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最終章
第1054話 鏡の盾と刀
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「そうか、そういう事だったのか……どうやら奴の持っている武器は刃が超高速で振動しているんだ。きっとあの馬鹿げた刃の切れ味は奴の持っている武器の能力なんだろう」
「超振動!?」
「な、なるほど……よく分からないけど、とにかく物凄く切れ味が凄い刃物って事だね?めちゃくちゃ刃が震える魔剣みたいなもんなのかい?」
「テン……間違ってはいないと思いますが、その説明の仕方は少々子供っぽいですよ」
鎧武者の所持する大太刀の能力が判明したが、不利な状況であることは変わらず、振動する刃を攻略しなければどうしようもできない。
この世界の魔法金属の中でもオリハルコンは最も希少な金属であり、伝説の聖剣の素材として利用された金属でもある。つまりは鎧武者の所持する大太刀は伝説の聖剣に匹敵する程の「魔剣」の可能性もあった。
「皆、気を付けるんだ。いくら魔剣や魔斧でもあの武器に触れると壊れてしまうかもしれない。そして知っての通り、壊れた魔剣は修復しても能力が使えなくなる可能性がある」
「くっ……」
「ふ、触れるのも駄目なんですか?」
「さっきのを見ただろう?刃が重なっただけで真っ二つに切れたんだ。あたし達の肉体なら触れただけで終わりだね」
「ウオオオオッ……!!」
鎧武者はテン達に囲まれても全く動じた様子はなく、大太刀を構えたまま動かない。武器すらも刃に触れずに本体に攻撃を仕掛けるのは難しく、テン達の中で遠距離攻撃を行えるのは暴風で「風の斬撃」を生み出せるリンと、柄の部分を伸ばす事ができる如意斧の所有者のミイナだけだった。
「そ、そうだミイナ!!あの投げ飛ばす斧は持ってきてないんですか!?」
「輪斧なら飛行船においてきた……あったとしても切り裂かれた困る」
「ここは私がどうにかするしかないという事か……来い、化物め!!」
「ウオオオッ!!」
リンが暴風の刃に風の魔力を纏わせると、それに気づいた鎧武者は彼女に攻撃を仕掛けようと近付いてきた。先ほどまでは重量のある岩石の外殻に覆われていた事で動作が鈍かった鎧武者だったが、外殻を外した事で移動速度が格段に増していた。
「オアアッ!!」
「甘いっ!!嵐突き!!」
接近してきた鎧武者に対してリンは振り下ろされた大太刀を回避すると、彼女は刃に纏わせた風の魔力を竜巻のように変化させ、鎧武者の胴体に目掛けて突き刺す。
彼女の「嵐突き」はまともに衝突すれば鋼鉄の壁を貫く威力を誇るが、鎧武者の本体も相当に頑丈らしく、衝撃を受けて数メートルは吹き飛びながらも踏み止まる。
「ウオオッ……!?」
「ちぃっ……この程度の攻撃は通じないか」
「何て硬さだい……さっき身に着けていた外殻よりも硬いんじゃないのかい?」
リンの魔剣を受けても鎧武者には掠り傷すら与えられず、迷宮都市を守護していた人造ゴーレムと同等の硬度を誇ると思われた。この鎧武者を倒せるとしたらナイやゴウカや剛力の剣士か、あるいは地属性の魔力で攻撃力を強化させるロランのような剣士にしか倒せない。
「こいつっ!!よくもルナの斧を!!」
「馬鹿、不用意に近づくんじゃないよ!!真っ二つにされたいのかい!?」
「いったいどうすれば……」
「何か手はないのでしょうか……」
「皆で一斉に攻撃しても倒せなさそう」
「ドリスがいれば……いや、何でもない」
「オオオオッ……!!」
この場に集まった者達では対抗手段はなく、時間だけが過ぎてしまう。しかし、アルトはこれまでの鎧武者の行動を思い返し、そして牙山に視線を向けた。
(この人造ゴーレムが和国の人間が作り出した守護者なら……きっと、争わずに封じられた妖刀だけを回収する手段があるはずだ)
アルトは牙のような形をした岩山の中に隠されているはずの妖刀の存在を思い出し、この地に妖刀を封じた和国の人間は子孫が封印を解放する時、守護者に襲われないように何らかの仕掛けを残しているのではないかと考える。
シノビ一族に伝わる巻物にはこの地に妖刀だけが封じられている事しか描かれていなかったが、他にも手がかりがあったのではないかと考える。そうでもなければシノビ一族の子孫がこの地に訪れても妖刀を回収しようとしても、守護者に邪魔されてしまう。
(何か見落としている事があるはずだ……それは何だ?)
必死にアルトは思考を巡らせ、彼は守護者が離れた事で岩山の出入口が開かれた事に気付く。今ならば守護者を他の者に任せて中に入る事ができるかもしれず、アルトは一か八か慎重に鎧武者に気付かれないように接近する。
(今のうちに中に入れるかも……)
アルトはこっそりと岩山の方へ近づき、鎧武者に気付かれる前に岩山の内部にまで続く洞窟の中に入ろうとした。しかし、ここで彼は予想外の光景を確認した。
「何だ、これは……!?」
洞窟の中に入ろうとした瞬間、アルトは信じがたい光景を目にした。洞窟の内側には出入口を塞いでいた鎧武者と瓜二つの姿をした石像が並べられており、その石像達にはそれぞれ武器や防具を身に着けた状態で放置されていた。
魔道具職人を目指すアルトだからこそ、彼は石像が身に着けている武器や防具の類がどれも普通の物ではなく、多少は埃を被って汚れているがどれも一級品の魔剣や魔道具の類だと見抜く。
(す、凄い!!これは凄いぞ……どれもこれも見た事がない物ばかりだ!!)
数多くの魔剣や魔道具の知識を持つアルトだが、岩山の中に隠されていた武器や防具の類はアルトの知識にはない物ばかりだった。それは和国が栄えていた時代に作り出された代物である事の証明であり、ここに封じられた武器や防具は和国が滅びて歴史の闇の中に埋もれてしまった武具や防具だと悟る。
(なんて素晴らしいんだ!!これだけの魔剣や魔道具を作り出す技術は今の時代にはない!!ああ、こんな素晴らしい物を作る国が大昔に滅びたなんて……)
アルトは我を忘れて洞窟の中に入り込み、石像が所持している武器や防具を片っ端から調べていく。どれもこれもがアルトも始めて見る代物ばかりであり、彼は外の状況を忘れて調査に熱中する。
(これは鏡かな?いや、この形から察するにただの鏡じゃない。ナイ君の反魔の盾に似ているような……おや!?あそこにあるのはなんだろう!?)
鏡のように光り輝く盾を発見したアルトはそれを持ち上げると、彼は隣に立っている石像に同じく鏡の様に煌めく「日本刀」が飾られている事に気付く。
夢中になってアルトは石像が所持している武器や防具に手を伸ばすと、不意に彼は後方に影が差す。アルトは洞窟の中の武器や防具の調査に夢中で気づかないが、外からテンの焦った声が響く。
「アルト王子!!何してんだい、早く逃げなっ!!」
「待ってくれ、今はこれを調べているから……うわっ!?」
「ウオオオオッ!!」
アルトはテンに声を掛けられて振り返ると、そこには鎧武者が立っていた。鎧武者はアルトに目掛けて既に大太刀を構えており、それを見たアルトは咄嗟に後ろに跳ぶ。
「フンッ!!」
「うわぁあああっ!?」
「アルト王子!!早く逃げてください!!」
鎧武者が振り下ろした刃が地面に叩き付けられ、先ほどと同じく刃が根本近くまで食い込む。どうにかアルトは回避に成功したが、彼は鏡のように煌めく盾と刀を手に持って急いで出口に向けて駆け出す。
「ま、待ってくれ!!話せば分かる!!」
「オアアッ!!」
「早く逃げてください!!命乞いが通じる相手じゃありませんよ!!」
逃げ出したアルトに対して鎧武者は後を追いかけ、必死にアルトは逃げるが自分が手にした武器と防具はちゃっかりと持って帰ろうとする。どれもこれもアルトにとっては初めて見る代物であり、簡単に手放せる代物ではない。
