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最終章
第1026話 スライムの感知能力
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――翌日の早朝、飛行船はムサシ地方へ向けて出発した。前回のクラーケンの襲撃の件もあり、次の目的地はこれまで訪れた事がない場所に停泊するべきなのだが、残念ながら進路方向上にある飛行船が着水できそうな場所は一つしかなく、その場所はかつて何度も飛行船が訪れた湖である。
進路を無視して他の湖に立ち寄る場合、大幅に到着時間が遅れてしまう。罠が張られている可能性もあるが、それでも時間を無駄にするわけにもいかず、危険を承知で飛行船は目的地へ向かう。
「間もなく目的地に到着する!!全員、戦闘準備は整えてくれ!!」
「遂に辿り着きましたね……」
「プルミン、頼んだよ」
「ぷるぷるっ♪」
操縦席にてアルトが目的地に間もなく辿り着く事を伝えると、ナイは自分の頭の上に乗ったプルミンに声をかける。飛行船が目的地の湖に辿り着くと、ナイはプルミンとイリアを連れて甲板へ向かう。
「イリアさん、本当に大丈夫!?」
「多分ですけど……ここはプルミン君の能力を信じましょう」
「ぷるっくりんっ(任せんしゃいっ)」
甲板に移動したナイはプルミンを船首に移動させ、王国騎士や冒険者も甲板に待機する。移動中は船内で大人しくしていたビャクの姿もあり、彼は注意深く周囲を見渡して臭いを嗅ぐ。
「スンスンッ……ウォンッ!!」
「うわっ!?な、何だよ!?」
「落ち着いて……ビャクは近くに魔物の臭いはしないと言ってます」
「白狼種の嗅覚ならば信用できますね。という事は地上には近くに敵はいないと考えていいでしょう」
ビャクの反応を見てナイは陸地の方からは魔物の臭いがしない事を伝え、残る問題は湖の中だった。クラーケンの時のように水中に魔物が潜んでいれば如何にビャクの嗅覚でも探る事はできず、頼りになるのはプルミンだった。
――スライムは力は弱く、普段は擬態能力で石や岩などに化けて身を隠している。しかし、彼等は優れた感知能力を持ち合わせており、人間では感じ取れない程のわずかな気配や魔力を感知して自分の脅威となる存在を探す。
船首に移動したプルミンは集中するように目を閉じると、しばらくの間は動かなかった。10秒ほど経過しても動きはなく、もしかして眠っているのではないかとナイは心配したが、唐突にプルミンは飛び跳ねる。
「ぷるぷるぷるるんっ!!」
「うわっ!?」
「な、なんですか!?」
「これは……皆、気を付けて!!正面から何かが近付いてくる!!」
プルミンの反応を見て飛行船から正面の方角に敵が接近している事に気付いたナイは注意すると、プルミンは急いで船首から移動してナイの元に飛び込む。
「ぷるるんっ!!」
「ありがとう、プルリン。危ないからビャクの傍に居て……ビャク、ちゃんと守ってやるんだぞ」
「ウォンッ!!」
ナイがビャクにプルミンを託すと、その間に他の者たちは武器を構えて船の正面に注目する。最初に異変が起きたのは水面であり、大きな影が浮かんでくると水中から思いもよらぬ生物が飛び出す。
『アガァアアアッ!!』
「ワ、ワニ!?」
「違う、こいつらは……魔物だ!!」
水面から飛び出してきたのは巨大ワニであり、その体長は10メートルを超えていた。巨大ワニは甲板に乗り込むと、甲板に立っていた人間達を喰らおうと大きな口を開く。
『ガアアッ!!』
「うおおっ!?俺達を食う気か!?」
『下がって、私が仕留めるっ!!』
