77 / 87
廃墟編
戦う決意
しおりを挟む
「頑張れイリス……あと少しだ」
『ゴロロッ!!』
教会の建物に到着すると、ゴレムが扉を押し開いて中に移動させる。生憎と彼には二人を温める手段はなく、二人のを建物内に移動させる事しか出来ない。
「ゴレム……扉を塞いでくれ、誰も入らないようにしてくれ」
『ゴロンッ!!』
レアの言葉にゴレムは扉を塞ぐと、閂を締めて更に建物を建設する際に利用する特殊な接着剤で扉の隙間を固定する。その後に彼は室内の家具を運び出し、窓も同様に塞ぐ。
「しばらくは時間を稼げそうだな……イリス!!」
「うっ……」
声を掛ければ反応はあるが、既にイリスは目を閉じたまま起き上がろうとはせず、一刻も早く彼女を温めなければならない。レアは解析の能力を利用して彼女の状態を変化させようと考えたが、それでは根本的な解決にはならない。
「毛布を……」
アイテムボックスに保管していた毛布の存在を思い出し、レアはリスト画面を開いて能力を発動させ、大量の毛布を異空間から取り出す。それらをイリスの身体に被せて自分も纏い、少しでも暖を取ろうとする。しかし、気温は徐々に下がり続け、このままでは凍死するのは時間の問題だった。
「どうすればいいんだよ……」
あまりのレアの意識も朦朧とするが、ここで眠ったら確実に死んでしまう。最初に考えたのはストーブなど暖房器具を作り出して部屋を暖めようかと考えたが、能力でストーブを作り出したとしても温まるまでに時間が掛かる。その間にイリスの身体が持つのか分からず、レアは方法を考える。
「落ち着け……俺一人ならどうにでもなる。イリスを安全な場所へ……安全な場所?」
レアは自分のリスト画面に視線を向け、アイテムボックスの存在に気付く。このスキルは異空間へ物体を収納できる能力であり、送り込まれた物体は時間の概念を受けずに取り出す事が出来る。レアは文字変換の能力を発動させ、ステータス画面を開いて能力を発動させた。
「ゴレム!!焚火を付けろ!!何でもいいから燃やすんだ!!」
『ゴロッ!?』
「早くしろ!!建物が燃えてもいい!!何もかもが凍り付く前に燃やせ!!」
震える指で画面を擦りながらレアはゴレムに命令を下し、主人の言葉に戸惑いながらもゴレムは燃える物を探し、そして木造製の家具を破壊して焚火の準備を行う。その間にもレアは頭を抑えながら「アイテムボックス」の説明文を改竄する。
「よし……これで問題ないはずだ」
『アイテムボックス――異空間にあらゆる物体を収納する魔法。生物を収納しても問題はない。制限重量は「無限」 使用条件:特になし』
画面の文章を確認し、レアはイリスの身体を抱え、彼女が完全に凍り付く前にアイテムボックスを発動させて異空間に収納した。
「待っててねイリス……必ず後で救うから」
「れ、あ……?」
異空間に彼女の身体を回収する寸前、一瞬だけイリスが目を開くが、直後に彼女の身体は黒色の渦巻きに飲み込まれて消えてしまう。それを確認したレアは毛布を脱ぎ払い、ゴレムが作り出した焚火に近づく。
『ゴロロッ』
「よくやったゴレム……これであったまる」
焚火で暖を取りながらレアは自分のステータス画面を開き、準備を行う。十分に温まると今度はスキルの画面を開き、SPを消費してこの状況に役立ちそうなスキルを習得した。
「これがいいな」
『防寒――寒気に対して強い耐性を得る』
即座にSPを消費してスキルを習得すると、先程までの寒さが一気に薄まる。それでもある程度の冷気にしか耐えきれないらしく、定期的に状態の項目を健康に変化させなければ身体が持たない。
「もう我慢の限界だ……シルフィアが戻ってくる前に俺が片付ける」
『ゴロッ!?』
このまま黙ってシルフィアが戻るのを待つ事は出来ず、レアは自分達を追い詰めた魔将達の存在を思い出し、自分の手で決着を着けるために扉の前に移動すると、勢いよく右足を振りかぶり、扉を蹴り飛ばす。
「うおらぁっ!!」
派手な倒壊音が響き渡り、蹴りつけられた扉がゴレムの接着剤を引き剥がして外部に倒れこみ、レアは鼻息を荒くしながら外へ移動する。建物の外に移動した瞬間、凍てつくような冷気が彼の身体を襲うが、烈火の如く怒るレアにとっては気にもせずに怒鳴りつけた。
「出てこい!!馬鹿魔将どもっ!!」
生まれて初めて出したのではないかという程の大声を放ち、レアは街道へと移動して人影を探す。マカセの情報で氷魔将は人間に変化出来るスライムだと聞いているが、この街は既に人間は住んでおらず、人影が見つかったら必然的にその相手が氷魔将という事になる。
「こそこそと隠れてない姿を現せ!!魔将というのは卑怯者ばかりなのか!?ビゾンのようにぶった押してやるよ!!」
怒り狂ったレアは危険を顧みずに怒鳴り散らしながら街を移動し、怒りを保つ事で寒さを誤魔化しながら氷魔将の姿を探す。
『ゴロロッ!!』
教会の建物に到着すると、ゴレムが扉を押し開いて中に移動させる。生憎と彼には二人を温める手段はなく、二人のを建物内に移動させる事しか出来ない。
「ゴレム……扉を塞いでくれ、誰も入らないようにしてくれ」
『ゴロンッ!!』
レアの言葉にゴレムは扉を塞ぐと、閂を締めて更に建物を建設する際に利用する特殊な接着剤で扉の隙間を固定する。その後に彼は室内の家具を運び出し、窓も同様に塞ぐ。
「しばらくは時間を稼げそうだな……イリス!!」
「うっ……」
声を掛ければ反応はあるが、既にイリスは目を閉じたまま起き上がろうとはせず、一刻も早く彼女を温めなければならない。レアは解析の能力を利用して彼女の状態を変化させようと考えたが、それでは根本的な解決にはならない。
「毛布を……」
アイテムボックスに保管していた毛布の存在を思い出し、レアはリスト画面を開いて能力を発動させ、大量の毛布を異空間から取り出す。それらをイリスの身体に被せて自分も纏い、少しでも暖を取ろうとする。しかし、気温は徐々に下がり続け、このままでは凍死するのは時間の問題だった。
「どうすればいいんだよ……」
あまりのレアの意識も朦朧とするが、ここで眠ったら確実に死んでしまう。最初に考えたのはストーブなど暖房器具を作り出して部屋を暖めようかと考えたが、能力でストーブを作り出したとしても温まるまでに時間が掛かる。その間にイリスの身体が持つのか分からず、レアは方法を考える。
「落ち着け……俺一人ならどうにでもなる。イリスを安全な場所へ……安全な場所?」
