63 / 69
外の世界へ
第63話 狼車の改善
しおりを挟む
「……これ作ったの、もしかしておじさん?」
「うおっ!?な、なんだ急に!?」
「これ、名前が彫ってある」
ミズネがブーメランに刻まれた名前を指さし、ナオ達も確認すると「カジン」と刻まれていた。それを見てカジンはバツが悪そうな表情を浮かべた。
「ちっ、まだ売れ残ってやがったのか……どいつもこいつも見る目がねえな」
「この魔道具を作ったのはカジンさ……いや、お爺さんなんですか?」
「誰がお爺さんだ!!生意気なガキだな!?」
「だって、名前を読んじゃ駄目って言うから……」
「ちっ、仕方ねえな。俺の事はカジンさんと呼べよ」
自分の制作したブーメランが売れ残っている事にカジンは気に入らない表情を浮かべ、その一方でミズネは魔道具を制作したというカジンに関心を抱く。
「魔道具を制作するには一流の鍛冶師でも難しいと言われてる。そんな物を作れるぐらいだからこのお爺さんの腕前は凄い」
「へっ、ガキに褒められても嬉しかねえよ」
「そんなお爺さんだからこそ作ってほしい物がある。ナオ、お願いして」
「あ、うん……あの、カジンさんは馬車を作ってくれますか?」
「はあっ!?俺は鍛冶師だぞ!!なんでそんなもんを……待て、もしかして店の前に停まっている白狼種はお前さんが飼ってるのか!?」
「飼ってるのはあたしだよ!!」
「まあまあ、話がややこしくなるので抑えるっす」
カジンはドルトンの店の前で待機している白狼種がナオ達が率いている事に驚き、子供でありながら白狼種を懐かせて率いているナオに興味を抱く。
「前の街で馬車を購入したんですけど、ウル君の走行に耐えられそうにないんです。このまま旅を続けるといつ壊れるか分からないし、だから魔獣専用の馬車が欲しいんです」
「なるほど、それで街一番の鍛冶師の俺に設計を依頼したいというところか?まあ、どうしてもというなら作れなくもないが、金は払えるのか?」
「とりあえずこれぐらいなら……」
ナオはドルトンから受け取った魔石の買取金を差し出すと、中身を確認してカジンは鼻を鳴らす。もしかして足りなかったのかとナオは不安を抱くが、カジンは小袋を懐にしまう。
「……少しばかし足りないが、白狼種の引く車の制作なら良い暇つぶしにはなりそうだ。俺が設計してやるよ」
「本当ですか!?」
「但し、足りない分はお前らもしっかり手伝ってもらうぞ。白狼種がどれほど早く動けるのか確かめない限りは車の制作もできないからな」
「というと?」
「要するに俺に白狼種の引く車に乗せろという事だ」
「何だ、そんな事か。いいぞ、あたしのウルの速さを思い知らせてやる!!おっちゃん、付いてこい!!」
「ちっ、生意気な小娘だな!!」
口では怒っているがネココの性格は気に入ったのか彼女の後にカジンは続き、慌ててナオ達も後を追いかけようとしたが、ナオはドルトンにお礼を告げた。
「ドルトンさん!!カジンさんを紹介してくれてありがとうございます!!俺の分のお礼はこれで結構です!!」
「この矢筒とネココちゃんの鉤爪は貰っていいですかね!?」
「ついでに私も魔石が欲しい」
「え、ええ、すぐに用意させましょう」
ナオ以外の物は店の商品を一つずつ受け取り、ドルトンも快く承諾してくれた。人数分の商品を受け取るとナオ達は急いでカジンとネココの後を追う――
――カジンの提案で白狼種の最高速度を図るため、せっかく街に入れたというのにナオ達は再び外へ出ることになった。カジンを乗せた状態で馬車は走り出し、ネココの運転でウルは全速力で駆け抜けた。
「どうだ!!これがウルの速さだ!!振り落とされても知らないからな!!」
「ウォオンッ!!」
「た、確かに中々の速さだが……この揺れのひどさは何とかならねえのか!?」
走行中は車体が激しく揺れ動き、買ったばかりの車なのにあちこちがきしみ始めていた。やはり馬用の車では白狼種の移動速度には耐えきれず、近いうちに壊れるのは目に見えていた。
狼車が停車するとカジンは顔色を悪くしながらも車から降り立ち、ふらついた足取りで様子をうかがっていたナオ達の元へ戻る。彼は気分が悪そうにしながらも意地でも自分が弱っている姿を見せないように振る舞う。
「うぷっ……な、中々面白い体験させてもらったぜ」
「だ、大丈夫ですか?」
「水飲む?」
「あんまり無理しない方がいいっすよ」
「ええいっ、俺を年寄り扱いするんじゃねえっ!!そんな事よりも問題点を報告させろ!!」
カジンは気合で持ち直すと現在のナオ達が乗り込んでいる車の問題点を示す。まず第一に「耐久性」であり、このまま旅を続けるのは危険すぎる。白狼種の移動速度にも耐えられるほどの頑丈な車を用意しなければ旅は続けられない。
二つ目の問題点は走行中の揺れの激しさであり、あまりに揺れ動くと乗員に負担が掛かり、荷物の類も無事では済まない。この揺れを改善するためには耐震性も考慮しなければならず、特殊な構造の馬車を作らなければならない。
「うおっ!?な、なんだ急に!?」
「これ、名前が彫ってある」
