貧弱の英雄

カタナヅキ

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最終章

第1080話 和国の復興

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――討伐隊が帰還してからしばらく時間が経過した後、遂に和国の本格的な復興が正式に許可された。旧和国の領地である「ムサシ地方」はシノビが管理を任される事が決定し、彼は正式に貴族の爵位を与えられた。

シノビに与えられた爵位は「伯爵」であり、彼が暮らしていた隠れ里を中心に本格的な街作りを行う。シノビが爵位と領地を与えられたのは牙山に封じられていた「妖刀」と「魔道具」を王国に寄贈した事が原因である。

牙山に封じられていた妖刀の類はどれもこれもが一級品であり、妖刀以外にも防具や魔道具も多数保管されていた。それらを全て王国に譲り渡す事を条件にシノビは爵位とムサシ地方の管理権限を与えられ、彼は本格的に人手を集めて街作りを行う。


「兄者、国を再興するといっても具体的にはどうすればいいのでござる?」
「……とりあえず、金策からだな」


しかし、街作りを行うにしても人手を集めなければならず、そもそも場所が問題だった。ムサシ地方は広大な森で形成されており、山々に囲まれている。しかも多数の魔獣種が生息する危険地帯であり、普通の人間では移動するのも困難である。

人手を集める事も金と時間が掛かり、王国側も援助は行うが何もかもを任せきりにするわけにはいかない。ひとまずはシノビとクノはムサシノ地方に移り住んでもいい人間を探す事にするが、中々そのような人間は見つからない。


「ムサシ地方?聞いた事がないな……」
「イチノよりも遠いって……辺境の地じゃねえか」
「山と森に囲まれている以外には何にもないんだろ?誰が行くかよ、そんな場所……」


ムサシ地方は王国の僻地に存在し、快適な王都の暮らしに慣れている人間からすればそんな場所に移り住む理由がない。浮浪者でさえも移住を拒み、人手を集めるのは困難だった。


「やはり、人手を集めるのは無理でござるか……」
「……いや、そうでもない。奴等ならば俺達に従うだろう」
「奴等?」


一般人にいくら誘いかけても成果は得られずにクノが諦めかけた時、シノビには今回の移住を引き受けてくる人材に心当たりがあった――






――シノビが集めたのは「白面」に所属していた暗殺者達であり、現在は王国に従う組織「黒面」として活動を行っている。彼等の殆どが獣人国から拉致された者達であり、帰る場所を失って国に戻る事もできない人間も多い。そんな彼等を集めた理由はシノビは彼等に新しい居場所を用意すると伝える。


「お前達には俺達と一緒に和国の再建に力を貸してほしい」
「再建?」
「仕事の話じゃないのか……?」
「どういう意味だ?」


急に呼び出された暗殺者達はシノビの話を聞いて戸惑うが、シノビ自分が貴族になった事、そしてムサシ地方と呼ばれる領地の管理を任され、そこで新しい街を作る事を話す。


「お前達は残念ながらこの国には居場所がない。しかし、今の俺ならばお前達に新しい居場所を用意する事ができる」
「居場所だと……」
「そんな話を信じろというのか?」
「俺達が普通に暮らせるような場所を作ってくれるのか?」


シノビの言葉に白面に所属していた暗殺者達は戸惑うが、彼等の境遇を知っているシノビは自分も彼等と同じ立場の人間である事を話す。


「居場所はないという点では俺も妹もそうだった。俺達はこの国の生まれではない、故郷も魔物に滅ぼされた……しかし、俺達は自分達の居場所を奪い返した!!そして国に認められた街を作り出す!!その場所にはまだ俺達以外には誰も住民はいない、お前達が協力してくれるのであれば一人一人に家を与えられる。安心して休める居場所を用意できる!!」
「家……!?」
「俺達が……家を持てるのか?」
「そんなの考えた事もなかった……」


暗殺者である彼等は自分達が家を持てることを考えた事もなく、それどころか普通の人間の生活を送れるとも考えた事すらなかった。そんな彼等にシノビは自分に協力すれば新しい居場所を用意できると約束した。


「無論、街を作る事は簡単ではない!!俺達が向かう場所には危険な魔獣が生息している。しかし、お前達ならば大丈夫だ!!幼少期から暗殺技術を鍛え上げられたお前達が魔物如きに後れを取るはずがない!!」
「そ、そうだ……」
「人間を相手にするより魔物を始末する方が楽だしな……」
「家……普通の人間の暮らし……本当に俺達に手に入るのか?」


まだ普通の一般人として暮らしていた日々の事を思い出した暗殺者達は涙を流し、あの日々に戻れるのならば彼等はどんな事でもする覚悟は出来ていた。


「共に行こう……俺達の国を作るんだ」
「「「うおおおおおっ!!」」」


シノビの説得によって白面に所属していた生き場所を失っていた暗殺者達は奮起し、こうして彼等の力を借りて本格的に和国の復興が開始された――




※壁|д゚)ジー ← 遠くで様子を伺うリノ王女(笑)
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