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廃墟編
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「まあ、旗の事はともかく、これからどうしようか。こんな様子だと人も戻ってくるとは思えないし……」
「そうですね……残念ですけど次の街に移動しましょう。そこに向かえばきっと安全ですから」
「分かりました。では、私が先行して街に向かいます。御二人はここで待機して……この反応は?」
会話の最中にシルフィアは表情を一変させて上空を見上げ、彼女の態度に不思議に思ったルノとイリスは彼女の見つめる方向に視線を向けると、上空から近づいてくる影を発見した。
「何だ?鳥?」
「いえ、あれは……!?」
「高速接近反応……来ます!!」
上空から接近する影は徐々に大きさを増し、やがて地上に向けて降下すると、レア達の前に背中に翼を生やした男性が出現する。外見は20代前半の美しい顔立ちをした男であり、全身を黒色で統一した衣装を纏っていた。背中には蝙蝠を想像させる翼を生やし、レア達に視線を向ける。
「貴様ら……何者だ」
「何者って……」
「こ、この男……吸血鬼ですよ!!」
「吸血鬼……あの空想上の生物ですか?」
イリスは男性の姿を見て慌ててレアの背後に隠れ、彼女の言葉を聞いたシルフィアは訝し気な表情を抱く。その間にも吸血鬼と呼ばれた男性は周囲を確認し、そして急所を撃ち抜かれたゴブリンの姿を見て険しいを表情を浮かべた。
「これはお前達の仕業か?」
「な、何なんですか貴方!?私達に何か用があるんですか?」
「質問に答えろっ!!」
吸血鬼が怒声を発しながらレア達に近づこうとすると、咄嗟にシルフィアが前に出て彼の行動を制止する。そんな彼女に対して吸血鬼は視線を向けると、あまりの美貌に目を見開く。
「マスターに近寄らないで下さい。それ以上の接近は敵対行為と見なしますよ」
「ほうっ……これは中々の美しさだ。気に入ったぞ」
「……話を聞いているのですか?」
「気が強い女だ。だが、悪くはない」
シルフィアの目の前まで近づいた吸血鬼は彼女の顎に手を伸ばそうとするが、その行為に不快感を露わにした彼女は手を振り払う。そんな彼女の反応に吸血鬼は笑みを浮かべ、シルフィアに顔を近づける。
「我に従え」
「あっ……いけない!!その男の目を見ちゃ駄目です!!」
「えっ?」
イリスは吸血鬼の行動の意図に気付き、慌ててシルフィアに注意の言葉を掛ける。しかし、既に吸血鬼は瞳を怪しく光り輝かせ、イリスの瞳を捉える。
「さあっ……誓いの口付けを行うのだ」
「…………」
「不味いです!!吸血鬼は魅了の能力を持っているんです!!瞳を見たら操られますよ!!」
「えっ!?」
吸血鬼はシルフィアの顔に手を伸ばし、そのまま引き寄せて彼女に口付けしようとする。そんな彼の行動に咄嗟にレアは腰の拳銃を引き抜こうとした時、鈍い音が響く。
「ぐほぉっ!?」
「その汚い顔を私に近づけないで下さい」
「えっ……?」
吸血鬼の顎にシルフィアの掌底が叩き込まれ、舌を噛んだのか口元から血を流しながら吸血鬼は後退り、信じられないという表情を浮かべて口元を抑える。自分の「魅了」の能力が効かない事に動揺を隠せず、一方でシルフィアは不機嫌な表情を抱いたまま見下ろす。
「いきなり女性に顔を近づけるとは失礼な男ですね。警告は行いました、ここからは敵対生物と判断して対処します」
「ば、馬鹿な!!どうして我の魅了が効かない!?」
「神人は洗脳に対する耐性を持っています。貴方の場合は瞳の光を浴びせる事で対象の精神を刺激するようですが、私には効きません」
「な、なにを言っている……それにこの力、貴様何者だ!?」
自分の能力が通じないシルフィアに吸血鬼は動揺を隠せず、その一方でシルフィアは両腕を構えて迎撃態勢に入り、両腕の紋様を輝かせる。
「く、くそっ……人間如きがこの我に傷をっ!!」
「気を付けてください!!吸血鬼は他にも危険な能力を……」
「問題ありません。これより、格闘モードに移行します」
口元から血を流しながらも吸血鬼はシルフィアに向けて両手を構え、爪を刃物のように鋭利に伸ばして身構える。しかし、そんな相手に対してシルフィアは怖気ずに向かい合い、プロボクサーのようにリズムを取りながら拳を構えた。
「切り刻んでやる!!」
「甘いっ!!」
「ぐふぅっ!?」
「おおっ」
不用意に右腕を振り下ろしてきた吸血鬼に対し、シルフィアは身体を反らして爪を回避すると、相手の腹部に拳を叩きこむ。予想外の衝撃に吸血鬼は苦悶の表情を浮かべ、更にシルフィアは相手の腿に蹴りを叩きつける。
「そこっ!!」
「ぎゃあっ!?」
彼女の蹴りが撃ち込まれた瞬間、吸血鬼は体勢を崩して跪いてしまい、その隙を逃さずにシルフィアは片足を上げ、勢いよく頭部に踵を打ち込む。
「これで終わりですっ!!」
