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カタナヅキ

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外の世界へ

第44話 虫歯

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「ただいま……何かあったの?」
『ぷるっくりんっ?』
「あ、おかえ……えっ!?」
「ちょっと待て!!スラキチでかくなってねえか!?」
「ウォンッ!?」


戻ってきたミズネは巨大化したスラミンの頭に乗り込み、この短い間に十倍近く大きくなって戻ってきたスラミンにナオ達は戸惑う。するとミズネは抱えていた果物を下してから事情を説明してくれた。


「スラミンはデカミンに進化した」
「デカミン!?」
「なんだそりゃっ!?」
「……というのは冗談で、山の中に滝があったから水浴びさせたらこんなに大きくなった」
『ぷっふっ(←ゲップ)』


ナオ達と別れている間にスラミンは大量の水を摂取して巨大化したらしく、口元を開くと水を吐き出して小さくなっていく。元の大きさに戻ると飼い主のナオの元に元気に飛び込む。


「ぷるぷる~んっ♪」
「よ、よかった。元に戻って……」
「たくっ、スラキチは面白い奴だな」
「スラキチじゃなくてスラミンね」
「ペロペロッ」
「ぷるんっ(←舐められてくすぐったい)」


魔物同士気が合うのかウルはスラミンを可愛がるかのように頭を舐め始め、その間にミズネは調達してきた果物を二人に渡す。激闘を終えた後なのでナオとネココは無住に噛り付く。


「うわっ、この果物甘くて美味しいね」
「すっぱっ!?なんだよこれ、食えたもんじゃねえぞ!?」
「それは果汁を絞ってスラミンにあげるといい」
「ぷるぷるっ♪」
「クゥ~ンッ」


みんながおいしく果物を食べる中、ウルはうらやましそうに眺めた。魔獣であるウルは果物は食さず、主に動物や魔物の肉しか食べられない(サンドワームのような存在はさすがに食えないが)。

お腹を空かせているウルのためにナオは魔力感知を発動させて魔物がいないのか探すと、先ほど投げ飛ばしたはずのサンドワームの魔力が接近していることに近づく。ミズネも遅れて異変に気付き、杖を取り出した。


「気を付けて、こっちに何か来る」
「え!?な、なんだ!?」
「さっきの奴が戻ってくるかもしれない」
「グルルルッ!!」
「ぷるるるっ(←体を小刻みに震わせて威嚇する)」


全員が身構える中、先ほどと同じように地面が盛り上がってサンドワームが姿を現す。また自分たちを食べようとしているのかとナオは右手を構えると、サンドワームは口元をすぼめて体内から何かを吐き出す。


「ブペッ!!」
「うわっ!?」
「……何これ?」
「臭っ!?」
「クゥ~ンッ!?」
「ぷるんっ?」


サンドワームが吐き出したのは真っ黒に汚れた牙であり、普通のミミズと違ってサンドワームは口内に大量の牙を生やしていた。そのうちの一つがだったらしく、どうやらナオの攻撃で虫歯が抜けたのか嬉しそうに肉体をくねらせる。


「ギュロロロッ♪」
「ぷるぷるっ」
「……どうやらナオにお礼を言ってるみたい」
「えっ!?姉ちゃんはサンドワームの言葉も分かるのか!?」
「私が分かるのはスライム語だけ、でもスラミンはサンドワーム語も分かるらしい」
「何その言語……」


スラミンを通してサンドワームが伝えたい言葉をミズネが理解し、先の戦闘でサンドワームが暴れくるっていた理由は虫歯が原因だという。その原因を取り除いたのはナオであり、サンドワームはお礼を言いに来たみたいだった。


「ギュロロッ」
「ぷるぷるっ」
「この恩は忘れないでござるといってる」
「ござる!?」
「き、気にしないでいいよと伝えてくれる?」
「ぷるぷるっ」


ナオがスラミンに通訳を頼むと、サンドワームは頷くそぶりを行い、再び地中の中に潜った。その様子をナオ達は見届けると、吐き出された牙に何か光り輝く物が混じっていることに気付く。


「あれ?何か光ってるのが混じってるよ」
「どれどれ……って、臭い!?こんあの持ってけねえよ!!」
「私に任せて」


ミズネは杖を取り出すと魔法で水を作り出し、それを牙に流し込む。魔法の水で洗浄された牙から見つかったのは茶色に光り輝く大きな石だった。


「なんだろう、この石……茶色に輝いてるけど」
「これは……魔石かもしれない」
「魔石?姉ちゃんの杖についてるのと同じ奴か?」
「正確に言えば魔石に加工される前の鉱石。しかも色合い的に地属性の魔石で間違いない」
「地属性?」


地属性の魔法は重力を操作する魔法だとマリアから伺っており、使い手は滅多に存在しない。しかも地属性の魔石の鉱石は地中を深く掘り起こさなければ手に入らず、希少品なので滅多に市場に流れることはない。

魔術師が扱う魔石はどれも希少価値が高く、街に持って帰れば売れば大金を得られる。サンドワームは意図していなかったが、ナオはお礼として受け取っておくことにした。


「ミズネの魔法のお陰で綺麗になったけど、これは袋に入れておくね」
「そうした方がいいだろ。サンドワームの腹の中に入ってたもんを触りたくねえし……」
「地属性の魔石は細かく砕いて地面にばらまけばどんな肥料よりも大地に栄養を与える。だから一般の人でも欲しがる人は多い」
「へえ~」


マリアからは聞いたことはない魔石の使い方にナオは感心する一方、袋の中に魔石を詰め込んで馬車の中に置いておく。食事を終えてしばらくは休んだ後、ナオ達は改めて山の中に入った。
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