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嵐の前の静けさ
第986話 猛り狂う英雄
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「そら、餌だぞ!!」
「「「ゴオッ……!?」」」
ナイが核を取り出して投げつけた瞬間、マグマゴーレムの集団は彼が放った核に釘付けとなった。地面に核が落ちた途端、一斉にマグマゴーレムが集まって奪い合いを始める。
「ゴオオオッ!!」
「ゴアッ!?」
「ゴガァッ!!」
マグマゴーレムは核を奪おうと他の仲間と殴り合いを始めた。それを見たナイは予想以上にマグマゴーレムを引き寄せる事に成功し、少し驚きながらもリーナを安全な場所へ避難させた。
「リーナ、ほら薬だよ。ここに隠れてて……」
「うっ……」
ナイは持ってきていたアルトの鞄に入っていた魔力回復薬を取り出し、それをリーナの口元に含む。しかし、リーナは苦しそうな表情を浮かべて吐いてしまう。
「げほっ、げほっ!!」
「リーナ!!しっかり噛んで飲んで……仕方ない」
「んんぅっ……!?」
無理やりにでもリーナに飲ませるためにナイは魔力回復薬を口に含むと、彼女の唇に流し込む。口移しでナイは魔力回復薬を飲み込ませ、この時にリーナは意識を取り戻す。
「んむぅっ……ちゅっ、ぷあっ……ナ、ナイ君……こんな時に駄目だよ」
「むうっ……前にもこんな事があった気がする」
頬を赤らめて顔を反らすリーナを見てナイは安心し、これで彼女は大丈夫だと判断するとナイは自分が身に付けていたマントを彼女に被せた。リーナを熱から守るためもあるが、マントを身に付けた状態では動きにくいのでナイは彼女に託す。
マントを脱いだ瞬間にナイは火山の熱気を受けて顔をしかめるが、この場に集まった人間の中で唯一にナイだけは「熱耐性」の技能を習得しており、ある程度の熱気なら耐え切れた。それでも火山の熱気は凄まじく、長時間は耐えられそうにない
(流石にきついな……)
ナイは旋斧だけではなく、岩砕剣を抜いてマグマゴーレムの大群と向き合う。マグマゴーレム達はナイが投げつけた自分達の仲間の核を奪い合い、数は既に50体以上は集まっていた。
(ふうっ……モモ、力を貸して)
全力で戦うためにナイは煌魔石を装着した魔法腕輪に触れ、緊張しながらも彼はマグマゴーレムに目掛けて突っ込む。彼はこの状況を打破するために「強化術」を発動させ、身体能力を限界以上に高めてマグマゴーレムの大群に挑む。
――がぁあああああああっ!!
火山に獣の様な叫び声が響き渡り、討伐隊の面子は驚いて振り返ると、そこには両手に大剣を構えたナイがマグマゴーレムの大群を薙ぎ倒す光景が映し出された。彼が旋斧と岩砕剣を振り抜く度にマグマゴーレムが吹き飛び、粉々に砕け散る。
「がああっ!!」
「ゴガァアアアッ!?」
「ゴアアッ!?」
「ゴギャアアッ!?」
自分よりも体格が一回りや二回りは上回るマグマゴーレム達をナイは薙ぎ倒し、圧倒的な力で破壊する。ナイの方が小さいはずなのにマグマゴーレムは自分達よりも遥かに巨大で圧倒的な力を持つ巨人と戦っているような錯覚を覚えた。
大剣を振りかざす度にマグマゴーレムは吹き飛び、破壊されて溶岩が飛び散る。溶岩の飛沫に身体を焼かれる前に「瞬間加速」を発動させて別の場所に移動し、火傷を負う前に次々と敵を葬る。
「ナ、ナイ……!?」
「なんという力……これほどまでとは」
『おおおおっ!!』
一方的にマグマゴーレムを打ち倒すナイの姿にテンは呆気に取られ、ロランでさえも動揺を隠しきれず、ゴウカに至っては興奮した様子で自分が戦うのを忘れてしまう。それほどまでにナイの力は凄まじく、他の者たちも目を離せない。
強化術は一時的に肉体の限界以上に力を引き出せるが、その反動として制限時間が切れたら使用者の肉体に大きな負荷が襲い掛かってまともに動けなくなる。だからこそ制限時間の間に敵を倒しきらなければナイに勝ち目はない。
(まだだ……もっと、もっと力を!!)
