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廃墟編
第36話 レアの秘策
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「あんたが異界人?こんな時に冗談を言うんじゃないよ!!」
「冗談なんかじゃありません!!バルさんだって俺の能力を知っているはずです!!リリスの回復魔法でも完全には治せなかった貴方を助けたのは俺なんですから!!」
「いや、それは……」
レアの言葉にバルは口ごもり、今までは疑問を感じていなかったが死にかけていた自分が今では平然としていられるのはレアのお陰だと思い出す。回復魔法は怪我の治療はできても失った血液までは戻せず、本来であればバルは失血死していた可能性が高い。それを救ったのは紛れもないレアである。
バルだけではなく他の人間にも自分が異界人であることを証明するため、レアは拳銃の弾丸を取り出す。それを皆に見せつけた状態で自分の能力を披露した。
「これを見ていてください」
「何だいそりゃ?金属の筒かい?」
「いいから見ていてください。凄いことが起きますよ」
弾丸を見せつけられたバルは訝し気な表情を浮かべ、他の者達も何をするつもりなのかと凝視する。弾丸に解析の技能を発動させたレアは視界に表示された詳細画面に指を向け、文章を書き替えた。
『弾丸――ハンドガン専用の銃弾 状態:普通』
「これをこうして……こうだ!!」
『パン――美味しいクリームパン 状態:普通』
文章を書き替えた瞬間、画面が更新されてレアの掌の上の弾丸が光り輝き、クリームパンへと変貌する。その光景を見ていた者達は驚き、リリスは自慢げに頷く。
「どうですか?これがレアさんの能力です」
「な、何だいそりゃ!?金属を食べ物に替えるなんて……いったいどんな仕掛けだい!?」
「このパンは本物ですよ。何だったら食べてみますか?」
レアはクリームパンを渡すとバルは半信半疑といった表情で受け取り、それを口にして目を見開く。食べた途端に何とも言えない甘味に頬が緩むが、すぐに正気を取り戻す。
「た、確かにこいつは本物のパンだ……けど、こんな能力で何ができるんだい?」
「えっと……俺の能力は物質変換なんです。錬金術師の金属を別の物に変換できる能力のさらに上の能力なんです」
文字変換のことを詳しく話すと時間が掛かりそうなため、リリスから聞いた話を思い出して適当に誤魔化す。リリスもレアに話を合わせてくれた。
「レアさんは凄いんですよ。どこにでもある道具で見たこともない武器や食べ物や乗り物を作り出すことができるんです」
「ま、まさか……あんた本当に異界人なのかい?」
「はい、何日か前に帝都で召喚されました」
「そういえば聞いたことがありますぞ!!帝国が異界人を召喚する儀式を近々行うという噂を……」
「じゃ、じゃあ貴方様が異界からやってこられた勇者!?」
「凄い!!まさか本当に勇者様が現れるなんて!!」
神父は帝国で流れている噂を思い出し、その話を聞いて女性陣はレアが本物の異界人だと思って表情を明るくする。この世界においては異界人は世界を救う救世主として認識されており、神父に至ってはその場で膝を付く。
「異界から来られた勇者様だとは知らずに無礼な態度を取りました!!どうかお許しください!!」
「や、止めて下さい!!確かに俺は異界人ですけど、俺自身は勇者でもなんでもないんです!!」
「ん?それはどういうことだい?あんたは異界人なんだろう?」
「実は……」
レアはここまできたら隠し事はできないと判断し、帝国での出来事を明かした――
――帝国にてレアは他の四人の高校生に巻き込まれて召喚されたこと、そして自分は大臣のダマランに不要な存在として城から追放され、その後に自分にも隠された能力があることを知って今まで生き延びられたことを話す。話を聞いていた神父はダマランの行為に酷く怒った。
「なんと愚かなことを!!異界人にそのようなことをして陽光神様が許されるはずがありません!!ダマラン大臣は天罰が下るでしょう!!」
