上 下
61 / 69
外の世界へ

第61話 魔道具店

しおりを挟む
「これはナオ殿!!それに他の皆さんも一緒で……大変お見苦しいところを見せてしまいましたな」
「いえ、気にしないでください。それよりもさっきの人、大丈夫なんですか?」
「ははは、冒険者に絡まれるのは日常茶飯事ですよ」
「爺さん!!さっきの格好良かったな!!あんなデカブツ相手によくやり返せたな!!」
「いえいえ、こちらもいっぱいいっぱいでしたよ」


ドルトンが巨人族の冒険者を追い返す姿にネココは感動したが、本人は相当に緊張していたらしく、両手を見せると大量の汗をかいていた。


「私は緊張すると手汗をかきやすい体質でしてな。そのせいで交渉ごとの際には手袋をしていないとならないぐらいですよ」
「そうだったんですか。でも、あんな野蛮な人がよく来るんですか」
「冒険者という方々はよくも悪くも気の強い物ばかりなんです。多少は傲慢でも強い精神力を持つ人間にしか務まらない職業ですからな」
「へえ、そういうもんなんすか」
「……それよりもこの店の中が気になる」


皆がドルトンの話し込む中、ミズネだけは彼の店の看板を見て気になっている様子だった。看板には「ドルトン魔道具店」と示されており、どうやらこの店がドルトンの経営する本店らしい。


「おっと、忘れておりました。ようこそ我が店へ、どうぞお入りください」
「ここがお爺さんの店なんですか?変わった名前ですね」
「魔道具店?」
「何だよ二人とも知らないのか!?珍しい道具をたくさん売ってる店だぞ!!」
「ここなら私の満足できる品物が買えそう。さあ、早く中に入って」


ネココとミズネは魔道具店のことを知っているらしく、二人に背を押されながらナオ達も店の中に入った。これまで訪れたどんなお店よりも広く、様々な道具が並べられていた。

店の中には武器や防具、その他にも衣服や装飾品など様々な品物が置かれており、その中には魔術師も扱う杖や魔石なども置かれていた。貴重品の類は硝子製のケースの中に保管されており、それらを見てミズネは髪の癖っ毛をぶんぶんと振り回す。


「おおっ、これは良い魔石……欲しい」
「よかったらおひとつ好きなものをどうぞ。皆さんも欲しい物があれば遠慮なくおっしゃってください」
「えっ!?もしかしてくれるのか!?」
「それはちょっと悪いですよ。あたしはほとんど何もしてませんし……」
「いえいえ、あなたが警告してくれなければ赤毛熊に襲われていたかもしれません。どうぞ遠慮なくお選びください」
「ドルトンさん、本当にいいんですか?」
「ナオ殿には前にも助けてもらいましたからな。そうそう、地属性の魔石の鑑定もこの場で行いましょう」
「あ、はい」


ナオから受け取った地属性の魔石を鑑定して買い取るため、ドルトンは店の奥へと消えていく。その間に他の者は自分が欲しい物を探す中、ネココは鉤爪を見つけて持ってきた。


「兄ちゃん!!これ、似合うか!?」
「鉤爪?もしかしてネココも戦うつもり?」
「ただの鉤爪じゃないぞ!!ここの部分を引っ張ると普段は爪を隠すことができるんだ!!」
「へえ、便利だね」


ネココが見つけた鉤爪は収納機能付きらしく、普段の生活では邪魔にならないように爪を収納する機能が搭載されていた。その一方でエリオは矢筒を持ってきた。


「兄貴、これを見てくださいよ!!収納石が付いている矢筒ですよ!!」
「収納石?」
「……闇属性の魔石の一種で異空間に物体を収納することができる。収納石の大きさで収納できる量は決まるから、その石の大きさだと数十キロは異空間に預けることができる」
「え、闇属性の魔石?でも、普通の人は魔石を使えないんじゃないの?」
「そこが魔道具の便利な点なんですよ。普通の人間でも魔石を扱えるように加工された道具ですからね。この矢筒は優れ物で間違いないっすよ、弓使いのあたしが断言します!!」


エリオが見つけた矢筒は百本以上の矢を収納できるらしく、彼女は気に入ったのかこちらの矢筒を購入するつもりらしい。そしてミズネは並べられている魔石の中から最も色合いが濃い魔石を指さす。


