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最終章
第1076話 貧弱の英雄VSダイダラボッチ
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――時は少し前に遡り、ダイダラボッチが王国騎士団と激戦を繰り広げる頃、湖の方では飛行船が飛び立とうとしていた。乗組員はアルトとハマーンの弟子達、そして船首にはナイが立っていた。
本来であれば飛行中の甲板に立つ事は危険だが、それでもナイは船首に残る事にした。今回の作戦の要はナイであるため、彼はどうしても飛行船の甲板に待機していなければならない。
『いいかい、飛行船の移動速度はできる限り遅くする。但し、それでもかなりの風圧が襲ってくるはずだから落ちないように気を付けてくれ』
アルトに言われた言葉を思い出したナイは船首から落ちないようにしっかりと手すりを握りしめ、万力の如き握力で握りしめる。ダイダラボッチの姿は湖からも確認できるが、今の所は地上の王国騎士団と冒険者に気を取られて飛行船には全く気づいていない。
(この位置からでも見えるなんて……やっぱり、凄いな)
ダイダラボッチの巨体を確認したナイは少し前に自分がダイダラボッチに殺されかけた事を思い出し、もしも反魔の盾がなければ死んでいただろう。それでも彼はダイダラボッチから逃げるわけにはいかず、仲間と共に戦う事を決める。
(……不思議だな、皆が一緒だと全然怖くないや)
恐らくはナイがこれまで対峙したどんな敵よりも恐ろしい存在だが、それでもナイはダイダラボッチを見ても微塵も恐怖を感じない。不思議と自分達ならばなんとかできるという自信があった。
考え込んでいる間にも飛行船は動き出し、ダイダラボッチに気付かれないようにできる限り出力を落とした状態で浮上を行う。ここから先はダイダラボッチに気付かれない程の高度まで上昇し、ダイダラボッチに奇襲を仕掛けるのがアルトの作戦だった。
(ダイダラボッチは地上の皆に注目している……なら、空からの攻撃には対応できないはず)
ダイダラボッチは王国軍と戦う場合、地上の者達に注目して上空の警備が薄まる。その隙を突いて飛行船で攻撃を仕掛け、奴の身体に巨大剣を食い込ませる。しかし、もしもダイダラボッチが飛行船の存在に気付いたら危険を伴う。
仮にダイダラボッチが飛行船に気付いて攻撃してきた場合、兵器を内蔵していない旧式の飛行船では対抗できない。せいぜい体当たり程度の反撃しか繰り出せず、その程度の攻撃でダイダラボッチを倒しきれるはずがない。
(大丈夫だ、絶対に上手くいく……皆を信じろ)
それでも今回の作戦が採用されたのは王国軍の絆を信じた上での行動であり、ナイも内容を聞いた時は驚いたが、これまで苦難を乗り越えてきた仲間達と一緒なら絶対に成功できると確信した。
この作戦にはアルトとナイのどちらかが失敗すれば全てが終わるため、どうしても彼等二人は他の者たちと一緒に出向く事ができなかった。作戦の成功確率を上げるために他の人間はダイダラボッチと戦って貰い、少しでも損傷を与えるか、あるいは体力を消耗させる必要がある。
ダイダラボッチが弱り切った時に飛行船の最後の攻撃を行い、巨大剣を喰い込ませる。この作戦が上手くいけばダイダラボッチを再び封印する、あるいはそのまま倒しきれる可能性は十分にあった。
『ナイ君、衝撃に備えてくれ……発進!!』
「くっ!?」
拡音石を通じて飛行船の甲板にアルトの声が響き、遂に飛行船が動き出す。ナイは吹き飛ばされないようにしっかりと手すりを掴む。
飛行船は浮上した時には既にダイダラボッチは巨大剣を引き抜いており、その光景を確認したナイとアルトは驚いたが、ここまできたら作戦を変更する事はできない。それに巨大剣を引き抜いて貰った方がむしろ都合がいい。
『ナイ君、準備をしてくれ……ダイダラボッチの上空へ到達したら飛行船は一時停止させる』
「分かってる……と言っても聞こえないか」
拡音石を通して声を届けられるのはアルトだけのため、ナイはアルトに言葉を伝える手段はない。それでもナイはアルトならば自分の考えが伝わると信じて手すりから手を離す。
風圧を耐え凌ぎながらナイは背中の旋斧と岩砕剣を掴み、攻撃の準備を行う。しかし、その前に彼はイリアから渡して貰った薬を思い出す。
『いいですか、ナイさん。この薬を飲めば一時的に魔力が活性化されます。つまり、普段以上に魔法の力を引きだせるという事です。その代わりに副作用で薬の効果が切れると地獄を見ますからね』
『怖いな……』
『その代わりに効果は保証しますよ』
イリアの言葉を思い出したナイは彼女から受け取った特別製の仙薬を取り出し、色々と考えた末に意を決して飲み込む。効果が現れるまでしばらく時間が掛かるため、その間にナイは船首の方へ歩を進める。
既に飛行船はダイダラボッチの上空に迫っており、やがて飛行船が停止した。ナイは船首の上から二つの大剣を背負った状態でダイダラボッチを見下ろし、そして彼は武器を抜く。その光景は正にヨウが予知夢で見た夢と全く同じ光景だった。
(これがダイダラボッチ……改めてみると凄いな、こんな生き物がいるなんて……)
飛行船の船首からダイダラボッチを見下ろすと、ナイは改めてダイダラボッチの巨大さを思い知り、こんな生物がこの世に存在する事が驚きだった。土鯨も大きかったが、こちらの場合はゴーレムのように巨大な外殻を身に纏っているため、ダイダラボッチの方が大きいかもしれない。
ダイダラボッチも本を正せば力の弱い1匹のゴブリンだったのかもしれない。それこそ「貧弱」の技能を持ち合わせるナイと同じような存在だった可能性もある。しかし、非力なゴブリンといえども力を身に付ければここまで強大な存在に成れる事を思い知らされる。
だからといってダイダラボッチの存在を許すわけにはいかず、ここでダイダラボッチを放置すれば和国のように王国も滅ぼされる。それだけは避けるためにナイは旋斧と岩砕剣を構え、攻撃の機会を伺う。
(よし、今だ……!!)
薬の効果が現れ始めたのかナイの身体が熱くなり、彼は即座に強化術を発動させた。その結果、ナイの身体は光に包まれる。聖属性の魔力が全身に纏い、その光の輝きは月光を想像させた。
空から降り注ぐ光に気付いたダイダラボッチは顔を見上げると、そこには見た事もない巨大な生物が浮かんでいる事に驚く。旧式の飛行船の外装は「鮫」のような姿をしているため、それを見たダイダラボッチが巨大生物と勘違いするのも無理はない。
「ギアアアアッ……!?」
唐突に上空に現れた巨大な物体にダイダラボッチは戸惑い、一瞬ではあるが動き停止した。その隙を逃さずにナイは強化術を発動させ、普段よりも魔力の出力を高めた状態で飛び降りる。
「うおおおおおっ!!」
「ギアッ!?」
ナイは飛行船の船首から飛び降りてダイダラボッチの元へ向かうと、突如として自分の元に落ちてきたナイにダイダラボッチは一瞬だけ驚く。しかし、即座に反応して右腕を繰り出す。
「ギアアアアッ!!」
「岩砕剣!!」
自分に目掛けて迫る巨大な拳に対してナイは岩砕剣を空中で振り下ろし、この際に地属性の魔力を送り込む。作戦前にナイは魔法腕輪に複数の地属性の魔石を組み込み、それらを利用して一気に岩砕剣に魔力を送り込む。
魔操術を極めた今のナイならば複数の魔石から同時に魔力を引きだし、それを岩砕剣に送り込むのは容易い。岩砕剣の刃が紅色に染まり、魔力を送り込まれるごとに重量を増していく。
「はぁあああああっ!!」
「グギャアアアッ!?」
限界まで重量が増加した岩砕剣はダイダラボッチの繰り出した右拳を貫き、そのままダイダラボッチの腕を切り裂きながらナイはダイダラボッチの顔面に目掛けて接近する。
(ここだっ!!)