「そういうことだったのかい。それにしても追放された後に隠された力が分かるなんて、あんたも運が無かったね」
「私は運が良かったと思いますよ。もしもレアさんの能力が知られていたらきっといいように使われていたでしょうね」
「うん、俺もそう思う」
事情を知ったリリス達はレアに同情してくれ、ダマランの非道な行為を非難する。一方でレアを異界人だと信じてくれたバルはこれからどうするのかを尋ねる。
「あんたが異界人だっていうのは信じるよ。でも、あんたの能力で本当にこの街の人間を助けることができるのかい?」
「はい、できるはずです。俺の知っている道具を用意できれば女の人でも戦えるはずなんです」
「ほ、本当に私達も戦わないといけないんですか」
「……無理強いはしません。でも、俺達だけじゃ人手不足なんです。だから自分も戦えるという人がいれば力を貸してください」
女性を巻き込むのはレアも不本意だが、今回の作戦はどうしても人手が必要だった。レアは集まった女性達に頭を下げると、最初に手を上げたのは女の子だった。
「私は勇者様と一緒に戦いたい!!」
「チ、チコ!?貴方何を言ってるの!?」
「お母さん!!私はお父さんを助けたい!!だから勇者様と一緒に戦う!!」
「駄目よ!!それならお母さんが戦うから!!」
「私も戦います!!弟を取り返したいんです!!」
「あたしもやるぞ!!」
意外なことに次々と女性陣の半分近くが戦うことに賛同してくれたことにレアは驚く。ここに集まっているのは家族を奪われた者ばかりであり、彼女は大切な祖父や父や夫や弟や息子を取り返すために次々と挙手する。
作戦に参加してくれる味方が多ければ多いほどに成功率が上がり、レアは何としても彼女達のために作戦を成功させて街を救うと決める。そのためには彼女達に渡す武器が必要であり、レアはバルとリリスに振り返った。
「二人とも道具集めを手伝って!!今晩中に準備を終えます!!」
「ええっ!?」
「な、何を集めればいいんだい?」
「とにかく何でもいいので片っ端から集めます!!皆さんも手伝ってください!!作戦の決行は明日です!!」
『はいっ!!』
レアの言葉に女性陣は従い、彼女達もレア達の道具集めを手伝う。そして明日の夜までに必要な物を全て取り揃えるために動き出す――
――同時刻、街の北側ではカトレアは無数の男達に群がれていた。彼女の前には若くて力の有り余っている男性が集まり、最初にウラクを操った時のように彼女は身の回りの世話を行う僕には特別な術を施してある程度の理性を残していた。
「カトレア様、捕縛した男性冒険者は全員が治療を終えて現在は拘束しております」
「よくやったわね。手駒は多ければ多いほどいいことだわ」
カトレアに報告を行ったのは警備隊長の男であり、その隣には町長の姿もあった。彼女は完全にこの街を掌握し、行く行くは帝国全土を火竜と自分が魅了した男達で支配するつもりだった。
「カトレア様……捕まえた女達はこれからどうするのですか?」
「殺しはしないわ。但し、一生奴隷として過ごして貰う。あんた達の身の回りの世話をさせておきなさい」
教会で避難した女性達以外にも数多くの女性が捕まっており、カトレアは彼女を自分の操り人形と化した男達の世話をさせるつもりだった。自分以外の女などカトレアにとっては忌まわしい存在だが、流石に何百人何千人もいる奴隷の世話を行うには人手が居る。そこでカトレアは女達に自分が支配した男達の面倒を見させるつもりだった。
魅了の術にかかった者のなかでまともに喋れるだけの知性を持つのは十数人程度であり、他の男達は意思を持たない操り人形だった。カトレアが命令するまでは何も行動を起こさず、彼女の言うことをだけを従うだけの存在と化す。カトレアとしては面倒なので自分が必要ではないと思った男は始末したい所だが、国を乗っ取るのならば労働力は必要であり、今は一人でも多くの奴隷が必要だった。だから捕まえた女に彼等の面倒を任せる。
「ふふっ……こうも上手くいくなんて驚きね。この調子なら同胞もすぐに集まりそうだわ」
カトレアの目的は帝国の支配だけではなく、世界中に散らばった魔人族の仲間を集め、かつて世界の国々に滅ぼされた「魔人族の王国」の再興のために彼女は動いていた――
「冗談なんかじゃありません!!バルさんだって俺の能力を知っているはずです!!リリスの回復魔法でも完全には治せなかった貴方を助けたのは俺なんですから!!」
「いや、それは……」
レアの言葉にバルは口ごもり、今までは疑問を感じていなかったが死にかけていた自分が今では平然としていられるのはレアのお陰だと思い出す。回復魔法は怪我の治療はできても失った血液までは戻せず、本来であればバルは失血死していた可能性が高い。それを救ったのは紛れもないレアである。
バルだけではなく他の人間にも自分が異界人であることを証明するため、レアは拳銃の弾丸を取り出す。それを皆に見せつけた状態で自分の能力を披露した。
「これを見ていてください」
「何だいそりゃ?金属の筒かい?」
「いいから見ていてください。凄いことが起きますよ」
弾丸を見せつけられたバルは訝し気な表情を浮かべ、他の者達も何をするつもりなのかと凝視する。弾丸に解析の技能を発動させたレアは視界に表示された詳細画面に指を向け、文章を書き替えた。
『弾丸――ハンドガン専用の銃弾 状態:普通』
「これをこうして……こうだ!!」
『パン――美味しいクリームパン 状態:普通』
文章を書き替えた瞬間、画面が更新されてレアの掌の上の弾丸が光り輝き、クリームパンへと変貌する。その光景を見ていた者達は驚き、リリスは自慢げに頷く。
「どうですか?これがレアさんの能力です」
「な、何だいそりゃ!?金属を食べ物に替えるなんて……いったいどんな仕掛けだい!?」
「このパンは本物ですよ。何だったら食べてみますか?」
レアはクリームパンを渡すとバルは半信半疑といった表情で受け取り、それを口にして目を見開く。食べた途端に何とも言えない甘味に頬が緩むが、すぐに正気を取り戻す。
「た、確かにこいつは本物のパンだ……けど、こんな能力で何ができるんだい?」
「えっと……俺の能力は物質変換なんです。錬金術師の金属を別の物に変換できる能力のさらに上の能力なんです」
文字変換のことを詳しく話すと時間が掛かりそうなため、リリスから聞いた話を思い出して適当に誤魔化す。リリスもレアに話を合わせてくれた。
「レアさんは凄いんですよ。どこにでもある道具で見たこともない武器や食べ物や乗り物を作り出すことができるんです」
「ま、まさか……あんた本当に異界人なのかい?」
「はい、何日か前に帝都で召喚されました」
「そういえば聞いたことがありますぞ!!帝国が異界人を召喚する儀式を近々行うという噂を……」
「じゃ、じゃあ貴方様が異界からやってこられた勇者!?」
「凄い!!まさか本当に勇者様が現れるなんて!!」
神父は帝国で流れている噂を思い出し、その話を聞いて女性陣はレアが本物の異界人だと思って表情を明るくする。この世界においては異界人は世界を救う救世主として認識されており、神父に至ってはその場で膝を付く。
「異界から来られた勇者様だとは知らずに無礼な態度を取りました!!どうかお許しください!!」
「や、止めて下さい!!確かに俺は異界人ですけど、俺自身は勇者でもなんでもないんです!!」
「ん?それはどういうことだい?あんたは異界人なんだろう?」
「実は……」
レアはここまできたら隠し事はできないと判断し、帝国での出来事を明かした――
――帝国にてレアは他の四人の高校生に巻き込まれて召喚されたこと、そして自分は大臣のダマランに不要な存在として城から追放され、その後に自分にも隠された能力があることを知って今まで生き延びられたことを話す。話を聞いていた神父はダマランの行為に酷く怒った。
「なんと愚かなことを!!異界人にそのようなことをして陽光神様が許されるはずがありません!!ダマラン大臣は天罰が下るでしょう!!」
「そういうことだったのかい。それにしても追放された後に隠された力が分かるなんて、あんたも運が無かったね」
「私は運が良かったと思いますよ。もしもレアさんの能力が知られていたらきっといいように使われていたでしょうね」
