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第73話 冒険者同士の争い
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「被害者はここで倒れて死んだ。何か分かる?」
「ウル、頼んだよ」
「ウォンッ!!」
被害者が死んだ場所にウルは鼻を寄せて臭いを嗅ぎ、しばらくすると何かを嗅ぎつけた様に鳴き声を上げた。
「ウォンッ!!ウォンッ!!」
「こっちに付いて来てほしいみたいだけど……」
「まさか犯人の臭いを見つけたのか!?」
「ウルちゃん凄い!!」
ウルは地面に鼻先を擦りつけるように臭いを辿り、その後をレノ達は続いた。だが、ウルはとある人物の前に立ち止まった。
「ウォンッ?」
「……何?」
「あれ?」
何故かヒカゲの前にウルは立ち止まってしまい、不思議そうに首を傾げた。その行動にレノ達も戸惑うが、ヒカゲは思い出したように告げる。
「もしかして私が死体を調べた時の臭いが残っていた?」
「あ、そういえば……最初に死体の確認を行ったのはヒカゲさんでしたね」
「そうなんですか?」
「はい、我々が調査を行う前にヒカゲさんが現場を調べていました」
警備兵が調査する前にヒカゲは現場の確認を行い、時間的にはレノとヒカゲが遭遇する少し前まで遡る。どうやらウルが嗅ぎつけた死体の傍に残っていた臭いの正体はヒカゲだと判明した。
「ウル、ヒカゲさん以外の臭いは残ってないの?」
「スンスンッ……ウォンッ!!」
「おっ!?今度こそ見つけたのか?」
再びウルは死体のあった場所で鼻を嗅ぐと、再び何かを発見したように移動を始める。今度はヒカゲが居る場所ではなく、別の方向に移動を行う。
「どうやら何か見つけたみたい。貴方達はここにいて」
「分かりました!!どうかお気をつけて!!」
「皆、ウルの後に続く」
「お、おう!!」
「うん!!」
「よし、行こう!!」
兵士達を残してレノ達はウルの後に続き、彼が何処に向かおうとしているのかを確かめる。ウルは街道を歩いていると、路地裏の方へ向かう。この時にレノは違和感を覚えた。
ウルが曲がった路地裏はレノ達とヒカゲが遭遇した場所であり、ウルは路地裏の奥に向かっていた。違和感を抱いたのはレノだけではなくダインも遅れて気が付き、不安そうに彼は尋ねる。
「あれ?ここって僕達が居た場所だよな?何で戻ってきてるんだ?」
「さあ……」
「ウルちゃん、何処まで行くの?」
「ウォンッ!!」
路地裏の奥へ向かうウルにハルナは話しかけると、自分に付いて来いとばかりにウルは鳴き声を上げた。今はウルの嗅覚だけが頼りなのでレノ達は後に続くと、やがて建物に囲まれた空き地に辿り着いた。
「あれ!?ここで行き止まりだぞ!?」
「まさかこんな場所に空き地があったなんて……」
「結構広いね~」
「ウル、ここに犯人が居たの?」
「クゥ~ンッ……」
空き地に到着したレノ達はウルに尋ねると、ウルはきょろきょろと首を見渡す。どうやらここまで嗅いでいた臭いが急に消えたらしく、ウルは困った風に首を振る。
「どうやら臭いはここで途切れてるみたい」
「臭いは途切れてるって……ここ行き止まりだぞ?犯人はどうやって逃げたんだよ!?」
「出入口の通路は一つしかない……もしかしたらここから犯人は屋根に上って逃げたのかもしれない」
「え~!?じゃあ、屋根に上るの?」
ヒカゲの推理を聞いてレノも臭いが消えたのは犯人が何らかの方法で屋根に移動したとしか思えない。しかし、レノはある疑問を抱く。
「……ヒカゲさん、事件が起きた時間帯は分かりますか?」
「時間帯?」
「殺人事件はいつ起きたのか教えてください」
「……確か、1時間ぐらい前だったはず」
レノは事件が起きた時間帯を知ると、自分達が冒険都市に辿り着いた頃に起きたことが判明した。冒険都市に到着したレノ達は冒険者ギルドへ向かう途中に人だかりを目撃し、殺人事件が起きたことを知る。
殺人事件が起きたのはレノ達が通りがかる少し前であり、この時にレノは人だかりを調べるために別行動を取った。ハルナとダインは路地裏に隠れ、ウルは一目が着かないように路地裏の奥へ移動した。つまりはウルは既にこの場所に事件が起きた直後に立ち寄ったことを意味していた。
(俺達が人だかりを発見したのは事件が起きてからそれほど時間は経っていない時のはず……もしかしたらウルは犯人が来た後にこの場所に辿り着いていたのかもしれない。でも、ウルの反応を見る限りだと犯人は知らないようだけど……)
ウルがレノ達と離れていた際に怪しい人物を見かけていたのならば警告するはずであり、既に犯人はレノ達が来た時には現場から離れていたことになる。しかし、わざわざ犯人がこんな場所に来たことに違和感を覚える。
