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最終章
第1052話 改造開始!!
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「おい……この王子、本当に大丈夫か?変わり者だとは聞いていたけど、ここまでなんて……」
「大丈夫……と思いたい時期もあった」
「本当に大丈夫なんだろうな!?」
ガロの質問にアルトの護衛役であるミイナはあからさまに視線をそらして曖昧な返事をする。そんな彼女にガロは増々不安を抱くが、頼まれた以上は指示通りに動く。
最初の過程はブラックゴーレムの熱線を浴びて溶解してしまったドゴンの頭部の修復であり、まずは熱を与えて頭部を溶かした後に形を整える。この作業は熟練の鍛冶師でなければ難しく、ハマーンの弟子達が交代しながら作業を行う。
「せいっ、せいっ!!」
「よっ、ほっ!!」
「うりゃりゃりゃっ!!」
様々な掛け声を出しながらハマーンの弟子達がドゴンの頭部を整えるために鉄槌を叩き込むが、流石に伝説の聖剣の素材で使用されているオリハルコンで構成されたドゴンは簡単には直らない。
「はあっ、はあっ……こ、こいつはきつい。こんだけ熱して打ってるのにようやくここまでか」
「王子、王都に戻ったらちゃんと報酬を払ってくださいよ」
「勿論だ、約束するよ……また父上に迷惑を掛けそうだな(ぼそっ)」
「え、王子?今何か言いました?」
「何でもないよ」
どうにかハマーンの弟子達が数人がかりでドゴンの頭部を整えると、次は本格的に改造作業へと入る。改造といっても今回はドゴンの肉体その物に手を加えるのではなく、彼のために新しい装備を取り付ける事にした。
ドゴンの強化のために使用されるのは彼が苦戦を強いられた「ブラックゴーレム」から回収した素材を利用する。アルトは前にナイがグツグ火山で倒して持ち返った素材と、今回の飛行船を襲撃してきたブラックゴーレムの素材を利用して新しい装備を作り出す。
「このブラックゴーレムはドゴンのオリハルコンにも匹敵する硬度を誇る。しかもあらゆる魔法を吸収し、その奪った魔法の効力を宿す事ができる……魔法金属の原材料の鉱石とよく似ている」
「ほう、こいつは面白い素材だな!!」
「親方がいれば喜んだだろうな……」
アルトの説明を聞いて鍛冶師達は目を輝かせてブラックゴーレムの素材を確認するが、この素材に関しては生前のハマーンも興味を抱いていた。
「君達に作ってほしいのはドゴンの外装だ。これらを利用してドゴンの身を守る装備を一式作ってほしい」
「えっ!?なんでそんな物を……」
「王子、ドゴンはオリハルコンで構成されているんですぜ?身を守る装備なんて……」
「無用とは言い切れないだろう。実際にこうしてドゴンは損傷を受けている、確かにオリハルコンは魔法金属の中でも頑丈で耐久力も高いが、決して無敵ではないんだ」
鍛冶師達は元から防御力と耐久力に優れているドゴンに身を守る装備など必要ないと思うが、アルトはこれから先もブラックゴーレムのような存在と戦う事を考慮し、今よりも防御面を固めるためにドゴンに新しい装備を作る必要がある事を説く。
「まだブラックゴーレムが残っている可能性もある。それにブラックゴーレムの素材で構成された装備なら、魔法攻撃を受けても吸収して防ぐ事ができる。つまり、相手がブラックゴーレムだとしても攻撃を受けても身を守る装備が必要なんだ」
「ちょっと待ってください、ブラックゴーレムが魔法を吸収するのはこの黒水晶ですよ。こいつが魔法を吸収して他の箇所に魔力を伝達させるんです」
「だからその黒水晶を搭載した装備を作ってほしいんだ」
「そんなめちゃくちゃな!?王子、この素材がどれだけ価値のある代物か分かってるんですか!?それを勝手に使ってドゴンの外装にするなんて……」
