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最終章
第1048話 待たせたな!!
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「貴方、本当に面白いわね……あの時に見逃して良かったわ」
「……?」
アンの言葉にナイは意味が分からず、他の者たちも戸惑う。しかし、すぐにアンはナイから目線を外すと牙竜に次の命令を与える。
「だけどもう用済みよ。これ以上、貴方達に付き合っている暇はないわ」
「ちっ……俺達を始末するつもりか!?」
「王国騎士を舐めないでくださいましっ!!」
「刺し違えてでもお前を倒す!!」
「お前達は下がっていろ!!ここは俺がやる!!」
「はあっ、はあっ……」
牙竜を利用して自分達を殺すつもりなのかとナイ達は警戒すると、不意にナイだけは森の方に視線を向ける。そんな彼の行為に気付いたアンは不思議に思って森に振り返ると、遠くの方から物音が聞こえてきた。
最初は何の音だか分からなかったが、耳を済ませると森の中から大きな生き物が駆けつけるような足音が鳴り響く。
「何?この足音は……」
「あれは……まさか!?」
『ふはははははっ!!』
森の中から騒がしい笑い声と悲鳴が響き渡り、全員が驚いて振り返るとそこには木々の隙間を潜り抜けて駆け抜けるゴウカと、その背中にしがみつくマリンの姿があった。
「ゴウカさん!?」
『待たせたな!!まだ牙竜は倒していないだろうな!?吾輩の出番は残っているんだろうな!!』
「ば、馬鹿ぁっ!?早く止まれ!!」
全力疾走で森を駆け抜けてきたロランは谷に辿り着くと、それを見たアンは呆気に取られた。討伐隊は自分の仕掛けた罠で動けないはずだが、ゴウカとマリンがここへ駆けつけてきた事に動揺する。
「あ、貴方達どうやってここまで!?」
『それはこいつのお陰だ』
「ぷるるんっ」
「プルミン!?」
ゴウカはマリンの背中に張り付いていたプルミンを指差し、二人の傍にプルリンが居る事にナイは驚く。プルミンに手を伸ばしたゴウカは掌で彼を抱えると、ゴウカはここまでの道中で何が起きたのかを話す。
『このスライム小僧のお陰でお前が仕掛けた罠は全て見抜いたぞ!!森中に設置したマグマゴーレムの核は全部回収した!!』
「な、何ですって!?」
「ぷるぷるっ(やってやったぜ)」
『どうやらスライムの感知能力を舐めていたようだな……うっ、吐き気が』
アンがナイ達と話し込んでいた間、後続の部隊はアンのマグマゴーレムの核の位置をプルミンに教えてもらって全ての場所を見抜いて回収を行っていた。スライムの感知能力は生物だけではなく、魔石なども正確に感じ取る事ができる。
森の中に仕掛けられていたマグマゴーレムの核は全てプルミンが見つけ出し、既に処理済みだった。そのお陰で妨害を気にせずにゴウカは谷へ駆けつけ、他の者たちも遅れてやってきた。
「ナイ君、無事!?」
「大丈夫ですか!?」
「副団長!!ご無事ですか!?」
「ウォンッ!!」
ゴウカの他にもリーナ達も駆けつけ、続々と森の中から人が集まってきた。それを見たアンは流石に冷や汗を流し、これで戦力差は逆転した。
「ここまでだ、魔物使い……いや、アンよ。お前に勝ち目はなくなった」
「いくら竜種だろうとよ、これだけの人数に勝てると思ってるのか!?」
『ほう、こいつが牙竜か……久々に本気で戦えそうだ!!』
『気持ち悪い、後は任せた』
「駄目だよマリンさん!!一緒に戦ってよ!?」
「くっ……何という威圧感」
「グギャアッ……!!」
大将軍のロランと黄金級冒険者達が前に出ると流石の牙竜も後退り、これだけの面子に囲まれてはアンも焦りを隠せない。まさかこんなにも後続の部隊が合流するとは夢にも思わなかった。
