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最終章
第1037話 貧弱の英雄VS最強のゴーレム
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「なっ!?あれを受けてまだ立てるのかい!?」
「皆は下がっててください!!巻き込まれないように!!」
「ナイ君、一人で大丈夫なのかい!?」
「が、頑張って!!もしも怪我をしたらすぐに治してあげるからね!!」
ナイは皆から離れると正気に戻ったアルトは心配そうな声をかけ、モモはナイの応援を行う。そんな二人に対してナイは頷き、ブラックゴーレムの元へ駆け出す。
ブラックゴーレムは現れたナイに対して口元を開き、赤色の光を灯す。それを見たナイはドゴンを吹き飛ばした「熱線」を放射するつもりだと気付き、反魔の盾を構えた。
「アガァアアアアッ!!」
「くぅっ!?」
反魔の盾を利用してナイはブラックゴーレムが吐き出した熱線を受け止めると、まるで鏡に反射するかの如く熱線を別方向へと受け流す。反魔の盾は衝撃と魔法攻撃を跳ね返す性質を持ち、それを利用してナイはブラックゴーレムの攻撃を防ぎながら向かう。
「うおおおおっ!!」
「ゴアッ!?」
旋斧を手にしたナイはブラックゴーレムに振りかざすと、相手は左腕を構えて防ぐ。単純な硬度は通常種のゴーレムとは比べ物にならず、ナイの全力の一撃を受けてもブラックゴーレムには罅も入らない。
(やっぱり硬い……生半可な攻撃は通じないか)
ブラックゴーレムを倒すためにはナイも渾身の一撃を与えなければならず、そう考えると旋斧では威力不足だった。ナイは距離を取ると旋斧を手放し、岩砕剣を引き抜く。一撃の重さならば岩砕剣の方が上であり、更に今回は反魔の盾を利用する。
「喰らえっ!!」
「ゴアアッ!?」
反魔の盾を構えたナイは岩砕剣を叩き付けると、その際に発生した衝撃波をブラックゴーレムに放つ。思いもよらぬ攻撃を受けたブラックゴーレムは体勢を崩し、そんなブラックゴーレムに対してナイは踏み込む。
岩砕剣を両手で握りしめたナイは「剛力」の技能を発揮させ、更にテン仕込みの剛剣の一撃を放つ。全身の筋力を利用してナイは岩砕剣を振り下ろすと、ブラックゴーレムの肉体に衝撃が走った。
「だあああっ!!」
「ウオオッ!!」
ブラックゴーレムはナイの攻撃を両腕を交差して防ぎ、まるで格闘家のような防御をしたブラックゴーレムにナイは驚く。以前に遭遇したブラックゴーレムと比べて魔物使いのアンが使役するブラックゴーレムは格闘家の動作を取り入れ、不用意に近付いてきたナイに対して足払いを行う。
「ウオオッ!!」
「うわっ!?」
「危ない!?」
ナイが足払いを受けて地面に倒れると、ブラックゴーレムは右足を振りかざして踏み潰そうとしてきた。それを見た他の者が声を上げるが、ナイは自分に迫りくる足に対して咄嗟に盾で弾き返す。
「このっ!!」
「ゴアッ!?」
踏み潰そうとした瞬間に反魔の盾によって防がれ、その際に衝撃波が発生してブラックゴーレムの体勢が崩れる。ナイは体勢を立て直すと岩砕剣を振りかざし、今度は一回転しながら叩き込む。
「円斧!!」
「ゴガァッ!?」
「よし、押してるよ!!」
「行けぇっ!!」
回転させる事で勢いを加速させて放つナイの剣技を受け、ブラックゴーレムは後退するとテンとルナが声を上げる。ナイの方が若干押しており、どんな攻撃も反魔の盾で弾き返せる彼が有利だった。
しかし、ブラックゴーレムも怒りを露わにして徐々に発熱し、全身の色が赤色に変色を始める。またもや熱線でも吐き出すつもりなのかとナイは警戒するが、ブラックゴーレムは背中の噴射口から火属性の魔力を放出させて加速を行う。
「ウオオオオッ!!」
「うわっ!?」
「は、早い!?」
「あんなに大きいのに何て早さなの!?」