「うん、俺もそう思う」
事情を知ったリリス達はレアに同情してくれ、ダマランの非道な行為を非難する。一方でレアを異界人だと信じてくれたバルはこれからどうするのかを尋ねる。
「あんたが異界人だっていうのは信じるよ。でも、あんたの能力で本当にこの街の人間を助けることができるのかい?」
「はい、できるはずです。俺の知っている道具を用意できれば女の人でも戦えるはずなんです」
「ほ、本当に私達も戦わないといけないんですか」
「……無理強いはしません。でも、俺達だけじゃ人手不足なんです。だから自分も戦えるという人がいれば力を貸してください」
女性を巻き込むのはレアも不本意だが、今回の作戦はどうしても人手が必要だった。レアは集まった女性達に頭を下げると、最初に手を上げたのは女の子だった。
「私は勇者様と一緒に戦いたい!!」
「チ、チコ!?貴方何を言ってるの!?」
「お母さん!!私はお父さんを助けたい!!だから勇者様と一緒に戦う!!」
「駄目よ!!それならお母さんが戦うから!!」
「私も戦います!!弟を取り返したいんです!!」
「あたしもやるぞ!!」
意外なことに次々と女性陣の半分近くが戦うことに賛同してくれたことにレアは驚く。ここに集まっているのは家族を奪われた者ばかりであり、彼女は大切な祖父や父や夫や弟や息子を取り返すために次々と挙手する。
作戦に参加してくれる味方が多ければ多いほどに成功率が上がり、レアは何としても彼女達のために作戦を成功させて街を救うと決める。そのためには彼女達に渡す武器が必要であり、レアはバルとリリスに振り返った。
「二人とも道具集めを手伝って!!今晩中に準備を終えます!!」
「ええっ!?」
「な、何を集めればいいんだい?」
「とにかく何でもいいので片っ端から集めます!!皆さんも手伝ってください!!作戦の決行は明日です!!」
『はいっ!!』
レアの言葉に女性陣は従い、彼女達もレア達の道具集めを手伝う。そして明日の夜までに必要な物を全て取り揃えるために動き出す――
――同時刻、街の北側ではカトレアは無数の男達に群がれていた。彼女の前には若くて力の有り余っている男性が集まり、最初にウラクを操った時のように彼女は身の回りの世話を行う僕には特別な術を施してある程度の理性を残していた。
「カトレア様、捕縛した男性冒険者は全員が治療を終えて現在は拘束しております」
「よくやったわね。手駒は多ければ多いほどいいことだわ」
カトレアに報告を行ったのは警備隊長の男であり、その隣には町長の姿もあった。彼女は完全にこの街を掌握し、行く行くは帝国全土を火竜と自分が魅了した男達で支配するつもりだった。
「カトレア様……捕まえた女達はこれからどうするのですか?」
「殺しはしないわ。但し、一生奴隷として過ごして貰う。あんた達の身の回りの世話をさせておきなさい」
教会で避難した女性達以外にも数多くの女性が捕まっており、カトレアは彼女を自分の操り人形と化した男達の世話をさせるつもりだった。自分以外の女などカトレアにとっては忌まわしい存在だが、流石に何百人何千人もいる奴隷の世話を行うには人手が居る。そこでカトレアは女達に自分が支配した男達の面倒を見させるつもりだった。
魅了の術にかかった者のなかでまともに喋れるだけの知性を持つのは十数人程度であり、他の男達は意思を持たない操り人形だった。カトレアが命令するまでは何も行動を起こさず、彼女の言うことをだけを従うだけの存在と化す。カトレアとしては面倒なので自分が必要ではないと思った男は始末したい所だが、国を乗っ取るのならば労働力は必要であり、今は一人でも多くの奴隷が必要だった。だから捕まえた女に彼等の面倒を任せる。
「ふふっ……こうも上手くいくなんて驚きね。この調子なら同胞もすぐに集まりそうだわ」
カトレアの目的は帝国の支配だけではなく、世界中に散らばった魔人族の仲間を集め、かつて世界の国々に滅ぼされた「魔人族の王国」の再興のために彼女は動いていた――
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