1,021 / 1,110
嵐の前の静けさ
第1001話 人間投擲
しおりを挟む
「お前達、退け!!止めを刺す!!」
「ドリス、行くぞ」
「ちょ、ちょっと待ってください!!思っていたより深く刺さって……」
ロランの命令を受けたリンは剣を引き抜くと、ドリスに急いで巨大ゴーレムから離れるように促す。しかし、ドリスの真紅は巨大ゴーレムの胸元に深く突き刺さり、引き抜くのに時間が掛かった。
攻撃を受け続けた巨大ゴーレムは怒りの表情を抱き、自分の胸元に立つドリスとリンに目掛けて両腕を伸ばす。それに気づいたリンは慌ててドリスの真紅を抜き取ろうとした。
「早くしろ、握り潰されるぞ!!」
「ま、待ってください!!もう少しで抜けそうですわ!!」
『ゴアアアッ!!』
二人が真紅を抜き取る前に巨大ゴーレムの両手が迫り、二人の身体が握り潰そうとした瞬間、何処からか巨大ゴーレムの腕に「水球」が放たれる。
『ゴアッ!?』
「なっ、この魔法は……マリンさん!?」
「お前、今まで何をしていた!?」
『……寝過ごした』
何処からともなくマリンが現れると、彼女はドリスとリンを握り潰そうとする巨大ゴーレムの両腕に目掛けて水球を放つ。水を苦手とする巨大ゴーレムは彼女の攻撃を嫌がり、その間にドリスとリンは遂に真紅を引き抜く。
「抜けましたわ!!」
「よし、行くぞ!!」
「御二人とも、この鎖を掴んでください!!」
フィルは二人に目掛けて鎖の魔剣を伸ばし、即座にドリスとリンは鎖を掴むとフィルは力尽くで引き寄せる。二人を巨大ゴーレムから引き剥がす事に成功すると、ロランは双紅刃を回転させて魔力を高めていく。
ロランの双紅刃は回転させればさせる程に刃に魔力が宿り、攻撃を強化する機能を持つ。最大まで回転を加えればその一撃は伝説の聖剣の一撃に匹敵すると言われ、彼は雄たけびを上げながら巨大ゴーレムに目掛けて飛び込む。
「うおおおおおっ!!」
『ゴアッ……!?』
巨大ゴーレムの胸元に目掛けてロランは双紅刃を振り下ろそうとした瞬間、先ほどドリスが真紅を突き刺した箇所から赤色の光が毀れると、それを見たロランは直前で危険を感じ取った。
『ゴガァアアアアッ!!』
「何だとっ!?」
「ロラン大将軍、危ない!?」
巨大ゴーレムは胸元を発光させた瞬間、再び全身に火炎が纏い、それを見たロランは意識が乱れてしまう。このまま彼が攻撃を仕掛ければ火炎に飲み込まれてしまい、急いで他の者が助けようとした。
しかし、地上に存在した者達が動く前に何者かがロランの背後に迫り、空中に浮かんでいる彼に目掛けてその人物は声をかける。
「ロランさん、肩を借ります!!」
「何!?」
声が聞こえたロランは驚いて首を剥けると、そこには蒼月を構えたリーナが何時の間にか自分の背中に迫っていた――
――巨大ゴーレムに氷結爆弾が的中した頃、ナイが無事に目を覚ましたので安心したリーナも戦闘に参加するために甲板にやってきた。彼女は甲板に辿り着くと投石機を発見し、それを見たリーナはある方法を思いつく。
『イリアさん!!これを使って僕を飛ばす事ができる!?』
『はっ?何を言ってるんですか?』
『だから、これで僕をあそこまで飛ばせるの!?』
『ええっ!?飛んでいくの!?』
リーナの突拍子もない発言にイリアだけではなくてモモも驚いたが、リーナとしては地上を降りて向かうよりも投石機を利用して飛び込む方が早く辿り着けると思い、二人に頼んで彼女は投石機に乗り込む。
先ほどの氷結爆弾を放った時に投石機がどの角度で打ち込めば標的に当たるのかは把握済みであり、準備が整い次第にリーナは巨大ゴーレムに目掛けて発射した。
『どうなっても知りませんからね……発射!!』
『えいっ!!』
『行ってきまぁあああす!!』
投石機を利用してリーナは一気に巨大ゴーレムに目掛けて突っ込むと、この時にロランも同時に跳び上がり、攻撃を仕掛けようとしていた。しかし、リーナの方が圧倒的に移動速度が勝っていたため、彼女はロランを飛び越えて蒼月を振り払う。
「でやぁあああっ!!」
『ゴアアッ!?』