「責任は僕が取る。それにこれが成功すればドゴンはブラックゴーレムの対抗手段を得られる……つまり、今後ブラックゴーレムが現れた場合はドゴンに対処させればいい。新しく倒したブラックゴーレムの素材は君達に渡す事を約束する」
「「「…………」」」
鍛冶師達は貴重なブラックゴーレムの素材を利用してドゴンの外装を作り上げる事に苦悩したが、アルトの話を聞いて彼等は思い悩む。鍛冶師としては未知の能力を持つ鉱石を手に入れる機会は滅多になく、アルトの話が本当ならば今後ブラックゴーレムが現れた場合は自分達が素材を独り占めできる。
ブラックゴーレムの素材は鍛冶師にとっては謎に満ち溢れた魅力ある素材であり、それらを利用してドゴンの外装を作り出す事には抵抗感がある。しかし、目先の利益よりも将来の利益を期待して彼等は仕事を引き受ける事にした。
「分かりましたよ!!そこまで言うのなら約束して下さいよ!?」
「よし、それならすぐに取り掛かってくれ!!それと素材が余るようなら武器と防具の製作も頼みたい」
「ええっ!?俺達にどれだけ仕事させるつもりですか!?」
「頼んだよ、もしも王都に戻れたら君達の好きな酒をいくらでも買ってあげよう」
「うううっ……くそっ、やってやらぁっ!!」
「「「うおおおおっ!!」」」
アルトの言葉に乗せられて鍛冶師達は全力で作業に取り掛かり、その様子を見ていた他の者たちは本当に大丈夫なのかと思っていると、ここで慌てた様子のヒイロが駆けつけてきた。
「ア、アルト王子!!ここへいらっしゃったんですね!!」
「ヒイロ?どうしたんだい、そんなに慌てて……君は牙山に向かったんじゃなかったのかい?」
「はあっ、はあっ……実はアルト王子に協力してもらいたい事がありまして……」
牙山で走ってきたヒイロは非常に疲れた様子で事情を説明し、牙山に封じられた妖刀の回収のために爆弾が必要になった事を話す。
話を聞き終えたアルトは考え込み、爆弾を作れといわれても彼は牙山の岩壁を確認していない。爆弾を製作するにしても規模と威力を計算しなければならず、アルトはとりあえずは自分を連れていくように告げる。
「なるほど、そういう事情なら僕が直接出向いた方が良さそうだね。イリア、ここは君に任せるよ」
「はいはい、分かりましたよ。どうせ敵なんて来ないでしょうし……」
「ランファンさんとゴンザレス君は残ってくれ。力仕事も必要だろうし……そういえばルナ君は何処にいるんだい?」
「あのガキならあっちで昼寝してたぞ。なんでも飛行船の中だとゆっくり眠れなかったから、しばらくは起こすなって……」
「自由人だね。それならガロ君、君も付いて来てもらおうか」
「俺が!?」
アルトはヒイロとガロを護衛として連れて行き、他の者には飛行船を任せて牙山へ向かう――
――牙山に辿り着いた頃にはすっかりと日も明けてしまい、結局は討伐隊の殆どは徹夜してしまう。それでもアルト達は辿り着いた牙山の光景を見て眠気が吹き飛び、その異様な風景に流石のアルトも冷や汗を流す。
「な、何だここ……骨だらけじゃねえか!!」
「これは凄いな、話は聞いていたが……」
「ううっ……相変わらず酷い臭いです」
牙の形をした岩山の周囲には無数の骨が散らばっており、酷い死臭が漂っていた。この臭いのせいで牙山の近くには魔物も動物も近寄らず、牙竜以外に住み着く生物はいない。
鼻が利くガロはここへ来たことを後悔するが、彼等が訪れるとすぐにテン達が迎えてくれた。テンはヒイロ以外にガロも居る事に不思議に思うが、大して気にせずにアルトに話しかける。
「アルト王子、急に呼び出して悪かったね」
「いや、別に構わないさ。それで例の岩壁は何処にあるんだい?」
「こっちさ、付いてきな」
テンの案内の元でアルトは妖刀の隠し場所に繋がる岩山の岩壁まで案内してもらうと、顔色が悪いリンと他の王国騎士達が待ち構えていた。
「アルト王子……お待ちしていました」
「リン副団長、あまり無理をしない方がいい。休むのならここから離れた方が……」
「いえ、いつ敵が襲ってくるか分かりません。見張りは必要です」
