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廃墟編
街の探索
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「酷い有様だな……本当に生き残った人はいないのか」
「今現在もドローンで調査を行っていますが、生体反応は確認されていません」
「うわ、なんですかあれ!?新種の鳥型の魔物ですか!?」
「いえ、あれが私の作り出したドローンです」
イリスが上空を移動する物体に驚きの声を上げ、レアも視線を向けると鳥類の「羽」を想像させる機翼を取り付けた球体型のドローンが飛んでいるのを確認し、複数のドローンが街中を巡回していた。これらのドローンも全てシルフィアがナノマシンと万能金属で作り出した物らしく、現在も生存者の調査を行っているらしい。
「ドローンの映像は俺達も見る事が出来る?」
「可能です。腕輪に命じれば全てのドローンの映像が映し出されます」
「命令すればいいの?」
「はい」
レアは自分の右腕の腕輪に視線を向け、腕を差し出して上空を浮揚するドローンの映像を表示方法を尋ねる
「えっと……どう命令すればいいのかな?」
「口に出さずとも脳波を感知して発動させる事も出来ますよ」
「そうなのか。それなら……おおっ!?」
頭の中で映像を表示させるようにレアが念じると、腕輪が光り輝き、表面にテレビ画面を想像させる紋様が浮き上がる。その直後に紋様から先程のシルフィアの表示させた映像が展開され、上空から撮影されているレア達の姿が表示された。
「あ、私達が映ってますよ。これはあそこにいる「どろーん」という子の視界なんですか?」
「その通りです。ちなみに画面を振れれば別方向の映像にも切り替えられますよ」
「スマートフォンみたいだな……あ、本当だ」
空中に映し出された映像にレアが指を触れると、確かに画面の角度が変化し、別方向の映像を映し出す。前後左右上下のどの角度の映像も全て記録されているらしく、シルフィアによると巻き戻しやスロー再生の機能も完備されているという。
「念じればドローンが撮影した映像も表示されます。また、別の場所で撮影を行っているドローンの映像にも切り替えられますよ」
「これは便利だな。俺もドローンを作り出せるの?」
「可能ではありますが……ドローンの生成には魔素を必要とします。レア様に分け与えたナノマシンに私が魔素を注入しない限り、無制限に作り出す事は難しいでしょう」
「あ、そうか」
シルフィアから切り離されたナノマシンに関しては魔素の残量は「無限」ではなく、事前に彼女が送り込んだ分の魔素しか保存されていない。つまりレアがナノマシンを多用すると保存されていた魔素が枯渇し、その機能を失う事になる。そうならないようにシルフィアが定期的に魔素を注入する必要があり、彼女のように無制限にナノマシンを扱えるわけではない。
「街を探索しているドローンの数はいくつ?」
「142個です。その内の30は街を取り囲む防壁を探索させているのですが……奇妙な物を発見しました」
「奇妙な物?どんなの?」
「映像を切り替えます」
レアの質問にシルフィアは空中に表示されている画面に触れると、自動的に映像が切り替わる。どうやら今度は街の外を浮揚しているドローンの映像らしく、北側に存在する城門に大量のゴブリンと人間の兵士の死骸が散乱していた。
「この場所でどうやら激しい戦闘があったようです。恐らく、ゴブリンはここから侵入を果たしたのでしょう」
「うっ……酷いな」
「地獄ですね……」
無数の人間とゴブリンの死骸を確認してレアは口を抑え、人の死体を見るのは初めてではないが衝撃を隠せない。しかし、シルフィアは特に顔色も変えずに画面を操作し、死体の山の中に存在する物を示す。
「御二人はこちらの旗をご存知ですか?」
「旗?」
「なんですかこれ……赤色の髑髏?」
「この旗は街の至る箇所で確認されています」
倒れているゴブリンの中には赤色の旗を抱えたまま死亡した個体も存在し、シルフィアによると街の各所に「赤髑髏」の紋様が刻まれた旗が存在するらしく、しかも傍には必ずゴブリンの死骸が存在したという。
「あくまでも予想ですが、この旗は元々は街の住民の物ではなく、ゴブリンが持ち込んだ物ではないでしょうか?」
「確かに私が街に居た時には見かけなかった代物ですね。でも、どうしてこんな物をゴブリンが……」
「赤色の髑髏か……不気味だな」
街に住んでいたイリスも初めて見る代物らしく、少なくともゴブリンが用意した物で間違いない。しかし、人間の装備を奪うだけではなく、自分達の存在を主張するような「旗」を所持していた事にシルフィアは疑問を抱く。
「このゴブリンという生物の生態は詳しくはないのですが……もしや彼等はこの街を奪い、自分達の住処にするつもりではなかったのでしょうか?」
「住処って……そんな事あるの?」
「いや、私に聞かれても……でも、確かにファストの街のように誰も住み着かなくなった人間の街にゴブリンが住処を築く事はあります。だけど、ゴブリンが自ら進んで人間の街を奪うなんて滅多にありませんよ。小さな村や町ならともかく……」
「さっき倒したゴブリンキングという奴のせいかな?」
レアはホブゴブリンを統括していたゴブリンキングの存在を思い出し、ゴブリンキングが他のゴブリンを先導して人間の街を襲い、自分達の住処である事を示すために旗を作り出したのかと考えたが、それにしては「赤髑髏」などゴブリンとは特に関連性のない旗を築いた事に違和感は拭えない。