ミズネがブーメランに刻まれた名前を指さし、ナオ達も確認すると「カジン」と刻まれていた。それを見てカジンはバツが悪そうな表情を浮かべた。
「ちっ、まだ売れ残ってやがったのか……どいつもこいつも見る目がねえな」
「この魔道具を作ったのはカジンさ……いや、お爺さんなんですか?」
「誰がお爺さんだ!!生意気なガキだな!?」
「だって、名前を読んじゃ駄目って言うから……」
「ちっ、仕方ねえな。俺の事はカジンさんと呼べよ」
自分の制作したブーメランが売れ残っている事にカジンは気に入らない表情を浮かべ、その一方でミズネは魔道具を制作したというカジンに関心を抱く。
「魔道具を制作するには一流の鍛冶師でも難しいと言われてる。そんな物を作れるぐらいだからこのお爺さんの腕前は凄い」
「へっ、ガキに褒められても嬉しかねえよ」
「そんなお爺さんだからこそ作ってほしい物がある。ナオ、お願いして」
「あ、うん……あの、カジンさんは馬車を作ってくれますか?」
「はあっ!?俺は鍛冶師だぞ!!なんでそんなもんを……待て、もしかして店の前に停まっている白狼種はお前さんが飼ってるのか!?」
「飼ってるのはあたしだよ!!」
「まあまあ、話がややこしくなるので抑えるっす」
カジンはドルトンの店の前で待機している白狼種がナオ達が率いている事に驚き、子供でありながら白狼種を懐かせて率いているナオに興味を抱く。
「前の街で馬車を購入したんですけど、ウル君の走行に耐えられそうにないんです。このまま旅を続けるといつ壊れるか分からないし、だから魔獣専用の馬車が欲しいんです」
「なるほど、それで街一番の鍛冶師の俺に設計を依頼したいというところか?まあ、どうしてもというなら作れなくもないが、金は払えるのか?」
「とりあえずこれぐらいなら……」
ナオはドルトンから受け取った魔石の買取金を差し出すと、中身を確認してカジンは鼻を鳴らす。もしかして足りなかったのかとナオは不安を抱くが、カジンは小袋を懐にしまう。
「……少しばかし足りないが、白狼種の引く車の制作なら良い暇つぶしにはなりそうだ。俺が設計してやるよ」
「本当ですか!?」
「但し、足りない分はお前らもしっかり手伝ってもらうぞ。白狼種がどれほど早く動けるのか確かめない限りは車の制作もできないからな」
「というと?」
「要するに俺に白狼種の引く車に乗せろという事だ」
「何だ、そんな事か。いいぞ、あたしのウルの速さを思い知らせてやる!!おっちゃん、付いてこい!!」
「ちっ、生意気な小娘だな!!」
口では怒っているがネココの性格は気に入ったのか彼女の後にカジンは続き、慌ててナオ達も後を追いかけようとしたが、ナオはドルトンにお礼を告げた。
「ドルトンさん!!カジンさんを紹介してくれてありがとうございます!!俺の分のお礼はこれで結構です!!」
「この矢筒とネココちゃんの鉤爪は貰っていいですかね!?」
「ついでに私も魔石が欲しい」
「え、ええ、すぐに用意させましょう」
ナオ以外の物は店の商品を一つずつ受け取り、ドルトンも快く承諾してくれた。人数分の商品を受け取るとナオ達は急いでカジンとネココの後を追う――
――カジンの提案で白狼種の最高速度を図るため、せっかく街に入れたというのにナオ達は再び外へ出ることになった。カジンを乗せた状態で馬車は走り出し、ネココの運転でウルは全速力で駆け抜けた。
「どうだ!!これがウルの速さだ!!振り落とされても知らないからな!!」
「ウォオンッ!!」
「た、確かに中々の速さだが……この揺れのひどさは何とかならねえのか!?」
走行中は車体が激しく揺れ動き、買ったばかりの車なのにあちこちがきしみ始めていた。やはり馬用の車では白狼種の移動速度には耐えきれず、近いうちに壊れるのは目に見えていた。
狼車が停車するとカジンは顔色を悪くしながらも車から降り立ち、ふらついた足取りで様子をうかがっていたナオ達の元へ戻る。彼は気分が悪そうにしながらも意地でも自分が弱っている姿を見せないように振る舞う。
「うぷっ……な、中々面白い体験させてもらったぜ」
「だ、大丈夫ですか?」
「水飲む?」
「あんまり無理しない方がいいっすよ」
「ええいっ、俺を年寄り扱いするんじゃねえっ!!そんな事よりも問題点を報告させろ!!」
カジンは気合で持ち直すと現在のナオ達が乗り込んでいる車の問題点を示す。まず第一に「耐久性」であり、このまま旅を続けるのは危険すぎる。白狼種の移動速度にも耐えられるほどの頑丈な車を用意しなければ旅は続けられない。
二つ目の問題点は走行中の揺れの激しさであり、あまりに揺れ動くと乗員に負担が掛かり、荷物の類も無事では済まない。この揺れを改善するためには耐震性も考慮しなければならず、特殊な構造の馬車を作らなければならない。
33
お気に入りに追加
141
あなたにおすすめの小説
妻は異世界人で異世界一位のギルドマスターで世紀末覇王!~けど、ドキドキするのは何故だろう~
udonlevel2
ファンタジー
ブラック会社を辞めて親と一緒に田舎に引っ越して生きたカズマ!
そこには異世界への鏡が納屋の中にあって……異世界に憧れたけど封印することにする!!
しかし、異世界の扉はあちらの世界にもあって!?
突如現れた世紀末王者の風貌の筋肉女子マリリン!!
マリリンの一途な愛情にカズマは――!?
他サイトにも掲載しています。
召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します
あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。
異世界パルメディアは、大魔法文明時代。
だが、その時代は崩壊寸前だった。
なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。
マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。
追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。
ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。
世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。
無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。
化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。
そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。
当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。
ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。
異世界に行けるようになったんだが自宅に令嬢を持ち帰ってしまった件
シュミ
ファンタジー
高二である天音 旬はある日、女神によって異世界と現実世界を行き来できるようになった。
旬が異世界から現実世界に帰る直前に転びそうな少女を助けた結果、旬の自宅にその少女を持ち帰ってしまった。その少女はリーシャ・ミリセントと名乗り、王子に婚約破棄されたと話し───!?
勇者パーティーを追放された俺は辺境の地で魔王に拾われて後継者として育てられる~魔王から教わった美学でメロメロにしてスローライフを満喫する~
一ノ瀬 彩音
ファンタジー
主人公は、勇者パーティーを追放されて辺境の地へと追放される。
そこで出会った魔族の少女と仲良くなり、彼女と共にスローライフを送ることになる。
しかし、ある日突然現れた魔王によって、俺は後継者として育てられることになる。
そして、俺の元には次々と美少女達が集まってくるのだった……。
外れスキル持ちの天才錬金術師 神獣に気に入られたのでレア素材探しの旅に出かけます
蒼井美紗
ファンタジー
旧題:外れスキルだと思っていた素材変質は、レア素材を量産させる神スキルでした〜錬金術師の俺、幻の治癒薬を作り出します〜
誰もが二十歳までにスキルを発現する世界で、エリクが手に入れたのは「素材変質」というスキルだった。
スキル一覧にも載っていないレアスキルに喜んだのも束の間、それはどんな素材も劣化させてしまう外れスキルだと気づく。
そのスキルによって働いていた錬金工房をクビになり、生活費を稼ぐために仕方なく冒険者になったエリクは、街の外で採取前の素材に触れたことでスキルの真価に気づいた。
「素材変質スキル」とは、採取前の素材に触れると、その素材をより良いものに変化させるというものだったのだ。
スキルの真の力に気づいたエリクは、その力によって激レア素材も手に入れられるようになり、冒険者として、さらに錬金術師としても頭角を表していく。
また、エリクのスキルを気に入った存在が仲間になり――。
伝説の魔術師の弟子になれたけど、収納魔法だけで満足です
カタナヅキ
ファンタジー
※弟子「究極魔法とかいいので収納魔法だけ教えて」師匠「Σ(゚Д゚)エー」
数十年前に異世界から召喚された人間が存在した。その人間は世界中のあらゆる魔法を習得し、伝説の魔術師と謳われた。だが、彼は全ての魔法を覚えた途端に人々の前から姿を消す。
ある日に一人の少年が山奥に暮らす老人の元に尋ねた。この老人こそが伝説の魔術師その人であり、少年は彼に弟子入りを志願する。老人は寿命を終える前に自分が覚えた魔法を少年に託し、伝説の魔術師の称号を彼に受け継いでほしいと思った。
「よし、収納魔法はちゃんと覚えたな?では、次の魔法を……」
「あ、そういうのいいんで」
「えっ!?」
異空間に物体を取り込む「収納魔法」を覚えると、魔術師の弟子は師の元から離れて旅立つ――
――後にこの少年は「収納魔導士」なる渾名を付けられることになる。
これダメなクラス召喚だわ!物を掌握するチートスキルで自由気ままな異世界旅
聖斗煉
ファンタジー
クラス全体で異世界に呼び出された高校生の主人公が魔王軍と戦うように懇願される。しかし、主人公にはしょっぱい能力しか与えられなかった。ところがである。実は能力は騙されて弱いものと思い込まされていた。ダンジョンに閉じ込められて死にかけたときに、本当は物を掌握するスキルだったことを知るーー。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる