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外の世界へ
第48話 死霊使いの正体
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「これは偽物だね。俺が知っている文字の真似をして書かれている」
「なんだよ、偽物かよ……って、兄ちゃんは古代語読めるのか!?」
「うん、だいたいは理解できるよ」
「それはすごい。考古学者でも魔導書を読める人は今時いないといわれてるのに……」
ナオの言葉にミズネとネココは驚き、古代語(日本語)を理解する人間はこの世界にはめったにいない。ナオの母親は異界人であり、彼女から文字を学んでいなければナオは古代魔法も覚えることはできなかっただろう。
古代魔法を覚えていなければナオの人生は一変し、今頃は死んでいたかもしれない。もしもマリアの弟子にならなければナオは村人と共に魔物に殺されていた可能性が高い。そう考えると文字を教えてくれた母親には感謝しなければならない。
(頑張って覚えてよかったな。カタカナ、平仮名はともかく、漢字は一番大変だったな……)
母親が死んだあともナオは彼女が書き残した書物を読んで日本語の勉強を行っていた。正直に言えばこんな文字を覚えて何の役に立つのかと思ったが、母親は死ぬ前に祖父に遺言でナオに勉強を続けさせるように頼んでいた。だからナオは母親が亡くなった後も毎日欠かさず勉強していたお陰で日本語を解読できるようになった。
「それにしても間抜けな爺さんだよな。偽物と知れずに何年も大切に持ってたなんて」
「……それは仕方ない。古代語を読める人なんてめったにいないし、本物か偽物かも判別できないから持ってることしかできなかった」
「でも、この本……俺が読んだ魔導書と似てるんだよな。もしかしたら俺の魔導書の複製品かもしれない」
マリアが所持していた魔導書と老人が手にしていた魔導書は酷似しており、その点だけが気になったナオが呟くと、気絶していたと思われた老人が起き上がる。
「どうやら本当に古代語が読めるようだな」
「うわっ!?め、目が覚めてたのか!?」
「待って……様子がおかしい」
「……まさか!?」
起き上がった老人を見てナオ達は警戒態勢に入るが、老人は生気を感じさせない瞳を向け、ナオはそれを見て魔力感知を行う。その結果、老人の身体からは闇属性の魔力しか感じられない事に気が付く。
「こいつは人間じゃない!!ゴブリンと一緒だ!!」
「ど、どういう意味だよ!?」
「なるほど……最初から本物はいなかった」
「ウォンッ!?」
「ぷるぷるっ……」
「くくく、その通りだ。この身体も人形の一つにすぎん」
最初からナオ達の前に現れたのは死霊使いの操る「死霊人形」であり、どうやら本体だと思われた老人はゴブリンと同様に操られた死体であることが判明した。
「ちょ、ちょっと待てよ!!お前が偽物なら、ゴブリン達はなんで倒れたんだよ!!」
「死霊人形は私の意志で解除することができるのよ。やられたふりをしたのと同時に人形を解除すれば怪しまれずに済むでしょう?」
「な、なんだこいつ!?急に女みたいな言葉遣いになって……気持ち悪い!!」
「失礼ね、私がいつ男だといったのかしら?」
「……なるほど、男の死体を操っているからと言って男とは限らない」
老人の死体を操作する本物の死霊使いは女性らしく、ナオ達を罠に嵌めて自分が所有する魔導書が本物かどうかを確かめたらしい。目的を達した以上は猿芝居を続けるつもりはなく、死霊使いに操られていた老人は糸が切れた人形のように倒れこむ。
「これ以上に貴方達に構っている暇はないわ。またどこかで会った時は仲良くしましょうね」
「あ、おい!?」
「……魔力が消えた。もうこれはただの死体」
「くそっ!!俺たちは利用されたのか!!」
「クゥ~ンッ」
「ぷるぷるっ」
自分がまんまと罠にはまったことにナオは悔しがるが、そんな彼を慰めるようにウルとスラミンがすり寄る。彼らをなだめながらナオは周囲に散らばったゴブリンの死骸と倒れた老人の姿を確認し、このまま放置するのはかわいそうなため、山を出る前に彼らを埋葬することにした――
――同時刻、山奥にて一人の女性が立っていた。外見は二十歳前後の女性にしか見えず、エルフのように細長い耳と整った容姿しているが、褐色肌が特徴的だった。彼女の正体は「ダークエルフ」であり、エルフの中でも特異な存在だった。
「中々面白い子供たちだったわね。特にあの子……そそられるわ」
ダークエルフの正体は死霊使いであり、自分が収集した死体を利用してナオ達と接触した。自ら姿を現さなかったのは噂の魔術師の「古代魔法」を警戒したからであり、その判断は間違っていなかった。
仮にダークエルフが自ら赴いていた場合、ナオの魔法に対応できずに返り討ちにされた可能性があった。実際に彼女が操作していた老人は不意を突かれて倒されてしまい、もしもダークエルフが訪れていたら老人と同じ目に遭わされたかもしれない。
「あの魔導書が偽物だったのは残念だけど、あの子の魔法には興味が出てきたわ。参ったわね、死体になると魔法が使い物にならないのは残念だわ」
