1,099 / 1,110
最終章
第1080話 和国の復興
しおりを挟む
――討伐隊が帰還してからしばらく時間が経過した後、遂に和国の本格的な復興が正式に許可された。旧和国の領地である「ムサシ地方」はシノビが管理を任される事が決定し、彼は正式に貴族の爵位を与えられた。
シノビに与えられた爵位は「伯爵」であり、彼が暮らしていた隠れ里を中心に本格的な街作りを行う。シノビが爵位と領地を与えられたのは牙山に封じられていた「妖刀」と「魔道具」を王国に寄贈した事が原因である。
牙山に封じられていた妖刀の類はどれもこれもが一級品であり、妖刀以外にも防具や魔道具も多数保管されていた。それらを全て王国に譲り渡す事を条件にシノビは爵位とムサシ地方の管理権限を与えられ、彼は本格的に人手を集めて街作りを行う。
「兄者、国を再興するといっても具体的にはどうすればいいのでござる?」
「……とりあえず、金策からだな」
しかし、街作りを行うにしても人手を集めなければならず、そもそも場所が問題だった。ムサシ地方は広大な森で形成されており、山々に囲まれている。しかも多数の魔獣種が生息する危険地帯であり、普通の人間では移動するのも困難である。
人手を集める事も金と時間が掛かり、王国側も援助は行うが何もかもを任せきりにするわけにはいかない。ひとまずはシノビとクノはムサシノ地方に移り住んでもいい人間を探す事にするが、中々そのような人間は見つからない。
「ムサシ地方?聞いた事がないな……」
「イチノよりも遠いって……辺境の地じゃねえか」
「山と森に囲まれている以外には何にもないんだろ?誰が行くかよ、そんな場所……」
ムサシ地方は王国の僻地に存在し、快適な王都の暮らしに慣れている人間からすればそんな場所に移り住む理由がない。浮浪者でさえも移住を拒み、人手を集めるのは困難だった。
「やはり、人手を集めるのは無理でござるか……」
「……いや、そうでもない。奴等ならば俺達に従うだろう」
「奴等?」
一般人にいくら誘いかけても成果は得られずにクノが諦めかけた時、シノビには今回の移住を引き受けてくる人材に心当たりがあった――
――シノビが集めたのは「白面」に所属していた暗殺者達であり、現在は王国に従う組織「黒面」として活動を行っている。彼等の殆どが獣人国から拉致された者達であり、帰る場所を失って国に戻る事もできない人間も多い。そんな彼等を集めた理由はシノビは彼等に新しい居場所を用意すると伝える。
「お前達には俺達と一緒に和国の再建に力を貸してほしい」
「再建?」
「仕事の話じゃないのか……?」
「どういう意味だ?」
急に呼び出された暗殺者達はシノビの話を聞いて戸惑うが、シノビ自分が貴族になった事、そしてムサシ地方と呼ばれる領地の管理を任され、そこで新しい街を作る事を話す。
「お前達は残念ながらこの国には居場所がない。しかし、今の俺ならばお前達に新しい居場所を用意する事ができる」
「居場所だと……」
「そんな話を信じろというのか?」
「俺達が普通に暮らせるような場所を作ってくれるのか?」
シノビの言葉に白面に所属していた暗殺者達は戸惑うが、彼等の境遇を知っているシノビは自分も彼等と同じ立場の人間である事を話す。
「居場所はないという点では俺も妹もそうだった。俺達はこの国の生まれではない、故郷も魔物に滅ぼされた……しかし、俺達は自分達の居場所を奪い返した!!そして国に認められた街を作り出す!!その場所にはまだ俺達以外には誰も住民はいない、お前達が協力してくれるのであれば一人一人に家を与えられる。安心して休める居場所を用意できる!!」
「家……!?」
「俺達が……家を持てるのか?」
「そんなの考えた事もなかった……」
暗殺者である彼等は自分達が家を持てることを考えた事もなく、それどころか普通の人間の生活を送れるとも考えた事すらなかった。そんな彼等にシノビは自分に協力すれば新しい居場所を用意できると約束した。
「無論、街を作る事は簡単ではない!!俺達が向かう場所には危険な魔獣が生息している。しかし、お前達ならば大丈夫だ!!幼少期から暗殺技術を鍛え上げられたお前達が魔物如きに後れを取るはずがない!!」
「そ、そうだ……」
「人間を相手にするより魔物を始末する方が楽だしな……」
「家……普通の人間の暮らし……本当に俺達に手に入るのか?」
まだ普通の一般人として暮らしていた日々の事を思い出した暗殺者達は涙を流し、あの日々に戻れるのならば彼等はどんな事でもする覚悟は出来ていた。
「共に行こう……俺達の国を作るんだ」
「「「うおおおおおっ!!」」」
シノビの説得によって白面に所属していた生き場所を失っていた暗殺者達は奮起し、こうして彼等の力を借りて本格的に和国の復興が開始された――
※壁|д゚)ジー ← 遠くで様子を伺うリノ王女(笑)
シノビに与えられた爵位は「伯爵」であり、彼が暮らしていた隠れ里を中心に本格的な街作りを行う。シノビが爵位と領地を与えられたのは牙山に封じられていた「妖刀」と「魔道具」を王国に寄贈した事が原因である。
牙山に封じられていた妖刀の類はどれもこれもが一級品であり、妖刀以外にも防具や魔道具も多数保管されていた。それらを全て王国に譲り渡す事を条件にシノビは爵位とムサシ地方の管理権限を与えられ、彼は本格的に人手を集めて街作りを行う。
「兄者、国を再興するといっても具体的にはどうすればいいのでござる?」
「……とりあえず、金策からだな」
しかし、街作りを行うにしても人手を集めなければならず、そもそも場所が問題だった。ムサシ地方は広大な森で形成されており、山々に囲まれている。しかも多数の魔獣種が生息する危険地帯であり、普通の人間では移動するのも困難である。
人手を集める事も金と時間が掛かり、王国側も援助は行うが何もかもを任せきりにするわけにはいかない。ひとまずはシノビとクノはムサシノ地方に移り住んでもいい人間を探す事にするが、中々そのような人間は見つからない。