鎧武者は洞窟の中から武器と防具を持ち出したアルトに対して容赦なく大太刀を振り回し、その際に洞窟内の石像をいくつか切断する。自分と同じ形をしていようと鎧武者は構わずに石像を切り裂く。
「ウオオオオッ!!」
「ひいいっ!?誰か助けてくれ!!」
「ミイナ!!」
「仕方ない……アルト王子、これに掴まって」
ヒイロがミイナに声をかけると彼女は面倒そうに如意戦の柄の部分を伸ばし、彼に向けて一直線に柄を伸ばす。それを目にしたアルトは咄嗟に柄にしがみつくと、ミイナは柄を元に戻してアルトを強制的に引き寄せる。
「えいっ」
「うわわっ!?」
「オアッ!?」
アルトが洞窟の外まで引き寄せられると、それを見た鎧武者は後を追いかける。しかし、ここで外で待機していたルナが両手に岩石を持ち上げて駆けつけてきた。
「皆、離れろ!!でりゃあああっ!!」
『うわっ!?』
「オアッ……!?」
ルナは岩石を投げ飛ばすと洞窟の出入口を塞ぎ、鎧武者は洞窟の中に封じ込める。無論、鎧武者が手にしている大太刀を利用すれば簡単に岩石を切断して外へ飛び出してくるはずであり、急いで逃げるように促す。
「よし、今のうちにとんずらするよ!!」
「しかし、武器と防具の回収は!?」
「そんな事を言っている場合じゃない!!殺される前に逃げるよ!!」
「仕方ありませんね……」
「逃げるが勝ち」
「行きましょう!!」
「とんずらだっ!!」
鎧武者が抜け出す前にアルト達は駆け出し、牙山から離れて撤退しようとした。だが、逃げる際中にアルトは一度だけ振り返り、何故か洞窟内に閉じ込められた鎧武者が出てくる様子がない事に気付いて足を止める。
「超振動!?」
「な、なるほど……よく分からないけど、とにかく物凄く切れ味が凄い刃物って事だね?めちゃくちゃ刃が震える魔剣みたいなもんなのかい?」
「テン……間違ってはいないと思いますが、その説明の仕方は少々子供っぽいですよ」
鎧武者の所持する大太刀の能力が判明したが、不利な状況であることは変わらず、振動する刃を攻略しなければどうしようもできない。
この世界の魔法金属の中でもオリハルコンは最も希少な金属であり、伝説の聖剣の素材として利用された金属でもある。つまりは鎧武者の所持する大太刀は伝説の聖剣に匹敵する程の「魔剣」の可能性もあった。
「皆、気を付けるんだ。いくら魔剣や魔斧でもあの武器に触れると壊れてしまうかもしれない。そして知っての通り、壊れた魔剣は修復しても能力が使えなくなる可能性がある」
「くっ……」
「ふ、触れるのも駄目なんですか?」
「さっきのを見ただろう?刃が重なっただけで真っ二つに切れたんだ。あたし達の肉体なら触れただけで終わりだね」
「ウオオオオッ……!!」
鎧武者はテン達に囲まれても全く動じた様子はなく、大太刀を構えたまま動かない。武器すらも刃に触れずに本体に攻撃を仕掛けるのは難しく、テン達の中で遠距離攻撃を行えるのは暴風で「風の斬撃」を生み出せるリンと、柄の部分を伸ばす事ができる如意斧の所有者のミイナだけだった。
「そ、そうだミイナ!!あの投げ飛ばす斧は持ってきてないんですか!?」
「輪斧なら飛行船においてきた……あったとしても切り裂かれた困る」
「ここは私がどうにかするしかないという事か……来い、化物め!!」
「ウオオオッ!!」