戦いながらもナイは自分の魔力が削られていく感覚を覚え、もう10秒もしない内に自分は倒れると気付く。しかし、そんな彼の前に一際巨大なマグマゴーレムが迫る。
「ゴオオオッ!!」
「なっ!?あいつ、まだ生きていたのかい!?」
「いかん!!誰か援護しろ!!」
「くっ!?」
「ま、間に合いませんわ!!」
ナイの背後に迫る大型のマグマゴーレムは先ほどマホとマリンが吹き飛ばした個体であり、どうやらナイが先ほど投げた核を奪って復活したのか、再び全身に炎を纏わせて彼に接近していた。
後ろからナイに襲い掛かろうとした大型マグマゴーレムに対して他の者も動くが、誰よりも早く動いたのは意外な人物だった。
「せりゃあっ!!」
「ゴアッ!?」
「クノ!?」
大型マグマゴーレムの目元に向けてクナイが突き刺さり、視界を封じられた事で大型マグマゴーレムは動きを止める。クナイを投げ込んだのはクノであり、直後にナイは大型のマグマゴーレムに向けて渾身の一撃を叩き込む。
「があああああっ!!」
「ゴアアアアッ!?」
大型マグマゴーレムの腹部にナイは岩砕剣を突き刺し、力任せに押し込む。自分よりも倍近くの体格差と数トンはある体重差を物ともせずに押し込み、止めに旋斧を振りかざす。
岩砕剣を左手で掴んだ状態ナイは旋斧を右手で振りかざし、相手の胸元に目掛けて叩き込む。旋斧の刃が大型マグマゴーレムの肉体に食い込んだ瞬間、旋斧は魔力を吸収して赤色の刃と化した。
「あの剣の色は!?」
「前にも見た事があるでござる!!」
ナイの旋斧の刃が赤く変色する事は初めてではなく、火竜を倒した時も旋斧の刃は赤く染まった。調べた結果、火竜の膨大な火属性の魔力を吸い上げた事で旋斧の内部に魔力が蓄積し、その影響で刃は赤く変化した。
大型マグマゴーレムの魔力を吸い上げた事で旋斧は再び赤く染まり、それに気づかぬままにナイは二つの魔剣を掴む。その状態からナイは大型マグマゴーレムごと魔剣を持ち上げ、地面に叩き込む。
「だぁああああっ!!」
「ゴガァアアアアッ!?」
「馬鹿なっ!?」
「あ、あの巨体を持ち上げた!?」
『おお、派手だな!!』
突き刺した魔剣ごとナイは大型マグマゴーレムを持ち上げた事にロランもテンも驚き、ゴウカも少しだけ驚いた様子だった。地面に叩き付けられた大型マグマゴーレムは砕け散り、ナイは旋斧と岩砕剣を引き抜く。
「はあっ、はあっ……」
流石に限界を迎えたナイは膝を着いて全身から滝の様な汗を流し、もう体力も魔力も限界だった。それでも魔法腕輪に装着した煌魔石に手を伸ばし、どうにか魔力を回復させる。
(大丈夫だ、モモの煌魔石ならすぐに回復する……)
モモの煌魔石には通常の魔石よりも膨大な魔力が蓄積されており、それを吸収する事でナイは魔力を取り戻そうとした。魔力が戻れば自然と体力も回復し、再び戦う事ができる。
煌魔石を利用して魔力を回復させるとナイは「再生術」を発動させ、まずは傷ついた肉体を直す。今回は敵の攻撃を受ける事はなかったが、強化術の反動でナイの筋肉組織がボロボロであり、肉体の再生能力を強化して治療を行う。
(よし、これで動ける。まだ戦える……あれ?)
再生術を発動させたナイは肉体を完治させ、再び戦おうと足元に力を込める。だが、立ち上がろうとした瞬間に何故か糸が切れた人形のように身体が傾き、地面に倒れ込む。
(な、何でっ……!?)
ナイの肉体は完全に治ったはずだが言う事を聞かず、その原因は傷は治っても体力が戻っていなかった。魔力を吸収すれば同時に体力も回復するはずなのだが、何故か煌魔石から吸収した魔力は再生術を利用した際に切れてしまう。
「ど、どうして……」
「ナイ、早く立ちな!!新しいのが来てるよ!?」
「ナイ殿!!前を見て!!」
自分の身体が言う事を聞かない事にナイは戸惑い、そんな彼にテンとクノが大声で呼びかけた。二人の言葉を聞いてナイは顔を上げると、そこには別のマグマゴーレムが迫っていた。
「ゴオオッ!!」
「くっ……動けっ!?」
自分自身を叱咤してナイは地面に落ちていた旋斧に手を伸ばし、どうにか大剣を杖代わりにして立ち上がる。しかし、立つのが精いっぱいでとても戦える状態ではない。
どうしてナイはモモから受け取った煌魔石を使用しても完全に体力が戻らないのかと疑問を抱くと、ここで彼は煌魔石に僅かに罅が走っている事に気付く。
(何だ、この罅……!?)
煌魔石が罅割れている事にナイは気付き、すぐに彼は煌魔石の不調の原因を察した。煌魔石に僅かに罅割れがあったせいで内部に蓄積されている魔力が外部に放出し、そのせいでナイが完全に回復する程の魔力が残っていなかった。
(くそっ、何処かで傷つけたのか!?それとも貰った時に罅が入ってたのか……!?)
何時の間に煌魔石に罅が入っていたのかは分からないが、考えている間にもマグマゴーレムはナイに迫って拳を放つ。
「ゴォオオオオッ!!」
「くぅっ……舐めるな!!」
迫りくる溶岩の拳に対してナイは体勢を屈めると回避すると、無意識に「迎撃」の技能を発動させ、隙だらけの胴体に旋斧を叩き込む。
もうナイはマグマゴーレムを破壊する程の体力は残っていないが、それでも現在の旋斧には膨大な火属性の魔力が刃に蓄積しており、それを利用してナイは悪あがきを行う。
(殺されるぐらいなら……やるしかない!!)
ここでナイがマグマゴーレムから逃げたとしても、他の者が助けに来る前に捕まるのは目に見えていた。それならばナイは自力でマグマゴーレムを倒すため、旋斧が蓄積した火属性の魔力を解き放つ。
「やああああっ!!」
「ゴアアアッ!?」
「いかん、離れろぉおおおっ!?」
マグマゴーレムの体内に突き刺さった旋斧が光り輝き、その光を見たロランは大声を上げて全員に避難するように促す。次の瞬間、旋斧から放たれた魔力のせいでマグマゴーレムは内部から崩壊し、激しい爆発を引き起こした――
「「「ゴオッ……!?」」」
ナイが核を取り出して投げつけた瞬間、マグマゴーレムの集団は彼が放った核に釘付けとなった。地面に核が落ちた途端、一斉にマグマゴーレムが集まって奪い合いを始める。
「ゴオオオッ!!」
「ゴアッ!?」
「ゴガァッ!!」
マグマゴーレムは核を奪おうと他の仲間と殴り合いを始めた。それを見たナイは予想以上にマグマゴーレムを引き寄せる事に成功し、少し驚きながらもリーナを安全な場所へ避難させた。
「リーナ、ほら薬だよ。ここに隠れてて……」
「うっ……」
ナイは持ってきていたアルトの鞄に入っていた魔力回復薬を取り出し、それをリーナの口元に含む。しかし、リーナは苦しそうな表情を浮かべて吐いてしまう。
「げほっ、げほっ!!」
「リーナ!!しっかり噛んで飲んで……仕方ない」
「んんぅっ……!?」
無理やりにでもリーナに飲ませるためにナイは魔力回復薬を口に含むと、彼女の唇に流し込む。口移しでナイは魔力回復薬を飲み込ませ、この時にリーナは意識を取り戻す。
「んむぅっ……ちゅっ、ぷあっ……ナ、ナイ君……こんな時に駄目だよ」
「むうっ……前にもこんな事があった気がする」
頬を赤らめて顔を反らすリーナを見てナイは安心し、これで彼女は大丈夫だと判断するとナイは自分が身に付けていたマントを彼女に被せた。リーナを熱から守るためもあるが、マントを身に付けた状態では動きにくいのでナイは彼女に託す。
マントを脱いだ瞬間にナイは火山の熱気を受けて顔をしかめるが、この場に集まった人間の中で唯一にナイだけは「熱耐性」の技能を習得しており、ある程度の熱気なら耐え切れた。それでも火山の熱気は凄まじく、長時間は耐えられそうにない
(流石にきついな……)
ナイは旋斧だけではなく、岩砕剣を抜いてマグマゴーレムの大群と向き合う。マグマゴーレム達はナイが投げつけた自分達の仲間の核を奪い合い、数は既に50体以上は集まっていた。
(ふうっ……モモ、力を貸して)
全力で戦うためにナイは煌魔石を装着した魔法腕輪に触れ、緊張しながらも彼はマグマゴーレムに目掛けて突っ込む。彼はこの状況を打破するために「強化術」を発動させ、身体能力を限界以上に高めてマグマゴーレムの大群に挑む。
――がぁあああああああっ!!