「ぐええっ!?」
容赦のない踵落としが吸血鬼に決まり、相手は鼻血を噴き出しながら地面に倒れこんだ。
「そうですね……残念ですけど次の街に移動しましょう。そこに向かえばきっと安全ですから」
「分かりました。では、私が先行して街に向かいます。御二人はここで待機して……この反応は?」
会話の最中にシルフィアは表情を一変させて上空を見上げ、彼女の態度に不思議に思ったルノとイリスは彼女の見つめる方向に視線を向けると、上空から近づいてくる影を発見した。
「何だ?鳥?」
「いえ、あれは……!?」
「高速接近反応……来ます!!」
上空から接近する影は徐々に大きさを増し、やがて地上に向けて降下すると、レア達の前に背中に翼を生やした男性が出現する。外見は20代前半の美しい顔立ちをした男であり、全身を黒色で統一した衣装を纏っていた。背中には蝙蝠を想像させる翼を生やし、レア達に視線を向ける。
「貴様ら……何者だ」
「何者って……」
「こ、この男……吸血鬼ですよ!!」
「吸血鬼……あの空想上の生物ですか?」
イリスは男性の姿を見て慌ててレアの背後に隠れ、彼女の言葉を聞いたシルフィアは訝し気な表情を抱く。その間にも吸血鬼と呼ばれた男性は周囲を確認し、そして急所を撃ち抜かれたゴブリンの姿を見て険しいを表情を浮かべた。
「これはお前達の仕業か?」
「な、何なんですか貴方!?私達に何か用があるんですか?」
「質問に答えろっ!!」
吸血鬼が怒声を発しながらレア達に近づこうとすると、咄嗟にシルフィアが前に出て彼の行動を制止する。そんな彼女に対して吸血鬼は視線を向けると、あまりの美貌に目を見開く。
「マスターに近寄らないで下さい。それ以上の接近は敵対行為と見なしますよ」
「ほうっ……これは中々の美しさだ。気に入ったぞ」
「……話を聞いているのですか?」
「気が強い女だ。だが、悪くはない」
シルフィアの目の前まで近づいた吸血鬼は彼女の顎に手を伸ばそうとするが、その行為に不快感を露わにした彼女は手を振り払う。そんな彼女の反応に吸血鬼は笑みを浮かべ、シルフィアに顔を近づける。
「我に従え」
「あっ……いけない!!その男の目を見ちゃ駄目です!!」
「えっ?」
イリスは吸血鬼の行動の意図に気付き、慌ててシルフィアに注意の言葉を掛ける。しかし、既に吸血鬼は瞳を怪しく光り輝かせ、イリスの瞳を捉える。
「さあっ……誓いの口付けを行うのだ」
「…………」
「不味いです!!吸血鬼は魅了の能力を持っているんです!!瞳を見たら操られますよ!!」
「えっ!?」
吸血鬼はシルフィアの顔に手を伸ばし、そのまま引き寄せて彼女に口付けしようとする。そんな彼の行動に咄嗟にレアは腰の拳銃を引き抜こうとした時、鈍い音が響く。
「ぐほぉっ!?」
「その汚い顔を私に近づけないで下さい」
「えっ……?」
吸血鬼の顎にシルフィアの掌底が叩き込まれ、舌を噛んだのか口元から血を流しながら吸血鬼は後退り、信じられないという表情を浮かべて口元を抑える。自分の「魅了」の能力が効かない事に動揺を隠せず、一方でシルフィアは不機嫌な表情を抱いたまま見下ろす。
「いきなり女性に顔を近づけるとは失礼な男ですね。警告は行いました、ここからは敵対生物と判断して対処します」
「ば、馬鹿な!!どうして我の魅了が効かない!?」
「神人は洗脳に対する耐性を持っています。貴方の場合は瞳の光を浴びせる事で対象の精神を刺激するようですが、私には効きません」
「な、なにを言っている……それにこの力、貴様何者だ!?」
自分の能力が通じないシルフィアに吸血鬼は動揺を隠せず、その一方でシルフィアは両腕を構えて迎撃態勢に入り、両腕の紋様を輝かせる。
「く、くそっ……人間如きがこの我に傷をっ!!」
「気を付けてください!!吸血鬼は他にも危険な能力を……」
「問題ありません。これより、格闘モードに移行します」
口元から血を流しながらも吸血鬼はシルフィアに向けて両手を構え、爪を刃物のように鋭利に伸ばして身構える。しかし、そんな相手に対してシルフィアは怖気ずに向かい合い、プロボクサーのようにリズムを取りながら拳を構えた。
「切り刻んでやる!!」
「甘いっ!!」
「ぐふぅっ!?」
「おおっ」
不用意に右腕を振り下ろしてきた吸血鬼に対し、シルフィアは身体を反らして爪を回避すると、相手の腹部に拳を叩きこむ。予想外の衝撃に吸血鬼は苦悶の表情を浮かべ、更にシルフィアは相手の腿に蹴りを叩きつける。
「そこっ!!」
「ぎゃあっ!?」
彼女の蹴りが撃ち込まれた瞬間、吸血鬼は体勢を崩して跪いてしまい、その隙を逃さずにシルフィアは片足を上げ、勢いよく頭部に踵を打ち込む。
「これで終わりですっ!!」
「ぐええっ!?」
容赦のない踵落としが吸血鬼に決まり、相手は鼻血を噴き出しながら地面に倒れこんだ。
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