顎が外れるのではないかと思う程に巨大ワニは大きく口を開き、そのまま甲板の上に立っていた人間を飲み込もうとした。それに対してマリンが杖を構えて迎撃しようとしたが、この時に彼女は口元を抑えて膝をつく。
『うぷっ……!?』
『むっ、どうしたマリン!?攻撃を受けたのか!?』
『違う、船が揺れたせいでまた気持ち悪く……』
「たくっ、何やってんだい!!さっさと下がりな!!」
船酔いの影響でマリンは戦う事ができず、仕方なく巨大ワニに対してテンが前に出るとランファンとルナも後に続く。船に乗り込んだ女性陣の中でも怪力自慢の三人が前に出ると、彼女達は巨大ワニに対して武器を振りかざす。
「おらぁっ!!あんたはこれでも食ってな!!」
「でりゃあっ!!」
「ふんっ!!」
『アグゥッ!?』
テンが投げ飛ばした退魔刀が巨大ワニの口の上顎に突き刺さり、更にルナが戦斧を振り下ろして下顎に叩き付ける。ランファンは上下の顎に武器が刺さった巨大ワニに対して踏み込み、手にしていた棍棒を口に挟み込む。
3人の武器を口の中に押し付けられた巨大ワニは苦し気な表情を浮かべ、武器を抜く事も噛み砕く事もできない。それを見た双紅刃を振りかざし、止めの一撃を加えようとした。
「お前達は下がっていろ!!」
『ぬおっ!?ずるいぞ、今回は俺が……』
駆け出したロランを見てゴウカは慌てて追いかけようとしたが、既にロランは双紅刃を振りかざして攻撃を繰り出していた。彼は巨大ワニの頭上を飛び越え、首の部分に目掛けて振り下ろす。
「はああああっ!!」
『ッ――!?』
巨大ワニは双紅刃の一撃で真っ二つに首と胴体を切り裂かれ、頭部は甲板に切り落とされ、胴体の方は湖の中に沈み込むと大量の血が流れて湖が真っ赤に染まった――
――プルミンのお陰でアンが事前に伏せていた魔物の襲撃を予知し、前回の時とは違って冷静に対処する事ができた。ロランが首を切り落とした巨大ワニは予想通りに鞭の紋様が刻まれ、やはりアンは飛行船が着水する場所に罠を仕掛けていた。
クラーケンの時と違って今回は大きな被害はなく、巨大ワニの死骸の回収には苦労したが飛行船の整備は問題なく進む。今日中にはムサシ地方に辿り着ける予定であり、全員が最終準備を整える。
「この湖にまでアンが罠を仕掛けていたという事は、僕達が予想していたよりもアンはムサシに迫っている事になるね」
「くそっ……どのみち、地上から追いかけていたとしてもあたしたちには追いつけなかったのかい」
「余程足の速い魔獣を従えているようですね」
飛行船が現在降りたった湖はイチノからもそれほど離れておらず、予測していたよりもアンの進行速度が早かった。王都で騒ぎを起こしてから半月程度で既にアンはイチノに迫っていた。
「こんなに早く王都から移動できるなんて……信じられません」
「ナイさんの飼っているビャク君みたいに特別に足が速い魔獣でも従えているのかもしれませんね」
「う~ん……」
アンがどのような移動手段を取っているのかは不明だが、聖女騎士団の調べたところではアンは人里に訪れる時は必ず一人であり、魔獣は一体も従えていない。魔獣を従えて街に入ったら目立つと考えた上の行動だろうが、そのせいで彼女がどんな魔獣を従えているのか未だに判明していない。
白狼種のビャクでも半月で王都から辺境の地であるイチノまで移動するのは困難を極め、そもそも王都に移動するまでいくつもの森や山を越えなければならない。実際にナイがイチノから王都に辿り着くまで相当な日数を要した。
(いったいどうやって移動しているんだろう……そういえばアンはブラックゴーレムを従えているはずだけど、何処かに置いてきたのかな?)