ダイダラボッチの腕を切り裂きながらダイダラボッチの顔面に迫り、途中で岩砕剣を手放してナイはダイダラボッチの腕を足場に利用して旋斧を振りかざす。
「うおおおおおっ!!」
「ギアアアアッ!?」
旋斧を両手で構えた状態でナイは振りかざし、ダイダラボッチの顔面に目掛けて刃を繰り出す。だが、ダイダラボッチは咄嗟に左腕を伸ばして旋斧の一撃を掌で受け止めた。
(しまった!?)
ナイは岩砕剣を捨てて旋斧で止めを刺そうとしたが、それさえもダイダラボッチに防がれてしまう。旋斧は掌に食い込み、そのままの状態でダイダラボッチはナイを掴んで押し潰そうとした。
「ギアアアアアッ!!」
「うわぁあああっ!?」
「ナイ!?」
「ナイ君!?」
「ナイさん!?」
ナイがダイダラボッチに掴まれて地面に叩き付けられようとする光景を見て他の者達は悲鳴を上げるが、この時にナイの左腕だけは拘束を免れていた。それどころかまるでナイの意思に反して動き出したかのように地面に向けて腕が伸びる。
彼の左腕には闘拳が装着され、その上には「反魔の盾」が取り付けられている。ダイダラボッチは全力でナイを叩き潰そうとしたが、反魔の盾が先に地面に接触した瞬間、これまでにない強烈な衝撃波が発生した。
「ギアアアッ!?」
「ぐああっ!?」
『うわぁああああっ!?』
ダイダラボッチの馬鹿力で振り下ろされたナイは反魔の盾によって衝撃を跳ね返し、その反動で衝撃波が拡散してダイダラボッチも地上の者達も吹き飛ばされかける。この時にナイはダイダラボッチの手から離れ、再び上空へ浮き上がる。
闘拳と反魔の盾は地上に衝突した時に剥がれてしまい、ナイの左腕の方も損傷が酷い。しかし、イリアのくれた薬は強化術と再生術を同時に発動させる効果があり、空中に浮かんでいる間にナイの左腕は再生を果たす。
『まだだ!!まだ終わっていない!!』
空中に浮かんだナイはダイダラボッチに視線を向けて、丁度いい具合にダイダラボッチが尻餅を着いていた。しかも運がいい事に巨大剣はダイダラボッチの背中側に存在し、どうやら先ほどの反魔の盾の衝撃波で上手い具合に巨大剣が横たわる場所にダイダラボッチが倒れ込んだらしい。
本来であれば飛行中の甲板に立つ事は危険だが、それでもナイは船首に残る事にした。今回の作戦の要はナイであるため、彼はどうしても飛行船の甲板に待機していなければならない。
『いいかい、飛行船の移動速度はできる限り遅くする。但し、それでもかなりの風圧が襲ってくるはずだから落ちないように気を付けてくれ』
アルトに言われた言葉を思い出したナイは船首から落ちないようにしっかりと手すりを握りしめ、万力の如き握力で握りしめる。ダイダラボッチの姿は湖からも確認できるが、今の所は地上の王国騎士団と冒険者に気を取られて飛行船には全く気づいていない。
(この位置からでも見えるなんて……やっぱり、凄いな)
ダイダラボッチの巨体を確認したナイは少し前に自分がダイダラボッチに殺されかけた事を思い出し、もしも反魔の盾がなければ死んでいただろう。それでも彼はダイダラボッチから逃げるわけにはいかず、仲間と共に戦う事を決める。
(……不思議だな、皆が一緒だと全然怖くないや)
恐らくはナイがこれまで対峙したどんな敵よりも恐ろしい存在だが、それでもナイはダイダラボッチを見ても微塵も恐怖を感じない。不思議と自分達ならばなんとかできるという自信があった。
考え込んでいる間にも飛行船は動き出し、ダイダラボッチに気付かれないようにできる限り出力を落とした状態で浮上を行う。ここから先はダイダラボッチに気付かれない程の高度まで上昇し、ダイダラボッチに奇襲を仕掛けるのがアルトの作戦だった。
(ダイダラボッチは地上の皆に注目している……なら、空からの攻撃には対応できないはず)
