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第15話 魔力感知
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「腹も減って来たし帰ろうかな……」
いくら目を閉じて待っていても魔力を感知することができず、流石に諦めてレノは帰ろうとした時、今の自分ならば魚も捕まえられるのではないかと思った。
「そういえば師匠、釣りの道具がないときは素手で魚を捕まえてたな。まるで熊みたいだなあの人……」
前に一度だけアルが川を泳ぐ魚を素手で捕まえたことがあり、あの時は人間技じゃないと思ったが今のレノは自分ならばできるのではないかと考えた。強化術を発動すれば人間離れした力が手に入るため、それを生かして魚を捕まえられないかを試す。
川の浅瀬に入ったレノは大きな音を立てないように気を付け、水面を注意深く観察する。自分の元に魚が近付いてきたら素手で掴み取ろうと構えるが、しばらく待っても魚は現れない。
(警戒されてるのかな……だんだん寒くなってきた。やっぱり釣り道具を取ってこようかな)
いくら待っても魚が近付いてくる様子はなく、疲労も残っているせいか徐々にレノの意識が薄れていく。虚ろな瞳でレノは水面に視線を向けていると、一匹の魚がレノの元へと近寄る。
(今だっ!!)
自分の足元に魚が近付いた瞬間を見計らってレノは強化術を発動させ、一瞬だけ身体能力を上昇させて水面に手を突っ込む。派手な水飛沫が上がり、レノは右手を引き抜くと何も掴んでいないことに気付いて落胆した。
「逃げられたか……くそっ、もっと早く動けるようにならないと」
魚を逃したことにレノは悔しく思い、諦めて川から上がろうとした。水中を動き回る魚を捕まえるのは至難の業であり、身体能力を強化させても簡単に捕まえることはできない。魚を捕まえるためには頭で考えてから行動するのではなく、何も考えずに行動を移せるようにならなければいけないのかもしれない。
「……もう少しやってみようかな」
最初は失敗したがもう一度だけ試してみようかとレノは浅瀬に戻って魚を捕まえる練習を行う――
――それから更に数日後、レノは川の浅瀬で魚を掴み取る練習が日課となっていた。最初の頃は魚を捕まえて食べようと思って始めた練習だが、何となくではあるがこの練習をしていくうちに何か掴めそうな感覚を抱く。
魚が近寄るまでの間はレノは何も考えずに水面の様子を観察し、魚に警戒されないように気配を抑える。狩猟の際も気配を隠して獲物を狩るので気配を抑えることは得意だった。
(落ち着け、焦る必要はない。待っていればいつか必ず魚はやってくるんだ)
川を泳ぐ魚を捕まえるためには焦りは禁物であり、魚が近付いた瞬間に考える前に手を出す。そうすれば魚が捕まえられる気がした。
(何も考えるな……魚が来るのを待つだけでいいんだ)
心を無にしてレノは浅瀬で立ち尽くしていると、不意に音が聞こえなくなった。集中力が最大限に高まったせいで雑音が聞えなくなり、川の中を泳ぐ魚の動きが手に取るように分かる。
(――ここだっ!!)
自分の視界には見えないはずの魚が近付いていることに気付いたレノは右手を構え、強化術を発動させて一瞬だけ筋力を限界まで高める。そして自分の足元に近寄ってきた魚に目掛けて右腕を振りかざし、見事に魚を掴み取った。
「やった!!」
初めて魚を素手で捕まえられたことにレノは喜び、事前に用意していた壺の中に魚を入れる。練習を初めてから大分日数は経過したが、遂にレノは素手で魚を捕まえることに成功した。
「初めて捕まえられた……師匠にこれを見せたら驚くぞ!!」
壺の中に捕まえた魚を見てレノは先ほどの感覚を思い出す。集中している間は特に気にも留めなかったが、何故かレノは視界に入る前から自分の元に魚が近寄ってくることに気が付いた。
冷静になって考えてみれば自分が魚が接近していることにどうして気が付いたのかレノは不思議に思い、壺の中に入った魚を覗きながら考え込む。
(どうしてこいつが近付いていることが分かったんだ?俺はいったい何をしたんだ?)
自分の行動を振り返って視界の外にいた魚をどうやって感じ取ったのかを考え、試しにもう一度だけ浅瀬に戻って魚を取る準備を行う。
(確かはさっきはこんな風に……そう、集中していただけだ)
先ほどと同じ手順で魚を捕まえようとレノは水面を見下ろし、気配を抑えてじっと見守り続ける。魚が自ら近寄ってくるまでは決して何も行動を起こさず、黙って捕まえる準備だけを行う。
集中力を高めると徐々に雑音が聞えなくなり、川の中を泳ぐ魚が何処にいるのか分かった。目では見えなくとも魚の存在を感じ取れるようになってレノは目を見開く。
(何だろう。この感覚、忘れてはいけない気がする)
試しに目を閉じたレノは視界が封じられていても川の中を泳ぐ魚の位置を把握し、自分の元に一匹の魚が近付いていることに気が付く。目を閉じたままレノはゆっくりと手を伸ばし、今度は強化術無しで近付いてくる魚に手を伸ばす。
先ほど強化術で身体能力を上昇させて無理やりに魚を掴み取ったが、今回はゆっくりと手を伸ばして魚を捕まえようとする。気配を抑えているせいか魚はレノの手が近付いても気づかず、あっさりと捕まえることができた。
「……捕まえた」
あまりにもあっさりと二匹目の魚を捕まえたことにレノは驚き、自分の手の中に納まった魚を見て身体を震わせる。先ほど感じた感覚を思い出すだけで興奮が抑えきれず、なんとなくではあるがレノは魔力感知のコツを掴んだ気がした。
(これが魔力感知なのか?)
魚を壺の中に放り込んだレノは岩の上に移動し、今度は座禅を組んで集中する。先ほどの感覚を思い出しながら目を閉じると、またもや雑音が聞えなくなって周囲に潜む生物の位置を掴む。
(魚だけじゃない、森の中に隠れている動物の居場所まで分かる)
目を閉じてしばらく集中しているとレノは自分から少し離れた位置の茂みに兎が隠れていることに気が付き、彼が目を開いて兎がいる茂みに視線を向けると、気配を感じ取ったのか慌てて兎は逃げ出した。
「分かる、他の生き物の居場所が……これが魔力を感じ取るってことなのか」
自分が新しい技術を身に着けたことにレノは感動し、今回はアルの手助けもなく自分だけの力で技術を習得しただけに嬉しさも倍増だった。この技術があれば先のように魔物と遭遇する前に危険を察知することができるため、忘れないうちに先ほどの感覚を完璧に掴もうとした。
「よし、もう一度……うっ!?」
もう一度だけ魔力感知を試そうとした瞬間、いきなりレノは頭痛を覚えた。何故か魔力切れを起こした時のように頭が痛くなり、心なしか体力も減っている気がした。
「な、何か急に疲れが……まさか、魔力感知のせいか?」
雑音が聞えなくなるほどに集中力を高める必要があるせいか、魔力感知を発動するとレノは精神力をかなり削られてしまう。その影響で頭痛や疲労にも襲われるらしく、便利だからと言って多用すると取り返しのつかない事態に陥る。
結局はその日は魚を二匹捕まえただけで家に引き返し、疲労が抜けるまでは大人しく身体を休ませるしかなかった。アルの手助け無しで初めてレノが覚えた新しい技術だが、完璧に使いこなせるようになるまで時間はかかりそうだった。
いくら目を閉じて待っていても魔力を感知することができず、流石に諦めてレノは帰ろうとした時、今の自分ならば魚も捕まえられるのではないかと思った。
「そういえば師匠、釣りの道具がないときは素手で魚を捕まえてたな。まるで熊みたいだなあの人……」
前に一度だけアルが川を泳ぐ魚を素手で捕まえたことがあり、あの時は人間技じゃないと思ったが今のレノは自分ならばできるのではないかと考えた。強化術を発動すれば人間離れした力が手に入るため、それを生かして魚を捕まえられないかを試す。
川の浅瀬に入ったレノは大きな音を立てないように気を付け、水面を注意深く観察する。自分の元に魚が近付いてきたら素手で掴み取ろうと構えるが、しばらく待っても魚は現れない。
(警戒されてるのかな……だんだん寒くなってきた。やっぱり釣り道具を取ってこようかな)
いくら待っても魚が近付いてくる様子はなく、疲労も残っているせいか徐々にレノの意識が薄れていく。虚ろな瞳でレノは水面に視線を向けていると、一匹の魚がレノの元へと近寄る。
(今だっ!!)
自分の足元に魚が近付いた瞬間を見計らってレノは強化術を発動させ、一瞬だけ身体能力を上昇させて水面に手を突っ込む。派手な水飛沫が上がり、レノは右手を引き抜くと何も掴んでいないことに気付いて落胆した。
「逃げられたか……くそっ、もっと早く動けるようにならないと」
魚を逃したことにレノは悔しく思い、諦めて川から上がろうとした。水中を動き回る魚を捕まえるのは至難の業であり、身体能力を強化させても簡単に捕まえることはできない。魚を捕まえるためには頭で考えてから行動するのではなく、何も考えずに行動を移せるようにならなければいけないのかもしれない。
「……もう少しやってみようかな」
最初は失敗したがもう一度だけ試してみようかとレノは浅瀬に戻って魚を捕まえる練習を行う――
――それから更に数日後、レノは川の浅瀬で魚を掴み取る練習が日課となっていた。最初の頃は魚を捕まえて食べようと思って始めた練習だが、何となくではあるがこの練習をしていくうちに何か掴めそうな感覚を抱く。
魚が近寄るまでの間はレノは何も考えずに水面の様子を観察し、魚に警戒されないように気配を抑える。狩猟の際も気配を隠して獲物を狩るので気配を抑えることは得意だった。
(落ち着け、焦る必要はない。待っていればいつか必ず魚はやってくるんだ)
川を泳ぐ魚を捕まえるためには焦りは禁物であり、魚が近付いた瞬間に考える前に手を出す。そうすれば魚が捕まえられる気がした。
(何も考えるな……魚が来るのを待つだけでいいんだ)
心を無にしてレノは浅瀬で立ち尽くしていると、不意に音が聞こえなくなった。集中力が最大限に高まったせいで雑音が聞えなくなり、川の中を泳ぐ魚の動きが手に取るように分かる。
(――ここだっ!!)
自分の視界には見えないはずの魚が近付いていることに気付いたレノは右手を構え、強化術を発動させて一瞬だけ筋力を限界まで高める。そして自分の足元に近寄ってきた魚に目掛けて右腕を振りかざし、見事に魚を掴み取った。
「やった!!」
初めて魚を素手で捕まえられたことにレノは喜び、事前に用意していた壺の中に魚を入れる。練習を初めてから大分日数は経過したが、遂にレノは素手で魚を捕まえることに成功した。
「初めて捕まえられた……師匠にこれを見せたら驚くぞ!!」
壺の中に捕まえた魚を見てレノは先ほどの感覚を思い出す。集中している間は特に気にも留めなかったが、何故かレノは視界に入る前から自分の元に魚が近寄ってくることに気が付いた。
冷静になって考えてみれば自分が魚が接近していることにどうして気が付いたのかレノは不思議に思い、壺の中に入った魚を覗きながら考え込む。
(どうしてこいつが近付いていることが分かったんだ?俺はいったい何をしたんだ?)
自分の行動を振り返って視界の外にいた魚をどうやって感じ取ったのかを考え、試しにもう一度だけ浅瀬に戻って魚を取る準備を行う。
(確かはさっきはこんな風に……そう、集中していただけだ)
先ほどと同じ手順で魚を捕まえようとレノは水面を見下ろし、気配を抑えてじっと見守り続ける。魚が自ら近寄ってくるまでは決して何も行動を起こさず、黙って捕まえる準備だけを行う。
集中力を高めると徐々に雑音が聞えなくなり、川の中を泳ぐ魚が何処にいるのか分かった。目では見えなくとも魚の存在を感じ取れるようになってレノは目を見開く。
(何だろう。この感覚、忘れてはいけない気がする)
試しに目を閉じたレノは視界が封じられていても川の中を泳ぐ魚の位置を把握し、自分の元に一匹の魚が近付いていることに気が付く。目を閉じたままレノはゆっくりと手を伸ばし、今度は強化術無しで近付いてくる魚に手を伸ばす。
先ほど強化術で身体能力を上昇させて無理やりに魚を掴み取ったが、今回はゆっくりと手を伸ばして魚を捕まえようとする。気配を抑えているせいか魚はレノの手が近付いても気づかず、あっさりと捕まえることができた。
「……捕まえた」
あまりにもあっさりと二匹目の魚を捕まえたことにレノは驚き、自分の手の中に納まった魚を見て身体を震わせる。先ほど感じた感覚を思い出すだけで興奮が抑えきれず、なんとなくではあるがレノは魔力感知のコツを掴んだ気がした。
(これが魔力感知なのか?)
魚を壺の中に放り込んだレノは岩の上に移動し、今度は座禅を組んで集中する。先ほどの感覚を思い出しながら目を閉じると、またもや雑音が聞えなくなって周囲に潜む生物の位置を掴む。
(魚だけじゃない、森の中に隠れている動物の居場所まで分かる)
目を閉じてしばらく集中しているとレノは自分から少し離れた位置の茂みに兎が隠れていることに気が付き、彼が目を開いて兎がいる茂みに視線を向けると、気配を感じ取ったのか慌てて兎は逃げ出した。
「分かる、他の生き物の居場所が……これが魔力を感じ取るってことなのか」
自分が新しい技術を身に着けたことにレノは感動し、今回はアルの手助けもなく自分だけの力で技術を習得しただけに嬉しさも倍増だった。この技術があれば先のように魔物と遭遇する前に危険を察知することができるため、忘れないうちに先ほどの感覚を完璧に掴もうとした。
「よし、もう一度……うっ!?」
もう一度だけ魔力感知を試そうとした瞬間、いきなりレノは頭痛を覚えた。何故か魔力切れを起こした時のように頭が痛くなり、心なしか体力も減っている気がした。
「な、何か急に疲れが……まさか、魔力感知のせいか?」
雑音が聞えなくなるほどに集中力を高める必要があるせいか、魔力感知を発動するとレノは精神力をかなり削られてしまう。その影響で頭痛や疲労にも襲われるらしく、便利だからと言って多用すると取り返しのつかない事態に陥る。
結局はその日は魚を二匹捕まえただけで家に引き返し、疲労が抜けるまでは大人しく身体を休ませるしかなかった。アルの手助け無しで初めてレノが覚えた新しい技術だが、完璧に使いこなせるようになるまで時間はかかりそうだった。
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※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました!
※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げています。
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