火山に獣の様な叫び声が響き渡り、討伐隊の面子は驚いて振り返ると、そこには両手に大剣を構えたナイがマグマゴーレムの大群を薙ぎ倒す光景が映し出された。彼が旋斧と岩砕剣を振り抜く度にマグマゴーレムが吹き飛び、粉々に砕け散る。
「がああっ!!」
「ゴガァアアアッ!?」
「ゴアアッ!?」
「ゴギャアアッ!?」
自分よりも体格が一回りや二回りは上回るマグマゴーレム達をナイは薙ぎ倒し、圧倒的な力で破壊する。ナイの方が小さいはずなのにマグマゴーレムは自分達よりも遥かに巨大で圧倒的な力を持つ巨人と戦っているような錯覚を覚えた。
大剣を振りかざす度にマグマゴーレムは吹き飛び、破壊されて溶岩が飛び散る。溶岩の飛沫に身体を焼かれる前に「瞬間加速」を発動させて別の場所に移動し、火傷を負う前に次々と敵を葬る。
「ナ、ナイ……!?」
「なんという力……これほどまでとは」
『おおおおっ!!』
一方的にマグマゴーレムを打ち倒すナイの姿にテンは呆気に取られ、ロランでさえも動揺を隠しきれず、ゴウカに至っては興奮した様子で自分が戦うのを忘れてしまう。それほどまでにナイの力は凄まじく、他の者たちも目を離せない。
強化術は一時的に肉体の限界以上に力を引き出せるが、その反動として制限時間が切れたら使用者の肉体に大きな負荷が襲い掛かってまともに動けなくなる。だからこそ制限時間の間に敵を倒しきらなければナイに勝ち目はない。
(まだだ……もっと、もっと力を!!)
戦いながらもナイは自分の魔力が削られていく感覚を覚え、もう10秒もしない内に自分は倒れると気付く。しかし、そんな彼の前に一際巨大なマグマゴーレムが迫る。
「ゴオオオッ!!」
「なっ!?あいつ、まだ生きていたのかい!?」
「いかん!!誰か援護しろ!!」
「くっ!?」
「ま、間に合いませんわ!!」
ナイの背後に迫る大型のマグマゴーレムは先ほどマホとマリンが吹き飛ばした個体であり、どうやらナイが先ほど投げた核を奪って復活したのか、再び全身に炎を纏わせて彼に接近していた。
後ろからナイに襲い掛かろうとした大型マグマゴーレムに対して他の者も動くが、誰よりも早く動いたのは意外な人物だった。
「せりゃあっ!!」
「ゴアッ!?」
「クノ!?」
大型マグマゴーレムの目元に向けてクナイが突き刺さり、視界を封じられた事で大型マグマゴーレムは動きを止める。クナイを投げ込んだのはクノであり、直後にナイは大型のマグマゴーレムに向けて渾身の一撃を叩き込む。
「があああああっ!!」
「ゴアアアアッ!?」
大型マグマゴーレムの腹部にナイは岩砕剣を突き刺し、力任せに押し込む。自分よりも倍近くの体格差と数トンはある体重差を物ともせずに押し込み、止めに旋斧を振りかざす。
岩砕剣を左手で掴んだ状態ナイは旋斧を右手で振りかざし、相手の胸元に目掛けて叩き込む。旋斧の刃が大型マグマゴーレムの肉体に食い込んだ瞬間、旋斧は魔力を吸収して赤色の刃と化した。
「あの剣の色は!?」
「前にも見た事があるでござる!!」
ナイの旋斧の刃が赤く変色する事は初めてではなく、火竜を倒した時も旋斧の刃は赤く染まった。調べた結果、火竜の膨大な火属性の魔力を吸い上げた事で旋斧の内部に魔力が蓄積し、その影響で刃は赤く変化した。
大型マグマゴーレムの魔力を吸い上げた事で旋斧は再び赤く染まり、それに気づかぬままにナイは二つの魔剣を掴む。その状態からナイは大型マグマゴーレムごと魔剣を持ち上げ、地面に叩き込む。
「だぁああああっ!!」
「ゴガァアアアアッ!?」
「馬鹿なっ!?」
「あ、あの巨体を持ち上げた!?」
『おお、派手だな!!』
突き刺した魔剣ごとナイは大型マグマゴーレムを持ち上げた事にロランもテンも驚き、ゴウカも少しだけ驚いた様子だった。地面に叩き付けられた大型マグマゴーレムは砕け散り、ナイは旋斧と岩砕剣を引き抜く。
