魔法使いじゃなくて魔弓使いです

カタナヅキ

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閑話 《暗殺者の末路》

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「――まさかあんたが犯人だったとはね」
「…………」


両手両足を鎖で縛りつけられた状態で檻の中に監禁されたヒカゲの元にバルは訪れた。ヒカゲは横たわった状態でバルを見上げ、そんな彼女にバルは怒りの表情を浮かべていた。

ヒカゲがレノに敗れた後、すぐに彼等は警備兵を連れ出して彼女を逮捕させた。事情を聞いたバルはヒカゲの元に駆けつけ、今まで自分を騙していた彼女に怒りを抑えきれない。


「私はまんまとあんたに騙されたわけだ。セレブロ、シル、ギン……どいつもあんたとはそれなりに付き合いがあったはずだよ。それなのによくも殺せたね!!」
「ふっ……私があいつらに近付いたのは弱点を探すため、いずれ敵になる相手の情報を集めておいて損はない」
「つまり、あんたは自分が昇格するために他の冒険者を最初から始末するつもりだったのかい!!」


バルはヒカゲの閉じ込められた檻に拳を叩きつけると、鉄柵の一部が折れ曲がる。彼女が本気になれば檻を破壊して中に閉じ込められているヒカゲを殺すこともできた。だが、そんな真似をすれば彼女の立場が危うくなる。


「いくら怒鳴りつけても無駄……私を殺せば貴女も無事ではいられない。黒虎のギルドマスターが自分のギルドの冒険者を殺したなんて知られれば名声は地に落ちる」
「……随分と余裕があるじゃないかい。あんたこそ自分の立場を分かっているのかい?三人の人間を殺したんだ、無事で済むはずがないだろう」
「……私は死ぬの?」


ヒカゲは自分がどのような処罰を受けるのかを尋ねると、バルは彼女の罰の内容を伝えた。


「死刑は確定しているね。絞首刑か、あるいは斬首刑か……どちらにしろ死刑を迎える日までせいぜい悔い改めるんだね」
「……いいの?私を放っておけば逃げ出すかもしれないのに」
「その足でどうやって逃げるつもりだい?」


バルの指摘にヒカゲは自分の右足に視線を向け、レノに射抜かれた矢の傷は最低限の治療しか施されていない。彼女の程の実力者ならば拘束しても檻を抜け出される恐れはあったが、足の怪我のせいでヒカゲはまともに立つ事もできない。

自分の怪我を見てヒカゲは悔し気な表情を浮かべ、この怪我さえなければ彼女は檻から脱出して生き延びられる可能性もあった。だが、逃げた所で脱獄犯として一生人目を避けて生きていく生活を送ることを考えたら処刑を受け入れて死を迎えた方が楽かもしれない。


「逃げ出そうなんて考えるんじゃないよ。その怪我じゃ逃げられないだろうけど、もしも逃げ出したら今度は私が直々に始末してやる。相手が脱獄犯なら容赦する必要はないからね」
「……無惨に殺されるぐらいなら処刑された方がマシ」
「ちっ、口の減らないガキだね」


ギルドマスターは檻の中のヒカゲに背中を向け、そのまま立ち去ろうとした。そんな彼女を見てヒカゲは呼び止める。


「待って……最後に伝言を頼める?」
「……何だい、家族に言い残すことがあるのかい?」
「私に家族はいない……あの男の子に伝えて欲しい」
「男の子?あの……レノとかいう坊主のことかい?」


意外なことを聞いてきたヒカゲにバルは不審に思うと、彼女は右足の怪我を見下ろしながら告げた。


「生まれて初めて私よりも暗殺者の才能がある人間と出会えた……そう伝えてくれる?」
「……つくづく口の減らないガキだね」
「お褒めの言葉をありがとう」


最後まで減らず口を叩くヒカゲにバルは苛立った表情を浮かべ、彼女に振り返らずに立ち去った――
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