文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~

カタナヅキ

文字の大きさ
上 下
83 / 87
廃墟編

今後

しおりを挟む
「随分と可愛くなったな……よし、プルミンと名付けよう」
「ぷるんっ!?」


レアの言葉にスライムは動揺したように震えるが、この状態では抵抗する事は出来ず、そのままシルフィアに手渡される。


「こいつが悪い事をしていたのは分かってるけど、こんな姿になると哀れに思えてきたな……しばらくは飼ってあげよう」
「分かりました。では、ゴレムに世話をさせましょう」
『ゴロロッ♪』
「ぷるるんっ!?」


セツナ改めプルミンはゴレムの指先に摘ままれ、必死に逃げようとするが抵抗出来ず、そのまま掌の中で抑えられる。彼女(もう性別すら存在するのか怪しいが)が大勢の人間を苦しめたという事実は変わりはないが、この状態では何もできず、最早何もできないだろう。マカセと同様に後で解析の能力を利用して彼女に忠誠を誓わせる事を決め、レアは全員を見渡す。


「それにしても随分と人数が増えたな……それでアルディラだっけ?」
「はい!?」


唐突に名前を呼ばれたアルディラは背筋を伸ばし、レアに見つめられて冷や汗を流す。この状況下で下手なことを言えば自分も炎魔将のように消されると判断した彼女は相手が人間だからと見下すような態度は取らず、従順な飼い犬のようにレアの前に跪く。


「あ、あの……もう悪さはしません!!人間だからって馬鹿にしたりもしませんから、どうか命だけは許してください!?」
「うん、別にいいよ」
「えっ!?本当ですか!?」


あっさりとレアが承諾した事にアルディラは驚いて顔を見上げるが、既にレアはアルディラに対して解析の能力を発動させ、マカセと同様に状態の項目を変化させる。



――アルディラ――

種類:サキュバス

性別:女性

状態:絶対忠誠

レベル:58

魔物スキル:魅了

―――――――――


「こんな感じかな?」
「あ、あの……何を?」
「あれ、マカセの時と違って特に何も変わってないな……文字が違うからかな?」


レアはがルディラの詳細画面を改竄しても特に変化は見当たらず、マカセの時と違って態度も変化していない。最も文字を変化させた事でアルディラの内情に何らかの影響は与えているはずであり、彼女に質問してみた。


「アルディラは俺の事をどう思っている?」
「それは……私が絶対の忠誠を誓う至高の主様です!!」
「あ、良かった。ちゃんと成功したんだ」


迷いもなく自分に対して忠誠の言葉を言い放つアルディラにレアは安心し、マカセの場合は「絶対服従」と書き込んでしまった事で態度が一変してしまったが、アルディラの場合は忠誠を誓っただけで態度に大きな変化はないらしい。


「さてと……いい加減に雨が強くなってきたな。ちょっと教会の方に戻ろうか」
「そうですね。ではすぐに食事の準備をします。貴方達も手伝いなさい」
「な、何だと!?我に給仕の真似をしろというのか!?」
「私は料理はあんまり得意じゃないんだけど……」
「黙りなさい。今後は私が不在の時は貴方達がマスタ―の護衛を行う事態も想定しなければなりません。その場合に備えて貴方達にはマスターの身の回りの世話を手伝ってもらいます。決してマスターに不快感を与えないように気を付けなさい」
「くっ……仕方あるまい」
「ううっ……サキュバスの私に人間の食べる料理なんて作れるのかしら?あ、でも身の回りの世話という事は夜の方も……ひいっ!?」
「……何か言いました?」


サキュバスであるアルディラは人間の精気を好むため、レアの夜の相手を務められるのかと考えた時、シルフィアが目つきを鋭くさせて彼女の首筋に何時の間にか装備した短剣を構える。


「発言には気を付けなさい。その役目はまだ私だってしていな……こほんっ!!と、ともかく、貴方達にはしっかりと家事を覚えて貰いますよ!!」
「お、おい待て!?耳を引っ張るな!!」
「わ、分かったから!!尻尾は掴まないでぇっ……ひゃんっ!?」
「……元気だな」


二人を力尽くでシルフィアは連れ出し、その光景を眺めながらレアは後に続く――




――数時間後、ロボ・ゴーレムによって改装工事が施された教会の建物の中でレアは円卓の机を挟んで全員と向かい合う。無事に治療を終えたイリスも加わっており、今後の行動を話し合う。


「それじゃあ、早速だけど本題に入ろうか。これからどうすればいいのかな?」
「どうすれば……とは?」
「元々は人間が住んでいる街に訪れる予定だったけど、はっきり言ってマカセ達を連れて行くのは不味いでしょ」
「むうっ……申し訳ない」
「まあ、私達は普通に賞金首として指名手配されているでしょうね……」
「魔王軍は人間にかなり恨まれていますからね。それに一番の問題は魔王軍の最後の魔将がどうするかですよ」
「イルミナか……確かに奴を敵に回すのは不味いな」


当初の目的ではレアは街に赴いて衣食住を確保し、帝都に存在する他の勇者と合流するつもりだった。しかし、勇者と遭遇する前にレアは魔王軍の幹部の3人を配下に加え、厄介な炎魔将と霧魔将を倒してしまう。
しおりを挟む
感想 81

あなたにおすすめの小説

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

処理中です...