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最終章
第1030話 牙山へ向けて
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「さあ、今後はこの里を拠点にして活動を行う!!飛行船から物資を運び込み、まずは守備を固めろ!!」
「「「はっ!!」」」
大将軍ロランの指示に王国騎士達は迅速に動き始める。牙山に直行する前に飛行船から物資を運び、この里を拠点にしてまずは戦闘態勢を整え、万全の準備を整えた後に牙竜に挑む。
竜種との戦闘の危険性はナイ達も嫌という程知っており、今回の牙竜は火竜よりは戦闘力は低いらしいが、話を聞く限りでは300年以上も生きている個体だという。通常の牙竜の寿命は100年らしいが、牙山に生息する牙竜はその3倍も生きている事になる。
「兄者、牙山の偵察に向かわないのでござるか?」
「……危険過ぎる、伝承によれば奴は嗅覚に敏感だ。我々に気付けば確実に殺されるぞ」
本来であれば牙山を偵察し、牙竜がどのような状態なのか確かめる必要があった。しかし、かつて牙山に赴いて生きて帰った人間はおらず、シノビは偵察に向かう事さえも危険視する。
かつてのシノビならば危険を犯してでも任務を遂行しようとした。しかし、今は愛する女がいる彼は無暗に自分の命を危険に晒せず、当然だが大切な妹を捨て駒のように扱う事はできない。牙山の様子を探れないのは不安もあるが、相手が竜種であると考えると迂闊に動けない。
「おい、マリン!!お前の魔法に期待しているからな!!」
『……火竜の時は相性が悪かっただけだ。他の竜種なら私の魔法でも対処できる』
「ふははっ!!それは頼もしいな!!」
「う~……どきどきしてきた」
黄金級冒険者達も牙竜との戦闘は初めてであり、流石に緊張が隠せない様子だった。ゴウカだけは牙竜との戦闘を楽しみに待ち望んでいる節があるが、一番年齢が若いリーナは不安そうにしていた。
「あれ?そういえばアルト王子とイリア魔導士は……」
「船に残ってる。飛行船の整備を手伝わないといけないからヒナとモモも残ってる」
「そ、そうですか。というか私達はアルト王子の騎士なのに、ここに居ていいんでしょうか……」
「それは言わない約束」
白狼騎士団のヒイロとミイナは里で拠点作りの作業を手伝っているが、アルト達は飛行船に残っていた。尤も飛行船には聖女騎士団も残っているので安全だと思われるが、それでも不安は隠せない。
「やっぱり心配です、私達も戻りましょうか?」
「気にする必要はないと思う。ナイもさっき、あっちに戻っていった」
「そ、そうですか……ナイさんの方が私達より王国騎士らしいですね」
「それも言わない約束」
飛行船にはビャクを連れたナイが戻り、彼が飛行船に向かうのであれば安心してヒイロとミイナは作業に集中できた。他の騎士団も里の中に魔物が入り込めないように柵を築き、運び出された物資の確認を行う。
「イリアさんが作った仙薬という薬、中々の優れものですわね。これなら戦闘の際中でもすぐに飲めますわ」
「私は上級回復薬の方が飲みやすいと思うがな……」
「あら、リンさんはお薬が嫌いですの?お子様舌ですわね……」
「やかましいっ!!」
運び出された物資の中には薬品の類も含まれ、今回は前回の時のように鼠型の魔獣に破壊されないように厳重に管理していた。竜種との戦闘に備えてイリアはこの日のために大量の仙薬を作り出す。
激しい戦闘の際中では回復薬を飲む余裕もない場面を想定し、液体の薬よりも丸薬が食べやすいのでイリアは「仙薬」を作っていた。今回はグマグ火山の時と違って人数も少ないため、それほど作るのに手間は掛からなかった。
「ロラン大将軍、調べたところこの周辺には魔物は見かけませんでした」
「そうか……だが、見張りは常に用心しておけ」
「はっ!!」
村の周辺には魔物の気配はなく、そもそもシノビの話によれば牙山に生息する牙竜の影響でこの周辺は魔物が近付く事は滅多になかった。十数年前にこの村を襲った魔物は「世界異変(世界規模で魔物が大量に増殖する現象)」の影響で大量繁殖した魔物が襲ってきたのだが、襲われた後は一度もこの村に魔物が訪れた様子はない。