「この魔石をもらう事にする。これを付ければ当分の間は魔力切れも気にせずに戦える」
「値段は……うわっ!?た、高い!!」
「魔石は高級品ですからね。ちなみに兄貴は杖とか使わないんですか?」
「俺の魔法は杖は必要ないよ」


普通の魔術師とは異なり、ナオの魔法は杖や魔石は必要としない。そもそも彼の魔力は「無属性」であり、一応探してみるが無属性の魔石は存在しない。

ミズネに聞くところでは無属性の魔力を扱う魔術師など見たことも聞いたこともなく、無属性の魔力が込められた魔石は存在しない。だからナオの魔法が強化される事はあり得ず、そもそもナオは魔法の使いすぎて精神力が消耗する事はあっても魔力切れなど滅多に起こさなかった。


(やっぱり杖とか持ってないと魔術師だと思われないかな。でも、使わない物を持っても仕方ないしな)


ドルトンの行為を無碍にするのも悪いと思い、ナオは自分も何か受け取ろうかと考えたとき、武器の中に面白い物を見つけた。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

素質ナシの転生者、死にかけたら最弱最強の職業となり魔法使いと旅にでる。~趣味で伝説を追っていたら伝説になってしまいました~

シロ鼬
ファンタジー
 才能、素質、これさえあれば金も名誉も手に入る現代。そんな中、足掻く一人の……おっさんがいた。  羽佐間 幸信(はざま ゆきのぶ)38歳――完全完璧(パーフェクト)な凡人。自分の中では得意とする持ち前の要領の良さで頑張るが上には常に上がいる。いくら努力しようとも決してそれらに勝つことはできなかった。  華のない彼は華に憧れ、いつしか伝説とつくもの全てを追うようになり……彼はある日、一つの都市伝説を耳にする。  『深夜、山で一人やまびこをするとどこかに連れていかれる』  山頂に登った彼は一心不乱に叫んだ…………そして酸欠になり足を滑らせ滑落、瀕死の状態となった彼に死が迫る。  ――こっちに……を、助けて――  「何か……聞こえる…………伝説は……あったんだ…………俺……いくよ……!」  こうして彼は記憶を持ったまま転生、声の主もわからぬまま何事もなく10歳に成長したある日――

転生メイドは絆されない ~あの子は私が育てます!~

志波 連
ファンタジー
息子と一緒に事故に遭い、母子で異世界に転生してしまったさおり。 自分には前世の記憶があるのに、息子は全く覚えていなかった。 しかも、愛息子はヘブンズ王国の第二王子に転生しているのに、自分はその王子付きのメイドという格差。 身分差故に、自分の息子に敬語で話し、無理な要求にも笑顔で応える日々。 しかし、そのあまりの傍若無人さにお母ちゃんはブチ切れた! 第二王子に厳しい躾を始めた一介のメイドの噂は王家の人々の耳にも入る。 側近たちは不敬だと騒ぐが、国王と王妃、そして第一王子はその奮闘を見守る。 厳しくも愛情あふれるメイドの姿に、第一王子は恋をする。 後継者争いや、反王家貴族の暗躍などを乗り越え、元親子は国の在り方さえ変えていくのだった。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

最強スキルで無双したからって、美女達によってこられても迷惑なだけなのだが……。冥府王は普通目指して今日も無双する

覧都
ファンタジー
男は四人の魔王を倒し力の回復と傷ついた体を治す為に魔法で眠りについた。 三十四年の後、完全回復をした男は、配下の大魔女マリーに眠りの世界から魔法により連れ戻される。 三十四年間ずっと見ていたの夢の中では、ノコと言う名前で貧相で虚弱体質のさえない日本人として生活していた。 目覚めた男はマリーに、このさえない男ノコに姿を変えてもらう。 それはノコに自分の世界で、人生を満喫してもらおうと思ったからだ。 この世界でノコは世界最強のスキルを持っていた。 同時に四人の魔王を倒せるほどのスキル<冥府の王> このスキルはゾンビやゴーストを自由に使役するスキルであり、世界中をゾンビだらけに出来るスキルだ。 だがノコの目標はゾンビだらけにすることでは無い。 彼女いない歴イコール年齢のノコに普通の彼女を作ることであった。 だがノコに近づいて来るのは、大賢者やお姫様、ドラゴンなどの普通じゃない美女ばかりでした。 果たして普通の彼女など出来るのでしょうか。 普通で平凡な幸せな生活をしたいと思うノコに、そんな平凡な日々がやって来ないという物語です。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

処理中です...