魔法使いじゃなくて魔弓使いです

カタナヅキ

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第52話 色々な後始末

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――賞金首であるセマカを捕まえることに成功したレノ達は村へと戻り、今回のゴブリンの襲撃の犯人として村長に突き出す。事情を知った村長は危険を冒して犯人を捕まえてくれたレノ達に深く感謝した。


「あ、ありがとうございます!!まさか我々を助けてくれるだけではなく、魔物使いまで捕まえてくれるなんて……」
「いやいや、僕達の手にかかればこんな悪党を捕まえるのなんてわけないですよ!!なあ、二人とも!?」
「う、うん……」
「ダイン君、こういう時は生き生きしてるね」
「クゥ~ンッ……」


村長のお礼の言葉にダインは偉そうにふんぞり返り、そんな彼の態度にレノ達は何とも言えない表情を浮かべる。一応はダインも犯人を捕まえることに貢献しているとはいえ、まるで自分一人の力で捕まえたかのように振舞う彼にレノは呆れてしまう。

捕まえたセマカに関しては縄で縛りつけたまま拘束しており、常に猿轡を咬ませて言葉は喋れないようにしていた。ゴブリンを従える時にセマカは言葉で命令をしていたので口さえ封じていれば魔物に助けを求めることもできないと判断した上でレノは彼の口を常に塞ぐ。


「むぐぐっ……!?」
「冒険者様、この男はどうされますか?」
「う~ん……賞金首なら街の警備兵に突き出すのが一番だけど、今回の事件の犯人だと考えるとやっぱりギルドマスターに先に報告した方がいいかな」
「ギルドマスター?」
「冒険者ギルドで一番偉い人だよ~」
「クゥンッ?」


一般的には賞金首は警備兵に引き渡せば賞金は貰えるが、今回の事件は複数の村が被害を受けており、ダイン達が受けた依頼も関わっている。このような事態の時は冒険者ギルドのギルドマスターに報告して判断を仰がねばならず、セマカを連れて冒険者ギルドに戻る必要があるという。


「こいつを捕まえたからもうゴブリンに村を襲われることはなくなるだろうし……よし、街へ戻って報告しよう」
「やった!!ようやく戻れるよ~!!」
「街か……俺も一緒に行っていいのかな?」
「いや、一緒に来てくれないとこっちが困るんだって!!そもそもこいつを捕まえることができたのもレノのお陰だし、それに街に行かないと賞金も貰えないんだぞ?」
「そうだよ~レノ君も一緒に行こうよ~」


賞金首のセマカの捕縛はレノも協力しており、賞金を受け取る権利がある。そのためには街へ向かう必要があり、ダインは早速出発の準備を整える。


「じゃあ、すぐに向かおう!!」
「え?今から行くの?」
「私達、お金がないからここまで歩いてきたんだ。だから早く出発しないと街に辿り着く前に夜を迎えちゃうよ~」
「申し訳ございません……村で飼育していた馬や牛はゴブリンに殺されたので乗り物はお貸しできません」
「あ、いや、気にしないでください」


街へ向かうには徒歩以外での移動手段がないため、レノ達は早急にセマカを連れて街へ向かう必要があった。だが、セマカは徒歩で街へ向かうと聞くと瞳の奥を怪しく輝かせる――





――村長から食料と水を分けてもらい、レノはダインとハルナが所属する冒険者ギルドが存在する「イチノ」という街へ向かう。徒歩で移動となると数時間は掛かるらしく、到着するとしたら夕方頃になるらしい。


「はあっ、はあっ……み、皆待ってよ~少し休もうよ~」
「たくっ、またかよ……さっき休憩したばっかりだろ」
「まあまあ……少し待ってあげようよ」
「クゥ~ンッ」
「…………」


歩いている途中でハルナが遅れていることに気が付いたレノ達は足を止めると、彼女は疲れた様子で追いかけてきた。他の人間と比べてハルナだけが重そうな鎧を着こんでいるため、移動するだけでも大変そうだった。


「たくっ、だから出発する前にその暑苦しい鎧を着るのは辞めろって言っただろ!!そんなの来てるからすぐに疲れるんだよ!!」
「う~……でもこれがないと騎士っぽくないでしょ?」
「騎士?そういえばハルナは騎士に憧れてるんだっけ……だから鎧を着てるの?」
「うん!!鎧を着てないと騎士っぽくないでしょ?」
「そ、そうかな……」


ハルナが常に鎧を装着しているのは「女騎士」に憧れているからであり、彼女の夢は冒険者として名を上げることで自分が憧れた女騎士の英雄のように名を知らしめたいと思っているからだという。

レノ達がいる国では女性の騎士は認められておらず、そもそも敵対する国もない。女騎士の英雄が存在した時代は幾度も戦争が起きていたが、今の時代では人同士が争い合う事態は滅多に起きない。理由としては魔物の存在が大きい。

昔と比べて魔物が急激に数を増やしており、その対処のために国同士が協力しあうようになった。魔物という脅威に対抗するためにはわだかまりを捨てて全ての国が手を取り合って共に対処する必要があり、そのため世界は長らく戦争は起きていない。皮肉にも魔物という脅威のお陰で国々の平和は保たれているといっても過言ではない。


「女騎士か……あれ?でもハルナは盾しか持ってないよね?どうして騎士を目指してるのに剣を使わないの?」
「はうっ!?」
「こいつ、剣の腕はからっきしなんだよ。それに馬鹿力だから安物の剣だとすぐに壊しちゃうんだ」


ハルナが大盾しか使わない理由は剣士として致命的な弱点があり、ダインによるとハルナは武器を扱う才能がないだけでなく、生半可な武器では彼女の怪力に耐え切れなくてすぐに壊れるらしい。

強化術を発動したレノをも大きく上回る怪力のせいでハルナは武器を扱う場合、耐久力が低い武器はすぐに壊れてしまう。冒険者になったばかりの頃はハルナも色々と武器を試したがすぐに壊れるため、新しい武器を買い直すお金の余裕もない。そこで彼女は巨人族用の頑丈で丈夫な盾を購入した。


「私って武器を買ってもすぐに壊しちゃうから困ってたんだけど、行きつけの武器屋尾の叔父さんが巨人族が扱う盾をただでくれたの。どうせ誰も買わないからあげると言ってくれて、それでずっとこの盾を使ってるの」
「あ、それって大盾じゃなかったんだ」
「まあ、巨人族にとっては普通の盾でも僕達の基準だと馬鹿でかい盾だから大盾でも間違ってないけどな……」


レノはハルナが所有する盾は巨人族用の装備だと初めて知り、人間よりも体格が大きくて力も強い巨人族の盾として作られた装備品ならばハルナの怪力に耐えられるらしい。

大盾を手に入れたハルナは自分の身を守る盾として利用するだけではなく、時には攻撃にも利用する。レノもハルナと戦った時に彼女の戦法に驚かされ、意外とハルナと大盾の相性は良い気がした。


「この盾は私がいくら使っても壊れないから気に入ってるんだ~」
「そうなんだ……でも、武器がないと色々と不便じゃない?」
「だよな、騎士を名乗る癖に盾しか扱えないんじゃ格好悪いぞ」
「はうっ……い、言わないで~」
「……ふんっ」


ハルナはレノとダインの言葉に言い返せずに大盾で顔を隠し、その様子を見ていたセマカは鼻で笑う。拘束されているにも関わらずに小馬鹿にするような態度を取るセマカにダインは睨みつける。


「おい、お前鼻で笑ったな!?捕まってくる癖にデカい態度を取るなよ!!」
「……ふんっ」
「このっ!!」
「ダイン!!落ち着いて!!」
「わ、私は気にしてないから!!」


セマカの態度が気に入らないダインは彼に突っかかろうとするが、それをレノが抑えた。現在のセマカは縄で縛られた状態であり、彼が逃げられないようにハルナが縄を掴んでいた。もしもセマカが逃げようとしてもハルナの怪力には抵抗できないと判断して彼女に縄を任せていた。
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