ブラックゴーレムはゴーレム種の中では動きは素早い方だが、それでも白狼種と比べたら圧倒的に移動速度は遅い。仮にアンが移動を重視して旅をしているのであればブラックゴーレムは足手まといになる。
(ブラックゴーレムを置いて旅をしているのならもう戦う必要はないのかもしれないけど……でも、牙竜と戦うとしたらブラックゴーレムの力は必要になると思うけどな)
ムサシ地方に存在する「牙山」は竜種である牙竜の住処であり、もしもアンが牙山に封じられている妖刀が目当てだとしたら牙竜の戦闘は避けられない。仮にアンがブラックゴーレムを置いて行ったとしたら、彼女はどのような手段で牙竜に挑むつもりなのかも気になった。
「あの……私、思いついたんですけどアンはもしかして空を飛べる魔獣を従えているのではないでしょうか?前にこの飛行船を襲った空賊みたいに……」
「ああ、そういえばいましたね、そんなの」
「随分と懐かしく感じるな……」
会議に参加していたヒイロが空賊の話をすると、当時飛行船に乗っていた者達は思い出す。かつて飛行船がゴブリンキングの討伐のためにイチノへ向かう際中、ヒッポグリフと呼ばれる鳥獣型の魔物に乗って襲い掛かってきた空賊を思い出す。
空を飛べる魔物ならば地上で妨害を受ける事はなく、どんな場所も飛び越える事ができる。そう考えればアンが短期間でイチノにまで迫っている理由も説明できた。
「なるほど、我々のように空を飛んで移動しているわけですか。確かにその可能性はありますね。鳥獣型の魔物を複数従えて乗り換えながら移動していたとしたら有り得なくはありません」
「ならばアンが既にムサシ地方に辿り着いている可能性もあるのか?」
「それは……分かりません。アンがどんな鳥獣型の魔物を従えているのか不明な以上、移動速度も測れませんからね」
「……つまり、否定はできないというわけか」
イリアの発言に全員が緊張感を抱き、既にアンがムサシ地方へ辿り着いている可能性があった。だが、先に辿り着いていようと竜種である牙竜を簡単にアンが従えさせる事はできるとは到底思えなかった。
「仮にアンがムサシ地方に辿り着いてたとしても、牙竜を従えて牙山に封じられている妖刀を手に入れたとは限りません。それに私たちだって今日中に目的地に辿り着くんですから」
「そうだな……だが、出発は急いだほうがいいだろう」
「今回は寄り道はできない、ムサシ地方まで直行しよう」
当初の予定ではイチノに立ち寄って物資を補給する手はずだったが、アンが先にムサシ地方に辿り着いている可能性がある以上、時間を無駄にする事はできない。アルトは整備が終了次第、飛行船をムサシへ向かわせる事を伝えた――
進路を無視して他の湖に立ち寄る場合、大幅に到着時間が遅れてしまう。罠が張られている可能性もあるが、それでも時間を無駄にするわけにもいかず、危険を承知で飛行船は目的地へ向かう。
「間もなく目的地に到着する!!全員、戦闘準備は整えてくれ!!」
「遂に辿り着きましたね……」
「プルミン、頼んだよ」
「ぷるぷるっ♪」
操縦席にてアルトが目的地に間もなく辿り着く事を伝えると、ナイは自分の頭の上に乗ったプルミンに声をかける。飛行船が目的地の湖に辿り着くと、ナイはプルミンとイリアを連れて甲板へ向かう。
「イリアさん、本当に大丈夫!?」
「多分ですけど……ここはプルミン君の能力を信じましょう」
「ぷるっくりんっ(任せんしゃいっ)」
甲板に移動したナイはプルミンを船首に移動させ、王国騎士や冒険者も甲板に待機する。移動中は船内で大人しくしていたビャクの姿もあり、彼は注意深く周囲を見渡して臭いを嗅ぐ。
「スンスンッ……ウォンッ!!」
「うわっ!?な、何だよ!?」
「落ち着いて……ビャクは近くに魔物の臭いはしないと言ってます」
「白狼種の嗅覚ならば信用できますね。という事は地上には近くに敵はいないと考えていいでしょう」
ビャクの反応を見てナイは陸地の方からは魔物の臭いがしない事を伝え、残る問題は湖の中だった。クラーケンの時のように水中に魔物が潜んでいれば如何にビャクの嗅覚でも探る事はできず、頼りになるのはプルミンだった。
――スライムは力は弱く、普段は擬態能力で石や岩などに化けて身を隠している。しかし、彼等は優れた感知能力を持ち合わせており、人間では感じ取れない程のわずかな気配や魔力を感知して自分の脅威となる存在を探す。
船首に移動したプルミンは集中するように目を閉じると、しばらくの間は動かなかった。10秒ほど経過しても動きはなく、もしかして眠っているのではないかとナイは心配したが、唐突にプルミンは飛び跳ねる。
「ぷるぷるぷるるんっ!!」
「うわっ!?」
「な、なんですか!?」
「これは……皆、気を付けて!!正面から何かが近付いてくる!!」
プルミンの反応を見て飛行船から正面の方角に敵が接近している事に気付いたナイは注意すると、プルミンは急いで船首から移動してナイの元に飛び込む。
「ぷるるんっ!!」
「ありがとう、プルリン。危ないからビャクの傍に居て……ビャク、ちゃんと守ってやるんだぞ」
「ウォンッ!!」
ナイがビャクにプルミンを託すと、その間に他の者たちは武器を構えて船の正面に注目する。最初に異変が起きたのは水面であり、大きな影が浮かんでくると水中から思いもよらぬ生物が飛び出す。
『アガァアアアッ!!』
「ワ、ワニ!?」
「違う、こいつらは……魔物だ!!」
水面から飛び出してきたのは巨大ワニであり、その体長は10メートルを超えていた。巨大ワニは甲板に乗り込むと、甲板に立っていた人間達を喰らおうと大きな口を開く。
『ガアアッ!!』
「うおおっ!?俺達を食う気か!?」
『下がって、私が仕留めるっ!!』
顎が外れるのではないかと思う程に巨大ワニは大きく口を開き、そのまま甲板の上に立っていた人間を飲み込もうとした。それに対してマリンが杖を構えて迎撃しようとしたが、この時に彼女は口元を抑えて膝をつく。
『うぷっ……!?』
『むっ、どうしたマリン!?攻撃を受けたのか!?』
『違う、船が揺れたせいでまた気持ち悪く……』
「たくっ、何やってんだい!!さっさと下がりな!!」
船酔いの影響でマリンは戦う事ができず、仕方なく巨大ワニに対してテンが前に出るとランファンとルナも後に続く。船に乗り込んだ女性陣の中でも怪力自慢の三人が前に出ると、彼女達は巨大ワニに対して武器を振りかざす。
「おらぁっ!!あんたはこれでも食ってな!!」
「でりゃあっ!!」
「ふんっ!!」
『アグゥッ!?』
テンが投げ飛ばした退魔刀が巨大ワニの口の上顎に突き刺さり、更にルナが戦斧を振り下ろして下顎に叩き付ける。ランファンは上下の顎に武器が刺さった巨大ワニに対して踏み込み、手にしていた棍棒を口に挟み込む。
3人の武器を口の中に押し付けられた巨大ワニは苦し気な表情を浮かべ、武器を抜く事も噛み砕く事もできない。それを見た双紅刃を振りかざし、止めの一撃を加えようとした。
「お前達は下がっていろ!!」
『ぬおっ!?ずるいぞ、今回は俺が……』
駆け出したロランを見てゴウカは慌てて追いかけようとしたが、既にロランは双紅刃を振りかざして攻撃を繰り出していた。彼は巨大ワニの頭上を飛び越え、首の部分に目掛けて振り下ろす。
「はああああっ!!」
『ッ――!?』
巨大ワニは双紅刃の一撃で真っ二つに首と胴体を切り裂かれ、頭部は甲板に切り落とされ、胴体の方は湖の中に沈み込むと大量の血が流れて湖が真っ赤に染まった――
――プルミンのお陰でアンが事前に伏せていた魔物の襲撃を予知し、前回の時とは違って冷静に対処する事ができた。ロランが首を切り落とした巨大ワニは予想通りに鞭の紋様が刻まれ、やはりアンは飛行船が着水する場所に罠を仕掛けていた。
クラーケンの時と違って今回は大きな被害はなく、巨大ワニの死骸の回収には苦労したが飛行船の整備は問題なく進む。今日中にはムサシ地方に辿り着ける予定であり、全員が最終準備を整える。
「この湖にまでアンが罠を仕掛けていたという事は、僕達が予想していたよりもアンはムサシに迫っている事になるね」