アンが牙竜を再び引き返してくる事を警戒し、リンはこの場から離れようとしない。牙竜の力ならば岩壁を破壊し、中に封じられている妖刀を回収するのも容易い事だった。だが、アンがムサシ地方を離れてイチノ地方へ向かおうとしている事を誰も知らない。
アルトは岩壁に視線を向け、他の箇所と比べて色合いが異なり、実際に触れて硬さを確かめる。テンの退魔刀やリンの暴風でさえも表面を少し削り取る事が限界であり、これを破壊するにはナイやロランやゴウカといった剛腕の剣士でも難しいと思われた。
「これを破壊するのはちょっと苦労しそうだね……マグマゴーレムの核を爆発させても壊すのは難しいかもしれない」
「そこまで硬いのですか!?」
「ああ、だけど触れた感じ……何か違和感を感じる。ちょっと、誰か水を持っていないかい?」
「水、ですか?」
思いもよらぬアルトの言葉に他の者たちは戸惑うが、ヒイロがすぐに水筒を用意するとアルトは岩壁に視線を向ける。他の箇所と違う色合い、そして実際に触れて感じた感触、アルトはもしやと思いながらも彼は水筒の水を振りかける。
「皆、離れるんだ!!」
「「「えっ?」」」
アルトの言葉に全員がどういう意味なのかと思った時、彼は水筒の水を岩壁に注ぐ。その瞬間、水が振りかけられた箇所が変色し、泥の様に溶けてしまう。その直後、岩壁に人面のような物が現れて鳴き声を放つ。
――ゴルァアアアアアッ!!
奇怪な鳴き声を上げて姿を現したのは岩壁に擬態していた巨大なゴーレムであり、それを見たアルトは慌てて逃げ出す。他の者たちも武器を構え、正体を晒したゴーレムと向き合う。
「な、何だぁっ!?」
「やっぱりそうだったか……皆、こいつはゴーレムだ!!しかもただのロックゴーレムじゃない!!」
「ゴラァアアアアッ!!」
巨大ゴーレムは岩壁から自分の身体を引き剥がすと、改めてアルト達を見下ろす。大きさはゴーレムキングほどではないが、それでも巨人族を上回る体躯だった。
どうやら岩山を守護していたのは牙竜だけではなく、この巨大ゴーレムこそが宝の番人らしい。だが、巨大ゴーレムが引き剥がされた事で岩山に通じる出入口が開き、それを確認したアルトが指示を出す。
「大丈夫……と思いたい時期もあった」
「本当に大丈夫なんだろうな!?」
ガロの質問にアルトの護衛役であるミイナはあからさまに視線をそらして曖昧な返事をする。そんな彼女にガロは増々不安を抱くが、頼まれた以上は指示通りに動く。
最初の過程はブラックゴーレムの熱線を浴びて溶解してしまったドゴンの頭部の修復であり、まずは熱を与えて頭部を溶かした後に形を整える。この作業は熟練の鍛冶師でなければ難しく、ハマーンの弟子達が交代しながら作業を行う。
「せいっ、せいっ!!」
「よっ、ほっ!!」
「うりゃりゃりゃっ!!」
様々な掛け声を出しながらハマーンの弟子達がドゴンの頭部を整えるために鉄槌を叩き込むが、流石に伝説の聖剣の素材で使用されているオリハルコンで構成されたドゴンは簡単には直らない。
「はあっ、はあっ……こ、こいつはきつい。こんだけ熱して打ってるのにようやくここまでか」
「王子、王都に戻ったらちゃんと報酬を払ってくださいよ」
「勿論だ、約束するよ……また父上に迷惑を掛けそうだな(ぼそっ)」
「え、王子?今何か言いました?」
「何でもないよ」
どうにかハマーンの弟子達が数人がかりでドゴンの頭部を整えると、次は本格的に改造作業へと入る。改造といっても今回はドゴンの肉体その物に手を加えるのではなく、彼のために新しい装備を取り付ける事にした。
ドゴンの強化のために使用されるのは彼が苦戦を強いられた「ブラックゴーレム」から回収した素材を利用する。アルトは前にナイがグツグ火山で倒して持ち返った素材と、今回の飛行船を襲撃してきたブラックゴーレムの素材を利用して新しい装備を作り出す。
「このブラックゴーレムはドゴンのオリハルコンにも匹敵する硬度を誇る。しかもあらゆる魔法を吸収し、その奪った魔法の効力を宿す事ができる……魔法金属の原材料の鉱石とよく似ている」