ブラックゴーレムは加速するとあまりの移動速度にナイは対処しきれず、ブラックゴーレムは上空へと跳び上がる。それを見たナイ達は何をするつもりなのかと見上げると、ブラックゴーレムは空中に浮かんだ状態で両腕を突き出す。
「ゴアアアアッ!!」
「おい、嘘だろ!?」
「そんなまさかっ……逃げろ、ナイ君!!」
「えっ!?」
両腕を構えた瞬間にブラックゴーレムの肩の部分が変形し、背中だけでなはなく両肩にも「噴射口」が誕生した。そして噴射口から火属性の魔力が放出されると、凄まじい勢いで両腕が本体から離れて地上に発射された。
自身の両腕を切り離して地上へ撃ち込んだブラックゴーレムの行動に誰もが驚き、ナイは慌てて避けようとしたが加速した状態のブラックゴーレムの腕は本体よりも移動速度が速く、右拳の方が先にナイの手にしていた反魔の盾と衝突する。
「くううっ!?」
「は、弾き返した!!」
「いや、駄目だ!!」
初撃は防ぐ事に成功したが、この時にナイの反魔の盾が弾き飛んでしまう。どうやらブラックゴーレムは攻撃を仕掛ける際に掌を開いた状態だったらしく、反魔の盾に衝突した時に盾に指が食い込んでいたらしい。
盾が弾かれたナイは続けて放たれた左腕に対して岩砕剣で防ぐしかなく、衝撃に備えて大剣を支える。そして岩砕剣に左拳が衝突した瞬間、地面にクレーターが出来上がる程の衝撃がナイへと襲い掛かった。
「がはぁっ……!?」
「ナ、ナイくぅうんっ!!」
「モモ、駄目よ!!今近付いたら……!!」
ナイがブラックゴーレムの攻撃を受けて地面に倒れる姿を見て、反射的にモモは彼を助けるために飛び出そうとしたがヒナに止められた。
空中に浮かんでいたブラックゴーレムは地面に倒れたナイを見ると、容赦せずに今度は自分の身体ごと体当たりするつもりなのか突っ込んできた。それを見たナイは目を見開き、避ける事もできずに直撃を受けてしまう。
「ゴアアアアッ!!」
「うわぁああああっ!?」
「止めてぇえええっ!!」
ブラックゴーレムの突進を見てモモは悲鳴を上げ、ナイの身体に再び強烈な衝撃が広がる。それを見た者達はナイが死んだのではないかと思ったが、ナイは手にしていた岩砕剣でブラックゴーレムを防いでいた。
「ぐはぁっ……!!」
「ゴオオッ……!?」
自分の体当たりも岩砕剣で受け止めたナイにブラックゴーレムは驚くが、衝撃を完全に受け切れるはずがなく、ナイは血反吐を吐いて地面に力なく倒れ込む。それを見たブラックゴーレムはもうナイが動けないと判断し、それでも確実に止めを刺す岩砕剣越しに足を押し付けて踏み潰そうとした。
「ウオオオオッ!!」
「がああっ……!?」
「や、止めるんだ!!」
「もう見てられないぞ!!」
「ナイ君!!」
「ちくしょうがっ!!」
ナイが踏み潰されそうな姿を見て他の者たちは居てもたってもいられず、彼を救うために駆け出そうとした。しかし、それを予測していたかのようにブラックゴーレムは振り返り、口元に赤色の光を灯す。
「まずい!?皆、散るんだ!!」
「モモ、危ない!!」
「わあっ!?」
「アガァアアアアッ!!」
ブラックゴーレムはテン達に対して口元から熱線を放ち、それを事前に予想したアルトは全員に散らばるように指示を出す。しかし、直撃は避けられても熱線が地面に衝突した瞬間に爆発を起こす。
爆発の衝撃でテン達は吹き飛ばされ、全員が地面に倒れ込む。その光景を確認したブラックゴーレムは邪魔者が消えたと判断してナイの止めを刺す事に集中しようとした。しかし、ここで足元に違和感を感じる。
「おいっ……お前、今何をした……!?」
「ゴアッ……!?」
「皆に……手を出すな!!」
ブラックゴーレムがナイを見下ろした瞬間、今までにない気迫をナイは放ち、凄まじい腕力を発揮してナイはブラックゴーレムを持ち上げる。ブラックゴーレムの体重はロックゴーレムの十倍以上の重量を誇るが、ナイは傷を負った状態でブラックゴーレムを持ち上げると、地面に叩き付けた。
「だあああっ!!」
「ゴアッ!?アガァッ!?ウオッ!?」
