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第16話 初めての狩猟
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――アルが家を出てから半月が経過し、すっかりレノは一人での生活に慣れてしまった。アルがいない間も鍛錬は怠らず、それどころか彼女がいない間にレノは弓の腕前が上達していた。
「当たれっ!!」
50メートルは離れた的に目掛けてレノは矢を放ち、見事に的の中心に的中させた。少し前まではいくら撃っても見当違いの方向に矢が飛んでしまっていたが、強化術を覚えてから的に当てられるようになった。
「やっぱり師匠の用意した練習用の弓矢、普通に撃とうとしても上手く飛ばせなかったんだよな……」
的当ての練習の際はレノはアルが用意した弓で撃っていたが、実は彼女が用意した弓矢は特別製で普通の弓よりも張力が強すぎて子供の筋力では到底扱えない代物だった。だから今までレノはまともに矢を飛ばすこともままならなかったが、強化術を覚えてからは弓を撃てるようになる。
強化術を発動すれば子供でも大人顔負けの怪力を発揮できるようになるため、そのお陰でレノはアルが用意した弓を撃てるようになった。但し、強化術に頼り過ぎると酷い筋肉痛を引き起こすので練習の際は身体に無理をし過ぎない程度に気を付けねばならない。
「ふうっ、今日はここまでかな……ようやく7、8本は当てられるようになったぞ」
今までは10回撃って1本でも的に当てれば上出来だったが、強化術のお陰でレノは弓の腕前が上達して調子が良い時は10回中に8本は当てられるようになった。この調子で弓の腕を磨けば狩猟の際にも弓を扱える日が来るかもしれない。
「今まで弓で獲物を狩ったことなんて一度もなかったな……」
アルがいない間もレノは狩猟していたが、主に罠猟で動物を捕まえていた。だから弓を使っての狩猟の経験は実は一度もなく、罠以外で獲物を狩る時は主に投石を利用していた。投石の腕前はレノも自信があり、これまでに鳥や兎などの獲物に石を当てて狩ったことがある。
(師匠が居た時は猪や鹿を狩って食べさせてもらったけど、まだ僕一人じゃ大物を狩るなんて無理だろうな……)
今までにレノは弓で狩猟したことはないが、久しぶりに猪や鹿の肉を味わいたいと思った彼は今日初めて弓を使って狩猟をしてみようかと考えた。
「勝手に弓を持ち出すことは師匠から禁止されてるけど……今は師匠もいないし、少しぐらいなら大丈夫だよな」
練習以外でレノは弓を扱うことをアルは禁止していたが、その彼女が不在の今ならば弓での狩猟を試せる。アルとの約束を破ることになるが弓の腕前が上達したことでレノは自分の腕で獲物を狩れるか試してみたいと思った――
――弓と矢筒を用意したレノは森の中を探索して獲物を探し続けた。この際に魔力感知の技術が大いに役立ち、レノは魔力を感知して大物の獲物を探す。
(この先になにかいるな……結構離れてるけど、こっちにはまだ気づいていないみたいだ)
森の中でレノは目を閉じて意識を集中させ、30メートルほど離れた場所に動物がいることを感知した。背中に抱えていた弓を構えるとレノはどのように動くか考える。
(この距離なら当てられるか?いや、ここからだと障害物が多いから無理そうだな……場所を移動するか)
魔力感知で獲物の位置を特定できたとしても弓で狙えるかどうかはその場の状況次第であり、獲物が樹木や茂みに隠れて視界に捉えきれなければ弓で狙うことはできない。だからレノは獲物に勘付かれないように慎重に行動に移った。
30メートル離れている兎に勘付かれないようにレノは体勢を低くして場所を移動し、目元を細めて魔力が感じた場所に視線を凝らす。すると兎のような生き物が茂みから飛び出す光景を確認した。
「キュイッ!!」
「っ……!?」
レノが兎だと思った動物の正体は以前にアルが狩った「一角兎」という名前の魔獣(獣型の魔物の通称)だと判明し、普通の兎と比べても大きな魔力を発していたので最初の魔力感知の時に気付けなかった。
(鹿か猪だと思ったけど一角兎だったのか……いや、最初の獲物としては十分だ)
一角兎の肉は普通の兎肉と比べても美味しく、しかも額の角は滋養強壮の効果のある薬の材料だった。まさか最初に見つけた獲物が魔獣である一角兎だとは思わなかったが、レノは弓に矢を番えて狙いを定める。
(この距離なら当てられる!!)
強化術を発動してレノは筋力を強化した状態で弓を構え、頭に狙いを定めてレノは矢を放とうとした。だが、矢から指を離す寸前に一角兎はレノに振り返る。
「キュイッ!?」
「えっ!?」
レノが矢を放つ寸前に一角兎は跳躍を行う。結果から言えばレノが放った矢は一角兎に当たることはなく、見当違いの方向に飛んでいってしまう。
「キュイイッ!!」
「あっ……逃げられた」
矢を寸前で回避した一角兎は一目散に逃げ出してしまい、それを見たレノは追いかけることを諦めてため息を吐いてへたり込み、絶好の機会だったのに獲物を外してしまったことに落胆する。
(当てられると思ったのに……くそっ、勘のいい奴だな)
一角兎がレノが矢を放つ寸前に気付いていなければ確実に頭を射抜けていた。レノは矢を外した原因は運が悪かったのだと考え、これに懲りずに新しい獲物を探すことにした。
(もう一度だけ魔力感知を試すか?いや、止めておくか……)
魔力感知を立て続けに発動させると精神力が消耗するため、新しい獲物は自分の目で探すことにした。いくら便利な技術でも身体の負担が大きければ多用はできず、次の獲物を探してレノは森の中を歩く――
――最初の獲物に逃げられたあと、レノは川原の方にまで戻って新しい獲物を探す。魚を捕まえる際にレノは川原によく赴き、この場所では兎がよく出没することは知っていた。レノは一角兎を仕留められなかったので今度は普通の兎を狙うために川原へ向かう。
(見つけた!!しかもけっこう大きいぞ!!)
運がいいことにレノは川原で普通の兎よりも身体が一回りは大きい兎を発見し、川原にある岩の陰に隠れた。今度は気付かれないように注意しながら弓を構え、兎の様子を確認した。
(体は大きいけど普通の兎みたいだな。よし、この距離なら当てられる!!)
先ほどの一角兎と違い、今度の獲物は本物の兎だと確かめた後にレノは弓を構えた。最初に失敗したのは魔獣である一角兎が普通の兎よりも勘が鋭かった可能性もあり、それを考慮して今度は何の変哲もない普通の兎を狙う。
(今度こそ当ててやる!!)
強化術を発動させてレノは弓を構えると兎に狙いを定め、今度こそ確実に仕留められる自信はあった。だが、何故か兎はレノが狙いを定めた瞬間に身体を震わせて逃げ出す。
「ッ――!?」
「あっ!?」
今度は矢を放つ前に獲物が逃げられたことにレノは唖然とするが、兎は一目散に茂みへと飛び込んで姿を消す。またもや獲物を取り逃がしたレノは呆然と立ち尽くし、構えていた弓を下ろす。
二度も狩猟に失敗したレノは落胆ではなく困惑していた。最初の一匹目は魔獣の一角兎だったので矢を放つ前に勘付かれたと思ったが、二匹目は普通の兎だったはずなのにまたもや取り逃がしてしまう。
「ど、どうして気付かれたんだ……!?」
矢を放つ前にレノは慎重に行動して決して物音も立てなかった。それなのに一角兎だけではなく、普通の兎にすらも逃げられてしまったことにレノは愕然とする。
(いったい何が駄目だったんだよ……くそっ!!)
結局はレノの初めての弓の狩猟は失敗に終わり、その日は獲物を持ち帰れずに空腹のまま夜を過ごすことになった――
「当たれっ!!」
50メートルは離れた的に目掛けてレノは矢を放ち、見事に的の中心に的中させた。少し前まではいくら撃っても見当違いの方向に矢が飛んでしまっていたが、強化術を覚えてから的に当てられるようになった。
「やっぱり師匠の用意した練習用の弓矢、普通に撃とうとしても上手く飛ばせなかったんだよな……」
的当ての練習の際はレノはアルが用意した弓で撃っていたが、実は彼女が用意した弓矢は特別製で普通の弓よりも張力が強すぎて子供の筋力では到底扱えない代物だった。だから今までレノはまともに矢を飛ばすこともままならなかったが、強化術を覚えてからは弓を撃てるようになる。
強化術を発動すれば子供でも大人顔負けの怪力を発揮できるようになるため、そのお陰でレノはアルが用意した弓を撃てるようになった。但し、強化術に頼り過ぎると酷い筋肉痛を引き起こすので練習の際は身体に無理をし過ぎない程度に気を付けねばならない。
「ふうっ、今日はここまでかな……ようやく7、8本は当てられるようになったぞ」
今までは10回撃って1本でも的に当てれば上出来だったが、強化術のお陰でレノは弓の腕前が上達して調子が良い時は10回中に8本は当てられるようになった。この調子で弓の腕を磨けば狩猟の際にも弓を扱える日が来るかもしれない。
「今まで弓で獲物を狩ったことなんて一度もなかったな……」
アルがいない間もレノは狩猟していたが、主に罠猟で動物を捕まえていた。だから弓を使っての狩猟の経験は実は一度もなく、罠以外で獲物を狩る時は主に投石を利用していた。投石の腕前はレノも自信があり、これまでに鳥や兎などの獲物に石を当てて狩ったことがある。
(師匠が居た時は猪や鹿を狩って食べさせてもらったけど、まだ僕一人じゃ大物を狩るなんて無理だろうな……)
今までにレノは弓で狩猟したことはないが、久しぶりに猪や鹿の肉を味わいたいと思った彼は今日初めて弓を使って狩猟をしてみようかと考えた。
「勝手に弓を持ち出すことは師匠から禁止されてるけど……今は師匠もいないし、少しぐらいなら大丈夫だよな」
練習以外でレノは弓を扱うことをアルは禁止していたが、その彼女が不在の今ならば弓での狩猟を試せる。アルとの約束を破ることになるが弓の腕前が上達したことでレノは自分の腕で獲物を狩れるか試してみたいと思った――
――弓と矢筒を用意したレノは森の中を探索して獲物を探し続けた。この際に魔力感知の技術が大いに役立ち、レノは魔力を感知して大物の獲物を探す。
(この先になにかいるな……結構離れてるけど、こっちにはまだ気づいていないみたいだ)
森の中でレノは目を閉じて意識を集中させ、30メートルほど離れた場所に動物がいることを感知した。背中に抱えていた弓を構えるとレノはどのように動くか考える。
(この距離なら当てられるか?いや、ここからだと障害物が多いから無理そうだな……場所を移動するか)
魔力感知で獲物の位置を特定できたとしても弓で狙えるかどうかはその場の状況次第であり、獲物が樹木や茂みに隠れて視界に捉えきれなければ弓で狙うことはできない。だからレノは獲物に勘付かれないように慎重に行動に移った。
30メートル離れている兎に勘付かれないようにレノは体勢を低くして場所を移動し、目元を細めて魔力が感じた場所に視線を凝らす。すると兎のような生き物が茂みから飛び出す光景を確認した。
「キュイッ!!」
「っ……!?」
レノが兎だと思った動物の正体は以前にアルが狩った「一角兎」という名前の魔獣(獣型の魔物の通称)だと判明し、普通の兎と比べても大きな魔力を発していたので最初の魔力感知の時に気付けなかった。
(鹿か猪だと思ったけど一角兎だったのか……いや、最初の獲物としては十分だ)
一角兎の肉は普通の兎肉と比べても美味しく、しかも額の角は滋養強壮の効果のある薬の材料だった。まさか最初に見つけた獲物が魔獣である一角兎だとは思わなかったが、レノは弓に矢を番えて狙いを定める。
(この距離なら当てられる!!)
強化術を発動してレノは筋力を強化した状態で弓を構え、頭に狙いを定めてレノは矢を放とうとした。だが、矢から指を離す寸前に一角兎はレノに振り返る。
「キュイッ!?」
「えっ!?」
レノが矢を放つ寸前に一角兎は跳躍を行う。結果から言えばレノが放った矢は一角兎に当たることはなく、見当違いの方向に飛んでいってしまう。
「キュイイッ!!」
「あっ……逃げられた」
矢を寸前で回避した一角兎は一目散に逃げ出してしまい、それを見たレノは追いかけることを諦めてため息を吐いてへたり込み、絶好の機会だったのに獲物を外してしまったことに落胆する。
(当てられると思ったのに……くそっ、勘のいい奴だな)
一角兎がレノが矢を放つ寸前に気付いていなければ確実に頭を射抜けていた。レノは矢を外した原因は運が悪かったのだと考え、これに懲りずに新しい獲物を探すことにした。
(もう一度だけ魔力感知を試すか?いや、止めておくか……)
魔力感知を立て続けに発動させると精神力が消耗するため、新しい獲物は自分の目で探すことにした。いくら便利な技術でも身体の負担が大きければ多用はできず、次の獲物を探してレノは森の中を歩く――
――最初の獲物に逃げられたあと、レノは川原の方にまで戻って新しい獲物を探す。魚を捕まえる際にレノは川原によく赴き、この場所では兎がよく出没することは知っていた。レノは一角兎を仕留められなかったので今度は普通の兎を狙うために川原へ向かう。
(見つけた!!しかもけっこう大きいぞ!!)
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(体は大きいけど普通の兎みたいだな。よし、この距離なら当てられる!!)
先ほどの一角兎と違い、今度の獲物は本物の兎だと確かめた後にレノは弓を構えた。最初に失敗したのは魔獣である一角兎が普通の兎よりも勘が鋭かった可能性もあり、それを考慮して今度は何の変哲もない普通の兎を狙う。
(今度こそ当ててやる!!)
強化術を発動させてレノは弓を構えると兎に狙いを定め、今度こそ確実に仕留められる自信はあった。だが、何故か兎はレノが狙いを定めた瞬間に身体を震わせて逃げ出す。
「ッ――!?」
「あっ!?」
今度は矢を放つ前に獲物が逃げられたことにレノは唖然とするが、兎は一目散に茂みへと飛び込んで姿を消す。またもや獲物を取り逃がしたレノは呆然と立ち尽くし、構えていた弓を下ろす。
二度も狩猟に失敗したレノは落胆ではなく困惑していた。最初の一匹目は魔獣の一角兎だったので矢を放つ前に勘付かれたと思ったが、二匹目は普通の兎だったはずなのにまたもや取り逃がしてしまう。
「ど、どうして気付かれたんだ……!?」
矢を放つ前にレノは慎重に行動して決して物音も立てなかった。それなのに一角兎だけではなく、普通の兎にすらも逃げられてしまったことにレノは愕然とする。
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