レアは自分のリスト画面に視線を向け、アイテムボックスの存在に気付く。このスキルは異空間へ物体を収納できる能力であり、送り込まれた物体は時間の概念を受けずに取り出す事が出来る。レアは文字変換の能力を発動させ、ステータス画面を開いて能力を発動させた。
「ゴレム!!焚火を付けろ!!何でもいいから燃やすんだ!!」
『ゴロッ!?』
「早くしろ!!建物が燃えてもいい!!何もかもが凍り付く前に燃やせ!!」
震える指で画面を擦りながらレアはゴレムに命令を下し、主人の言葉に戸惑いながらもゴレムは燃える物を探し、そして木造製の家具を破壊して焚火の準備を行う。その間にもレアは頭を抑えながら「アイテムボックス」の説明文を改竄する。
「よし……これで問題ないはずだ」
『アイテムボックス――異空間にあらゆる物体を収納する魔法。生物を収納しても問題はない。制限重量は「無限」 使用条件:特になし』
画面の文章を確認し、レアはイリスの身体を抱え、彼女が完全に凍り付く前にアイテムボックスを発動させて異空間に収納した。
「待っててねイリス……必ず後で救うから」
「れ、あ……?」
異空間に彼女の身体を回収する寸前、一瞬だけイリスが目を開くが、直後に彼女の身体は黒色の渦巻きに飲み込まれて消えてしまう。それを確認したレアは毛布を脱ぎ払い、ゴレムが作り出した焚火に近づく。
『ゴロロッ』
「よくやったゴレム……これであったまる」
焚火で暖を取りながらレアは自分のステータス画面を開き、準備を行う。十分に温まると今度はスキルの画面を開き、SPを消費してこの状況に役立ちそうなスキルを習得した。
「これがいいな」
『防寒――寒気に対して強い耐性を得る』
即座にSPを消費してスキルを習得すると、先程までの寒さが一気に薄まる。それでもある程度の冷気にしか耐えきれないらしく、定期的に状態の項目を健康に変化させなければ身体が持たない。
「もう我慢の限界だ……シルフィアが戻ってくる前に俺が片付ける」
『ゴロッ!?』
このまま黙ってシルフィアが戻るのを待つ事は出来ず、レアは自分達を追い詰めた魔将達の存在を思い出し、自分の手で決着を着けるために扉の前に移動すると、勢いよく右足を振りかぶり、扉を蹴り飛ばす。
「うおらぁっ!!」
派手な倒壊音が響き渡り、蹴りつけられた扉がゴレムの接着剤を引き剥がして外部に倒れこみ、レアは鼻息を荒くしながら外へ移動する。建物の外に移動した瞬間、凍てつくような冷気が彼の身体を襲うが、烈火の如く怒るレアにとっては気にもせずに怒鳴りつけた。
「出てこい!!馬鹿魔将どもっ!!」
生まれて初めて出したのではないかという程の大声を放ち、レアは街道へと移動して人影を探す。マカセの情報で氷魔将は人間に変化出来るスライムだと聞いているが、この街は既に人間は住んでおらず、人影が見つかったら必然的にその相手が氷魔将という事になる。
「こそこそと隠れてない姿を現せ!!魔将というのは卑怯者ばかりなのか!?ビゾンのようにぶった押してやるよ!!」
怒り狂ったレアは危険を顧みずに怒鳴り散らしながら街を移動し、怒りを保つ事で寒さを誤魔化しながら氷魔将の姿を探す。
4
お気に入りに追加
1,676
あなたにおすすめの小説

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!
あるちゃいる
ファンタジー
山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。
気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。
不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。
どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。
その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。
『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。
が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。
そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。
そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。
⚠️超絶不定期更新⚠️

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。
彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。
最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。
一種の童話感覚で物語は語られます。
童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?
歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。
それから数十年が経ち、気づけば38歳。
のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。
しかしーー
「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」
突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。
これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。
※書籍化のため更新をストップします。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明
まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。
そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。
その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる