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第64話 黒虎のギルドマスター
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「悪かったね、まさか急に人が入ってくるとは思ってなくて油断してたよ」
「い、いえ……」
「いたた……鼻血が出たよ」
「何だい?あたしの裸に興奮したのかい?」
「こいつに殴られて鼻血が出たんだよ!?」
「……ぷいっ」
部屋の中に入ったレノ達はソファに座らせてもらい、対面の席に女性は座り込む。レノは改めて女性を見て美女と言っても過言ではないほど整った容姿だと気が付く。
女性は赤色の髪の毛を腰元まで伸ばしており、顔立ちも美しく整っていた。体型に関しては胸が非常に大きく、腹だしの服装なので割れた腹筋に目がいく。外見から判断する限りは年齢は20代半ばぐらいだと思われる。
この女性こそが黒虎のギルドマスターであり、元黄金級冒険者として大陸中に名の知れた有名な剣士だった。ずっと森で暮らしていたレノは知らなかったが、この冒険都市内で彼女を知らぬ人間はいないほど有名な人物らしい。
「あんたは初めて見る顔だね?なら一応は名乗っておこうか、私の名前はバルだよ」
「バルさん?」
「まあ、うちのギルドの連中からはギルドマスターと呼ばれることが多いけどね」
「ギルドマスター……まずは私の報告を聞いて欲しい」
レノが自分の名前を名乗る前にヒカゲが口を挟み、彼女の言葉にバルは目つきを鋭くさせて話を伺う。
「あんたがここへ戻ってきたということは例の事件の手掛かりを掴んだのかい?」
「手掛かりというより、もしかしたら犯人を捕まえたかもしれない」
「ええっ!?」
「な、何だって!?」
「犯人って……まさか?」
ヒカゲの発言にダインとハルナは驚く中、レノは嫌な予感がした。ヒカゲは短剣を取り出すと素早い動きでレノの首元に押し当てて彼が動けないようにした。
「そう、君を疑ってる」
「なっ!?」
「ちょ、ちょっと待てよ!!レノが犯人なわけないだろ!?」
「ヒカゲちゃん!!冗談は辞めてよ!?」
「待った待った、いきなり何の話だい?」
レノを連続殺人事件の犯人だと疑うヒカゲにダインとハルナは慌てて抗議するが、話に付いていけないバルは疑問を抱く。この時に部屋の隅で待機していたウルが唸り声を上げる。
「グルルルッ!!」
「動かないで……動いたら君のご主人様も無事じゃ済まない」
「ん?何だいこのワンコロ……って、こいつは白狼種じゃないか!?まだ生き残りがいたのかい!?」
「白狼種?」
ウルを見てバルは驚愕の表情を浮かべ、彼女の告げた「白狼種」という言葉にレノは疑問を抱く。だが、そんな彼にヒカゲは短剣を構えたまま詰め寄る。
「よそ見しないで。下手な動きをしたら切る」
「い、いい加減にしてよ……俺は今日この街に来たばかりなんだよ!!殺人犯なわけないだろ!!」
「そうだよ!!レノ君は人を殺したりなんかしないよ!!」
「こいつのお陰で僕達も命を助けられたんだぞ!?」
「命を助けられた?いったいさっきから何の話をしてるんだい!?」
バルはレノ達のやり取りを見ても訳も分からず、彼女はいらだった様子で机に拳を叩きつける。それだけでレノ達は圧倒され、彼女の迫力にヒカゲさえも冷や汗を流す。
(これが元黄金級冒険者……凄い迫力だ)
まるで大型の魔物を前にしたような威圧感を感じ取り、彼女と比べるとホブゴブリンなど可愛く見えた。あまりの迫力にハルナは涙目になり、ダインは身体を震わせ、ウルでさえも怯えた様に身体を伏せる。
相対しただけでレノはバルが今まで出会った人物の誰よりも恐ろしい存在だと認識した。彼の師匠であるアルと何処か雰囲気が似ており、外見もどことなく面影があるような気がした。
「ヒカゲ、武器を下ろしてまずは一から話しな!!あんたの悪い癖は面倒だからって要件だけを話す癖だよ!!」
「は、はい……」
流石のヒカゲもギルドマスターの迫力に気圧されて素直に従うしかなく、レノの首元に構えていた短剣を下ろす。レノは一安心したが、そんな彼にバルは注意する。
「言っておくけどあんたも変な真似はするんじゃないよ。どういう理由でヒカゲがあんたを殺人事件の犯人だと疑っているのかは知らないけど、もしもあんたが本当に犯人だとしたら……楽に死ねると思わないことだね」
「うっ……!?」
バルはレノに対して警戒心を高め、彼女に睨まれるだけでレノは生きた心地がしない。子供の頃にホブゴブリンと初めて遭遇した時以上の危機感を抱き、冷や汗が止まらない。下手な真似をすれば確実に殺されると思った。
「ヒカゲ、まずはあんたの話を聞かせな。どうしてそこの坊主を例の事件の犯人だと思ったんだい」
「……今回起きた殺人事件の事後現場を調べていた時、この子が現場近くの建物の屋根の上で不審な動きをしていた。だから怪しいと思って捕まえた」
「ちょ、ちょっと待てよ!?それだけでレノを犯人扱いしたのか!?」
「いいから私の話を最後まで聞いて」
ヒカゲがレノを最初に発見した時、彼は建物の屋根の上で不審な動きをしていた。実際の所はレノは人だかりを調べるために建物の上に移動しただけだが、ヒカゲは怪しく思ってレノの元に向かう。
忍者であるヒカゲはレノに気付かれずに彼の背後に移動し、この時に彼女はレノが特別な弓を所持していることに気が付く。彼女はレノが弓の使い手であると知り、更に彼を捕まえた後にダインとハルナから話を聞いてレノがエルフの弟子であると知った。彼がエルフの弟子と聞いた時にヒカゲはある予測を立てる。
「今回の殺人現場にも犯人の手掛かりになる証拠は残ってなかった……目撃者の話を聞いてもいきなり剣を振り回して暴れたと思ったら、首元から血を噴き出して死んだという証言しかなかった」
「急に暴れ出して死んだ……自分で首を切ったわけじゃないんだね?」
「それは有り得ない。目撃者全員が急に首から血が噴き出して死んだと言ってる」
「自殺は有り得ないか……それでどうしてあんたはこの坊主が犯人だと疑ったんだい?」
話を聞く限りでは今回殺された男性とレノは何の関りもないように思えるが、彼女はレノ本人ではなく彼が持っている弓に注目していた。
「昔、とある噂を聞いたことがある。エルフは普通の人間では目で捉えきれない速度で矢を撃つ弓の名手がいるという話……もしもそれが本当だとしたら、今回の被害者はエルフ並の弓の使い手の可能性が高い」
「えっ!?」
「……つまりあんたは死んだ男が弓で殺されたと判断したのかい?」
バルの言葉にヒカゲは頷き、彼女はレノが所有している弓を指差す。レノが所持する弓はエルフが愛用する世界樹製の弓であり、市場では滅多に手に入らない珍しい代物だった。
「目撃者は急に被害者の首から血が噴き出したと証言してるけど、本当は目に留まらない速度で撃ち抜かれた矢が被害者の首を切った可能性がある。そして殺害現場の近くにはエルフの弓を持つ子供が居た……疑うには十分すぎる状況」
「ちょ、ちょっと待ってよ!!俺は犯人じゃないって!!」
「そ、そうだよ!!レノ君はずっと私達と一緒に居たから有り得ないよ!!」
「そもそも矢で首を切り裂くなんてできるわけないだろ!?第一に撃った矢はどうするんだよ!?」
「……この子がいる」
「ウォンッ?」
ヒカゲはソファの傍で横たわるウルを指差し、彼女はレノがどのような行動で殺人を行ったの仮説を立てる。
「い、いえ……」
「いたた……鼻血が出たよ」
「何だい?あたしの裸に興奮したのかい?」
「こいつに殴られて鼻血が出たんだよ!?」
「……ぷいっ」
部屋の中に入ったレノ達はソファに座らせてもらい、対面の席に女性は座り込む。レノは改めて女性を見て美女と言っても過言ではないほど整った容姿だと気が付く。
女性は赤色の髪の毛を腰元まで伸ばしており、顔立ちも美しく整っていた。体型に関しては胸が非常に大きく、腹だしの服装なので割れた腹筋に目がいく。外見から判断する限りは年齢は20代半ばぐらいだと思われる。
この女性こそが黒虎のギルドマスターであり、元黄金級冒険者として大陸中に名の知れた有名な剣士だった。ずっと森で暮らしていたレノは知らなかったが、この冒険都市内で彼女を知らぬ人間はいないほど有名な人物らしい。
「あんたは初めて見る顔だね?なら一応は名乗っておこうか、私の名前はバルだよ」
「バルさん?」
「まあ、うちのギルドの連中からはギルドマスターと呼ばれることが多いけどね」
「ギルドマスター……まずは私の報告を聞いて欲しい」
レノが自分の名前を名乗る前にヒカゲが口を挟み、彼女の言葉にバルは目つきを鋭くさせて話を伺う。
「あんたがここへ戻ってきたということは例の事件の手掛かりを掴んだのかい?」
「手掛かりというより、もしかしたら犯人を捕まえたかもしれない」
「ええっ!?」
「な、何だって!?」
「犯人って……まさか?」
ヒカゲの発言にダインとハルナは驚く中、レノは嫌な予感がした。ヒカゲは短剣を取り出すと素早い動きでレノの首元に押し当てて彼が動けないようにした。
「そう、君を疑ってる」
「なっ!?」
「ちょ、ちょっと待てよ!!レノが犯人なわけないだろ!?」
「ヒカゲちゃん!!冗談は辞めてよ!?」
「待った待った、いきなり何の話だい?」
レノを連続殺人事件の犯人だと疑うヒカゲにダインとハルナは慌てて抗議するが、話に付いていけないバルは疑問を抱く。この時に部屋の隅で待機していたウルが唸り声を上げる。
「グルルルッ!!」
「動かないで……動いたら君のご主人様も無事じゃ済まない」
「ん?何だいこのワンコロ……って、こいつは白狼種じゃないか!?まだ生き残りがいたのかい!?」
「白狼種?」
ウルを見てバルは驚愕の表情を浮かべ、彼女の告げた「白狼種」という言葉にレノは疑問を抱く。だが、そんな彼にヒカゲは短剣を構えたまま詰め寄る。
「よそ見しないで。下手な動きをしたら切る」
「い、いい加減にしてよ……俺は今日この街に来たばかりなんだよ!!殺人犯なわけないだろ!!」
「そうだよ!!レノ君は人を殺したりなんかしないよ!!」
「こいつのお陰で僕達も命を助けられたんだぞ!?」
「命を助けられた?いったいさっきから何の話をしてるんだい!?」
バルはレノ達のやり取りを見ても訳も分からず、彼女はいらだった様子で机に拳を叩きつける。それだけでレノ達は圧倒され、彼女の迫力にヒカゲさえも冷や汗を流す。
(これが元黄金級冒険者……凄い迫力だ)
まるで大型の魔物を前にしたような威圧感を感じ取り、彼女と比べるとホブゴブリンなど可愛く見えた。あまりの迫力にハルナは涙目になり、ダインは身体を震わせ、ウルでさえも怯えた様に身体を伏せる。
相対しただけでレノはバルが今まで出会った人物の誰よりも恐ろしい存在だと認識した。彼の師匠であるアルと何処か雰囲気が似ており、外見もどことなく面影があるような気がした。
「ヒカゲ、武器を下ろしてまずは一から話しな!!あんたの悪い癖は面倒だからって要件だけを話す癖だよ!!」
「は、はい……」
流石のヒカゲもギルドマスターの迫力に気圧されて素直に従うしかなく、レノの首元に構えていた短剣を下ろす。レノは一安心したが、そんな彼にバルは注意する。
「言っておくけどあんたも変な真似はするんじゃないよ。どういう理由でヒカゲがあんたを殺人事件の犯人だと疑っているのかは知らないけど、もしもあんたが本当に犯人だとしたら……楽に死ねると思わないことだね」
「うっ……!?」
バルはレノに対して警戒心を高め、彼女に睨まれるだけでレノは生きた心地がしない。子供の頃にホブゴブリンと初めて遭遇した時以上の危機感を抱き、冷や汗が止まらない。下手な真似をすれば確実に殺されると思った。
「ヒカゲ、まずはあんたの話を聞かせな。どうしてそこの坊主を例の事件の犯人だと思ったんだい」
「……今回起きた殺人事件の事後現場を調べていた時、この子が現場近くの建物の屋根の上で不審な動きをしていた。だから怪しいと思って捕まえた」
「ちょ、ちょっと待てよ!?それだけでレノを犯人扱いしたのか!?」
「いいから私の話を最後まで聞いて」
ヒカゲがレノを最初に発見した時、彼は建物の屋根の上で不審な動きをしていた。実際の所はレノは人だかりを調べるために建物の上に移動しただけだが、ヒカゲは怪しく思ってレノの元に向かう。
忍者であるヒカゲはレノに気付かれずに彼の背後に移動し、この時に彼女はレノが特別な弓を所持していることに気が付く。彼女はレノが弓の使い手であると知り、更に彼を捕まえた後にダインとハルナから話を聞いてレノがエルフの弟子であると知った。彼がエルフの弟子と聞いた時にヒカゲはある予測を立てる。
「今回の殺人現場にも犯人の手掛かりになる証拠は残ってなかった……目撃者の話を聞いてもいきなり剣を振り回して暴れたと思ったら、首元から血を噴き出して死んだという証言しかなかった」
「急に暴れ出して死んだ……自分で首を切ったわけじゃないんだね?」
「それは有り得ない。目撃者全員が急に首から血が噴き出して死んだと言ってる」
「自殺は有り得ないか……それでどうしてあんたはこの坊主が犯人だと疑ったんだい?」
話を聞く限りでは今回殺された男性とレノは何の関りもないように思えるが、彼女はレノ本人ではなく彼が持っている弓に注目していた。
「昔、とある噂を聞いたことがある。エルフは普通の人間では目で捉えきれない速度で矢を撃つ弓の名手がいるという話……もしもそれが本当だとしたら、今回の被害者はエルフ並の弓の使い手の可能性が高い」
「えっ!?」
「……つまりあんたは死んだ男が弓で殺されたと判断したのかい?」
バルの言葉にヒカゲは頷き、彼女はレノが所有している弓を指差す。レノが所持する弓はエルフが愛用する世界樹製の弓であり、市場では滅多に手に入らない珍しい代物だった。
「目撃者は急に被害者の首から血が噴き出したと証言してるけど、本当は目に留まらない速度で撃ち抜かれた矢が被害者の首を切った可能性がある。そして殺害現場の近くにはエルフの弓を持つ子供が居た……疑うには十分すぎる状況」
「ちょ、ちょっと待ってよ!!俺は犯人じゃないって!!」
「そ、そうだよ!!レノ君はずっと私達と一緒に居たから有り得ないよ!!」
「そもそも矢で首を切り裂くなんてできるわけないだろ!?第一に撃った矢はどうするんだよ!?」
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