プルミンの感知能力を侮っていたのがアンの誤算であり、負傷した状態の牙竜では流石にここに集まった人間全員を始末する事はできない。シノビとクノも訪れると、顔色が悪いナイの元に二人は向かう。
「ナイ殿、大丈夫でござるか!?」
「これを飲め、毒消しの効果がある」
「あ、ありがとうございます……」
ナイはクノに肩を貸して貰い、シノビから受け取った薬を飲む。すると一気に身体が楽になり、動けるまでに体力を取り戻す。
「うわっ……凄い、身体が楽になりました」
「シノビ一族に伝わる秘伝の薬だ……奴が牙竜か」
「ううっ……伝承通りに恐ろしい容貌でござる」
「グァアアアアアッ!!」
シノビとクノを目にすると牙竜は興奮した様子で鳴き声を上げ、二人は牙竜を見るのは初めてだが、牙竜は二人のような忍者装束を身に着けた者を何十人、何百人と見てきた。
牙竜が住処としている牙山はかつて数多くのシノビ一族の人間が挑み、そして牙竜に返り討ちにされた。逆に言えば牙竜は何百人ものシノビ一族の人間を殺してきた事を意味しており、再び自分の前に現れたシノビ一族の人間に興奮するのも無理はない。
「流石に今の状態でこの人数を相手にするのは……ちょっときつそうね」
「強がりを言ってんじゃねえ!!この状況で逃げられると思ってるのか!?」
アンの言葉にガオウは武器を構え、味方が駆けつけてくれた事で精神を持ち直した。ナイも薬の効果で十分に動ける程に回復すると、落ちていた武器を拾い上げる。
これで聖女騎士団と白狼騎士団を除く面子がこの場に集まり、傷を負った牙竜ならば十分に勝ち目はあった。しかし、アンは自分が不利な立場になると知ると、彼女は諦めた様に肩をすくめる。
「どうやら今回は私の負けのようね」
「どういう意味だ?」
「降伏するなら今の内ですわよ!!」
「降伏?冗談じゃないわ……負けを認めると言っても、諦めたつもりはないわ」
ドリスの言葉にアンは冷たい視線を向け、彼女は指を鳴らす。その瞬間、牙竜は今日一番の咆哮を上げた。
――グギャアアアアアアアアッ!!
鼓膜が破れかねない程の大声量で牙竜は咆哮を放つと、ナイ達は反射的に耳元を塞いでしまう。その隙を逃さずにアンは牙竜にしがみつき、全速力で駆け抜けさせる。
「近いうちにまた会いましょう!!」
「ま、待て!?」
「くそっ、逃げたぞ!!」
『こらぁあああっ!!待たんかぁあああっ!!』
逃げ出したアンと牙竜を見てナイ達は呆気に取られ、ゴウカは怒りの声を上げて後を追いかけようとした。しかし、それを止めたのはロランだった。
「待て、奴を追うな!!」
『ぬうっ!?しかし、ここで逃げられたら……』
「どのみち、我々には後を追いかける事はできん……残念だが、ここで諦めるしかあるまい」
牙竜の移動速度を見てロランは追跡を諦めるように促し、現在の討伐隊は馬も騎獣の類を従えていない。こんな状態で追いかけた所で牙竜に追いつけるはずがないと止めるが、ここでビャクが鳴き声を上げる。
「ウォンッ!!」
「ビャク……そうだ、ビャクなら後を追えます!!」
「白狼種か……確かに白狼種の足ならば奴を追えるかもしれんが、追いついた所で殺されるだけだぞ?」
「それならば追いつかなければいいだけです。一定の距離を保って、奴等に気付かれないように尾行します!!奴等が何処へ逃げたのかを探りながら目印も置いて行きます!!」
ロランの言葉を聞いてビャクが反応し、白狼種であるビャクならば牙竜の移動速度にも付いていける可能性はあった。それにビャクの嗅覚ならば離れた場所でも臭いを辿って追いかける事ができる。
シノビはビャクに乗って牙竜を追跡し、目印を残して牙竜が移動した道を討伐隊に伝える。仮にアンが尾行に気付いたとしても白狼種のビャクならば逃げ切れる可能性はある事を伝えるとロランは考え込む。
