文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~

カタナヅキ

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廃墟編

戦う決意

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「頑張れイリス……あと少しだ」
『ゴロロッ!!』


教会の建物に到着すると、ゴレムが扉を押し開いて中に移動させる。生憎と彼には二人を温める手段はなく、二人のを建物内に移動させる事しか出来ない。


「ゴレム……扉を塞いでくれ、誰も入らないようにしてくれ」
『ゴロンッ!!』


レアの言葉にゴレムは扉を塞ぐと、閂を締めて更に建物を建設する際に利用する特殊な接着剤で扉の隙間を固定する。その後に彼は室内の家具を運び出し、窓も同様に塞ぐ。


「しばらくは時間を稼げそうだな……イリス!!」
「うっ……」


声を掛ければ反応はあるが、既にイリスは目を閉じたまま起き上がろうとはせず、一刻も早く彼女を温めなければならない。レアは解析の能力を利用して彼女の状態を変化させようと考えたが、それでは根本的な解決にはならない。


「毛布を……」


アイテムボックスに保管していた毛布の存在を思い出し、レアはリスト画面を開いて能力を発動させ、大量の毛布を異空間から取り出す。それらをイリスの身体に被せて自分も纏い、少しでも暖を取ろうとする。しかし、気温は徐々に下がり続け、このままでは凍死するのは時間の問題だった。


「どうすればいいんだよ……」


あまりのレアの意識も朦朧とするが、ここで眠ったら確実に死んでしまう。最初に考えたのはストーブなど暖房器具を作り出して部屋を暖めようかと考えたが、能力でストーブを作り出したとしても温まるまでに時間が掛かる。その間にイリスの身体が持つのか分からず、レアは方法を考える。


「落ち着け……俺一人ならどうにでもなる。イリスを安全な場所へ……安全な場所?」


レアは自分のリスト画面に視線を向け、アイテムボックスの存在に気付く。このスキルは異空間へ物体を収納できる能力であり、送り込まれた物体は時間の概念を受けずに取り出す事が出来る。レアは文字変換の能力を発動させ、ステータス画面を開いて能力を発動させた。


「ゴレム!!焚火を付けろ!!何でもいいから燃やすんだ!!」
『ゴロッ!?』
「早くしろ!!建物が燃えてもいい!!何もかもが凍り付く前に燃やせ!!」


震える指で画面を擦りながらレアはゴレムに命令を下し、主人の言葉に戸惑いながらもゴレムは燃える物を探し、そして木造製の家具を破壊して焚火の準備を行う。その間にもレアは頭を抑えながら「アイテムボックス」の説明文を改竄する。


「よし……これで問題ないはずだ」
『アイテムボックス――異空間にあらゆる物体を収納する魔法。生物を収納しても問題はない。制限重量は「無限」 使用条件:特になし』


画面の文章を確認し、レアはイリスの身体を抱え、彼女が完全に凍り付く前にアイテムボックスを発動させて異空間に収納した。


「待っててねイリス……必ず後で救うから」
「れ、あ……?」


異空間に彼女の身体を回収する寸前、一瞬だけイリスが目を開くが、直後に彼女の身体は黒色の渦巻きに飲み込まれて消えてしまう。それを確認したレアは毛布を脱ぎ払い、ゴレムが作り出した焚火に近づく。


『ゴロロッ』
「よくやったゴレム……これであったまる」


焚火で暖を取りながらレアは自分のステータス画面を開き、準備を行う。十分に温まると今度はスキルの画面を開き、SPを消費してこの状況に役立ちそうなスキルを習得した。


「これがいいな」
『防寒――寒気に対して強い耐性を得る』


即座にSPを消費してスキルを習得すると、先程までの寒さが一気に薄まる。それでもある程度の冷気にしか耐えきれないらしく、定期的に状態の項目を健康に変化させなければ身体が持たない。


「もう我慢の限界だ……シルフィアが戻ってくる前に俺が片付ける」
『ゴロッ!?』


このまま黙ってシルフィアが戻るのを待つ事は出来ず、レアは自分達を追い詰めた魔将達の存在を思い出し、自分の手で決着を着けるために扉の前に移動すると、勢いよく右足を振りかぶり、扉を蹴り飛ばす。


「うおらぁっ!!」


派手な倒壊音が響き渡り、蹴りつけられた扉がゴレムの接着剤を引き剥がして外部に倒れこみ、レアは鼻息を荒くしながら外へ移動する。建物の外に移動した瞬間、凍てつくような冷気が彼の身体を襲うが、烈火の如く怒るレアにとっては気にもせずに怒鳴りつけた。


「出てこい!!馬鹿魔将どもっ!!」


生まれて初めて出したのではないかという程の大声を放ち、レアは街道へと移動して人影を探す。マカセの情報で氷魔将は人間に変化出来るスライムだと聞いているが、この街は既に人間は住んでおらず、人影が見つかったら必然的にその相手が氷魔将という事になる。


「こそこそと隠れてない姿を現せ!!魔将というのは卑怯者ばかりなのか!?ビゾンのようにぶった押してやるよ!!」


怒り狂ったレアは危険を顧みずに怒鳴り散らしながら街を移動し、怒りを保つ事で寒さを誤魔化しながら氷魔将の姿を探す。
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