貧弱の英雄

カタナヅキ

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最終章

第1084話 闘技場の王

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王都の闘技場では毎日激しい試合が繰り広げられ、最近では他国から訪れる武芸者も増えていた。彼等の目的は王国一の冒険者と謳われる「ゴウカ」であり、最近の彼は本業を忘れて毎日闘技場に出場していた。


『ふははははっ!!どうした、その程度か!?全員でかかってこい!!』
「く、くそっ……舐めやがって!!」
「俺達の力を見せてやる!!」
「うおおおおっ!!」


闘技場の試合場ではゴウカ一人に対して複数名の選手が挑み、彼等は傭兵団だった。ゴウカが試合を行う時は必ず乱戦方式バトルロイヤルで開始され、基本的には彼以外の選手は手を組むことが多い。

今回の挑戦者は獣人国では有名な傭兵団だが、ゴウカは十数人がかりで自分に向かう傭兵達に嬉しそうな声を上げる。彼は自分に挑戦する者は誰であろうと関係なく正面から迎え撃ち、圧倒的な力で返り討ちにしてきた。


『ぬううんっ!!』
「ぎゃああっ!?」
「ああっ!?カマセがやられた!!」
「マカセも吹っ飛んだぞ!!」
「く、くそっ……おい、魔法だ!!」


ドラゴンスレイヤーをゴウカが降り抜いただけで数名の傭兵が吹き飛び、更に吹き飛んだ傭兵に巻き込まれて他の傭兵もやられてしまう。傭兵団の頭は金で雇った魔術師に攻撃を行うように指示を出す。


「おい、何をしている!!さっさと撃て!!」
「で、でも人間を相手に魔法なんて……下手をしたら殺してしまいますよ!?」
「大丈夫だ、この試合で奴が死んでも罪には問われない!!そうだろう!?」
『うむ、その通りだ!!死んでも恨んで化けたりはしないぞ!!』


傭兵団の頭の言葉にゴウカは頷き、実は彼が闘技場に出場する際は自分は殺されても相手に罪はないと宣言していた。つまり、仮が事故で死亡しようと故意に殺されたとしても選手側は罪を追わない。

元々闘技場は命のやり取りを行う舞台であるため、選手は出場前に死んだ場合でも責任は取らないという誓約書を書かされている。だからゴウカが死んだとしても罪には問われず、傭兵団の頭は魔術師に魔法を撃つように告げた。


「手加減するなよ、あいつは化物だ!!魔物に向けて撃つ時のように本気を出せ!!」
「わ、分かりました……なら、行きますよ!!」
『よし、来い!!』
「なんで嬉しそうなんだ!?」


魔術師との戦闘では基本的には普通の武芸者ならば相手が魔法を完成させる前に仕掛けるのが基本だった。しかし、ゴウカの場合は全く恐れた様子を見せずに両腕を広げて待ち構える。魔術師はそんな彼に両手を震わせながらも杖を構えた。


「ボム!!」
「お前等、離れろ!!」
「巻き添えを喰らうぞ!?」
「うわぁっ!?」


魔術師が魔法を唱えると杖先から魔法陣が展開され、バスケットボール程の大きさの火球が出現した。砲撃魔法の中級の魔法であり、この火球が物体に接触すると爆発を引き起こす。

傭兵達はゴウカから距離を取って巻き込まれないようにするが、ゴウカはゆっくりと迫る火球を見てドラゴンスレイヤーを構える。そして何か思いついたのかゴウカはドラゴンスレイヤーを下から振りかざし、自分に迫りくる火球に叩き付けた。


『ぬぅんっ!!』
「そ、そんな馬鹿なっ!?」
「う、!?」


迫りくる火球をドラゴンスレイヤーで弾き返したゴウカに誰もが驚愕し、上空へ打ち返された火球は膨れ上がり、派手に爆発した。


「うわぁああああっ!?」
「うひぃいいいっ!?」
『はっはっはっはっ!!たまや、だなっ!!』


まるで花火のように相手の魔法を上空で爆発させたゴウカは高らかな笑い声をあげ、結局はこの試合の選手たちはゴウカに敗れ、獣人国へ逃げるように引き返した――
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