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最終章
第1014話 出直します
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――試合終了後、他国から訪れた武芸者は無言のまま立ち去ろうとした。そんな彼等に対してガオウは呼び止める。
「おい、お前等どうした。坊主に挑みに来たんだろ?何だったら俺が話を付けてやるぞ」
「……え、遠慮しておこう」
「用事を思い出してな……」
「我等は獣人国へ帰るぞ……」
武芸者達はナイに会う前にそそくさと立ち去り、そんな彼等の後ろ姿をガオウはにやけた表情で見送り、彼等の姿が見えなくなった後に一言呟く。
「とっとと帰れ、軟弱者」
結局は獣人国の武芸者はナイに挑戦する事もなく、早々に獣人国へと戻っていった――
――試合を終えた後にナイはアッシュ公爵の屋敷に誘われ、今回の試合相手を務めたダイゴロウも共に彼の屋敷に赴いていた。実は今日の試合はダイゴロウがアッシュ公爵に頼み込んで急遽決まった試合であり、ダイゴロウは挑戦を受けてくれたナイに感謝する。
「噂通りの……いや、噂以上の実力だ。負けた事は悔しいが、新しい目標ができた。感謝するぞ」
「いや、そんな……ダイゴロウさんも凄く強かったです。手加減なんてしたら殺されると思いました」
「……そう言ってもらえると有難い」
ダイゴロウはナイに試合に負けた事で彼を恨みもせず、むしろ尊敬の感情を抱いていた。生まれてからダイゴロウは同族以外の相手に敗れた事はなかったが、ナイと戦って彼は同族以外にも自分を上回る猛者が居た事を知れて満足する。
巨人国ではダイゴロウは最強の黄金級冒険者として名を知られ、彼に挑もうとする武芸者は一人もいなかった。ダイゴロウがあまりにも強すぎるために彼を越えようとする者が現れず、ダイゴロウはその事に不満を抱く。
自分が強くなるためには強敵との戦闘を経験するのが必要だと考えたダイゴロウは自国を離れ、わざわざ王国に訪れた。彼がここへ来た理由は他国にも知れ渡る程の武芸者である「ナイ」と「ゴウカ」と戦うためであり、今日はナイと戦ったがいずれはゴウカにも試合も申し込むつもりだった。
「ダイゴロウ殿、怪我の具合はどうだ?」
「この国の回復薬は効果が素晴らしい。もう怪我の方はもう大丈夫です。だが、甲冑の方が直るのに時間が掛かるらしく、しばらくは戦えそうにない」
「そうか、ならばゴウカの試合は甲冑が直った後でいいだろう。ゴウカも万全な状態の相手でなければ戦わないだろうしな」
「ゴウカさんならそういいそうですね……」
ゴウカの性格ならば相手が万全の状態でなければ勝負に応じない可能性が高く、ゴウカの挑戦はもうしばらく後になりそうだった。それに現在のゴウカはマリンと共に王都を離れており、甲冑が無事だったとしてもすぐには戦う事はできない。
冒険者に復帰した途端、ゴウカはマリンと共に冒険者稼業に専念し、現在は王都を離れて魔物を狩る事に集中している。久々に人以外の相手と戦いたくなったらしく、戻ってくるのは数日後の予定だった。
「ナイ君、今日は急に試合を申し込んですまなかったな」
「いえ、気にしないでください。こっちも久々に全力で戦えて嬉しかったです」
「そうか……ところでリーナと君が何処まで関係が進んでいるのか教えて……」
「旦那様、大変です!!」
アッシュが言葉を言い終える前に慌てた様子の使用人が駆けつけ、即座に表情を引き締めてアッシュは用件を尋ねる。
「何事だ?急用か?」
「先ほど、王城の方から兵士が参られました!!それでアッシュ様にはすぐに王城へ参上するようにと……」
「王城からだと?何かあったのか?」
「理由は教えてくれませんでした。ですが、早急に王城へ参る様にとの事です」
「アッシュ公爵!!」
「うむ……すぐに向かうぞ、ナイ君も来てくれ!!」
王城に来るように命じられたアッシュは即座に準備を行い、ナイも同行する――