「ビャク、といったな。本当にこの白狼種で牙竜に追いつけるのか?」
「ウォオオンッ!!」
「……自分を信じろと言ってます」
「信じろ、か。よし、では任せたぞ」
「分かりました。ビャク、行くよ!!」
「ナイ君、それなら僕も一緒に……」
「いや、ビャクも二人を乗せると本気で走れないから僕だけで行く。大丈夫、信じて待ってて」
「そ、そう?」
リーナが同行を願い出たが、ナイはそれを断って一人でビャクに乗り込む。他の者たちはナイを心配するが、ここで牙竜を見失うわけにはいかず、二人を信じて送り込む。
「気を付けろ、無理だと思ったらすぐに引き返すんだ」
「ナイ君、無茶な真似は駄目だからね!!」
「これも持って行ってほしいでござる!!拙者の弁当でござる!!」
「油断するな、尾行する時は細心の注意を払え」
「アンの従えている魔獣に見つかるなよ!!」
「はい……行ってきます!!」
「ウォオオオンッ!!」
ビャクはナイを乗せると牙竜の臭いを辿り、その後を追いかける。狼種の中でも最速を誇る白狼種の移動速度ならば牙竜にも追いつける可能性は十分にあった――
――追跡を開始してから一時間後、ナイは森の中を移動していた。定期的に目印を残しながら移動を行う必要があるため、途中で何度かナイは樹木の樹皮を刃物で切り付けて目印を残す。
「これでよし……さあ、行こうか」
「ウォンッ」
ナイはビャクに乗り込むと、再び森の中を移動する。既に時刻は夕方を迎え、もう間もなく夜を迎える。それでもナイ達は未だに牙竜の姿は捕えておらず、臭いを辿ってここまで来たが本当に追いついているのか分からなかった。
白狼種の移動速度ならば牙竜にも負けないとナイは信じていたが、ここまで全速力で移動しているというのに牙竜とアンの姿が見えない事にナイは不安を抱く。まさかとは思うが、最悪の場合、アンはナイ達の尾行に気付いて待ち伏せいる可能性もある。
「……?」
アンの言葉にナイは意味が分からず、他の者たちも戸惑う。しかし、すぐにアンはナイから目線を外すと牙竜に次の命令を与える。
「だけどもう用済みよ。これ以上、貴方達に付き合っている暇はないわ」
「ちっ……俺達を始末するつもりか!?」
「王国騎士を舐めないでくださいましっ!!」
「刺し違えてでもお前を倒す!!」
「お前達は下がっていろ!!ここは俺がやる!!」
「はあっ、はあっ……」
牙竜を利用して自分達を殺すつもりなのかとナイ達は警戒すると、不意にナイだけは森の方に視線を向ける。そんな彼の行為に気付いたアンは不思議に思って森に振り返ると、遠くの方から物音が聞こえてきた。
最初は何の音だか分からなかったが、耳を済ませると森の中から大きな生き物が駆けつけるような足音が鳴り響く。
「何?この足音は……」
「あれは……まさか!?」
『ふはははははっ!!』
森の中から騒がしい笑い声と悲鳴が響き渡り、全員が驚いて振り返るとそこには木々の隙間を潜り抜けて駆け抜けるゴウカと、その背中にしがみつくマリンの姿があった。
「ゴウカさん!?」
『待たせたな!!まだ牙竜は倒していないだろうな!?吾輩の出番は残っているんだろうな!!』
「ば、馬鹿ぁっ!?早く止まれ!!」
全力疾走で森を駆け抜けてきたロランは谷に辿り着くと、それを見たアンは呆気に取られた。討伐隊は自分の仕掛けた罠で動けないはずだが、ゴウカとマリンがここへ駆けつけてきた事に動揺する。
「あ、貴方達どうやってここまで!?」
『それはこいつのお陰だ』
「ぷるるんっ」
「プルミン!?」
ゴウカはマリンの背中に張り付いていたプルミンを指差し、二人の傍にプルリンが居る事にナイは驚く。プルミンに手を伸ばしたゴウカは掌で彼を抱えると、ゴウカはここまでの道中で何が起きたのかを話す。