「くそっ……どのみち、地上から追いかけていたとしてもあたしたちには追いつけなかったのかい」
「余程足の速い魔獣を従えているようですね」
飛行船が現在降りたった湖はイチノからもそれほど離れておらず、予測していたよりもアンの進行速度が早かった。王都で騒ぎを起こしてから半月程度で既にアンはイチノに迫っていた。
「こんなに早く王都から移動できるなんて……信じられません」
「ナイさんの飼っているビャク君みたいに特別に足が速い魔獣でも従えているのかもしれませんね」
「う~ん……」
アンがどのような移動手段を取っているのかは不明だが、聖女騎士団の調べたところではアンは人里に訪れる時は必ず一人であり、魔獣は一体も従えていない。魔獣を従えて街に入ったら目立つと考えた上の行動だろうが、そのせいで彼女がどんな魔獣を従えているのか未だに判明していない。
白狼種のビャクでも半月で王都から辺境の地であるイチノまで移動するのは困難を極め、そもそも王都に移動するまでいくつもの森や山を越えなければならない。実際にナイがイチノから王都に辿り着くまで相当な日数を要した。
(いったいどうやって移動しているんだろう……そういえばアンはブラックゴーレムを従えているはずだけど、何処かに置いてきたのかな?)
ブラックゴーレムはゴーレム種の中では動きは素早い方だが、それでも白狼種と比べたら圧倒的に移動速度は遅い。仮にアンが移動を重視して旅をしているのであればブラックゴーレムは足手まといになる。
(ブラックゴーレムを置いて旅をしているのならもう戦う必要はないのかもしれないけど……でも、牙竜と戦うとしたらブラックゴーレムの力は必要になると思うけどな)
ムサシ地方に存在する「牙山」は竜種である牙竜の住処であり、もしもアンが牙山に封じられている妖刀が目当てだとしたら牙竜の戦闘は避けられない。仮にアンがブラックゴーレムを置いて行ったとしたら、彼女はどのような手段で牙竜に挑むつもりなのかも気になった。
「あの……私、思いついたんですけどアンはもしかして空を飛べる魔獣を従えているのではないでしょうか?前にこの飛行船を襲った空賊みたいに……」
「ああ、そういえばいましたね、そんなの」
「随分と懐かしく感じるな……」
会議に参加していたヒイロが空賊の話をすると、当時飛行船に乗っていた者達は思い出す。かつて飛行船がゴブリンキングの討伐のためにイチノへ向かう際中、ヒッポグリフと呼ばれる鳥獣型の魔物に乗って襲い掛かってきた空賊を思い出す。
空を飛べる魔物ならば地上で妨害を受ける事はなく、どんな場所も飛び越える事ができる。そう考えればアンが短期間でイチノにまで迫っている理由も説明できた。
「なるほど、我々のように空を飛んで移動しているわけですか。確かにその可能性はありますね。鳥獣型の魔物を複数従えて乗り換えながら移動していたとしたら有り得なくはありません」
「ならばアンが既にムサシ地方に辿り着いている可能性もあるのか?」
「それは……分かりません。アンがどんな鳥獣型の魔物を従えているのか不明な以上、移動速度も測れませんからね」
「……つまり、否定はできないというわけか」
イリアの発言に全員が緊張感を抱き、既にアンがムサシ地方へ辿り着いている可能性があった。だが、先に辿り着いていようと竜種である牙竜を簡単にアンが従えさせる事はできるとは到底思えなかった。
「仮にアンがムサシ地方に辿り着いてたとしても、牙竜を従えて牙山に封じられている妖刀を手に入れたとは限りません。それに私たちだって今日中に目的地に辿り着くんですから」
「そうだな……だが、出発は急いだほうがいいだろう」
「今回は寄り道はできない、ムサシ地方まで直行しよう」
当初の予定ではイチノに立ち寄って物資を補給する手はずだったが、アンが先にムサシ地方に辿り着いている可能性がある以上、時間を無駄にする事はできない。アルトは整備が終了次第、飛行船をムサシへ向かわせる事を伝えた――
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