――王城にナイ達が辿り着くと、即座に玉座の間に案内された。そこには既に大勢の人間が集まっており、聖女騎士団を除く騎士団の団長と副団長も集められていた。
玉座に座る国王は険しい表情を浮かべ、その隣に立つアルトとバッシュとリノも難しい表情を浮かべていた。そして何故か国王の前にはシノビとクノが跪き、二人とも目つきを鋭くさせていた。
「これはいったい……」
「何かあったんですか!?」
「おお、アッシュよ!!それにナイも来てくれたのか……実は大変なことが起きたのじゃ!!」
「父上、私が説明します」
国王はアッシュとナイが来ると興奮した様子で立ち上がり、それを抑えたのがバッシュだった。彼は国王を座らせると代わりに今日全員を呼び出した理由を話す。
「まずい事になった……書庫を調べてみた所、どうやら例の魔物使いが盗み出した資料の中に和国に関する物も含まれていた」
「和国!?」
「確かシノビさんとクノの……故郷?」
バッシュによるとアンが書庫から盗み出した資料の中に「和国」に関連する資料も含まれ、しかもその中にはシノビが王国に預けていた重要な資料も含まれていた。
「……盗まれたのは和国で作り出された妖刀の保管場所が記された巻物だ」
「えっ!?それって確かシノビさんが持っていた……!?」
「その通りだ……かつては俺が管理していた。しかし、リノ様の元に仕える時に王国へと献上した巻物だ」
シノビが口を挟み、彼は悔し気な表情を浮かべていた。隣に跪くクノもそんな彼を心配する表情を浮かべ、一方で国王はシノビに対して申し訳なさそうな表情を浮かべる。
「すまぬ、これは儂の不手際じゃ。お主等の故国の秘宝を示した巻物が盗まれるなど……もっと厳重に管理しておくべきだった」
「シノビ、申し訳ありません!!私のせいで……」
「リノ殿が謝る必要はない、しかし……まさか今日まで巻物が盗まれた事に気付けなかったとは」
「不覚でござる」
シノビ一族がこれまで管理してきた巻物を王国に託したのは、シノビが王国への忠誠心を照明するためである。彼が所持していた巻物には数百本の妖刀(魔剣)が封じられた場所を示され、その妖刀を王国が手にした場合は大きな戦力増強に繋がる。
しかし、今まで妖刀を回収せずに放置していたのはそれほどの数の妖刀を手にした事が他国に知られた場合、王国を恐れて他の国同士が手を組んで王国の勢力を抑制しようとするかもしれず、今の時点で妖刀を回収するのは危険だと判断された。
だが、まさかシノビが託した巻物が書庫に保管され、しかもアンがそれを盗み出した事が今日になって判明した事にシノビもクノも落胆を隠しきれない。これは王国側の不手際で有り、この二人にとっては大切な巻物をずさんに管理していた王国のせいで迷惑を被る。
「例の魔物使いがもしも妖刀の在り処を知ったとしたら……」
「いや、それは大丈夫だ。あの巻物は二つ揃えても暗号を解かない限りは妖刀の居場所は分からない。しかし、どうしてアンとやらは巻物を盗み出したのか……」
「そこが一番気になるでござるな。この国の者には巻物に書かれている文字は理解できないはずでござる」
「そうなんですか?」
「巻物に記されている文字は和国で使われていた文字だ。我が一族の人間以外に読み解く事はできないはずだが……」
アンが巻物を盗み出した理由だけが分からず、和国の人間ではない彼女は文字を読み解く事ができない。だからこそシノビは警戒する必要はないかと思ったが、ここで思いもよらぬ人物が話に加わる。
「もしかしたらですけど……翻訳の技能を覚えているじゃないですか?」
「何!?」
「イリア、それはどういう意味だ?」
話に割って入ったのはイリアであり、彼女はアンが巻物の文字を知らずとも、読み解く方法がある可能性を話した。
「私も書庫にあった文献で読んだだけですけど、技能の中には「翻訳」という名前の技能があるんです。この技能を習得すると他国の言語や文字を理解できるようになるそうです」
「翻訳じゃと……それは確か、伝説の勇者も身に着けていたというあの技能か!?」
「そんな馬鹿な……御伽噺じゃないのか?」
「でも、それだと辻褄が合うんですけど……」
翻訳の技能は伝説の勇者が身に着けていた技能だと伝えられており、この場に存在する者達ですら覚えていない。多数の技能を習得しているナイも翻訳の技能は習得しておらず、実在するかどうかも怪しい。
しかし、アンがもしも「翻訳」の技能を覚えていたとしたら彼女は巻物の内容を読み解く事ができる。仮にアンが暗号を解いていたとしたら、彼女は和国の旧領地に封じされた妖刀の在り処を見抜いた事になる。
「もしも敵が妖刀の居場所を知ったとしたら……まずい事になるぞ」
「ええ、非情にまずいですね。妖刀を奪われて悪用されたら大問題です」
「何という事だ……い、一刻も早く捕まえねば!!」
「ですが、聖女騎士団がアンを追跡しています。彼女達ならば捕まえられるのでは……」
「いいえ、楽観は駄目です。相手は得体が知れませんからね……そうだ、その妖刀の在り処に関してですけど、シノビさんはもう知っているんじゃないですか?」
「……何?」
イリアの発言に全員がシノビに視線を向け、彼は二つの巻物を一時期所持していた。シノビ一族の現当主である彼は当然ながら暗号の解き方を理解しているはずであり、既に二つの巻物から読み取った暗号を解読して妖刀の在り処を知っていてもおかしくはない。
「シノビさん、正直に答えて下さい。妖刀の居場所は知っているんですか?」
「……知っている」
「なんじゃと!?お主、それを知っておきながら今まで黙っておったのか!?なんという不届き者……」
「父上……その巻物を盗まれたのは僕達ですから。それに妖刀の回収を先延ばしにしたのは父上の判断でしょう?」
「むむっ……そ、そうだったな。今のは失言じゃった」
巻物を渡しておきながらシノビは事前に暗号を解き、妖刀の居場所を把握していた事に国王は激怒したが、アルトの指摘を受けて彼を責められる立場ではない事を思い出す。いくら妖刀の居場所を知っていたとしても、その居場所を示す巻物を盗まれたのは王国の不手際である事に変わりはない。
「おい、お前等どうした。坊主に挑みに来たんだろ?何だったら俺が話を付けてやるぞ」
「……え、遠慮しておこう」
「用事を思い出してな……」
「我等は獣人国へ帰るぞ……」
武芸者達はナイに会う前にそそくさと立ち去り、そんな彼等の後ろ姿をガオウはにやけた表情で見送り、彼等の姿が見えなくなった後に一言呟く。
「とっとと帰れ、軟弱者」
結局は獣人国の武芸者はナイに挑戦する事もなく、早々に獣人国へと戻っていった――
――試合を終えた後にナイはアッシュ公爵の屋敷に誘われ、今回の試合相手を務めたダイゴロウも共に彼の屋敷に赴いていた。実は今日の試合はダイゴロウがアッシュ公爵に頼み込んで急遽決まった試合であり、ダイゴロウは挑戦を受けてくれたナイに感謝する。
「噂通りの……いや、噂以上の実力だ。負けた事は悔しいが、新しい目標ができた。感謝するぞ」
「いや、そんな……ダイゴロウさんも凄く強かったです。手加減なんてしたら殺されると思いました」
「……そう言ってもらえると有難い」
ダイゴロウはナイに試合に負けた事で彼を恨みもせず、むしろ尊敬の感情を抱いていた。生まれてからダイゴロウは同族以外の相手に敗れた事はなかったが、ナイと戦って彼は同族以外にも自分を上回る猛者が居た事を知れて満足する。
巨人国ではダイゴロウは最強の黄金級冒険者として名を知られ、彼に挑もうとする武芸者は一人もいなかった。ダイゴロウがあまりにも強すぎるために彼を越えようとする者が現れず、ダイゴロウはその事に不満を抱く。
自分が強くなるためには強敵との戦闘を経験するのが必要だと考えたダイゴロウは自国を離れ、わざわざ王国に訪れた。彼がここへ来た理由は他国にも知れ渡る程の武芸者である「ナイ」と「ゴウカ」と戦うためであり、今日はナイと戦ったがいずれはゴウカにも試合も申し込むつもりだった。
「ダイゴロウ殿、怪我の具合はどうだ?」
「この国の回復薬は効果が素晴らしい。もう怪我の方はもう大丈夫です。だが、甲冑の方が直るのに時間が掛かるらしく、しばらくは戦えそうにない」
「そうか、ならばゴウカの試合は甲冑が直った後でいいだろう。ゴウカも万全な状態の相手でなければ戦わないだろうしな」
「ゴウカさんならそういいそうですね……」
ゴウカの性格ならば相手が万全の状態でなければ勝負に応じない可能性が高く、ゴウカの挑戦はもうしばらく後になりそうだった。それに現在のゴウカはマリンと共に王都を離れており、甲冑が無事だったとしてもすぐには戦う事はできない。
冒険者に復帰した途端、ゴウカはマリンと共に冒険者稼業に専念し、現在は王都を離れて魔物を狩る事に集中している。久々に人以外の相手と戦いたくなったらしく、戻ってくるのは数日後の予定だった。
「ナイ君、今日は急に試合を申し込んですまなかったな」
「いえ、気にしないでください。こっちも久々に全力で戦えて嬉しかったです」
「そうか……ところでリーナと君が何処まで関係が進んでいるのか教えて……」
「旦那様、大変です!!」
アッシュが言葉を言い終える前に慌てた様子の使用人が駆けつけ、即座に表情を引き締めてアッシュは用件を尋ねる。
「何事だ?急用か?」
「先ほど、王城の方から兵士が参られました!!それでアッシュ様にはすぐに王城へ参上するようにと……」
「王城からだと?何かあったのか?」
「理由は教えてくれませんでした。ですが、早急に王城へ参る様にとの事です」
「アッシュ公爵!!」
「うむ……すぐに向かうぞ、ナイ君も来てくれ!!」
王城に来るように命じられたアッシュは即座に準備を行い、ナイも同行する――
――王城にナイ達が辿り着くと、即座に玉座の間に案内された。そこには既に大勢の人間が集まっており、聖女騎士団を除く騎士団の団長と副団長も集められていた。
玉座に座る国王は険しい表情を浮かべ、その隣に立つアルトとバッシュとリノも難しい表情を浮かべていた。そして何故か国王の前にはシノビとクノが跪き、二人とも目つきを鋭くさせていた。
「これはいったい……」
「何かあったんですか!?」
「おお、アッシュよ!!それにナイも来てくれたのか……実は大変なことが起きたのじゃ!!」
「父上、私が説明します」
国王はアッシュとナイが来ると興奮した様子で立ち上がり、それを抑えたのがバッシュだった。彼は国王を座らせると代わりに今日全員を呼び出した理由を話す。
「まずい事になった……書庫を調べてみた所、どうやら例の魔物使いが盗み出した資料の中に和国に関する物も含まれていた」
「和国!?」
「確かシノビさんとクノの……故郷?」
バッシュによるとアンが書庫から盗み出した資料の中に「和国」に関連する資料も含まれ、しかもその中にはシノビが王国に預けていた重要な資料も含まれていた。
「……盗まれたのは和国で作り出された妖刀の保管場所が記された巻物だ」
「えっ!?それって確かシノビさんが持っていた……!?」
「その通りだ……かつては俺が管理していた。しかし、リノ様の元に仕える時に王国へと献上した巻物だ」
シノビが口を挟み、彼は悔し気な表情を浮かべていた。隣に跪くクノもそんな彼を心配する表情を浮かべ、一方で国王はシノビに対して申し訳なさそうな表情を浮かべる。
「すまぬ、これは儂の不手際じゃ。お主等の故国の秘宝を示した巻物が盗まれるなど……もっと厳重に管理しておくべきだった」
「シノビ、申し訳ありません!!私のせいで……」
「リノ殿が謝る必要はない、しかし……まさか今日まで巻物が盗まれた事に気付けなかったとは」
「不覚でござる」
シノビ一族がこれまで管理してきた巻物を王国に託したのは、シノビが王国への忠誠心を照明するためである。彼が所持していた巻物には数百本の妖刀(魔剣)が封じられた場所を示され、その妖刀を王国が手にした場合は大きな戦力増強に繋がる。
しかし、今まで妖刀を回収せずに放置していたのはそれほどの数の妖刀を手にした事が他国に知られた場合、王国を恐れて他の国同士が手を組んで王国の勢力を抑制しようとするかもしれず、今の時点で妖刀を回収するのは危険だと判断された。
だが、まさかシノビが託した巻物が書庫に保管され、しかもアンがそれを盗み出した事が今日になって判明した事にシノビもクノも落胆を隠しきれない。これは王国側の不手際で有り、この二人にとっては大切な巻物をずさんに管理していた王国のせいで迷惑を被る。
「例の魔物使いがもしも妖刀の在り処を知ったとしたら……」
「いや、それは大丈夫だ。あの巻物は二つ揃えても暗号を解かない限りは妖刀の居場所は分からない。しかし、どうしてアンとやらは巻物を盗み出したのか……」
「そこが一番気になるでござるな。この国の者には巻物に書かれている文字は理解できないはずでござる」
「そうなんですか?」
「巻物に記されている文字は和国で使われていた文字だ。我が一族の人間以外に読み解く事はできないはずだが……」
アンが巻物を盗み出した理由だけが分からず、和国の人間ではない彼女は文字を読み解く事ができない。だからこそシノビは警戒する必要はないかと思ったが、ここで思いもよらぬ人物が話に加わる。
「もしかしたらですけど……翻訳の技能を覚えているじゃないですか?」
「何!?」
「イリア、それはどういう意味だ?」
話に割って入ったのはイリアであり、彼女はアンが巻物の文字を知らずとも、読み解く方法がある可能性を話した。
「私も書庫にあった文献で読んだだけですけど、技能の中には「翻訳」という名前の技能があるんです。この技能を習得すると他国の言語や文字を理解できるようになるそうです」
「翻訳じゃと……それは確か、伝説の勇者も身に着けていたというあの技能か!?」
「そんな馬鹿な……御伽噺じゃないのか?」
「でも、それだと辻褄が合うんですけど……」
翻訳の技能は伝説の勇者が身に着けていた技能だと伝えられており、この場に存在する者達ですら覚えていない。多数の技能を習得しているナイも翻訳の技能は習得しておらず、実在するかどうかも怪しい。
しかし、アンがもしも「翻訳」の技能を覚えていたとしたら彼女は巻物の内容を読み解く事ができる。仮にアンが暗号を解いていたとしたら、彼女は和国の旧領地に封じされた妖刀の在り処を見抜いた事になる。
「もしも敵が妖刀の居場所を知ったとしたら……まずい事になるぞ」
「ええ、非情にまずいですね。妖刀を奪われて悪用されたら大問題です」
「何という事だ……い、一刻も早く捕まえねば!!」
「ですが、聖女騎士団がアンを追跡しています。彼女達ならば捕まえられるのでは……」
「いいえ、楽観は駄目です。相手は得体が知れませんからね……そうだ、その妖刀の在り処に関してですけど、シノビさんはもう知っているんじゃないですか?」
「……何?」
イリアの発言に全員がシノビに視線を向け、彼は二つの巻物を一時期所持していた。シノビ一族の現当主である彼は当然ながら暗号の解き方を理解しているはずであり、既に二つの巻物から読み取った暗号を解読して妖刀の在り処を知っていてもおかしくはない。
「シノビさん、正直に答えて下さい。妖刀の居場所は知っているんですか?」
「……知っている」
「なんじゃと!?お主、それを知っておきながら今まで黙っておったのか!?なんという不届き者……」
「父上……その巻物を盗まれたのは僕達ですから。それに妖刀の回収を先延ばしにしたのは父上の判断でしょう?」
「むむっ……そ、そうだったな。今のは失言じゃった」
巻物を渡しておきながらシノビは事前に暗号を解き、妖刀の居場所を把握していた事に国王は激怒したが、アルトの指摘を受けて彼を責められる立場ではない事を思い出す。いくら妖刀の居場所を知っていたとしても、その居場所を示す巻物を盗まれたのは王国の不手際である事に変わりはない。
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