『このスライム小僧のお陰でお前が仕掛けた罠は全て見抜いたぞ!!森中に設置したマグマゴーレムの核は全部回収した!!』
「な、何ですって!?」
「ぷるぷるっ(やってやったぜ)」
『どうやらスライムの感知能力を舐めていたようだな……うっ、吐き気が』
アンがナイ達と話し込んでいた間、後続の部隊はアンのマグマゴーレムの核の位置をプルミンに教えてもらって全ての場所を見抜いて回収を行っていた。スライムの感知能力は生物だけではなく、魔石なども正確に感じ取る事ができる。
森の中に仕掛けられていたマグマゴーレムの核は全てプルミンが見つけ出し、既に処理済みだった。そのお陰で妨害を気にせずにゴウカは谷へ駆けつけ、他の者たちも遅れてやってきた。
「ナイ君、無事!?」
「大丈夫ですか!?」
「副団長!!ご無事ですか!?」
「ウォンッ!!」
ゴウカの他にもリーナ達も駆けつけ、続々と森の中から人が集まってきた。それを見たアンは流石に冷や汗を流し、これで戦力差は逆転した。
「ここまでだ、魔物使い……いや、アンよ。お前に勝ち目はなくなった」
「いくら竜種だろうとよ、これだけの人数に勝てると思ってるのか!?」
『ほう、こいつが牙竜か……久々に本気で戦えそうだ!!』
『気持ち悪い、後は任せた』
「駄目だよマリンさん!!一緒に戦ってよ!?」
「くっ……何という威圧感」
「グギャアッ……!!」
大将軍のロランと黄金級冒険者達が前に出ると流石の牙竜も後退り、これだけの面子に囲まれてはアンも焦りを隠せない。まさかこんなにも後続の部隊が合流するとは夢にも思わなかった。
プルミンの感知能力を侮っていたのがアンの誤算であり、負傷した状態の牙竜では流石にここに集まった人間全員を始末する事はできない。シノビとクノも訪れると、顔色が悪いナイの元に二人は向かう。
「ナイ殿、大丈夫でござるか!?」
「これを飲め、毒消しの効果がある」
「あ、ありがとうございます……」
ナイはクノに肩を貸して貰い、シノビから受け取った薬を飲む。すると一気に身体が楽になり、動けるまでに体力を取り戻す。
「うわっ……凄い、身体が楽になりました」
「シノビ一族に伝わる秘伝の薬だ……奴が牙竜か」
「ううっ……伝承通りに恐ろしい容貌でござる」
「グァアアアアアッ!!」
シノビとクノを目にすると牙竜は興奮した様子で鳴き声を上げ、二人は牙竜を見るのは初めてだが、牙竜は二人のような忍者装束を身に着けた者を何十人、何百人と見てきた。
牙竜が住処としている牙山はかつて数多くのシノビ一族の人間が挑み、そして牙竜に返り討ちにされた。逆に言えば牙竜は何百人ものシノビ一族の人間を殺してきた事を意味しており、再び自分の前に現れたシノビ一族の人間に興奮するのも無理はない。
「流石に今の状態でこの人数を相手にするのは……ちょっときつそうね」
「強がりを言ってんじゃねえ!!この状況で逃げられると思ってるのか!?」
アンの言葉にガオウは武器を構え、味方が駆けつけてくれた事で精神を持ち直した。ナイも薬の効果で十分に動ける程に回復すると、落ちていた武器を拾い上げる。
これで聖女騎士団と白狼騎士団を除く面子がこの場に集まり、傷を負った牙竜ならば十分に勝ち目はあった。しかし、アンは自分が不利な立場になると知ると、彼女は諦めた様に肩をすくめる。
「どうやら今回は私の負けのようね」
「どういう意味だ?」
「降伏するなら今の内ですわよ!!」
「降伏?冗談じゃないわ……負けを認めると言っても、諦めたつもりはないわ」
ドリスの言葉にアンは冷たい視線を向け、彼女は指を鳴らす。その瞬間、牙竜は今日一番の咆哮を上げた。
――グギャアアアアアアアアッ!!
鼓膜が破れかねない程の大声量で牙竜は咆哮を放つと、ナイ達は反射的に耳元を塞いでしまう。その隙を逃さずにアンは牙竜にしがみつき、全速力で駆け抜けさせる。
「近いうちにまた会いましょう!!」
「ま、待て!?」
「くそっ、逃げたぞ!!」
『こらぁあああっ!!待たんかぁあああっ!!』
逃げ出したアンと牙竜を見てナイ達は呆気に取られ、ゴウカは怒りの声を上げて後を追いかけようとした。しかし、それを止めたのはロランだった。
「待て、奴を追うな!!」
『ぬうっ!?しかし、ここで逃げられたら……』
「どのみち、我々には後を追いかける事はできん……残念だが、ここで諦めるしかあるまい」
牙竜の移動速度を見てロランは追跡を諦めるように促し、現在の討伐隊は馬も騎獣の類を従えていない。こんな状態で追いかけた所で牙竜に追いつけるはずがないと止めるが、ここでビャクが鳴き声を上げる。
「ウォンッ!!」
「ビャク……そうだ、ビャクなら後を追えます!!」
「白狼種か……確かに白狼種の足ならば奴を追えるかもしれんが、追いついた所で殺されるだけだぞ?」
「それならば追いつかなければいいだけです。一定の距離を保って、奴等に気付かれないように尾行します!!奴等が何処へ逃げたのかを探りながら目印も置いて行きます!!」
ロランの言葉を聞いてビャクが反応し、白狼種であるビャクならば牙竜の移動速度にも付いていける可能性はあった。それにビャクの嗅覚ならば離れた場所でも臭いを辿って追いかける事ができる。
シノビはビャクに乗って牙竜を追跡し、目印を残して牙竜が移動した道を討伐隊に伝える。仮にアンが尾行に気付いたとしても白狼種のビャクならば逃げ切れる可能性はある事を伝えるとロランは考え込む。
「ビャク、といったな。本当にこの白狼種で牙竜に追いつけるのか?」
「ウォオオンッ!!」
「……自分を信じろと言ってます」
「信じろ、か。よし、では任せたぞ」
「分かりました。ビャク、行くよ!!」
「ナイ君、それなら僕も一緒に……」
「いや、ビャクも二人を乗せると本気で走れないから僕だけで行く。大丈夫、信じて待ってて」
「そ、そう?」
リーナが同行を願い出たが、ナイはそれを断って一人でビャクに乗り込む。他の者たちはナイを心配するが、ここで牙竜を見失うわけにはいかず、二人を信じて送り込む。
「気を付けろ、無理だと思ったらすぐに引き返すんだ」
「ナイ君、無茶な真似は駄目だからね!!」
「これも持って行ってほしいでござる!!拙者の弁当でござる!!」
「油断するな、尾行する時は細心の注意を払え」
「アンの従えている魔獣に見つかるなよ!!」
「はい……行ってきます!!」
「ウォオオオンッ!!」
ビャクはナイを乗せると牙竜の臭いを辿り、その後を追いかける。狼種の中でも最速を誇る白狼種の移動速度ならば牙竜にも追いつける可能性は十分にあった――
――追跡を開始してから一時間後、ナイは森の中を移動していた。定期的に目印を残しながら移動を行う必要があるため、途中で何度かナイは樹木の樹皮を刃物で切り付けて目印を残す。
「これでよし……さあ、行こうか」
「ウォンッ」
ナイはビャクに乗り込むと、再び森の中を移動する。既に時刻は夕方を迎え、もう間もなく夜を迎える。それでもナイ達は未だに牙竜の姿は捕えておらず、臭いを辿ってここまで来たが本当に追いついているのか分からなかった。
白狼種の移動速度ならば牙竜にも負けないとナイは信じていたが、ここまで全速力で移動しているというのに牙竜とアンの姿が見えない事にナイは不安を抱く。まさかとは思うが、最悪の場合、アンはナイ達の尾行に気付いて待ち伏せいる可能性もある。
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