死霊使いが仮に魔術師の死体を手に入れたとしても、魔術師が生前に扱っていた魔法を扱う事はできない。だからナオを下手に殺せば古代魔法の使い手が消えることを意味しており、彼女はそれが残念でならなかった。
「なんだよ、偽物かよ……って、兄ちゃんは古代語読めるのか!?」
「うん、だいたいは理解できるよ」
「それはすごい。考古学者でも魔導書を読める人は今時いないといわれてるのに……」
ナオの言葉にミズネとネココは驚き、古代語(日本語)を理解する人間はこの世界にはめったにいない。ナオの母親は異界人であり、彼女から文字を学んでいなければナオは古代魔法も覚えることはできなかっただろう。
古代魔法を覚えていなければナオの人生は一変し、今頃は死んでいたかもしれない。もしもマリアの弟子にならなければナオは村人と共に魔物に殺されていた可能性が高い。そう考えると文字を教えてくれた母親には感謝しなければならない。
(頑張って覚えてよかったな。カタカナ、平仮名はともかく、漢字は一番大変だったな……)
母親が死んだあともナオは彼女が書き残した書物を読んで日本語の勉強を行っていた。正直に言えばこんな文字を覚えて何の役に立つのかと思ったが、母親は死ぬ前に祖父に遺言でナオに勉強を続けさせるように頼んでいた。だからナオは母親が亡くなった後も毎日欠かさず勉強していたお陰で日本語を解読できるようになった。
「それにしても間抜けな爺さんだよな。偽物と知れずに何年も大切に持ってたなんて」
「……それは仕方ない。古代語を読める人なんてめったにいないし、本物か偽物かも判別できないから持ってることしかできなかった」
「でも、この本……俺が読んだ魔導書と似てるんだよな。もしかしたら俺の魔導書の複製品かもしれない」
マリアが所持していた魔導書と老人が手にしていた魔導書は酷似しており、その点だけが気になったナオが呟くと、気絶していたと思われた老人が起き上がる。
「どうやら本当に古代語が読めるようだな」
「うわっ!?め、目が覚めてたのか!?」
「待って……様子がおかしい」
「……まさか!?」
起き上がった老人を見てナオ達は警戒態勢に入るが、老人は生気を感じさせない瞳を向け、ナオはそれを見て魔力感知を行う。その結果、老人の身体からは闇属性の魔力しか感じられない事に気が付く。
「こいつは人間じゃない!!ゴブリンと一緒だ!!」
「ど、どういう意味だよ!?」
「なるほど……最初から本物はいなかった」
「ウォンッ!?」
「ぷるぷるっ……」
「くくく、その通りだ。この身体も人形の一つにすぎん」
最初からナオ達の前に現れたのは死霊使いの操る「死霊人形」であり、どうやら本体だと思われた老人はゴブリンと同様に操られた死体であることが判明した。
「ちょ、ちょっと待てよ!!お前が偽物なら、ゴブリン達はなんで倒れたんだよ!!」
「死霊人形は私の意志で解除することができるのよ。やられたふりをしたのと同時に人形を解除すれば怪しまれずに済むでしょう?」
「な、なんだこいつ!?急に女みたいな言葉遣いになって……気持ち悪い!!」
「失礼ね、私がいつ男だといったのかしら?」
「……なるほど、男の死体を操っているからと言って男とは限らない」
老人の死体を操作する本物の死霊使いは女性らしく、ナオ達を罠に嵌めて自分が所有する魔導書が本物かどうかを確かめたらしい。目的を達した以上は猿芝居を続けるつもりはなく、死霊使いに操られていた老人は糸が切れた人形のように倒れこむ。
「これ以上に貴方達に構っている暇はないわ。またどこかで会った時は仲良くしましょうね」
「あ、おい!?」
「……魔力が消えた。もうこれはただの死体」
「くそっ!!俺たちは利用されたのか!!」
「クゥ~ンッ」
「ぷるぷるっ」
自分がまんまと罠にはまったことにナオは悔しがるが、そんな彼を慰めるようにウルとスラミンがすり寄る。彼らをなだめながらナオは周囲に散らばったゴブリンの死骸と倒れた老人の姿を確認し、このまま放置するのはかわいそうなため、山を出る前に彼らを埋葬することにした――
――同時刻、山奥にて一人の女性が立っていた。外見は二十歳前後の女性にしか見えず、エルフのように細長い耳と整った容姿しているが、褐色肌が特徴的だった。彼女の正体は「ダークエルフ」であり、エルフの中でも特異な存在だった。
「中々面白い子供たちだったわね。特にあの子……そそられるわ」
ダークエルフの正体は死霊使いであり、自分が収集した死体を利用してナオ達と接触した。自ら姿を現さなかったのは噂の魔術師の「古代魔法」を警戒したからであり、その判断は間違っていなかった。
仮にダークエルフが自ら赴いていた場合、ナオの魔法に対応できずに返り討ちにされた可能性があった。実際に彼女が操作していた老人は不意を突かれて倒されてしまい、もしもダークエルフが訪れていたら老人と同じ目に遭わされたかもしれない。
「あの魔導書が偽物だったのは残念だけど、あの子の魔法には興味が出てきたわ。参ったわね、死体になると魔法が使い物にならないのは残念だわ」
死霊使いが仮に魔術師の死体を手に入れたとしても、魔術師が生前に扱っていた魔法を扱う事はできない。だからナオを下手に殺せば古代魔法の使い手が消えることを意味しており、彼女はそれが残念でならなかった。
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