先に風の魔力が迸る。エリオはエルフだけが扱える「弓魔術」の使い手であり、彼が放つ矢は風の魔力によって威力が強化されるとナオは聞いていた。
「うらぁっ!!」
「ギャアアッ!?」
「やった!!当たったぞ!?」
エリオが撃ち込んだ矢は風の魔力を纏う事で回転力が加えられ、赤毛熊の右目を射抜いた。普通の熊ならば絶命してもおかしくはない一撃だったが、魔物である赤毛熊の生命力は野生動物の比ではなく、片目を失いながらも赤毛熊は画面から離れない。
「ガアアッ!!」
「うわっ!?上ってくるぞ!!」
「グルルルッ!!」
「駄目だ、画面の上じゃ戦えない!!皆、ウル君にしがみついて!!」
「ぷるんっ!!」
ナオの指示に従って全員がウルの身体に抱き着くと、赤毛熊が画面に乗り込む前にウルが地上に向けて飛び降りた。全員が何とか着地に成功すると、空中で画面にぶら下がる赤毛熊に対してナオは右手を振り下ろす。
「吹っ飛べっ!!」
「ギャウッ!?」
画面を高速回転させる事で赤毛熊を吹き飛ばし、地面へと落下した赤毛熊は悲鳴を漏らす。しかし、すぐに起き上がった赤毛熊はナオ達に目掛けて突進してきた。
「ガアアッ!!」
「ウォオンッ!!」
「うわっ!?馬鹿、まだあたしたちが乗って……うぎゃっ!?」
「はうっ!?」
「あいたぁっ!?」
「あうちっ!?」
「ぷるんっ!?」
迫りくる赤毛熊に対してウルは全員が自分にしがみついた状態である事を忘れて自らも突っ込む。白狼種と赤毛熊の激しい衝突に巻き込まれたナオ達は地面に転がり、二頭の激しい争いが繰り広げられた。
「ガアアアッ!!」
「ウガァッ!!」
ウルは赤毛熊の首元に食らいつき、金属のように鋭い牙を赤毛熊の身体に食い込ませる。その一方で赤毛熊はウルを押さえつけるように両手で首元を抱きしめ、鋼鉄よりも鋭い爪を突き立てる。
お互いに激しく動いて牙と爪を食い込ませ、互いの毛に血が滲む。その光景を見ていたナオは画面を手元に引き寄せて攻撃の好機を窺う。
(今は駄目だ!!ウル君が近すぎて攻撃に巻き込む!!あいつが離れた瞬間を狙わないと……)
ウルが傍にいるのではナオの考えた新しい攻撃法は試せず、二頭が離れる隙を待つ。赤毛熊は爪をウルの肉体に深く食い込ませると、苦しんだウルは牙を外してしまう。
「キャインッ!?」
「ウル!?この野郎、よくもあたしの友達を!!」
「あ、駄目っす!!危険ですよ!?」
「ネココ!?」
ウルが傷つけられたのを見てネココは激高し、先日にドルトンの店で頂いた鉤爪を装着して突っ込む。彼女は赤毛熊の背後から襲い掛かろうとしたが、野生の本能で気付いた赤毛熊はウルの巨体を持ち上げて振りかざす。
「ウガァッ!!」
「まずい!?エリオ!!」
「承知!!」
このままではウルの巨体でネココが叩き潰されると思ったナオはエリオに声をかけると、既に彼は矢を構えてネココに放つ。放たれた矢はネココの服に引っかかって彼女は空中で吹っ飛ぶ。
「うわぁっ!?」
「危ない!!スラミン!!」
「ぷるるんっ!!」
吹っ飛んだネココの元にミズネが投げ飛ばしたスラミンが迫り、彼女が地面に叩きつけられる前に下に潜り込む。スライムの柔らかな肉体がクッションとなってくれたお陰でネココは怪我を免れたが、その間にも赤毛熊にウルは地面に叩きつけられて悲鳴が響く。
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