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嵐の前の静けさ
第997話 炎の巨人
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――ゴガァアアアアッ!!
姿が変化したマグマゴーレムは飛行船に目掛けて駆け出し、身体が大きくなったにも関わらずに移動速度も上がっていた。それを見たテンは慌てて投石機を使おうとしたが、既に弾切れである事を思い出す。
「ちょ、ちょっとまずいんじゃないのかい!?あいつら、こっちに来るよ!?」
「くそっ、何とかしなければ……」
「何とかと言われても……」
一匹でもマグマゴーレムが飛行船に突っ込んだら大惨事を引き起こす。そうなる前に対処しなければならないのは分かっているが、今から地上に降りても間に合わない。
最初に動いたのはロランであり、双紅刃を振りかざすと地属性の魔力を纏わせ、飛行船の右方面のマグマゴーレムに目掛けて投げ放つ。
「うおおおおおっ!!」
『ゴアアアアッ!?』
「うひゃあっ!?」
「す、凄い!?」
「吹き飛んだ!?」
ロランが投げ放った双紅刃はまるで隕石の如く落下し、地上に衝突すると凄まじい衝撃波を発生させて突っ込んできたマグマゴーレムを吹き飛ばす。
しかし、右方面から迫っていたマグマゴーレムしか吹き飛ばせず、反対方向から迫ってきたマグマゴーレムまで止める事はできない。マグマゴーレム達は飛行船の側壁に目掛けて体当たりを仕掛ける。
『ゴォオオオオッ!!』
「まずい、船がっ!?」
「マホ殿!!」
「うむ、任せるがいい」
ロランは船のマストに声をかけると、頂上部に杖を構えたマホが立っており、彼女は飛行船の左方面に向けて杖を振り下ろす。
「ストームバレット!!」
『ゴアアアアッ!?』
マホの構えた杖から「螺旋状」の風属性の魔力の塊が放たれ、地上から突進してきたマグマゴーレムに目掛けて降り注ぐ。マグマゴーレムは砲弾の如く突っ込んできた風の塊を受けて吹き飛び、地面に転がり込む。
どうにか左右から迫ってきたマグマゴーレムの攻撃を止める事はできたが、ロランとマホの攻撃はあくまでも足止め程度の効果しかなく、倒れていたマグマゴーレム達は起き上がって憤怒の表情を浮かべる。
「ゴガァアアアッ!!」
「ゴオオッ……!!」
「ゴウッ!!」
起き上がったマグマゴーレムは怒りの咆哮を放ち、再び飛行船に目掛けて近付こうとした。しかし、既に甲板に居た者達も動き出し、全員が武器を掲げて飛び降りていた。
「いつまでも調子に乗ってるんじゃないよ!!」
「おらおらおらっ!!」
「ていっ」
「ゴガァッ!?」
「ゴオッ!?」
テンが飛び降りるとルナとミイナも続き、三人はマグマゴーレムに目掛けて各々の武器を叩き込む。王国内でも女性(人間)限定ならばこの三人は間違いなく五本指に入る程の怪力を誇り、三人の攻撃を受けたマグマゴーレムの一匹が吹き飛ぶ。
他のマグマゴーレムの元にはロランが動き出し、彼に続いてフィルも鎖の魔剣を手にして向き合い、少し遅れてガオウも両手に鉤爪を装着して向き合う。これで右方面のマグマゴーレムと王国軍は対峙したが、左方面のマグマゴーレムは手薄となる。
『ゴオオッ!!』
「ちょちょ、全員でそっちに跳んでどうするんですか!?」
「大丈夫だ、問題ない」
「ええ、問題ありませんわね!!」
左方面から迫るマグマゴーレム達に甲板に残っていたイリアは焦った声を上げるが、そんな彼女の後ろからリンとドリスが現れる。二人とも甲板に辿り着いていたらしく、彼女達は暴風と真紅を手にして飛び降りる。
「行くぞ、ドリス!!」
「ええ、行きますわよ!!」
『ゴアッ!?』
甲板から飛び降りてきたドリスとリンに気付いたマグマゴーレム達は見上げると、空中に落下しながらもドリスは槍を構え、そんな彼女の肩をリンは掴む。
「飛爆槍!!」
「くうっ……!?」