蒼月の一撃によって巨大ゴーレムは胸元の部分の炎が掻き消され、逆に凍り付いてしまう。それを確認したロランは驚いた表情を浮かべるが、彼はこの好機を逃さずに双紅刃を振り下ろす。
「くたばれっ!!」
『ゴギャアアアアアッ!?』
双紅刃の一撃が巨大ゴーレムの肉体を崩壊させ、全体が崩れ落ちていく。巨大ゴーレムは全身が砕け散ると火炎も消え去り、残されたのは通常よりも数倍の近くの大きさの「核」だけが残り、ロランはどうにか核を傷付けずに倒す事ができた事に安堵する。
(危なかった……これだけの大きさの核を破壊すればとんでもない事になっていたな)
ロランは核の大きさを確認し、もしもこれだけの大きさの核を破壊すれば内部の火属性の魔力が暴走し、大爆発を引き起こしていた。そうなれば地上の者達は巻き込まれ、下手をしたら全滅していた可能性もあった。
偶然とはいえ、リーナのお陰で巨大ゴーレムの攻撃を成功した彼は彼女の援護に礼を言おうとした。しかし、肝心のリーナは着地に失敗したらしく、頭におおきなたんこぶを作った状態で倒れていた。
「いてててっ……頭打ったぁっ……!?」
「だ、大丈夫か?」
「は、はい……」
ロランはリーナの腕を掴んで立ち上がらせると、彼女は涙目を浮かべながらたんこぶを摩る。その様子を見てロランは苦笑いを浮かべ、他の者たちも駆けつけた。
「おい、リーナ!!よくやったね、あんた!!」
「たくっ、良い所を持って行きやがって……」
「大将軍もお疲れさまでした」
「お前達も良く戦った……それにしても、まさかこんな場所にまでマグマゴーレムが攻め寄せてくるとはな」
全員が集まって勝利の喜びを分かち合うが、ロランは改めて自分達が倒したマグマゴーレムの残骸の山を確認する。この場所は飛行船から数キロも離れているのだが、マグマゴーレムの大群がここまで追いかけてきた事に彼は顔をしかめる。
基本的にマグマゴーレムは生息地である火山から遠く離れるような行為は行わず、理由としては彼等が好物としている火属性の魔力が宿った鉱石は火山地帯でしか取れない。仮に火山を離れるとマグマゴーレムは徐々に魔力を失い、力を失って動けなくなる。だからマグマゴーレムが火山地帯から遠く離れる事は有り得ないと思われていた。
しがし、現実にマグマゴーレムは火山から数キロも離れたこの場所にまで攻め込み、しかも雨が降っていても地中を掘り進んで進んできた事にロランは改めて恐ろしく思った。これではこの地も安全とは限らず、早急に飛行船を別の場所に移動させる必要があった。
「一旦、ここよりも遠くに飛行船を移動させる」
「それしかないだろうね……この近くに湖とかはないのかい?そこならマグマゴーレム共も近寄れないだろ?」
「いえ、残念ながらこの近くに湖はありません」
テンの言葉に周辺地域の地図を覚えていた騎士は首を振り、グマグ火山の周辺には飛行船が着水できそうな湖は存在しない事を伝える。マグマゴーレムが何処まで追ってくるのか分からない以上は地上に着地している状態では安心できない。
「私達も相当な数のマグマゴーレムを倒したはずですわ。もう火山に残っているマグマゴーレムもそれほどいないのでは……?」
「うむ、その可能性もある……よし、まだ日も高い。このまま我々はグマグ火山へ向かい、火口付近に存在するマグマゴーレムを掃討するぞ」
「えっ!?本気ですか!?」
ロランの言葉に全員が驚くが、ロランもこの状況で冗談を言う様な人間ではなく、彼は真面目に考えた上でこのまま火山に生息するマグマゴーレムの討伐作戦を終了させる事を伝える。
「何処へ移動したとしてもマグマゴーレムがいつ襲ってくるか分からない。昨日も襲われなかったのは雨が降ったせいだ。もしも雨が降っていなければ奴等は昨日の時点で襲っていた可能性もある」
「それはそうですけど……」
「幸いにも我々は昨日一日休んだ事で疲労は抜けている。今回の戦闘もイリア魔導士の兵器のお陰でマグマゴーレムの殆どを掃討できた」
「まあ、確かにお陰で楽はできたね」