「……ここに犯人が逃げたとしたら手掛かりがあるかもしれない。すぐに警備兵を読んで現場を調べさせた方がいい」
「な、なるほど……じゃあ、僕が呼んでくるよ!!」
「ダイン君!?危ないっ!!」
ヒカゲの言葉を聞いてダインは引き返そうとした時、ハルナが大きな声を上げた。ダインは振り返ると自分の倍以上の背丈の大男が立っていることに気付いて悲鳴をあげた。
「うわぁあああっ!?」
「……巨人族?」
「おい、ガキ共……ここで何をしている?」
空き地に一つしかない出入口を塞ぐように現れたのは4メートルを超える大男であり、彼を見てヒカゲは「巨人族」と口にする。レノはそれを聞いてアルから聞いた話を思い出す。
巨人族とは名前の通りに普通の人間の倍近くの体躯を誇る種族であり、実物を見たのはレノも初めてだった。巨人族の男は自分を見て尻餅をついたダインを見下ろし、彼が装着しているバッジを見て鼻を鳴らした。
「ふんっ、誰かと思えば黒虎の冒険者か……ここで何をしている?」
「な、何だよお前!?や、やんのかこらぁっ……」
「あれ!?ダイン君いつの間にこっちに!?」
「は、早い!?」
ダインは一瞬でハルナの後方に移動して彼女の後ろに身を隠す。それを見た巨人族の男は小馬鹿にするように笑いかけた。
「ははははっ!!黒虎の冒険者の男は女を盾にするような腑抜けしかいないのか!?」
「な、何だと!?」
「ダイン、挑発に乗ったら駄目……そういう貴方も冒険者なの?」
「このバッジを見て分からないのか?」
男は自分の胸元を指差すと、ダイン達が所持するバッジよりも3倍近い大きさのバッジを身に着けていた。バッジは銀製であり、表面には赤色の獅子の紋様が刻まれていた。それを見てヒカゲは面倒臭そうな表情を浮かべる。
「その紋様……まさか赤獅子?」
「赤獅子?」
「いつも黒虎《うち》と張り合おうとする冒険者ギルドだよ!!」
「ふん、それはこっちの台詞だ!!」
巨人族の男の正体は赤獅子と呼ばれる冒険者ギルドに所属する冒険者らしく、男はダイン達が黒虎の冒険者だと知ると不機嫌そうに腕を組む。
「てめえらここで何をしてやがった!!こそこそと隠れやがってまた何か悪だくみでもしてんのか!?」
「こっちは仕事中……殺人事件の調査を行っている」
「殺人事件だと?またてめえらの所の冒険者が殺されたのか?こいつはお笑いだぜ、街を代表するギルドの冒険者がこうもあっさり何人も殺されるなんてよ!!黒虎の名声もがた落ちだなっ!!」
「お、お前っ……!!」
「ダイン、相手にしないで」
黒虎を馬鹿にした発言にダインは激高するが、そんな彼をヒカゲは抑えた。彼女も自分が所属するギルドを馬鹿にされて不満は抱いている様子だが、軽々と他所のギルドと揉めことを起こすわけにはいかない。
赤獅子は黒虎に次ぐ勢力の冒険者ギルドであり、レノ達の前に現れたのは赤獅子の中でも指折りの冒険者だった。名前は「ガイア」この街ではただ一人の巨人族の冒険者だった。
「ウル、頼んだよ」
「ウォンッ!!」
被害者が死んだ場所にウルは鼻を寄せて臭いを嗅ぎ、しばらくすると何かを嗅ぎつけた様に鳴き声を上げた。
「ウォンッ!!ウォンッ!!」
「こっちに付いて来てほしいみたいだけど……」
「まさか犯人の臭いを見つけたのか!?」
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ウルは地面に鼻先を擦りつけるように臭いを辿り、その後をレノ達は続いた。だが、ウルはとある人物の前に立ち止まった。
「ウォンッ?」
「……何?」
「あれ?」
何故かヒカゲの前にウルは立ち止まってしまい、不思議そうに首を傾げた。その行動にレノ達も戸惑うが、ヒカゲは思い出したように告げる。
「もしかして私が死体を調べた時の臭いが残っていた?」
「あ、そういえば……最初に死体の確認を行ったのはヒカゲさんでしたね」
「そうなんですか?」
「はい、我々が調査を行う前にヒカゲさんが現場を調べていました」
警備兵が調査する前にヒカゲは現場の確認を行い、時間的にはレノとヒカゲが遭遇する少し前まで遡る。どうやらウルが嗅ぎつけた死体の傍に残っていた臭いの正体はヒカゲだと判明した。
「ウル、ヒカゲさん以外の臭いは残ってないの?」
「スンスンッ……ウォンッ!!」
「おっ!?今度こそ見つけたのか?」
再びウルは死体のあった場所で鼻を嗅ぐと、再び何かを発見したように移動を始める。今度はヒカゲが居る場所ではなく、別の方向に移動を行う。
「どうやら何か見つけたみたい。貴方達はここにいて」
「分かりました!!どうかお気をつけて!!」
「皆、ウルの後に続く」
「お、おう!!」
「うん!!」
「よし、行こう!!」