力任せにナイは何度もブラックゴーレムを地面に叩き付け、最終的にはブラックゴーレムの巨体を振り回す。あまりの腕力にブラックゴーレムは抵抗する事ができず、そのまま投げ飛ばされてしまう。
「うりゃあああっ!!」
「ゴアアアッ!?」
投げ飛ばされたブラックゴーレムは悲鳴を上げながら湖に向けて突っ込み、そのまま水中に沈んでしまう。普通のゴーレムならば水が弱点で戦闘不能なのだが、特殊な鉱石で構成されているブラックゴーレムには通じない。
水中に沈みながらもブラックゴーレムは身体を発熱させ、再び赤色に変色すると噴射口から火属性の魔力を噴き出す。水中でも高速移動ができるらしく、ブラックゴーレムは水面に浮上すると怒りの咆哮を放つ。
「ウオオオオッ!!」
「くそっ……まだ動けるのか」
ナイは再生術を発動させてどうにか身体が動けるまでに回復すると、再び空中に浮上したブラックゴーレムを見て舌打ちを行う。ここまでの戦闘でブラックゴーレムに有効的な損傷は与えられておらず、その代わりに先ほどの攻撃でブラックゴーレムは両腕を失っていた。
(切り離した両腕は動かす事ができないのか……待てよ、そういえば前の時は……)
前回に戦ったブラックゴーレムは身体の各所に埋め込まれている黒水晶に魔力を吸収し、それを利用して攻撃を行っていた事をナイは思い出す。今回現れたブラックゴーレムも身体の各所に埋め込まれた黒水晶に火属性の魔力を宿していた。
以前の時はブラックゴーレムは吸収した魔力を解放すればすぐに魔力切れを引き起こしたが、今回のブラックゴーレムは凄まじい勢いで火属性の魔力を放出しているにも関わらず、魔力が切れる様子がない。よほど黒水晶に魔力を蓄積しているのかと思われるが、その魔力はどうやって手に入れたのかナイは気になった。
しかし、今はブラックゴーレムが魔力を蓄積させた方法よりも倒す方法を考えなければならず、この時にナイはブラックゴーレムから切り離された両腕に視線を向けた。両腕にも黒水晶が存在し、まだ魔力が残っているのか赤々と光っているのを確認すると、ナイはある事を思いつく。
「皆は下がっててください!!巻き込まれないように!!」
「ナイ君、一人で大丈夫なのかい!?」
「が、頑張って!!もしも怪我をしたらすぐに治してあげるからね!!」
ナイは皆から離れると正気に戻ったアルトは心配そうな声をかけ、モモはナイの応援を行う。そんな二人に対してナイは頷き、ブラックゴーレムの元へ駆け出す。
ブラックゴーレムは現れたナイに対して口元を開き、赤色の光を灯す。それを見たナイはドゴンを吹き飛ばした「熱線」を放射するつもりだと気付き、反魔の盾を構えた。
「アガァアアアアッ!!」
「くぅっ!?」
反魔の盾を利用してナイはブラックゴーレムが吐き出した熱線を受け止めると、まるで鏡に反射するかの如く熱線を別方向へと受け流す。反魔の盾は衝撃と魔法攻撃を跳ね返す性質を持ち、それを利用してナイはブラックゴーレムの攻撃を防ぎながら向かう。
「うおおおおっ!!」
「ゴアッ!?」
旋斧を手にしたナイはブラックゴーレムに振りかざすと、相手は左腕を構えて防ぐ。単純な硬度は通常種のゴーレムとは比べ物にならず、ナイの全力の一撃を受けてもブラックゴーレムには罅も入らない。
(やっぱり硬い……生半可な攻撃は通じないか)
ブラックゴーレムを倒すためにはナイも渾身の一撃を与えなければならず、そう考えると旋斧では威力不足だった。ナイは距離を取ると旋斧を手放し、岩砕剣を引き抜く。一撃の重さならば岩砕剣の方が上であり、更に今回は反魔の盾を利用する。
「喰らえっ!!」
「ゴアアッ!?」
反魔の盾を構えたナイは岩砕剣を叩き付けると、その際に発生した衝撃波をブラックゴーレムに放つ。思いもよらぬ攻撃を受けたブラックゴーレムは体勢を崩し、そんなブラックゴーレムに対してナイは踏み込む。
岩砕剣を両手で握りしめたナイは「剛力」の技能を発揮させ、更にテン仕込みの剛剣の一撃を放つ。全身の筋力を利用してナイは岩砕剣を振り下ろすと、ブラックゴーレムの肉体に衝撃が走った。
「だあああっ!!」
「ウオオッ!!」
ブラックゴーレムはナイの攻撃を両腕を交差して防ぎ、まるで格闘家のような防御をしたブラックゴーレムにナイは驚く。以前に遭遇したブラックゴーレムと比べて魔物使いのアンが使役するブラックゴーレムは格闘家の動作を取り入れ、不用意に近付いてきたナイに対して足払いを行う。
「ウオオッ!!」
「うわっ!?」
「危ない!?」
ナイが足払いを受けて地面に倒れると、ブラックゴーレムは右足を振りかざして踏み潰そうとしてきた。それを見た他の者が声を上げるが、ナイは自分に迫りくる足に対して咄嗟に盾で弾き返す。
「このっ!!」
「ゴアッ!?」
踏み潰そうとした瞬間に反魔の盾によって防がれ、その際に衝撃波が発生してブラックゴーレムの体勢が崩れる。ナイは体勢を立て直すと岩砕剣を振りかざし、今度は一回転しながら叩き込む。
「円斧!!」
「ゴガァッ!?」
「よし、押してるよ!!」
「行けぇっ!!」
回転させる事で勢いを加速させて放つナイの剣技を受け、ブラックゴーレムは後退するとテンとルナが声を上げる。ナイの方が若干押しており、どんな攻撃も反魔の盾で弾き返せる彼が有利だった。
しかし、ブラックゴーレムも怒りを露わにして徐々に発熱し、全身の色が赤色に変色を始める。またもや熱線でも吐き出すつもりなのかとナイは警戒するが、ブラックゴーレムは背中の噴射口から火属性の魔力を放出させて加速を行う。
「ウオオオオッ!!」
「うわっ!?」
「は、早い!?」
「あんなに大きいのに何て早さなの!?」
ブラックゴーレムは加速するとあまりの移動速度にナイは対処しきれず、ブラックゴーレムは上空へと跳び上がる。それを見たナイ達は何をするつもりなのかと見上げると、ブラックゴーレムは空中に浮かんだ状態で両腕を突き出す。
「ゴアアアアッ!!」
「おい、嘘だろ!?」
「そんなまさかっ……逃げろ、ナイ君!!」
「えっ!?」
両腕を構えた瞬間にブラックゴーレムの肩の部分が変形し、背中だけでなはなく両肩にも「噴射口」が誕生した。そして噴射口から火属性の魔力が放出されると、凄まじい勢いで両腕が本体から離れて地上に発射された。
自身の両腕を切り離して地上へ撃ち込んだブラックゴーレムの行動に誰もが驚き、ナイは慌てて避けようとしたが加速した状態のブラックゴーレムの腕は本体よりも移動速度が速く、右拳の方が先にナイの手にしていた反魔の盾と衝突する。
「くううっ!?」
「は、弾き返した!!」
「いや、駄目だ!!」
初撃は防ぐ事に成功したが、この時にナイの反魔の盾が弾き飛んでしまう。どうやらブラックゴーレムは攻撃を仕掛ける際に掌を開いた状態だったらしく、反魔の盾に衝突した時に盾に指が食い込んでいたらしい。
盾が弾かれたナイは続けて放たれた左腕に対して岩砕剣で防ぐしかなく、衝撃に備えて大剣を支える。そして岩砕剣に左拳が衝突した瞬間、地面にクレーターが出来上がる程の衝撃がナイへと襲い掛かった。
「がはぁっ……!?」
「ナ、ナイくぅうんっ!!」
「モモ、駄目よ!!今近付いたら……!!」
ナイがブラックゴーレムの攻撃を受けて地面に倒れる姿を見て、反射的にモモは彼を助けるために飛び出そうとしたがヒナに止められた。
空中に浮かんでいたブラックゴーレムは地面に倒れたナイを見ると、容赦せずに今度は自分の身体ごと体当たりするつもりなのか突っ込んできた。それを見たナイは目を見開き、避ける事もできずに直撃を受けてしまう。
「ゴアアアアッ!!」
「うわぁああああっ!?」
「止めてぇえええっ!!」
ブラックゴーレムの突進を見てモモは悲鳴を上げ、ナイの身体に再び強烈な衝撃が広がる。それを見た者達はナイが死んだのではないかと思ったが、ナイは手にしていた岩砕剣でブラックゴーレムを防いでいた。
「ぐはぁっ……!!」
「ゴオオッ……!?」