「ほう、こいつは面白い素材だな!!」
「親方がいれば喜んだだろうな……」
アルトの説明を聞いて鍛冶師達は目を輝かせてブラックゴーレムの素材を確認するが、この素材に関しては生前のハマーンも興味を抱いていた。
「君達に作ってほしいのはドゴンの外装だ。これらを利用してドゴンの身を守る装備を一式作ってほしい」
「えっ!?なんでそんな物を……」
「王子、ドゴンはオリハルコンで構成されているんですぜ?身を守る装備なんて……」
「無用とは言い切れないだろう。実際にこうしてドゴンは損傷を受けている、確かにオリハルコンは魔法金属の中でも頑丈で耐久力も高いが、決して無敵ではないんだ」
鍛冶師達は元から防御力と耐久力に優れているドゴンに身を守る装備など必要ないと思うが、アルトはこれから先もブラックゴーレムのような存在と戦う事を考慮し、今よりも防御面を固めるためにドゴンに新しい装備を作る必要がある事を説く。
「まだブラックゴーレムが残っている可能性もある。それにブラックゴーレムの素材で構成された装備なら、魔法攻撃を受けても吸収して防ぐ事ができる。つまり、相手がブラックゴーレムだとしても攻撃を受けても身を守る装備が必要なんだ」
「ちょっと待ってください、ブラックゴーレムが魔法を吸収するのはこの黒水晶ですよ。こいつが魔法を吸収して他の箇所に魔力を伝達させるんです」
「だからその黒水晶を搭載した装備を作ってほしいんだ」
「そんなめちゃくちゃな!?王子、この素材がどれだけ価値のある代物か分かってるんですか!?それを勝手に使ってドゴンの外装にするなんて……」
「責任は僕が取る。それにこれが成功すればドゴンはブラックゴーレムの対抗手段を得られる……つまり、今後ブラックゴーレムが現れた場合はドゴンに対処させればいい。新しく倒したブラックゴーレムの素材は君達に渡す事を約束する」
「「「…………」」」
鍛冶師達は貴重なブラックゴーレムの素材を利用してドゴンの外装を作り上げる事に苦悩したが、アルトの話を聞いて彼等は思い悩む。鍛冶師としては未知の能力を持つ鉱石を手に入れる機会は滅多になく、アルトの話が本当ならば今後ブラックゴーレムが現れた場合は自分達が素材を独り占めできる。
ブラックゴーレムの素材は鍛冶師にとっては謎に満ち溢れた魅力ある素材であり、それらを利用してドゴンの外装を作り出す事には抵抗感がある。しかし、目先の利益よりも将来の利益を期待して彼等は仕事を引き受ける事にした。
「分かりましたよ!!そこまで言うのなら約束して下さいよ!?」
「よし、それならすぐに取り掛かってくれ!!それと素材が余るようなら武器と防具の製作も頼みたい」
「ええっ!?俺達にどれだけ仕事させるつもりですか!?」
「頼んだよ、もしも王都に戻れたら君達の好きな酒をいくらでも買ってあげよう」
「うううっ……くそっ、やってやらぁっ!!」
「「「うおおおおっ!!」」」
アルトの言葉に乗せられて鍛冶師達は全力で作業に取り掛かり、その様子を見ていた他の者たちは本当に大丈夫なのかと思っていると、ここで慌てた様子のヒイロが駆けつけてきた。
「ア、アルト王子!!ここへいらっしゃったんですね!!」
「ヒイロ?どうしたんだい、そんなに慌てて……君は牙山に向かったんじゃなかったのかい?」
「はあっ、はあっ……実はアルト王子に協力してもらいたい事がありまして……」
牙山で走ってきたヒイロは非常に疲れた様子で事情を説明し、牙山に封じられた妖刀の回収のために爆弾が必要になった事を話す。
話を聞き終えたアルトは考え込み、爆弾を作れといわれても彼は牙山の岩壁を確認していない。爆弾を製作するにしても規模と威力を計算しなければならず、アルトはとりあえずは自分を連れていくように告げる。
「なるほど、そういう事情なら僕が直接出向いた方が良さそうだね。イリア、ここは君に任せるよ」
「はいはい、分かりましたよ。どうせ敵なんて来ないでしょうし……」
「ランファンさんとゴンザレス君は残ってくれ。力仕事も必要だろうし……そういえばルナ君は何処にいるんだい?」