兵士達を残してレノ達はウルの後に続き、彼が何処に向かおうとしているのかを確かめる。ウルは街道を歩いていると、路地裏の方へ向かう。この時にレノは違和感を覚えた。
ウルが曲がった路地裏はレノ達とヒカゲが遭遇した場所であり、ウルは路地裏の奥に向かっていた。違和感を抱いたのはレノだけではなくダインも遅れて気が付き、不安そうに彼は尋ねる。
「あれ?ここって僕達が居た場所だよな?何で戻ってきてるんだ?」
「さあ……」
「ウルちゃん、何処まで行くの?」
「ウォンッ!!」
路地裏の奥へ向かうウルにハルナは話しかけると、自分に付いて来いとばかりにウルは鳴き声を上げた。今はウルの嗅覚だけが頼りなのでレノ達は後に続くと、やがて建物に囲まれた空き地に辿り着いた。
「あれ!?ここで行き止まりだぞ!?」
「まさかこんな場所に空き地があったなんて……」
「結構広いね~」
「ウル、ここに犯人が居たの?」
「クゥ~ンッ……」
空き地に到着したレノ達はウルに尋ねると、ウルはきょろきょろと首を見渡す。どうやらここまで嗅いでいた臭いが急に消えたらしく、ウルは困った風に首を振る。
「どうやら臭いはここで途切れてるみたい」
「臭いは途切れてるって……ここ行き止まりだぞ?犯人はどうやって逃げたんだよ!?」
「出入口の通路は一つしかない……もしかしたらここから犯人は屋根に上って逃げたのかもしれない」
「え~!?じゃあ、屋根に上るの?」
ヒカゲの推理を聞いてレノも臭いが消えたのは犯人が何らかの方法で屋根に移動したとしか思えない。しかし、レノはある疑問を抱く。
「……ヒカゲさん、事件が起きた時間帯は分かりますか?」
「時間帯?」
「殺人事件はいつ起きたのか教えてください」
「……確か、1時間ぐらい前だったはず」
レノは事件が起きた時間帯を知ると、自分達が冒険都市に辿り着いた頃に起きたことが判明した。冒険都市に到着したレノ達は冒険者ギルドへ向かう途中に人だかりを目撃し、殺人事件が起きたことを知る。
殺人事件が起きたのはレノ達が通りがかる少し前であり、この時にレノは人だかりを調べるために別行動を取った。ハルナとダインは路地裏に隠れ、ウルは一目が着かないように路地裏の奥へ移動した。つまりはウルは既にこの場所に事件が起きた直後に立ち寄ったことを意味していた。
(俺達が人だかりを発見したのは事件が起きてからそれほど時間は経っていない時のはず……もしかしたらウルは犯人が来た後にこの場所に辿り着いていたのかもしれない。でも、ウルの反応を見る限りだと犯人は知らないようだけど……)
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「……ここに犯人が逃げたとしたら手掛かりがあるかもしれない。すぐに警備兵を読んで現場を調べさせた方がいい」
「な、なるほど……じゃあ、僕が呼んでくるよ!!」
「ダイン君!?危ないっ!!」
ヒカゲの言葉を聞いてダインは引き返そうとした時、ハルナが大きな声を上げた。ダインは振り返ると自分の倍以上の背丈の大男が立っていることに気付いて悲鳴をあげた。
「うわぁあああっ!?」
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「おい、ガキ共……ここで何をしている?」
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「な、何だよお前!?や、やんのかこらぁっ……」
「あれ!?ダイン君いつの間にこっちに!?」
「は、早い!?」
ダインは一瞬でハルナの後方に移動して彼女の後ろに身を隠す。それを見た巨人族の男は小馬鹿にするように笑いかけた。
「ははははっ!!黒虎の冒険者の男は女を盾にするような腑抜けしかいないのか!?」
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「赤獅子?」
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「てめえらここで何をしてやがった!!こそこそと隠れやがってまた何か悪だくみでもしてんのか!?」
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「お、お前っ……!!」
「ダイン、相手にしないで」
黒虎を馬鹿にした発言にダインは激高するが、そんな彼をヒカゲは抑えた。彼女も自分が所属するギルドを馬鹿にされて不満は抱いている様子だが、軽々と他所のギルドと揉めことを起こすわけにはいかない。
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