ダイダラボッチは王国軍と戦う場合、地上の者達に注目して上空の警備が薄まる。その隙を突いて飛行船で攻撃を仕掛け、奴の身体に巨大剣を食い込ませる。しかし、もしもダイダラボッチが飛行船の存在に気付いたら危険を伴う。
仮にダイダラボッチが飛行船に気付いて攻撃してきた場合、兵器を内蔵していない旧式の飛行船では対抗できない。せいぜい体当たり程度の反撃しか繰り出せず、その程度の攻撃でダイダラボッチを倒しきれるはずがない。
(大丈夫だ、絶対に上手くいく……皆を信じろ)
それでも今回の作戦が採用されたのは王国軍の絆を信じた上での行動であり、ナイも内容を聞いた時は驚いたが、これまで苦難を乗り越えてきた仲間達と一緒なら絶対に成功できると確信した。
この作戦にはアルトとナイのどちらかが失敗すれば全てが終わるため、どうしても彼等二人は他の者たちと一緒に出向く事ができなかった。作戦の成功確率を上げるために他の人間はダイダラボッチと戦って貰い、少しでも損傷を与えるか、あるいは体力を消耗させる必要がある。
ダイダラボッチが弱り切った時に飛行船の最後の攻撃を行い、巨大剣を喰い込ませる。この作戦が上手くいけばダイダラボッチを再び封印する、あるいはそのまま倒しきれる可能性は十分にあった。
『ナイ君、衝撃に備えてくれ……発進!!』
「くっ!?」
拡音石を通じて飛行船の甲板にアルトの声が響き、遂に飛行船が動き出す。ナイは吹き飛ばされないようにしっかりと手すりを掴む。
飛行船は浮上した時には既にダイダラボッチは巨大剣を引き抜いており、その光景を確認したナイとアルトは驚いたが、ここまできたら作戦を変更する事はできない。それに巨大剣を引き抜いて貰った方がむしろ都合がいい。
『ナイ君、準備をしてくれ……ダイダラボッチの上空へ到達したら飛行船は一時停止させる』
「分かってる……と言っても聞こえないか」
拡音石を通して声を届けられるのはアルトだけのため、ナイはアルトに言葉を伝える手段はない。それでもナイはアルトならば自分の考えが伝わると信じて手すりから手を離す。
風圧を耐え凌ぎながらナイは背中の旋斧と岩砕剣を掴み、攻撃の準備を行う。しかし、その前に彼はイリアから渡して貰った薬を思い出す。
『いいですか、ナイさん。この薬を飲めば一時的に魔力が活性化されます。つまり、普段以上に魔法の力を引きだせるという事です。その代わりに副作用で薬の効果が切れると地獄を見ますからね』
『怖いな……』
『その代わりに効果は保証しますよ』
イリアの言葉を思い出したナイは彼女から受け取った特別製の仙薬を取り出し、色々と考えた末に意を決して飲み込む。効果が現れるまでしばらく時間が掛かるため、その間にナイは船首の方へ歩を進める。
既に飛行船はダイダラボッチの上空に迫っており、やがて飛行船が停止した。ナイは船首の上から二つの大剣を背負った状態でダイダラボッチを見下ろし、そして彼は武器を抜く。その光景は正にヨウが予知夢で見た夢と全く同じ光景だった。
(これがダイダラボッチ……改めてみると凄いな、こんな生き物がいるなんて……)
飛行船の船首からダイダラボッチを見下ろすと、ナイは改めてダイダラボッチの巨大さを思い知り、こんな生物がこの世に存在する事が驚きだった。土鯨も大きかったが、こちらの場合はゴーレムのように巨大な外殻を身に纏っているため、ダイダラボッチの方が大きいかもしれない。
ダイダラボッチも本を正せば力の弱い1匹のゴブリンだったのかもしれない。それこそ「貧弱」の技能を持ち合わせるナイと同じような存在だった可能性もある。しかし、非力なゴブリンといえども力を身に付ければここまで強大な存在に成れる事を思い知らされる。
だからといってダイダラボッチの存在を許すわけにはいかず、ここでダイダラボッチを放置すれば和国のように王国も滅ぼされる。それだけは避けるためにナイは旋斧と岩砕剣を構え、攻撃の機会を伺う。
(よし、今だ……!!)
薬の効果が現れ始めたのかナイの身体が熱くなり、彼は即座に強化術を発動させた。その結果、ナイの身体は光に包まれる。聖属性の魔力が全身に纏い、その光の輝きは月光を想像させた。
空から降り注ぐ光に気付いたダイダラボッチは顔を見上げると、そこには見た事もない巨大な生物が浮かんでいる事に驚く。旧式の飛行船の外装は「鮫」のような姿をしているため、それを見たダイダラボッチが巨大生物と勘違いするのも無理はない。
「ギアアアアッ……!?」
唐突に上空に現れた巨大な物体にダイダラボッチは戸惑い、一瞬ではあるが動き停止した。その隙を逃さずにナイは強化術を発動させ、普段よりも魔力の出力を高めた状態で飛び降りる。
「うおおおおおっ!!」
「ギアッ!?」
ナイは飛行船の船首から飛び降りてダイダラボッチの元へ向かうと、突如として自分の元に落ちてきたナイにダイダラボッチは一瞬だけ驚く。しかし、即座に反応して右腕を繰り出す。
「ギアアアアッ!!」
「岩砕剣!!」
自分に目掛けて迫る巨大な拳に対してナイは岩砕剣を空中で振り下ろし、この際に地属性の魔力を送り込む。作戦前にナイは魔法腕輪に複数の地属性の魔石を組み込み、それらを利用して一気に岩砕剣に魔力を送り込む。
魔操術を極めた今のナイならば複数の魔石から同時に魔力を引きだし、それを岩砕剣に送り込むのは容易い。岩砕剣の刃が紅色に染まり、魔力を送り込まれるごとに重量を増していく。
「はぁあああああっ!!」
「グギャアアアッ!?」
限界まで重量が増加した岩砕剣はダイダラボッチの繰り出した右拳を貫き、そのままダイダラボッチの腕を切り裂きながらナイはダイダラボッチの顔面に目掛けて接近する。
(ここだっ!!)
ダイダラボッチの腕を切り裂きながらダイダラボッチの顔面に迫り、途中で岩砕剣を手放してナイはダイダラボッチの腕を足場に利用して旋斧を振りかざす。
「うおおおおおっ!!」
「ギアアアアッ!?」
旋斧を両手で構えた状態でナイは振りかざし、ダイダラボッチの顔面に目掛けて刃を繰り出す。だが、ダイダラボッチは咄嗟に左腕を伸ばして旋斧の一撃を掌で受け止めた。
(しまった!?)
ナイは岩砕剣を捨てて旋斧で止めを刺そうとしたが、それさえもダイダラボッチに防がれてしまう。旋斧は掌に食い込み、そのままの状態でダイダラボッチはナイを掴んで押し潰そうとした。
「ギアアアアアッ!!」
「うわぁあああっ!?」
「ナイ!?」
「ナイ君!?」
「ナイさん!?」
ナイがダイダラボッチに掴まれて地面に叩き付けられようとする光景を見て他の者達は悲鳴を上げるが、この時にナイの左腕だけは拘束を免れていた。それどころかまるでナイの意思に反して動き出したかのように地面に向けて腕が伸びる。
彼の左腕には闘拳が装着され、その上には「反魔の盾」が取り付けられている。ダイダラボッチは全力でナイを叩き潰そうとしたが、反魔の盾が先に地面に接触した瞬間、これまでにない強烈な衝撃波が発生した。
「ギアアアッ!?」
「ぐああっ!?」
『うわぁああああっ!?』
ダイダラボッチの馬鹿力で振り下ろされたナイは反魔の盾によって衝撃を跳ね返し、その反動で衝撃波が拡散してダイダラボッチも地上の者達も吹き飛ばされかける。この時にナイはダイダラボッチの手から離れ、再び上空へ浮き上がる。
闘拳と反魔の盾は地上に衝突した時に剥がれてしまい、ナイの左腕の方も損傷が酷い。しかし、イリアのくれた薬は強化術と再生術を同時に発動させる効果があり、空中に浮かんでいる間にナイの左腕は再生を果たす。
『まだだ!!まだ終わっていない!!』
空中に浮かんだナイはダイダラボッチに視線を向けて、丁度いい具合にダイダラボッチが尻餅を着いていた。しかも運がいい事に巨大剣はダイダラボッチの背中側に存在し、どうやら先ほどの反魔の盾の衝撃波で上手い具合に巨大剣が横たわる場所にダイダラボッチが倒れ込んだらしい。
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