リンが暴風の刃に風の魔力を纏わせると、それに気づいた鎧武者は彼女に攻撃を仕掛けようと近付いてきた。先ほどまでは重量のある岩石の外殻に覆われていた事で動作が鈍かった鎧武者だったが、外殻を外した事で移動速度が格段に増していた。
「オアアッ!!」
「甘いっ!!嵐突き!!」
接近してきた鎧武者に対してリンは振り下ろされた大太刀を回避すると、彼女は刃に纏わせた風の魔力を竜巻のように変化させ、鎧武者の胴体に目掛けて突き刺す。
彼女の「嵐突き」はまともに衝突すれば鋼鉄の壁を貫く威力を誇るが、鎧武者の本体も相当に頑丈らしく、衝撃を受けて数メートルは吹き飛びながらも踏み止まる。
「ウオオッ……!?」
「ちぃっ……この程度の攻撃は通じないか」
「何て硬さだい……さっき身に着けていた外殻よりも硬いんじゃないのかい?」
リンの魔剣を受けても鎧武者には掠り傷すら与えられず、迷宮都市を守護していた人造ゴーレムと同等の硬度を誇ると思われた。この鎧武者を倒せるとしたらナイやゴウカや剛力の剣士か、あるいは地属性の魔力で攻撃力を強化させるロランのような剣士にしか倒せない。
「こいつっ!!よくもルナの斧を!!」
「馬鹿、不用意に近づくんじゃないよ!!真っ二つにされたいのかい!?」
「いったいどうすれば……」
「何か手はないのでしょうか……」
「皆で一斉に攻撃しても倒せなさそう」
「ドリスがいれば……いや、何でもない」
「オオオオッ……!!」
この場に集まった者達では対抗手段はなく、時間だけが過ぎてしまう。しかし、アルトはこれまでの鎧武者の行動を思い返し、そして牙山に視線を向けた。
(この人造ゴーレムが和国の人間が作り出した守護者なら……きっと、争わずに封じられた妖刀だけを回収する手段があるはずだ)
アルトは牙のような形をした岩山の中に隠されているはずの妖刀の存在を思い出し、この地に妖刀を封じた和国の人間は子孫が封印を解放する時、守護者に襲われないように何らかの仕掛けを残しているのではないかと考える。
シノビ一族に伝わる巻物にはこの地に妖刀だけが封じられている事しか描かれていなかったが、他にも手がかりがあったのではないかと考える。そうでもなければシノビ一族の子孫がこの地に訪れても妖刀を回収しようとしても、守護者に邪魔されてしまう。
(何か見落としている事があるはずだ……それは何だ?)
必死にアルトは思考を巡らせ、彼は守護者が離れた事で岩山の出入口が開かれた事に気付く。今ならば守護者を他の者に任せて中に入る事ができるかもしれず、アルトは一か八か慎重に鎧武者に気付かれないように接近する。
(今のうちに中に入れるかも……)
アルトはこっそりと岩山の方へ近づき、鎧武者に気付かれる前に岩山の内部にまで続く洞窟の中に入ろうとした。しかし、ここで彼は予想外の光景を確認した。
「何だ、これは……!?」
洞窟の中に入ろうとした瞬間、アルトは信じがたい光景を目にした。洞窟の内側には出入口を塞いでいた鎧武者と瓜二つの姿をした石像が並べられており、その石像達にはそれぞれ武器や防具を身に着けた状態で放置されていた。
魔道具職人を目指すアルトだからこそ、彼は石像が身に着けている武器や防具の類がどれも普通の物ではなく、多少は埃を被って汚れているがどれも一級品の魔剣や魔道具の類だと見抜く。
(す、凄い!!これは凄いぞ……どれもこれも見た事がない物ばかりだ!!)