世界異変の影響で世界各地の魔物が活発化したが、今では大分影響も収まり、今回の牙竜の討伐に成功した場合は王国の脅威がまた一つ消える。しかし、王国の最大の脅威は未だに放置されたままだった。
「ダイダラボッチ、か」
ロランは自分が北方の領地の守護を行っていた時、王都の戦力がゴブリンキングの討伐を果たした報告は受けている。しかし、討伐隊はゴブリンキングを倒した後、山の中に封じられている巨大な緑の巨人を発見したという報告も聞いていた。
その巨人の正体が和国を滅ぼした魔物「ダイダラボッチ」と考えられ、今尚も山の中に封じられている。その話を不意に思い出したロランは嫌な予感を抱く――
――シノビ一族の隠れ里に辿り着いた討伐隊は飛行船から拠点を移し、物資を運び出す。場合によってはこの隠れ里に撤退する可能性を考慮し、次々と必要物資が運び込まれる。
「これで荷物は積み終えたよ」
「じゃあ、これを運んだらまた戻ってきますね」
「ウォンッ!!」
荷車に荷物を運び終えると、騎士達の代わりにビャクに乗ったナイが物資を隠れ里に届けに向かう。飛行船には馬などの類は載せておらず、荷物の運搬に一番役立つのはビャクだった。
現在の飛行船は聖女騎士団が残っており、この飛行船を守るために彼女達は留守役を任されていた。無論、牙竜討伐の際は聖女騎士団の何名かは同行する事になっているが、飛行船の守備を疎かにするわけにはいかず、大半の騎士はここへ残る。飛行船から去っていくナイとビャクに手を振て見送ると、テンは改めて他の者に振り返って話し合いを行う。
「テン、調べてみたがこの近くに人が居た形跡はない」
「そうかい……アンとやらは本当にここへ来るのかね」
「もしかしたら私達が飛行船で追い抜いたかもしれません。仮に既に訪れていたとしても、飛行船を見て私達がここへ来た事に気付いているはずです」
「レイラの仇……絶対に見つけ出して殺してやる!!」
「落ち着きな、ルナ……皆、気持ちは同じだよ」
魔物使いのアンがシノビ一族に伝わる古文書を盗み出し、牙山に封じられている妖刀を狙いにムサシ地方へ来る事は間違いなかった。実際にアンの行方を追っていた聖女騎士団はアンが異様な速度で街を転々と移動している事は判明しており、明らかにムサシ地方へ近付いていた。
仮にアンが空を飛べる魔獣を従えていた場合、既にムサシ地方へ移動している可能性はある。しかし、今の所は聖女騎士団が調べた限りでは森の中には人が居た形跡は残っていない。
「それにしても……気になるのはアンとやらがどうやってレイラを殺したかだ」
「王国一の双剣の使い手と呼ばれた彼女が殺されるなんて……今でも信じられません」
「魔物使い如きにレイラが殺されるはずがない……もしかしたら協力者がいたのかもしれないね」
「凄腕の暗殺者か、あるいは剣士か……」
レイラは聖女騎士団の中では剣士の中では団長であるテンを除けば一番の腕前を誇り、彼女に勝てる人間など王都の中でも数えるほどしかいない。魔剣の力を使わないのであればドリスもリンもレイラには及ばない程だった。
そんなレイラがアンに殺されたとは考えられず、彼女を殺したのは何者なのか未だに判明していない。レイラが死んだ後にテンは闇ギルドの連中を探し出して彼女を殺した犯人を捜そうとしたが、闇ギルドの人間達は何も知らず、少なくともアンと闇ギルドの間には何の関りもなかった。
「レイラは王妃様と最も近い剣士だ。実際、騎士を辞めた後もレイラは鍛錬を続けてより強くなっていた……そんなあいつが殺されるとは未だに信じられない」
「くそっ!!魔物使いめ!!きっと卑怯な手を使ってレイラを殺したんだ!!絶対に見つけ出してやる!!」
「だからあんたは落ち着きなって……といってもここでじっとしていても埒が明かないね。もう一度この近くを調べて……」
テンが指示出そうとした時、何処からか奇妙な音が聞こえた。その音はまるで虫のは音を想像させ、聞いているだけで変な気分を抱く。
「何だい、この音は……」
「虫か?いや、だがそれにしては……」
「う~……うるさいぞ!!どっか行け、虫!!」
「待ってください、上の方から音が……!?」
エルフであるアリシアは他の者よりも聴覚が優れているだけに音が鳴る方向にいち早く気付き、彼女は驚いた表情を浮かべて空を見上げる。他の者たちも彼女に連られて上空に視線を向けると、そこには想像を絶する存在が浮かんでいた。
――キルルルッ!!