ドリスは空中で真紅の柄の部分から火属性の魔力を放出させ、爆炎を利用して加速しながら降下を行う。その勢いに乗ってリンは暴風を構え、ドリスと同時に攻撃を行う。
「烈風斬!!」
「でやぁあああっ!!」
「ゴオオオッ!?」
「ゴガァアッ!?」
真紅の一撃がマグマゴーレムの胸元を貫き、暴風がマグマゴーレムの頭部を切り裂く。頭部と胸元を抉られたマグマゴーレムは武器を引き抜かれると後退り、やがて全身の炎が噴き出して火柱と化す。
攻撃を受けた際に体内の核が破損したらしく、膨大な火属性の魔力が火柱と化して天に登っていく。グツグ火山で隕石が落下した時も火口のマグマゴーレムは火柱と化した事があり、やがて火柱が消え去るとマグマゴーレムは跡形もなく消えた。
「ふうっ……良い援護でしたわよ」
「黙れ、次はお前が手伝え!!」
「はいはい、分かってますわよ」
ドリスの言葉にリンは不機嫌そうに答え、二人は背中を合わせてマグマゴーレムと向かい合う。四匹のマグマゴーレムは仲間を葬った彼女達に怒りを抱き、全力で襲い掛かった――
――同時刻、船内の医療室では目を覚ましたモモとリーナは窓の外を心配そうに眺めていた。この二人は未だに意識を失っているナイの元から離れられず、外の戦闘に参加する事はできなかった。
「う、うわぁっ……女将さん、容赦ないよ」
「これは僕の出番は必要なさそうだね……」
外では王国騎士と冒険者達がマグマゴーレムを相手に戦っており、戦況に関しては王国側が圧倒的に有利だった。核を吸収して力を増したマグマゴーレムでも流石に王国最強の戦力が相手では分が悪く、この調子ならば王国軍は確実に勝利する。
本来ならばマグマゴーレムと一番相性が良いリーナが真っ先に出向くべきなのだが、彼女は未だに意識を取り戻さないナイを心配してここから動けず、他の者たちもそれえを配慮して彼女に船の守りを任せて外に出た。
「あ、見て見て!!ミイナちゃんがこっちを見たよ!!あ、手を振ってる!!」
「戦闘の際中なのに余裕だなぁっ……ん?」
「どうかしたの?」
リーナは物音が聞こえたような気がして振り返ると、モモも不思議そうに彼女の視線の先に目を向ける。しかし、二人の視界には特に怪しい物はなく、ベッドに横たわっているナイの姿しか見えない。
「今、何か音がしたような気がしたけど……」
「えっ!?ナイ君が目を覚ましたの?」
「ううん、そういうのじゃないと思うけど……」
ナイが目を覚ましたのかとモモは期待したが、リーナはそれを否定して蒼月を手に取る。武芸者としての直感が彼女に危険を告げ、部屋の中を見渡す。
(何かが居る?まさか、敵!?)
リーナはモモを庇いながら周囲の様子を伺い、この医療室にはリーナ達以外には治療中の騎士達がベッドに横たわっている。彼等を見たリーナは全員が寝ている事を確認し、彼女が感じた「殺気」を放つのは騎士達ではないと悟る。
蒼月を手にしながらリーナはナイをモモに任せ、部屋の中をもう一度見渡して殺気を放つ存在を探す。この部屋の何処かに隠れている事は間違いなく、彼女は「心眼」を発動させた。
(意識を集中させて……敵は何処にいるのか見極めるんだ)
リーナもナイを見習って修行し、ナイも覚えている特殊技能の「心眼」を習得した。彼女は五感を研ぎ澄ませて殺気を放つ存在を探し出し、そして天井の方から殺気が放たれている事を見抜く。
「そこだっ!!」
「キィイッ!?」
「わあっ!?」
「うぷっ……」
蒼月を天井に向けてリーナは突き刺すと、彼女の行為にモモは驚いてナイに抱きつく。この時にナイはモモの胸に顔が挟まれる形となり、少し苦しそうな表情を浮かべる。
天井に蒼月を繰り出したリーナは手ごたえを感じると、天井から蒼月を引き抜くと刃には白色の鼠が突き刺さっていた。その鼠を見てリーナは船内に隠れていた鼠の話を思い出す。
(この鼠、ガオウさんたちが言っていた鼠型の魔獣?どうしてこんな場所に……)
鼠型の魔獣を仕留めるとリーナは安心仕掛けるが、その一瞬の隙を突いて天井にできた穴から別の鼠が飛び出す。
「キイイッ!?」
「なっ!?」
「きゃああっ!?」
天井に隠れていたのは一匹だけではなく、二匹目の鼠が飛び出す。鼠はナイに目掛けて落下すると、ナイを庇ったモモが悲鳴を上げる。それを見たリーナは蒼月を繰り出そうとした時、何処からかクナイが飛んできた。
「させぬでござる!!」
「えっ!?」
部屋の扉が開かれるとクノがクナイを投擲し、空中から落下してきた鼠にクナイが突き刺さる。鼠は壁に串刺しとなり、悲鳴が部屋の中に響く。
「キィイイイッ!?」
「ふうっ……間一髪でござったな」
「ク、クノさん!?」
「え、え、な、何!?」
「落ち着くでござる」
クノが現れて鼠を倒した事にリーナは驚き、モモは状況を理解できずに混乱したが、そんな彼女達を落ち着かせてクノは事情を話す――
――彼女の話によるとクノは昨夜から医療室の部屋の前で待ち伏せしていたらしく、彼女はシノビの指示で船内の様子を探っていたという。そして船内に残っていた鼠達を発見し、気づかれないように動向を伺う。
クノが発見した鼠達は明らかに野生の種ではなく、まるで誰かを監視するような行動を取っていた。そして彼女が見つけた鼠二匹は医療室を見張る様に動かず、離れる様子がなかった。
鼠達の行動に不信を抱いたクノは昨日からずっと鼠達を観察し、そしてリーナが鼠を仕留めた時点で彼女も助太刀したという。ここまでの鼠達の行動を把握したクノは鼠達の目的は「ナイ」の監視という結論に至った。
「この鼠達は明らかに誰かの指示を受けて行動していたでござる。その証拠にこの鼠達にも……」
「あ、その紋様!?」
「鞭の紋様……という事はやっぱり、例の魔物使いの仕業なの?」
「間違いないでござる」
二人が仕留めた鼠を確認すると、どちらの鼠にも紋様が刻まれていた。この事から鼠達の正体は魔物使いの放った魔獣である事が確定し、同時にナイが監視されていた事が判明する。
姿が変化したマグマゴーレムは飛行船に目掛けて駆け出し、身体が大きくなったにも関わらずに移動速度も上がっていた。それを見たテンは慌てて投石機を使おうとしたが、既に弾切れである事を思い出す。
「ちょ、ちょっとまずいんじゃないのかい!?あいつら、こっちに来るよ!?」
「くそっ、何とかしなければ……」
「何とかと言われても……」
一匹でもマグマゴーレムが飛行船に突っ込んだら大惨事を引き起こす。そうなる前に対処しなければならないのは分かっているが、今から地上に降りても間に合わない。
最初に動いたのはロランであり、双紅刃を振りかざすと地属性の魔力を纏わせ、飛行船の右方面のマグマゴーレムに目掛けて投げ放つ。
「うおおおおおっ!!」
『ゴアアアアッ!?』
「うひゃあっ!?」
「す、凄い!?」
「吹き飛んだ!?」
ロランが投げ放った双紅刃はまるで隕石の如く落下し、地上に衝突すると凄まじい衝撃波を発生させて突っ込んできたマグマゴーレムを吹き飛ばす。
しかし、右方面から迫っていたマグマゴーレムしか吹き飛ばせず、反対方向から迫ってきたマグマゴーレムまで止める事はできない。マグマゴーレム達は飛行船の側壁に目掛けて体当たりを仕掛ける。
『ゴォオオオオッ!!』
「まずい、船がっ!?」
「マホ殿!!」
「うむ、任せるがいい」
ロランは船のマストに声をかけると、頂上部に杖を構えたマホが立っており、彼女は飛行船の左方面に向けて杖を振り下ろす。
「ストームバレット!!」
『ゴアアアアッ!?』
マホの構えた杖から「螺旋状」の風属性の魔力の塊が放たれ、地上から突進してきたマグマゴーレムに目掛けて降り注ぐ。マグマゴーレムは砲弾の如く突っ込んできた風の塊を受けて吹き飛び、地面に転がり込む。
どうにか左右から迫ってきたマグマゴーレムの攻撃を止める事はできたが、ロランとマホの攻撃はあくまでも足止め程度の効果しかなく、倒れていたマグマゴーレム達は起き上がって憤怒の表情を浮かべる。
「ゴガァアアアッ!!」
「ゴオオッ……!!」
「ゴウッ!!」
起き上がったマグマゴーレムは怒りの咆哮を放ち、再び飛行船に目掛けて近付こうとした。しかし、既に甲板に居た者達も動き出し、全員が武器を掲げて飛び降りていた。
「いつまでも調子に乗ってるんじゃないよ!!」
「おらおらおらっ!!」
「ていっ」
「ゴガァッ!?」
「ゴオッ!?」
テンが飛び降りるとルナとミイナも続き、三人はマグマゴーレムに目掛けて各々の武器を叩き込む。王国内でも女性(人間)限定ならばこの三人は間違いなく五本指に入る程の怪力を誇り、三人の攻撃を受けたマグマゴーレムの一匹が吹き飛ぶ。
他のマグマゴーレムの元にはロランが動き出し、彼に続いてフィルも鎖の魔剣を手にして向き合い、少し遅れてガオウも両手に鉤爪を装着して向き合う。これで右方面のマグマゴーレムと王国軍は対峙したが、左方面のマグマゴーレムは手薄となる。
『ゴオオッ!!』
「ちょちょ、全員でそっちに跳んでどうするんですか!?」
「大丈夫だ、問題ない」
「ええ、問題ありませんわね!!」
左方面から迫るマグマゴーレム達に甲板に残っていたイリアは焦った声を上げるが、そんな彼女の後ろからリンとドリスが現れる。二人とも甲板に辿り着いていたらしく、彼女達は暴風と真紅を手にして飛び降りる。
「行くぞ、ドリス!!」
「ええ、行きますわよ!!」
『ゴアッ!?』
甲板から飛び降りてきたドリスとリンに気付いたマグマゴーレム達は見上げると、空中に落下しながらもドリスは槍を構え、そんな彼女の肩をリンは掴む。
「飛爆槍!!」
「くうっ……!?」
ドリスは空中で真紅の柄の部分から火属性の魔力を放出させ、爆炎を利用して加速しながら降下を行う。その勢いに乗ってリンは暴風を構え、ドリスと同時に攻撃を行う。
「烈風斬!!」
「でやぁあああっ!!」
「ゴオオオッ!?」
「ゴガァアッ!?」
真紅の一撃がマグマゴーレムの胸元を貫き、暴風がマグマゴーレムの頭部を切り裂く。頭部と胸元を抉られたマグマゴーレムは武器を引き抜かれると後退り、やがて全身の炎が噴き出して火柱と化す。
攻撃を受けた際に体内の核が破損したらしく、膨大な火属性の魔力が火柱と化して天に登っていく。グツグ火山で隕石が落下した時も火口のマグマゴーレムは火柱と化した事があり、やがて火柱が消え去るとマグマゴーレムは跡形もなく消えた。
「ふうっ……良い援護でしたわよ」
「黙れ、次はお前が手伝え!!」
「はいはい、分かってますわよ」
ドリスの言葉にリンは不機嫌そうに答え、二人は背中を合わせてマグマゴーレムと向かい合う。四匹のマグマゴーレムは仲間を葬った彼女達に怒りを抱き、全力で襲い掛かった――
――同時刻、船内の医療室では目を覚ましたモモとリーナは窓の外を心配そうに眺めていた。この二人は未だに意識を失っているナイの元から離れられず、外の戦闘に参加する事はできなかった。
「う、うわぁっ……女将さん、容赦ないよ」
「これは僕の出番は必要なさそうだね……」
外では王国騎士と冒険者達がマグマゴーレムを相手に戦っており、戦況に関しては王国側が圧倒的に有利だった。核を吸収して力を増したマグマゴーレムでも流石に王国最強の戦力が相手では分が悪く、この調子ならば王国軍は確実に勝利する。
本来ならばマグマゴーレムと一番相性が良いリーナが真っ先に出向くべきなのだが、彼女は未だに意識を取り戻さないナイを心配してここから動けず、他の者たちもそれえを配慮して彼女に船の守りを任せて外に出た。
「あ、見て見て!!ミイナちゃんがこっちを見たよ!!あ、手を振ってる!!」
「戦闘の際中なのに余裕だなぁっ……ん?」
「どうかしたの?」
リーナは物音が聞こえたような気がして振り返ると、モモも不思議そうに彼女の視線の先に目を向ける。しかし、二人の視界には特に怪しい物はなく、ベッドに横たわっているナイの姿しか見えない。
「今、何か音がしたような気がしたけど……」
「えっ!?ナイ君が目を覚ましたの?」
「ううん、そういうのじゃないと思うけど……」
ナイが目を覚ましたのかとモモは期待したが、リーナはそれを否定して蒼月を手に取る。武芸者としての直感が彼女に危険を告げ、部屋の中を見渡す。
(何かが居る?まさか、敵!?)
リーナはモモを庇いながら周囲の様子を伺い、この医療室にはリーナ達以外には治療中の騎士達がベッドに横たわっている。彼等を見たリーナは全員が寝ている事を確認し、彼女が感じた「殺気」を放つのは騎士達ではないと悟る。
蒼月を手にしながらリーナはナイをモモに任せ、部屋の中をもう一度見渡して殺気を放つ存在を探す。この部屋の何処かに隠れている事は間違いなく、彼女は「心眼」を発動させた。
(意識を集中させて……敵は何処にいるのか見極めるんだ)
リーナもナイを見習って修行し、ナイも覚えている特殊技能の「心眼」を習得した。彼女は五感を研ぎ澄ませて殺気を放つ存在を探し出し、そして天井の方から殺気が放たれている事を見抜く。
「そこだっ!!」
「キィイッ!?」
「わあっ!?」
「うぷっ……」
蒼月を天井に向けてリーナは突き刺すと、彼女の行為にモモは驚いてナイに抱きつく。この時にナイはモモの胸に顔が挟まれる形となり、少し苦しそうな表情を浮かべる。
天井に蒼月を繰り出したリーナは手ごたえを感じると、天井から蒼月を引き抜くと刃には白色の鼠が突き刺さっていた。その鼠を見てリーナは船内に隠れていた鼠の話を思い出す。
(この鼠、ガオウさんたちが言っていた鼠型の魔獣?どうしてこんな場所に……)
鼠型の魔獣を仕留めるとリーナは安心仕掛けるが、その一瞬の隙を突いて天井にできた穴から別の鼠が飛び出す。
「キイイッ!?」
「なっ!?」
「きゃああっ!?」
天井に隠れていたのは一匹だけではなく、二匹目の鼠が飛び出す。鼠はナイに目掛けて落下すると、ナイを庇ったモモが悲鳴を上げる。それを見たリーナは蒼月を繰り出そうとした時、何処からかクナイが飛んできた。
「させぬでござる!!」
「えっ!?」
部屋の扉が開かれるとクノがクナイを投擲し、空中から落下してきた鼠にクナイが突き刺さる。鼠は壁に串刺しとなり、悲鳴が部屋の中に響く。
「キィイイイッ!?」
「ふうっ……間一髪でござったな」
「ク、クノさん!?」
「え、え、な、何!?」
「落ち着くでござる」
クノが現れて鼠を倒した事にリーナは驚き、モモは状況を理解できずに混乱したが、そんな彼女達を落ち着かせてクノは事情を話す――
――彼女の話によるとクノは昨夜から医療室の部屋の前で待ち伏せしていたらしく、彼女はシノビの指示で船内の様子を探っていたという。そして船内に残っていた鼠達を発見し、気づかれないように動向を伺う。
クノが発見した鼠達は明らかに野生の種ではなく、まるで誰かを監視するような行動を取っていた。そして彼女が見つけた鼠二匹は医療室を見張る様に動かず、離れる様子がなかった。
鼠達の行動に不信を抱いたクノは昨日からずっと鼠達を観察し、そしてリーナが鼠を仕留めた時点で彼女も助太刀したという。ここまでの鼠達の行動を把握したクノは鼠達の目的は「ナイ」の監視という結論に至った。
「この鼠達は明らかに誰かの指示を受けて行動していたでござる。その証拠にこの鼠達にも……」
「あ、その紋様!?」
「鞭の紋様……という事はやっぱり、例の魔物使いの仕業なの?」
「間違いないでござる」
二人が仕留めた鼠を確認すると、どちらの鼠にも紋様が刻まれていた。この事から鼠達の正体は魔物使いの放った魔獣である事が確定し、同時にナイが監視されていた事が判明する。
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