数多くの魔剣や魔道具の知識を持つアルトだが、岩山の中に隠されていた武器や防具の類はアルトの知識にはない物ばかりだった。それは和国が栄えていた時代に作り出された代物である事の証明であり、ここに封じられた武器や防具は和国が滅びて歴史の闇の中に埋もれてしまった武具や防具だと悟る。
(なんて素晴らしいんだ!!これだけの魔剣や魔道具を作り出す技術は今の時代にはない!!ああ、こんな素晴らしい物を作る国が大昔に滅びたなんて……)
アルトは我を忘れて洞窟の中に入り込み、石像が所持している武器や防具を片っ端から調べていく。どれもこれもがアルトも始めて見る代物ばかりであり、彼は外の状況を忘れて調査に熱中する。
(これは鏡かな?いや、この形から察するにただの鏡じゃない。ナイ君の反魔の盾に似ているような……おや!?あそこにあるのはなんだろう!?)
鏡のように光り輝く盾を発見したアルトはそれを持ち上げると、彼は隣に立っている石像に同じく鏡の様に煌めく「日本刀」が飾られている事に気付く。
夢中になってアルトは石像が所持している武器や防具に手を伸ばすと、不意に彼は後方に影が差す。アルトは洞窟の中の武器や防具の調査に夢中で気づかないが、外からテンの焦った声が響く。
「アルト王子!!何してんだい、早く逃げなっ!!」
「待ってくれ、今はこれを調べているから……うわっ!?」
「ウオオオオッ!!」
アルトはテンに声を掛けられて振り返ると、そこには鎧武者が立っていた。鎧武者はアルトに目掛けて既に大太刀を構えており、それを見たアルトは咄嗟に後ろに跳ぶ。
「フンッ!!」
「うわぁあああっ!?」
「アルト王子!!早く逃げてください!!」
鎧武者が振り下ろした刃が地面に叩き付けられ、先ほどと同じく刃が根本近くまで食い込む。どうにかアルトは回避に成功したが、彼は鏡のように煌めく盾と刀を手に持って急いで出口に向けて駆け出す。
「ま、待ってくれ!!話せば分かる!!」
「オアアッ!!」
「早く逃げてください!!命乞いが通じる相手じゃありませんよ!!」
逃げ出したアルトに対して鎧武者は後を追いかけ、必死にアルトは逃げるが自分が手にした武器と防具はちゃっかりと持って帰ろうとする。どれもこれもアルトにとっては初めて見る代物であり、簡単に手放せる代物ではない。
鎧武者は洞窟の中から武器と防具を持ち出したアルトに対して容赦なく大太刀を振り回し、その際に洞窟内の石像をいくつか切断する。自分と同じ形をしていようと鎧武者は構わずに石像を切り裂く。
「ウオオオオッ!!」
「ひいいっ!?誰か助けてくれ!!」
「ミイナ!!」
「仕方ない……アルト王子、これに掴まって」
ヒイロがミイナに声をかけると彼女は面倒そうに如意戦の柄の部分を伸ばし、彼に向けて一直線に柄を伸ばす。それを目にしたアルトは咄嗟に柄にしがみつくと、ミイナは柄を元に戻してアルトを強制的に引き寄せる。
「えいっ」
「うわわっ!?」
「オアッ!?」
アルトが洞窟の外まで引き寄せられると、それを見た鎧武者は後を追いかける。しかし、ここで外で待機していたルナが両手に岩石を持ち上げて駆けつけてきた。
「皆、離れろ!!でりゃあああっ!!」
『うわっ!?』
「オアッ……!?」
ルナは岩石を投げ飛ばすと洞窟の出入口を塞ぎ、鎧武者は洞窟の中に封じ込める。無論、鎧武者が手にしている大太刀を利用すれば簡単に岩石を切断して外へ飛び出してくるはずであり、急いで逃げるように促す。
「よし、今のうちにとんずらするよ!!」
「しかし、武器と防具の回収は!?」
「そんな事を言っている場合じゃない!!殺される前に逃げるよ!!」
「仕方ありませんね……」
「逃げるが勝ち」
「行きましょう!!」
「とんずらだっ!!」
鎧武者が抜け出す前にアルト達は駆け出し、牙山から離れて撤退しようとした。だが、逃げる際中にアルトは一度だけ振り返り、何故か洞窟内に閉じ込められた鎧武者が出てくる様子がない事に気付いて足を止める。
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