「ムサシ地方?聞いた事がないな……」
「イチノよりも遠いって……辺境の地じゃねえか」
「山と森に囲まれている以外には何にもないんだろ?誰が行くかよ、そんな場所……」
ムサシ地方は王国の僻地に存在し、快適な王都の暮らしに慣れている人間からすればそんな場所に移り住む理由がない。浮浪者でさえも移住を拒み、人手を集めるのは困難だった。
「やはり、人手を集めるのは無理でござるか……」
「……いや、そうでもない。奴等ならば俺達に従うだろう」
「奴等?」
一般人にいくら誘いかけても成果は得られずにクノが諦めかけた時、シノビには今回の移住を引き受けてくる人材に心当たりがあった――
――シノビが集めたのは「白面」に所属していた暗殺者達であり、現在は王国に従う組織「黒面」として活動を行っている。彼等の殆どが獣人国から拉致された者達であり、帰る場所を失って国に戻る事もできない人間も多い。そんな彼等を集めた理由はシノビは彼等に新しい居場所を用意すると伝える。
「お前達には俺達と一緒に和国の再建に力を貸してほしい」
「再建?」
「仕事の話じゃないのか……?」
「どういう意味だ?」
急に呼び出された暗殺者達はシノビの話を聞いて戸惑うが、シノビ自分が貴族になった事、そしてムサシ地方と呼ばれる領地の管理を任され、そこで新しい街を作る事を話す。
「お前達は残念ながらこの国には居場所がない。しかし、今の俺ならばお前達に新しい居場所を用意する事ができる」
「居場所だと……」
「そんな話を信じろというのか?」
「俺達が普通に暮らせるような場所を作ってくれるのか?」
シノビの言葉に白面に所属していた暗殺者達は戸惑うが、彼等の境遇を知っているシノビは自分も彼等と同じ立場の人間である事を話す。
「居場所はないという点では俺も妹もそうだった。俺達はこの国の生まれではない、故郷も魔物に滅ぼされた……しかし、俺達は自分達の居場所を奪い返した!!そして国に認められた街を作り出す!!その場所にはまだ俺達以外には誰も住民はいない、お前達が協力してくれるのであれば一人一人に家を与えられる。安心して休める居場所を用意できる!!」
「家……!?」
「俺達が……家を持てるのか?」
「そんなの考えた事もなかった……」
暗殺者である彼等は自分達が家を持てることを考えた事もなく、それどころか普通の人間の生活を送れるとも考えた事すらなかった。そんな彼等にシノビは自分に協力すれば新しい居場所を用意できると約束した。
「無論、街を作る事は簡単ではない!!俺達が向かう場所には危険な魔獣が生息している。しかし、お前達ならば大丈夫だ!!幼少期から暗殺技術を鍛え上げられたお前達が魔物如きに後れを取るはずがない!!」
「そ、そうだ……」
「人間を相手にするより魔物を始末する方が楽だしな……」
「家……普通の人間の暮らし……本当に俺達に手に入るのか?」
まだ普通の一般人として暮らしていた日々の事を思い出した暗殺者達は涙を流し、あの日々に戻れるのならば彼等はどんな事でもする覚悟は出来ていた。
「共に行こう……俺達の国を作るんだ」
「「「うおおおおおっ!!」」」
シノビの説得によって白面に所属していた生き場所を失っていた暗殺者達は奮起し、こうして彼等の力を借りて本格的に和国の復興が開始された――
※壁|д゚)ジー ← 遠くで様子を伺うリノ王女(笑)
0
お気に入りに追加
62
あなたにおすすめの小説
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!
夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。
ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。
そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。
視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草
ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)
10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。
親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。
同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……──
※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました!
※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げています。
「お前のような役立たずは不要だ」と追放された三男の前世は世界最強の賢者でした~今世ではダラダラ生きたいのでスローライフを送ります~
平山和人
ファンタジー
主人公のアベルは転生者だ。一度目の人生は剣聖、二度目は賢者として活躍していた。
三度目の人生はのんびり過ごしたいため、アベルは今までの人生で得たスキルを封印し、貴族として生きることにした。
そして、15歳の誕生日でスキル鑑定によって何のスキルも持ってないためアベルは追放されることになった。
アベルは追放された土地でスローライフを楽しもうとするが、そこは凶悪な魔物が跋扈する魔境であった。
襲い掛かってくる魔物を討伐したことでアベルの実力が明らかになると、領民たちはアベルを救世主と崇め、貴族たちはアベルを取り戻そうと追いかけてくる。
果たしてアベルは夢であるスローライフを送ることが出来るのだろうか。
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる