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カタナヅキ

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外の世界へ

第42話 サンドワーム

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――馬車ならぬ狼車に乗り込んでナオ達は次の街へ向けて出発した。ウルが引く車は馬車よりもずっと早く移動できたが、問題が一つ発生した。それは馬車に乗りなれていないネココとナオは車酔いしてしまう。


「うぷっ……吐きそう」
「うげぇ~気持ち悪い……お前な、ちょっと早く走りすぎなんだよ!!」
「クゥンッ!?」
「どうどう、落ち着いて」
「ぷるぷるっ」


飼い主のネココから理不尽な文句を言われたウルは傷ついた表情を浮かべるが、ミズネとスラミンが二人の背中をさすって落ち着かせる。ニノの街を離れてから一時間足らずしか経過していないが、普通の馬車ならば二時間はかかる距離まで走ってこれた。

ニノからサンノの街の間には山を一つ越えなければならず、最近では魔物が見かけるようになったという。しかし、普通の馬車と違って白狼種であるウルに襲い掛かる魔物は滅多にいないため、問題なく渡れると思われた。


「はあっ、大分気分も良くなった」
「あたしはもうちょっと休ませてくれよ……」
「仕方ない、二人はここにいて。私が食べられそうな物を探してくる。スラミンも手伝って」
「ぷるぷるっ」


ミズネはネココが回復するまでの間、一人で山に先に入って食べられそうな動物や果物を探しに向かう。念のために魔物の気配に敏感なスラミンも連れていき、残された二人は地面に寝そべったウルに身体を預けた。


「ああ~このもふもふ感がたまらない」
「そうだろ?あたしはいつもウルに包まれて寝てるんだ。こいつの毛皮は気持ちいいからな」
「ウォンッ……」


自分を布団替わりにして休む二人にウルは呆れるが、鼻を鳴らした彼は周囲を見渡す。


「スンスンッ……グルルルッ!!」
「うわっ!?どうしたの?」
「なんだよ、怒ったのか?たくっ、気が小さい奴だな……ふわっ!?」
「ネココ!?」


急にネココは頭の耳と尻尾を逆立てて全身を震えだす。彼女の異変に気付いたナオはどうしたのかと驚くと、ネココは山の方を指さした。


「な、なんかやばいのがこっちに来るぞ!!」
「やばいの?」
「あたしにはそういうのが分かるんだ!!ウルもそうだろ!?」
「ウォオンッ!!」


野生本能が優れたウルはネココの言葉に頷き、ナオは試しに魔力感知を行う。すると確かに距離は遠いがこちらに近づいてくる大きな魔力を感じ取った。


(この魔力の大きさは魔物だ!!でも、ウル君はともかくネココまで気づくなんて……)


ネココは魔術師じゃないので魔力感知は行えないはずだが、彼女は獣人族の中でも特殊な育ちをしているため、生存本能に優れているのかもしれない。それはともかく、ナオは魔物が辿り着く前に魔法を展開して戦闘準備を行う。

敵が来るとわかっていれば万全の体制で迎え撃てるため、ナオは右手に小型化した画面を展開した。魔力の大きさから察するにボアと同程度でミノタウロスほど強い魔物とは思えない。


(来るっ!!)


魔力が接近するとナオは画面を構えるが、何故か山から姿を現さない。しかし、既に敵の魔力はナオ達の元に迫る。


「あれ?どうして……」
「兄ちゃん!!ぼさっとすんな、ウルに乗れっ!!」
「うわっ!?」
「ウォオンッ!!」


ネココはいち早く危険を察し、ナオの手を掴んでウルの背中に飛び乗る。するとウルは跳躍して地上から離れると、三人が立っていた場所の地面が盛り上がり、地中から巨大な化け物が姿を現した。



――ギュロロロッ!!



地面から現れたのは「巨大ミミズ」を想像させる化け物であり、ナオは実物は見たことはないが絵本で見かけたことがある魔物だった。名前は「サンドワーム」と呼ばれ、ミミズと酷似した姿の怪物だが、本物のミミズと違う点は非常に獰猛で動物や魔物にも襲い掛かる。

ナオ達の前に現れたサンドワームはウルを一飲みできるほどの巨大であり、ミノタウロスよりも魔力が小さいのでボアぐらいの大きさの魔物だとナオは思い込んでいた。しかし、実際にはミノタウロスの何倍もの巨躯の化け物の登場に反省した。


(魔力量で敵を判断するのはやめておいた方がいいな……いや、今はそんなことを考えている暇はないか!!)


空中に跳んだことでウルに乗ったナオ達はサンドワームに飲み込まれずに済んだが、今度は空中に浮揚している状態の三人にめがけてサンドワームは突っ込む。


「ギュロロロッ!!」
「うわわっ!?こっちに来るぞ!?」
「ウォオンッ!!」
「大丈夫、俺に任せて!!」


迫りくるサンドワームの巨大な口にナオは右手を構えると、飲み込まれる前に拡大化した画面を展開した。それによってサンドワームは画面に阻まれてナオ達を飲み込むのに失敗した。


「ギュロォッ!?」
「今だ!!地面に降りて!!」
「ウォンッ!!」


ウルは地上に着地すると、サンドワームから距離をとった。空中で画面にぶつかったサンドワームは戸惑い、それでも再びナオ達に食らいつこうと正面から迫る。


「ギュロロッ!!」
「しつこいんだよ!!」
「ギュロッ!?」


性懲りもなく自分たちに襲い掛かろうとしたサンドワームに対し、右手を下ろして空中に展開した画面をサンドワームの頭部に叩き込む。頭に衝撃を受けたサンドワームは口元を引くつかせ、黄色の液体を吹き出す。




※申し訳ございませんが今日から一日二話投稿になります。
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