「今現在もドローンで調査を行っていますが、生体反応は確認されていません」
「うわ、なんですかあれ!?新種の鳥型の魔物ですか!?」
「いえ、あれが私の作り出したドローンです」
イリスが上空を移動する物体に驚きの声を上げ、レアも視線を向けると鳥類の「羽」を想像させる機翼を取り付けた球体型のドローンが飛んでいるのを確認し、複数のドローンが街中を巡回していた。これらのドローンも全てシルフィアがナノマシンと万能金属で作り出した物らしく、現在も生存者の調査を行っているらしい。
「ドローンの映像は俺達も見る事が出来る?」
「可能です。腕輪に命じれば全てのドローンの映像が映し出されます」
「命令すればいいの?」
「はい」
レアは自分の右腕の腕輪に視線を向け、腕を差し出して上空を浮揚するドローンの映像を表示方法を尋ねる
「えっと……どう命令すればいいのかな?」
「口に出さずとも脳波を感知して発動させる事も出来ますよ」
「そうなのか。それなら……おおっ!?」
頭の中で映像を表示させるようにレアが念じると、腕輪が光り輝き、表面にテレビ画面を想像させる紋様が浮き上がる。その直後に紋様から先程のシルフィアの表示させた映像が展開され、上空から撮影されているレア達の姿が表示された。
「あ、私達が映ってますよ。これはあそこにいる「どろーん」という子の視界なんですか?」
「その通りです。ちなみに画面を振れれば別方向の映像にも切り替えられますよ」
「スマートフォンみたいだな……あ、本当だ」
空中に映し出された映像にレアが指を触れると、確かに画面の角度が変化し、別方向の映像を映し出す。前後左右上下のどの角度の映像も全て記録されているらしく、シルフィアによると巻き戻しやスロー再生の機能も完備されているという。
「念じればドローンが撮影した映像も表示されます。また、別の場所で撮影を行っているドローンの映像にも切り替えられますよ」
「これは便利だな。俺もドローンを作り出せるの?」
「可能ではありますが……ドローンの生成には魔素を必要とします。レア様に分け与えたナノマシンに私が魔素を注入しない限り、無制限に作り出す事は難しいでしょう」
「あ、そうか」
シルフィアから切り離されたナノマシンに関しては魔素の残量は「無限」ではなく、事前に彼女が送り込んだ分の魔素しか保存されていない。つまりレアがナノマシンを多用すると保存されていた魔素が枯渇し、その機能を失う事になる。そうならないようにシルフィアが定期的に魔素を注入する必要があり、彼女のように無制限にナノマシンを扱えるわけではない。
「街を探索しているドローンの数はいくつ?」
「142個です。その内の30は街を取り囲む防壁を探索させているのですが……奇妙な物を発見しました」
「奇妙な物?どんなの?」
「映像を切り替えます」
レアの質問にシルフィアは空中に表示されている画面に触れると、自動的に映像が切り替わる。どうやら今度は街の外を浮揚しているドローンの映像らしく、北側に存在する城門に大量のゴブリンと人間の兵士の死骸が散乱していた。
「この場所でどうやら激しい戦闘があったようです。恐らく、ゴブリンはここから侵入を果たしたのでしょう」
「うっ……酷いな」
「地獄ですね……」
無数の人間とゴブリンの死骸を確認してレアは口を抑え、人の死体を見るのは初めてではないが衝撃を隠せない。しかし、シルフィアは特に顔色も変えずに画面を操作し、死体の山の中に存在する物を示す。
「御二人はこちらの旗をご存知ですか?」
「旗?」
「なんですかこれ……赤色の髑髏?」
「この旗は街の至る箇所で確認されています」
倒れているゴブリンの中には赤色の旗を抱えたまま死亡した個体も存在し、シルフィアによると街の各所に「赤髑髏」の紋様が刻まれた旗が存在するらしく、しかも傍には必ずゴブリンの死骸が存在したという。
「あくまでも予想ですが、この旗は元々は街の住民の物ではなく、ゴブリンが持ち込んだ物ではないでしょうか?」
「確かに私が街に居た時には見かけなかった代物ですね。でも、どうしてこんな物をゴブリンが……」
「赤色の髑髏か……不気味だな」
街に住んでいたイリスも初めて見る代物らしく、少なくともゴブリンが用意した物で間違いない。しかし、人間の装備を奪うだけではなく、自分達の存在を主張するような「旗」を所持していた事にシルフィアは疑問を抱く。
「このゴブリンという生物の生態は詳しくはないのですが……もしや彼等はこの街を奪い、自分達の住処にするつもりではなかったのでしょうか?」
「住処って……そんな事あるの?」
「いや、私に聞かれても……でも、確かにファストの街のように誰も住み着かなくなった人間の街にゴブリンが住処を築く事はあります。だけど、ゴブリンが自ら進んで人間の街を奪うなんて滅多にありませんよ。小さな村や町ならともかく……」
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レアはホブゴブリンを統括していたゴブリンキングの存在を思い出し、ゴブリンキングが他のゴブリンを先導して人間の街を襲い、自分達の住処である事を示すために旗を作り出したのかと考えたが、それにしては「赤髑髏」などゴブリンとは特に関連性のない旗を築いた事に違和感は拭えない。
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