空を浮かんでいたのは巨大な「蟷螂《かまきり》」を想像させる姿をした化物であり、羽根を羽ばたかせながら飛行船の上空に浮かんでいた。その姿を見たテン達は呆気に取られ、すぐにイリアが正体を見抜く。
「あ、あれは……昆虫種!?どうしてこんな場所に!!」
「昆虫種だって!?」
「まさか、あれがそうなのか!?」
「で、でかっ!?虫なのか、あれ!?」
昆虫種という言葉にテン達は驚き、名前は聞いた事があるがテンでさえも見るのは初めてだった。昆虫種はこの王国には本来生息しない魔物であり、しかも飛行船の上空に現れた蟷螂型の昆虫種は色合いが緑ではなく黒だった。
飛行船に現れたのは蟷螂型の昆虫種の亜種であり、唐突に現れた昆虫種にテン達は戸惑うが、彼女達も歴戦の猛者なので冷静さを取り戻すと迅速に対応する。
「気を付けな!!こいつ、もしかしたら魔物使いが使役している魔物の可能性もある!!いや、きっとそうだ!!」
「本当か!?」
「ただの勘さ!!だけどこういう時のあたしの勘は……外れた事がないんだよ!!」
テンは漆黒の蟷螂を見て魔物使いが使役する魔物だと判断し、彼女は躊躇せずに空を飛ぶ黒蟷螂に対して近くに置いてあった木箱を放り込む
「「「はっ!!」」」
大将軍ロランの指示に王国騎士達は迅速に動き始める。牙山に直行する前に飛行船から物資を運び、この里を拠点にしてまずは戦闘態勢を整え、万全の準備を整えた後に牙竜に挑む。
竜種との戦闘の危険性はナイ達も嫌という程知っており、今回の牙竜は火竜よりは戦闘力は低いらしいが、話を聞く限りでは300年以上も生きている個体だという。通常の牙竜の寿命は100年らしいが、牙山に生息する牙竜はその3倍も生きている事になる。
「兄者、牙山の偵察に向かわないのでござるか?」
「……危険過ぎる、伝承によれば奴は嗅覚に敏感だ。我々に気付けば確実に殺されるぞ」
本来であれば牙山を偵察し、牙竜がどのような状態なのか確かめる必要があった。しかし、かつて牙山に赴いて生きて帰った人間はおらず、シノビは偵察に向かう事さえも危険視する。
かつてのシノビならば危険を犯してでも任務を遂行しようとした。しかし、今は愛する女がいる彼は無暗に自分の命を危険に晒せず、当然だが大切な妹を捨て駒のように扱う事はできない。牙山の様子を探れないのは不安もあるが、相手が竜種であると考えると迂闊に動けない。
「おい、マリン!!お前の魔法に期待しているからな!!」
『……火竜の時は相性が悪かっただけだ。他の竜種なら私の魔法でも対処できる』
「ふははっ!!それは頼もしいな!!」
「う~……どきどきしてきた」
黄金級冒険者達も牙竜との戦闘は初めてであり、流石に緊張が隠せない様子だった。ゴウカだけは牙竜との戦闘を楽しみに待ち望んでいる節があるが、一番年齢が若いリーナは不安そうにしていた。
「あれ?そういえばアルト王子とイリア魔導士は……」
「船に残ってる。飛行船の整備を手伝わないといけないからヒナとモモも残ってる」
「そ、そうですか。というか私達はアルト王子の騎士なのに、ここに居ていいんでしょうか……」
「それは言わない約束」
白狼騎士団のヒイロとミイナは里で拠点作りの作業を手伝っているが、アルト達は飛行船に残っていた。尤も飛行船には聖女騎士団も残っているので安全だと思われるが、それでも不安は隠せない。
「やっぱり心配です、私達も戻りましょうか?」
「気にする必要はないと思う。ナイもさっき、あっちに戻っていった」
「そ、そうですか……ナイさんの方が私達より王国騎士らしいですね」
「それも言わない約束」