イリアの小樽型爆弾と投石機のお陰で100匹近くのマグマゴーレムの討ちとれた。そんな便利な物があるならばもっと早く使えばよかったのでは、という考えは置いといてロランは今ならば全員が万全の状態で戦える事を確認した。
「今の我々ならばグマグ火山の火口付近に存在するマグマゴーレムを掃討できる。仮に火山の他の場所にマグマゴーレムが残っていたとしても、ここまで倒したマグマゴーレムの数を考慮すればそれほど残っていないはずだ」
「そういえば心なしか涼しくなったような気がするぞ?」
「それもマグマゴーレムを倒した原因かもしれませんわね」
三日前と比べるとグマグ火山付近の熱気が収まり、この理由も数百匹のマグマゴーレムを倒したのが原因だと考えられた。この調子でマグマゴーレムを掃討すればこの地域の環境も安定し、より安全にグマグ火山の火属性の魔石を採取できる。
討伐隊がグマグ火山に派遣された理由はグツグ火山から火属性の魔石が採取できなくなったからであり、今後はグマグ火山で火属性の魔石を採取するしかない。そのためには魔石の採取を妨害するマグマゴーレムを討伐する必要があり、マグマゴーレムとの掃討はどうしても必要な仕事だった。
「各自、準備を整えろ。これが最後の戦いになるだろう……リーナ、ナイとゴウカの様子はどうだ?」
「あ、ナイ君なら目を覚ましたけど……まだ病み上がりだから本調子じゃなさそうです。ゴウカさんはまだ眠ってましたけど……」
「そうか……二人が居れば心強いのだが」
「まあ、あいつらは頑張ってくれたからね。偶にはナイの奴抜きであたしらで何とかしないとね」
「ナイがいなくてもルナが居れば十分だ!!」
ナイとゴウカが討伐隊に参加できないのは戦力的に厳しいが、今回は前回に留守番していた者達も連れて戦力を補強し、飛行船には最低限の人数を残して討伐隊は出発する事が決まる――
「ドリス、行くぞ」
「ちょ、ちょっと待ってください!!思っていたより深く刺さって……」
ロランの命令を受けたリンは剣を引き抜くと、ドリスに急いで巨大ゴーレムから離れるように促す。しかし、ドリスの真紅は巨大ゴーレムの胸元に深く突き刺さり、引き抜くのに時間が掛かった。
攻撃を受け続けた巨大ゴーレムは怒りの表情を抱き、自分の胸元に立つドリスとリンに目掛けて両腕を伸ばす。それに気づいたリンは慌ててドリスの真紅を抜き取ろうとした。
「早くしろ、握り潰されるぞ!!」
「ま、待ってください!!もう少しで抜けそうですわ!!」
『ゴアアアッ!!』
二人が真紅を抜き取る前に巨大ゴーレムの両手が迫り、二人の身体が握り潰そうとした瞬間、何処からか巨大ゴーレムの腕に「水球」が放たれる。
『ゴアッ!?』
「なっ、この魔法は……マリンさん!?」
「お前、今まで何をしていた!?」
『……寝過ごした』
何処からともなくマリンが現れると、彼女はドリスとリンを握り潰そうとする巨大ゴーレムの両腕に目掛けて水球を放つ。水を苦手とする巨大ゴーレムは彼女の攻撃を嫌がり、その間にドリスとリンは遂に真紅を引き抜く。
「抜けましたわ!!」
「よし、行くぞ!!」
「御二人とも、この鎖を掴んでください!!」
フィルは二人に目掛けて鎖の魔剣を伸ばし、即座にドリスとリンは鎖を掴むとフィルは力尽くで引き寄せる。二人を巨大ゴーレムから引き剥がす事に成功すると、ロランは双紅刃を回転させて魔力を高めていく。
ロランの双紅刃は回転させればさせる程に刃に魔力が宿り、攻撃を強化する機能を持つ。最大まで回転を加えればその一撃は伝説の聖剣の一撃に匹敵すると言われ、彼は雄たけびを上げながら巨大ゴーレムに目掛けて飛び込む。
「うおおおおおっ!!」
『ゴアッ……!?』
巨大ゴーレムの胸元に目掛けてロランは双紅刃を振り下ろそうとした瞬間、先ほどドリスが真紅を突き刺した箇所から赤色の光が毀れると、それを見たロランは直前で危険を感じ取った。
『ゴガァアアアアッ!!』
「何だとっ!?」
「ロラン大将軍、危ない!?」
巨大ゴーレムは胸元を発光させた瞬間、再び全身に火炎が纏い、それを見たロランは意識が乱れてしまう。このまま彼が攻撃を仕掛ければ火炎に飲み込まれてしまい、急いで他の者が助けようとした。
しかし、地上に存在した者達が動く前に何者かがロランの背後に迫り、空中に浮かんでいる彼に目掛けてその人物は声をかける。
「ロランさん、肩を借ります!!」
「何!?」
声が聞こえたロランは驚いて首を剥けると、そこには蒼月を構えたリーナが何時の間にか自分の背中に迫っていた――
――巨大ゴーレムに氷結爆弾が的中した頃、ナイが無事に目を覚ましたので安心したリーナも戦闘に参加するために甲板にやってきた。彼女は甲板に辿り着くと投石機を発見し、それを見たリーナはある方法を思いつく。
『イリアさん!!これを使って僕を飛ばす事ができる!?』
『はっ?何を言ってるんですか?』
『だから、これで僕をあそこまで飛ばせるの!?』
『ええっ!?飛んでいくの!?』
リーナの突拍子もない発言にイリアだけではなくてモモも驚いたが、リーナとしては地上を降りて向かうよりも投石機を利用して飛び込む方が早く辿り着けると思い、二人に頼んで彼女は投石機に乗り込む。
先ほどの氷結爆弾を放った時に投石機がどの角度で打ち込めば標的に当たるのかは把握済みであり、準備が整い次第にリーナは巨大ゴーレムに目掛けて発射した。
『どうなっても知りませんからね……発射!!』
『えいっ!!』
『行ってきまぁあああす!!』
投石機を利用してリーナは一気に巨大ゴーレムに目掛けて突っ込むと、この時にロランも同時に跳び上がり、攻撃を仕掛けようとしていた。しかし、リーナの方が圧倒的に移動速度が勝っていたため、彼女はロランを飛び越えて蒼月を振り払う。
「でやぁあああっ!!」
『ゴアアッ!?』
蒼月の一撃によって巨大ゴーレムは胸元の部分の炎が掻き消され、逆に凍り付いてしまう。それを確認したロランは驚いた表情を浮かべるが、彼はこの好機を逃さずに双紅刃を振り下ろす。
「くたばれっ!!」
『ゴギャアアアアアッ!?』
双紅刃の一撃が巨大ゴーレムの肉体を崩壊させ、全体が崩れ落ちていく。巨大ゴーレムは全身が砕け散ると火炎も消え去り、残されたのは通常よりも数倍の近くの大きさの「核」だけが残り、ロランはどうにか核を傷付けずに倒す事ができた事に安堵する。
(危なかった……これだけの大きさの核を破壊すればとんでもない事になっていたな)
ロランは核の大きさを確認し、もしもこれだけの大きさの核を破壊すれば内部の火属性の魔力が暴走し、大爆発を引き起こしていた。そうなれば地上の者達は巻き込まれ、下手をしたら全滅していた可能性もあった。
偶然とはいえ、リーナのお陰で巨大ゴーレムの攻撃を成功した彼は彼女の援護に礼を言おうとした。しかし、肝心のリーナは着地に失敗したらしく、頭におおきなたんこぶを作った状態で倒れていた。
「いてててっ……頭打ったぁっ……!?」
「だ、大丈夫か?」
「は、はい……」
ロランはリーナの腕を掴んで立ち上がらせると、彼女は涙目を浮かべながらたんこぶを摩る。その様子を見てロランは苦笑いを浮かべ、他の者たちも駆けつけた。
「おい、リーナ!!よくやったね、あんた!!」
「たくっ、良い所を持って行きやがって……」
「大将軍もお疲れさまでした」
「お前達も良く戦った……それにしても、まさかこんな場所にまでマグマゴーレムが攻め寄せてくるとはな」
全員が集まって勝利の喜びを分かち合うが、ロランは改めて自分達が倒したマグマゴーレムの残骸の山を確認する。この場所は飛行船から数キロも離れているのだが、マグマゴーレムの大群がここまで追いかけてきた事に彼は顔をしかめる。
基本的にマグマゴーレムは生息地である火山から遠く離れるような行為は行わず、理由としては彼等が好物としている火属性の魔力が宿った鉱石は火山地帯でしか取れない。仮に火山を離れるとマグマゴーレムは徐々に魔力を失い、力を失って動けなくなる。だからマグマゴーレムが火山地帯から遠く離れる事は有り得ないと思われていた。
しがし、現実にマグマゴーレムは火山から数キロも離れたこの場所にまで攻め込み、しかも雨が降っていても地中を掘り進んで進んできた事にロランは改めて恐ろしく思った。これではこの地も安全とは限らず、早急に飛行船を別の場所に移動させる必要があった。
「一旦、ここよりも遠くに飛行船を移動させる」
「それしかないだろうね……この近くに湖とかはないのかい?そこならマグマゴーレム共も近寄れないだろ?」
「いえ、残念ながらこの近くに湖はありません」
テンの言葉に周辺地域の地図を覚えていた騎士は首を振り、グマグ火山の周辺には飛行船が着水できそうな湖は存在しない事を伝える。マグマゴーレムが何処まで追ってくるのか分からない以上は地上に着地している状態では安心できない。
「私達も相当な数のマグマゴーレムを倒したはずですわ。もう火山に残っているマグマゴーレムもそれほどいないのでは……?」
「うむ、その可能性もある……よし、まだ日も高い。このまま我々はグマグ火山へ向かい、火口付近に存在するマグマゴーレムを掃討するぞ」
「えっ!?本気ですか!?」
ロランの言葉に全員が驚くが、ロランもこの状況で冗談を言う様な人間ではなく、彼は真面目に考えた上でこのまま火山に生息するマグマゴーレムの討伐作戦を終了させる事を伝える。
「何処へ移動したとしてもマグマゴーレムがいつ襲ってくるか分からない。昨日も襲われなかったのは雨が降ったせいだ。もしも雨が降っていなければ奴等は昨日の時点で襲っていた可能性もある」
「それはそうですけど……」
「幸いにも我々は昨日一日休んだ事で疲労は抜けている。今回の戦闘もイリア魔導士の兵器のお陰でマグマゴーレムの殆どを掃討できた」
「まあ、確かにお陰で楽はできたね」
イリアの小樽型爆弾と投石機のお陰で100匹近くのマグマゴーレムの討ちとれた。そんな便利な物があるならばもっと早く使えばよかったのでは、という考えは置いといてロランは今ならば全員が万全の状態で戦える事を確認した。
「今の我々ならばグマグ火山の火口付近に存在するマグマゴーレムを掃討できる。仮に火山の他の場所にマグマゴーレムが残っていたとしても、ここまで倒したマグマゴーレムの数を考慮すればそれほど残っていないはずだ」
「そういえば心なしか涼しくなったような気がするぞ?」
「それもマグマゴーレムを倒した原因かもしれませんわね」
三日前と比べるとグマグ火山付近の熱気が収まり、この理由も数百匹のマグマゴーレムを倒したのが原因だと考えられた。この調子でマグマゴーレムを掃討すればこの地域の環境も安定し、より安全にグマグ火山の火属性の魔石を採取できる。
討伐隊がグマグ火山に派遣された理由はグツグ火山から火属性の魔石が採取できなくなったからであり、今後はグマグ火山で火属性の魔石を採取するしかない。そのためには魔石の採取を妨害するマグマゴーレムを討伐する必要があり、マグマゴーレムとの掃討はどうしても必要な仕事だった。
「各自、準備を整えろ。これが最後の戦いになるだろう……リーナ、ナイとゴウカの様子はどうだ?」
「あ、ナイ君なら目を覚ましたけど……まだ病み上がりだから本調子じゃなさそうです。ゴウカさんはまだ眠ってましたけど……」
「そうか……二人が居れば心強いのだが」
「まあ、あいつらは頑張ってくれたからね。偶にはナイの奴抜きであたしらで何とかしないとね」
「ナイがいなくてもルナが居れば十分だ!!」
ナイとゴウカが討伐隊に参加できないのは戦力的に厳しいが、今回は前回に留守番していた者達も連れて戦力を補強し、飛行船には最低限の人数を残して討伐隊は出発する事が決まる――
0
お気に入りに追加
73
あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした
高鉢 健太
ファンタジー
ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。
ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。
もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。
とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる