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最終章
最終話 100年後
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――それから100年の月日が経過し、かつてナイが暮らしていた村には新しい墓地が作られた。その墓地の一番奥には二つの墓が建てられており、名前は「アル」と「ゴマン」と刻まれていた。
アルの墓の前には「旋斧」が置かれ、ゴマンの墓には「反魔の盾」が飾られていた。この二つの装備は元の持ち主の元へと返された。
「クァアッ……」
二人の墓の前には大樹が生えており、その大樹の下には巨大な狼が横たわっていた。その狼は大分年を取っており、その狼の周りには小さな狼と子供が寄り添っていた。
「キャンキャンッ♪」
「あははっ!!もうハクくすぐったいよ~!!」
小さな狼は横たわっている狼と同じように全身が白色の毛皮で覆われ、子供の方は青色の髪の毛の子供だった。子供の狼の名前は「ハク」というらしく、子供に懐いている様子だった。
ハクという名前が授けられた狼はビャクの孫であり、数年前に生まれたばかりの狼である。そして彼が懐いている子供はナイの子孫の「レナ」という名前の少女だった。レナはナイの曾孫で子供の頃のナイとよく似た容姿をしていた。違いがあるとすれば性別と髪の毛の色ぐらいであり、こちらはナイと結婚した女性の特徴を受け継いでいる。
「キャインッ!?」
「わっ……大丈夫?」
「ウォンッ……?」
じゃれついていたハクが悲鳴を上げ、大樹の傍に寄りそうように横たわっていた巨狼が目を開くと、そこには額に血を流したハクとそれを心配そうに見つめるレナの姿があった。
どうやらレナと遊んでいる最中にハクが怪我をしたらしく、そんな彼にレナは掌を構える。すると彼女の掌が光り輝き、その光を浴びた途端にハクの額の傷が塞がってしまう。
「ほら、これでもう痛くないでしょ?」
「クゥ~ンッ……」
「よしよし、ハクは甘えん坊だな」
「……ウォンッ」
レナとハクのやり取りを見て巨狼《ビャク》は笑みを浮かべ、もうこの時代には彼の主人もその仲間達も殆ど生き残っていない。魔獣であるビャクだけは年老いても生き延びているが、もう間もなくビャクも自分が寿命を迎える事を予感していた。
ナイが亡くなった後もビャクは彼の子孫を守るために傍に寄り続け、彼の子供達もナイの一族と共に暮らしている。レイの傍にいるハクはビャクの孫の中でも一番幼く、二人が戯れる姿を見ているとビャクも昔を思い出す。
「ウォンッ……」
空を見上げながらビャクは昔の事を懐かしみ、昔の夢を見る事を期待しながら瞼を閉じる。しかし、彼が次に目を開く事はなく、ビャクは生涯を終えた――
――眠りについたはずのビャクは白い霧のような場所に訪れ、自分が若返っている事に気付く。足元には花畑が生えており、不思議に思ったビャクは周囲を見渡す。
「クゥ~ンッ……?」
自分が何処にいるのか分からず、困り果てたビャクは先ほどまで一緒だったハクとレナを探そうとした。しかし、そんなビャクの前方に見覚えのある人たちが待ち構えていた。
「ビャク、こっちだよ」
「ウォンッ!?」
その声を聞いた瞬間、ビャクは驚きのあまりに振り返るとそこには自分が生涯唯一「主人」と認めた人間が立っていた。そして彼の傍には見覚えのある人物が集まっており、全員がビャクを呼びかける。
「ビャクちゃん!!こっちだよ~!!」
「今まで僕の子供達の面倒を見てくれてありがとう!!」
「ウォオオンンッ!!」
ビャクの視界にナイと両隣に立つモモとリーナの姿が映し出され、やっと再会できた家族にビャクは涙を流しながら三人の元へ向かう――
――貧弱の英雄ナイの物語はここで終わりを迎える。
アルの墓の前には「旋斧」が置かれ、ゴマンの墓には「反魔の盾」が飾られていた。この二つの装備は元の持ち主の元へと返された。
「クァアッ……」
二人の墓の前には大樹が生えており、その大樹の下には巨大な狼が横たわっていた。その狼は大分年を取っており、その狼の周りには小さな狼と子供が寄り添っていた。
「キャンキャンッ♪」
「あははっ!!もうハクくすぐったいよ~!!」
小さな狼は横たわっている狼と同じように全身が白色の毛皮で覆われ、子供の方は青色の髪の毛の子供だった。子供の狼の名前は「ハク」というらしく、子供に懐いている様子だった。
ハクという名前が授けられた狼はビャクの孫であり、数年前に生まれたばかりの狼である。そして彼が懐いている子供はナイの子孫の「レナ」という名前の少女だった。レナはナイの曾孫で子供の頃のナイとよく似た容姿をしていた。違いがあるとすれば性別と髪の毛の色ぐらいであり、こちらはナイと結婚した女性の特徴を受け継いでいる。
「キャインッ!?」
「わっ……大丈夫?」
「ウォンッ……?」
じゃれついていたハクが悲鳴を上げ、大樹の傍に寄りそうように横たわっていた巨狼が目を開くと、そこには額に血を流したハクとそれを心配そうに見つめるレナの姿があった。
どうやらレナと遊んでいる最中にハクが怪我をしたらしく、そんな彼にレナは掌を構える。すると彼女の掌が光り輝き、その光を浴びた途端にハクの額の傷が塞がってしまう。
「ほら、これでもう痛くないでしょ?」
「クゥ~ンッ……」
「よしよし、ハクは甘えん坊だな」
「……ウォンッ」
レナとハクのやり取りを見て巨狼《ビャク》は笑みを浮かべ、もうこの時代には彼の主人もその仲間達も殆ど生き残っていない。魔獣であるビャクだけは年老いても生き延びているが、もう間もなくビャクも自分が寿命を迎える事を予感していた。
ナイが亡くなった後もビャクは彼の子孫を守るために傍に寄り続け、彼の子供達もナイの一族と共に暮らしている。レイの傍にいるハクはビャクの孫の中でも一番幼く、二人が戯れる姿を見ているとビャクも昔を思い出す。
「ウォンッ……」
空を見上げながらビャクは昔の事を懐かしみ、昔の夢を見る事を期待しながら瞼を閉じる。しかし、彼が次に目を開く事はなく、ビャクは生涯を終えた――
――眠りについたはずのビャクは白い霧のような場所に訪れ、自分が若返っている事に気付く。足元には花畑が生えており、不思議に思ったビャクは周囲を見渡す。
「クゥ~ンッ……?」
自分が何処にいるのか分からず、困り果てたビャクは先ほどまで一緒だったハクとレナを探そうとした。しかし、そんなビャクの前方に見覚えのある人たちが待ち構えていた。
「ビャク、こっちだよ」
「ウォンッ!?」
その声を聞いた瞬間、ビャクは驚きのあまりに振り返るとそこには自分が生涯唯一「主人」と認めた人間が立っていた。そして彼の傍には見覚えのある人物が集まっており、全員がビャクを呼びかける。
「ビャクちゃん!!こっちだよ~!!」
「今まで僕の子供達の面倒を見てくれてありがとう!!」
「ウォオオンンッ!!」
ビャクの視界にナイと両隣に立つモモとリーナの姿が映し出され、やっと再会できた家族にビャクは涙を流しながら三人の元へ向かう――
――貧弱の英雄ナイの物語はここで終わりを迎える。
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