飛行船にはビャクを連れたナイが戻り、彼が飛行船に向かうのであれば安心してヒイロとミイナは作業に集中できた。他の騎士団も里の中に魔物が入り込めないように柵を築き、運び出された物資の確認を行う。
「イリアさんが作った仙薬という薬、中々の優れものですわね。これなら戦闘の際中でもすぐに飲めますわ」
「私は上級回復薬の方が飲みやすいと思うがな……」
「あら、リンさんはお薬が嫌いですの?お子様舌ですわね……」
「やかましいっ!!」
運び出された物資の中には薬品の類も含まれ、今回は前回の時のように鼠型の魔獣に破壊されないように厳重に管理していた。竜種との戦闘に備えてイリアはこの日のために大量の仙薬を作り出す。
激しい戦闘の際中では回復薬を飲む余裕もない場面を想定し、液体の薬よりも丸薬が食べやすいのでイリアは「仙薬」を作っていた。今回はグマグ火山の時と違って人数も少ないため、それほど作るのに手間は掛からなかった。
「ロラン大将軍、調べたところこの周辺には魔物は見かけませんでした」
「そうか……だが、見張りは常に用心しておけ」
「はっ!!」
村の周辺には魔物の気配はなく、そもそもシノビの話によれば牙山に生息する牙竜の影響でこの周辺は魔物が近付く事は滅多になかった。十数年前にこの村を襲った魔物は「世界異変(世界規模で魔物が大量に増殖する現象)」の影響で大量繁殖した魔物が襲ってきたのだが、襲われた後は一度もこの村に魔物が訪れた様子はない。
世界異変の影響で世界各地の魔物が活発化したが、今では大分影響も収まり、今回の牙竜の討伐に成功した場合は王国の脅威がまた一つ消える。しかし、王国の最大の脅威は未だに放置されたままだった。
「ダイダラボッチ、か」
ロランは自分が北方の領地の守護を行っていた時、王都の戦力がゴブリンキングの討伐を果たした報告は受けている。しかし、討伐隊はゴブリンキングを倒した後、山の中に封じられている巨大な緑の巨人を発見したという報告も聞いていた。
その巨人の正体が和国を滅ぼした魔物「ダイダラボッチ」と考えられ、今尚も山の中に封じられている。その話を不意に思い出したロランは嫌な予感を抱く――
――シノビ一族の隠れ里に辿り着いた討伐隊は飛行船から拠点を移し、物資を運び出す。場合によってはこの隠れ里に撤退する可能性を考慮し、次々と必要物資が運び込まれる。
「これで荷物は積み終えたよ」
「じゃあ、これを運んだらまた戻ってきますね」
「ウォンッ!!」
荷車に荷物を運び終えると、騎士達の代わりにビャクに乗ったナイが物資を隠れ里に届けに向かう。飛行船には馬などの類は載せておらず、荷物の運搬に一番役立つのはビャクだった。
現在の飛行船は聖女騎士団が残っており、この飛行船を守るために彼女達は留守役を任されていた。無論、牙竜討伐の際は聖女騎士団の何名かは同行する事になっているが、飛行船の守備を疎かにするわけにはいかず、大半の騎士はここへ残る。飛行船から去っていくナイとビャクに手を振て見送ると、テンは改めて他の者に振り返って話し合いを行う。
「テン、調べてみたがこの近くに人が居た形跡はない」
「そうかい……アンとやらは本当にここへ来るのかね」
「もしかしたら私達が飛行船で追い抜いたかもしれません。仮に既に訪れていたとしても、飛行船を見て私達がここへ来た事に気付いているはずです」
「レイラの仇……絶対に見つけ出して殺してやる!!」
「落ち着きな、ルナ……皆、気持ちは同じだよ」
魔物使いのアンがシノビ一族に伝わる古文書を盗み出し、牙山に封じられている妖刀を狙いにムサシ地方へ来る事は間違いなかった。実際にアンの行方を追っていた聖女騎士団はアンが異様な速度で街を転々と移動している事は判明しており、明らかにムサシ地方へ近付いていた。
仮にアンが空を飛べる魔獣を従えていた場合、既にムサシ地方へ移動している可能性はある。しかし、今の所は聖女騎士団が調べた限りでは森の中には人が居た形跡は残っていない。
「それにしても……気になるのはアンとやらがどうやってレイラを殺したかだ」
「王国一の双剣の使い手と呼ばれた彼女が殺されるなんて……今でも信じられません」
「魔物使い如きにレイラが殺されるはずがない……もしかしたら協力者がいたのかもしれないね」
「凄腕の暗殺者か、あるいは剣士か……」
レイラは聖女騎士団の中では剣士の中では団長であるテンを除けば一番の腕前を誇り、彼女に勝てる人間など王都の中でも数えるほどしかいない。魔剣の力を使わないのであればドリスもリンもレイラには及ばない程だった。
そんなレイラがアンに殺されたとは考えられず、彼女を殺したのは何者なのか未だに判明していない。レイラが死んだ後にテンは闇ギルドの連中を探し出して彼女を殺した犯人を捜そうとしたが、闇ギルドの人間達は何も知らず、少なくともアンと闇ギルドの間には何の関りもなかった。
「レイラは王妃様と最も近い剣士だ。実際、騎士を辞めた後もレイラは鍛錬を続けてより強くなっていた……そんなあいつが殺されるとは未だに信じられない」
「くそっ!!魔物使いめ!!きっと卑怯な手を使ってレイラを殺したんだ!!絶対に見つけ出してやる!!」
「だからあんたは落ち着きなって……といってもここでじっとしていても埒が明かないね。もう一度この近くを調べて……」
テンが指示出そうとした時、何処からか奇妙な音が聞こえた。その音はまるで虫のは音を想像させ、聞いているだけで変な気分を抱く。
「何だい、この音は……」
「虫か?いや、だがそれにしては……」
「う~……うるさいぞ!!どっか行け、虫!!」
「待ってください、上の方から音が……!?」
エルフであるアリシアは他の者よりも聴覚が優れているだけに音が鳴る方向にいち早く気付き、彼女は驚いた表情を浮かべて空を見上げる。他の者たちも彼女に連られて上空に視線を向けると、そこには想像を絶する存在が浮かんでいた。
――キルルルッ!!
空を浮かんでいたのは巨大な「蟷螂《かまきり》」を想像させる姿をした化物であり、羽根を羽ばたかせながら飛行船の上空に浮かんでいた。その姿を見たテン達は呆気に取られ、すぐにイリアが正体を見抜く。
「あ、あれは……昆虫種!?どうしてこんな場所に!!」
「昆虫種だって!?」
「まさか、あれがそうなのか!?」
「で、でかっ!?虫なのか、あれ!?」
昆虫種という言葉にテン達は驚き、名前は聞いた事があるがテンでさえも見るのは初めてだった。昆虫種はこの王国には本来生息しない魔物であり、しかも飛行船の上空に現れた蟷螂型の昆虫種は色合いが緑ではなく黒だった。
飛行船に現れたのは蟷螂型の昆虫種の亜種であり、唐突に現れた昆虫種にテン達は戸惑うが、彼女達も歴戦の猛者なので冷静さを取り戻すと迅速に対応する。
「気を付けな!!こいつ、もしかしたら魔物使いが使役している魔物の可能性もある!!いや、きっとそうだ!!」
「本当か!?」
「ただの勘さ!!だけどこういう時のあたしの勘は……外れた事がないんだよ!!」
テンは漆黒の蟷螂を見て魔物使いが使役する魔物だと判断し、彼女は躊躇せずに空を飛ぶ黒蟷螂に対して近くに置いてあった木箱を放り込む
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