「はあっ、はあっ……」
流石に限界を迎えたナイは膝を着いて全身から滝の様な汗を流し、もう体力も魔力も限界だった。それでも魔法腕輪に装着した煌魔石に手を伸ばし、どうにか魔力を回復させる。
(大丈夫だ、モモの煌魔石ならすぐに回復する……)
モモの煌魔石には通常の魔石よりも膨大な魔力が蓄積されており、それを吸収する事でナイは魔力を取り戻そうとした。魔力が戻れば自然と体力も回復し、再び戦う事ができる。
煌魔石を利用して魔力を回復させるとナイは「再生術」を発動させ、まずは傷ついた肉体を直す。今回は敵の攻撃を受ける事はなかったが、強化術の反動でナイの筋肉組織がボロボロであり、肉体の再生能力を強化して治療を行う。
(よし、これで動ける。まだ戦える……あれ?)
再生術を発動させたナイは肉体を完治させ、再び戦おうと足元に力を込める。だが、立ち上がろうとした瞬間に何故か糸が切れた人形のように身体が傾き、地面に倒れ込む。
(な、何でっ……!?)
ナイの肉体は完全に治ったはずだが言う事を聞かず、その原因は傷は治っても体力が戻っていなかった。魔力を吸収すれば同時に体力も回復するはずなのだが、何故か煌魔石から吸収した魔力は再生術を利用した際に切れてしまう。
「ど、どうして……」
「ナイ、早く立ちな!!新しいのが来てるよ!?」
「ナイ殿!!前を見て!!」
自分の身体が言う事を聞かない事にナイは戸惑い、そんな彼にテンとクノが大声で呼びかけた。二人の言葉を聞いてナイは顔を上げると、そこには別のマグマゴーレムが迫っていた。
「ゴオオッ!!」
「くっ……動けっ!?」
自分自身を叱咤してナイは地面に落ちていた旋斧に手を伸ばし、どうにか大剣を杖代わりにして立ち上がる。しかし、立つのが精いっぱいでとても戦える状態ではない。
どうしてナイはモモから受け取った煌魔石を使用しても完全に体力が戻らないのかと疑問を抱くと、ここで彼は煌魔石に僅かに罅が走っている事に気付く。
(何だ、この罅……!?)
煌魔石が罅割れている事にナイは気付き、すぐに彼は煌魔石の不調の原因を察した。煌魔石に僅かに罅割れがあったせいで内部に蓄積されている魔力が外部に放出し、そのせいでナイが完全に回復する程の魔力が残っていなかった。
(くそっ、何処かで傷つけたのか!?それとも貰った時に罅が入ってたのか……!?)
何時の間に煌魔石に罅が入っていたのかは分からないが、考えている間にもマグマゴーレムはナイに迫って拳を放つ。
「ゴォオオオオッ!!」
「くぅっ……舐めるな!!」
迫りくる溶岩の拳に対してナイは体勢を屈めると回避すると、無意識に「迎撃」の技能を発動させ、隙だらけの胴体に旋斧を叩き込む。
もうナイはマグマゴーレムを破壊する程の体力は残っていないが、それでも現在の旋斧には膨大な火属性の魔力が刃に蓄積しており、それを利用してナイは悪あがきを行う。
(殺されるぐらいなら……やるしかない!!)
ここでナイがマグマゴーレムから逃げたとしても、他の者が助けに来る前に捕まるのは目に見えていた。それならばナイは自力でマグマゴーレムを倒すため、旋斧が蓄積した火属性の魔力を解き放つ。
「やああああっ!!」
「ゴアアアッ!?」
「いかん、離れろぉおおおっ!?」
マグマゴーレムの体内に突き刺さった旋斧が光り輝き、その光を見たロランは大声を上げて全員に避難するように促す。次の瞬間、旋斧から放たれた魔力のせいでマグマゴーレムは内部から崩壊し、激しい爆発を引き起こした――
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