自分の体当たりも岩砕剣で受け止めたナイにブラックゴーレムは驚くが、衝撃を完全に受け切れるはずがなく、ナイは血反吐を吐いて地面に力なく倒れ込む。それを見たブラックゴーレムはもうナイが動けないと判断し、それでも確実に止めを刺す岩砕剣越しに足を押し付けて踏み潰そうとした。
「ウオオオオッ!!」
「がああっ……!?」
「や、止めるんだ!!」
「もう見てられないぞ!!」
「ナイ君!!」
「ちくしょうがっ!!」
ナイが踏み潰されそうな姿を見て他の者たちは居てもたってもいられず、彼を救うために駆け出そうとした。しかし、それを予測していたかのようにブラックゴーレムは振り返り、口元に赤色の光を灯す。
「まずい!?皆、散るんだ!!」
「モモ、危ない!!」
「わあっ!?」
「アガァアアアアッ!!」
ブラックゴーレムはテン達に対して口元から熱線を放ち、それを事前に予想したアルトは全員に散らばるように指示を出す。しかし、直撃は避けられても熱線が地面に衝突した瞬間に爆発を起こす。
爆発の衝撃でテン達は吹き飛ばされ、全員が地面に倒れ込む。その光景を確認したブラックゴーレムは邪魔者が消えたと判断してナイの止めを刺す事に集中しようとした。しかし、ここで足元に違和感を感じる。
「おいっ……お前、今何をした……!?」
「ゴアッ……!?」
「皆に……手を出すな!!」
ブラックゴーレムがナイを見下ろした瞬間、今までにない気迫をナイは放ち、凄まじい腕力を発揮してナイはブラックゴーレムを持ち上げる。ブラックゴーレムの体重はロックゴーレムの十倍以上の重量を誇るが、ナイは傷を負った状態でブラックゴーレムを持ち上げると、地面に叩き付けた。
「だあああっ!!」
「ゴアッ!?アガァッ!?ウオッ!?」
力任せにナイは何度もブラックゴーレムを地面に叩き付け、最終的にはブラックゴーレムの巨体を振り回す。あまりの腕力にブラックゴーレムは抵抗する事ができず、そのまま投げ飛ばされてしまう。
「うりゃあああっ!!」
「ゴアアアッ!?」
投げ飛ばされたブラックゴーレムは悲鳴を上げながら湖に向けて突っ込み、そのまま水中に沈んでしまう。普通のゴーレムならば水が弱点で戦闘不能なのだが、特殊な鉱石で構成されているブラックゴーレムには通じない。
水中に沈みながらもブラックゴーレムは身体を発熱させ、再び赤色に変色すると噴射口から火属性の魔力を噴き出す。水中でも高速移動ができるらしく、ブラックゴーレムは水面に浮上すると怒りの咆哮を放つ。
「ウオオオオッ!!」
「くそっ……まだ動けるのか」
ナイは再生術を発動させてどうにか身体が動けるまでに回復すると、再び空中に浮上したブラックゴーレムを見て舌打ちを行う。ここまでの戦闘でブラックゴーレムに有効的な損傷は与えられておらず、その代わりに先ほどの攻撃でブラックゴーレムは両腕を失っていた。
(切り離した両腕は動かす事ができないのか……待てよ、そういえば前の時は……)
前回に戦ったブラックゴーレムは身体の各所に埋め込まれている黒水晶に魔力を吸収し、それを利用して攻撃を行っていた事をナイは思い出す。今回現れたブラックゴーレムも身体の各所に埋め込まれた黒水晶に火属性の魔力を宿していた。
以前の時はブラックゴーレムは吸収した魔力を解放すればすぐに魔力切れを引き起こしたが、今回のブラックゴーレムは凄まじい勢いで火属性の魔力を放出しているにも関わらず、魔力が切れる様子がない。よほど黒水晶に魔力を蓄積しているのかと思われるが、その魔力はどうやって手に入れたのかナイは気になった。
しかし、今はブラックゴーレムが魔力を蓄積させた方法よりも倒す方法を考えなければならず、この時にナイはブラックゴーレムから切り離された両腕に視線を向けた。両腕にも黒水晶が存在し、まだ魔力が残っているのか赤々と光っているのを確認すると、ナイはある事を思いつく。
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