「あのガキならあっちで昼寝してたぞ。なんでも飛行船の中だとゆっくり眠れなかったから、しばらくは起こすなって……」
「自由人だね。それならガロ君、君も付いて来てもらおうか」
「俺が!?」
アルトはヒイロとガロを護衛として連れて行き、他の者には飛行船を任せて牙山へ向かう――
――牙山に辿り着いた頃にはすっかりと日も明けてしまい、結局は討伐隊の殆どは徹夜してしまう。それでもアルト達は辿り着いた牙山の光景を見て眠気が吹き飛び、その異様な風景に流石のアルトも冷や汗を流す。
「な、何だここ……骨だらけじゃねえか!!」
「これは凄いな、話は聞いていたが……」
「ううっ……相変わらず酷い臭いです」
牙の形をした岩山の周囲には無数の骨が散らばっており、酷い死臭が漂っていた。この臭いのせいで牙山の近くには魔物も動物も近寄らず、牙竜以外に住み着く生物はいない。
鼻が利くガロはここへ来たことを後悔するが、彼等が訪れるとすぐにテン達が迎えてくれた。テンはヒイロ以外にガロも居る事に不思議に思うが、大して気にせずにアルトに話しかける。
「アルト王子、急に呼び出して悪かったね」
「いや、別に構わないさ。それで例の岩壁は何処にあるんだい?」
「こっちさ、付いてきな」
テンの案内の元でアルトは妖刀の隠し場所に繋がる岩山の岩壁まで案内してもらうと、顔色が悪いリンと他の王国騎士達が待ち構えていた。
「アルト王子……お待ちしていました」
「リン副団長、あまり無理をしない方がいい。休むのならここから離れた方が……」
「いえ、いつ敵が襲ってくるか分かりません。見張りは必要です」
アンが牙竜を再び引き返してくる事を警戒し、リンはこの場から離れようとしない。牙竜の力ならば岩壁を破壊し、中に封じられている妖刀を回収するのも容易い事だった。だが、アンがムサシ地方を離れてイチノ地方へ向かおうとしている事を誰も知らない。
アルトは岩壁に視線を向け、他の箇所と比べて色合いが異なり、実際に触れて硬さを確かめる。テンの退魔刀やリンの暴風でさえも表面を少し削り取る事が限界であり、これを破壊するにはナイやロランやゴウカといった剛腕の剣士でも難しいと思われた。
「これを破壊するのはちょっと苦労しそうだね……マグマゴーレムの核を爆発させても壊すのは難しいかもしれない」
「そこまで硬いのですか!?」
「ああ、だけど触れた感じ……何か違和感を感じる。ちょっと、誰か水を持っていないかい?」
「水、ですか?」
思いもよらぬアルトの言葉に他の者たちは戸惑うが、ヒイロがすぐに水筒を用意するとアルトは岩壁に視線を向ける。他の箇所と違う色合い、そして実際に触れて感じた感触、アルトはもしやと思いながらも彼は水筒の水を振りかける。
「皆、離れるんだ!!」
「「「えっ?」」」
アルトの言葉に全員がどういう意味なのかと思った時、彼は水筒の水を岩壁に注ぐ。その瞬間、水が振りかけられた箇所が変色し、泥の様に溶けてしまう。その直後、岩壁に人面のような物が現れて鳴き声を放つ。
――ゴルァアアアアアッ!!
奇怪な鳴き声を上げて姿を現したのは岩壁に擬態していた巨大なゴーレムであり、それを見たアルトは慌てて逃げ出す。他の者たちも武器を構え、正体を晒したゴーレムと向き合う。
「な、何だぁっ!?」
「やっぱりそうだったか……皆、こいつはゴーレムだ!!しかもただのロックゴーレムじゃない!!」
「ゴラァアアアアッ!!」
巨大ゴーレムは岩壁から自分の身体を引き剥がすと、改めてアルト達を見下ろす。大きさはゴーレムキングほどではないが、それでも巨人族を上回る体躯だった。
どうやら岩山を守護していたのは牙竜だけではなく、この巨大ゴーレムこそが宝の番人らしい。だが、巨大ゴーレムが引き剥がされた事で岩山に通じる出入口が開き、それを確認したアルトが指示を出す。
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