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嵐の前の静けさ
第973話 旋斧の更なる強化
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「マグマゴーレムか……あいつら苦手なんだよな」
「儂も大嫌いじゃ。奴等に生半可な武器で攻撃すると溶けてしまうからな」
「魔法金属製の武器を持ち合わせていない方はどうしようもありませんからね……」
黄金級冒険者組はリーナ以外の者はマグマゴーレムと戦う事に難色を示し、物理攻撃しかできない彼等にとってはマグマゴーレム程に厄介な敵はいない。
マグマゴーレムは名前の通りに溶岩のように性質を持つ特殊な肉体で構成されており、彼等と戦うという事は武器を溶岩の中に突っ込む事に等しい。魔法金属の武器ならばある程度は耐えられるが、仮に武器が耐えられたとしても攻撃を仕掛ける側もマグマゴーレムの熱気に耐えるために相応の装備を整えなければいけない。
「人手を集めても人数分の熱耐性の高い防具も揃えなければならんし、第一にマグマゴーレムを倒せるだけの戦力はこの国では王国騎士か白銀級以上の冒険者しかおらん」
「マホ魔導士はマグマゴーレムを一気に倒せる魔法とか使えないのか?」
「難しいのう……奴等とは儂も相性が悪い」
魔導士であるマホでさえもマグマゴーレムを一気に大量に倒す術は持ち合わせておらず、その理由は彼女は「風属性」の魔法の使い手なのが原因だった。マグマゴーレムは体内に「火属性」の魔石の核を保有しており、魔法の相性的にマホはマグマゴーレムとは相性が悪い。
火属性は風属性の魔力を取り込む性質があるため、魔導士の位を持つマホでもマグマゴーレムを倒すのは一筋縄ではいかない。もしもマジクが生きていれば彼の雷属性の魔法でマグマゴーレムを一気に掃討できた可能性もあったが、それでも数百匹のマグマゴーレムを駆逐するのは流石にマジクでも不可能である。
「この中で一番相性がいいとしたらリーナだけか」
「う、うん……でも、流石に僕一人だけじゃどうしようもできないよ?」
リーナの扱う「蒼月」は冷気と氷を生み出す能力を持つため、マグマゴーレム(というよりはゴーレム種全般)とは相性が良い。実際に過去に彼女はマグマゴーレムを討伐した経験もあり、集められた戦力の中では唯一にマグマゴーレムの対抗手段を持ち合わせている。
しかし、いくらリーナでも一人で何百体ものマグマゴーレムを倒せる自信はなく、彼女以外に対抗手段がある人物と言えば一人しかいない。
「そうだ!!ナイさんなら旋斧に水属性の魔力を送り込んで対抗できるのは!?」
「うん、できると思うけど……」
「それは無理じゃな」
ヒイロがナイならば旋斧を利用してマグマゴーレムに対抗できる事を思いつくが、すぐに否定したのはナイではなく、彼の隣の席に座るハマーンだった。
「残念じゃが坊主の旋斧は今は儂が預かっておる。色々と事情があって旋斧は今は坊主に返す事ができん」
「えっ!?ど、どうしてですか!?」
「ちょいと坊主の旋斧を調べる必要があってな……今は返すわけにはいかん」
「ですが師匠、ナイ君も旋斧がなければマグマゴーレムと戦えないのでは……」
「何と言われようと今は返す事ができん。すまんな……その代わりと言ってはなんだが、旋斧は返す時に新しい機能を付けておく」
「新しい機能?」
「期待してくれて構わんぞ。上手くいけば魔法剣を強化できるかもしれん」
ハマーンは旋斧を返す事はできないが、その代わりに返却する際は旋斧を更に強化させる事を約束した。この国一番の鍛冶師であるハマーンがそういうのならば仕方ないが、グマグ火山に赴く時はナイは「岩砕剣」しか扱えない事になる。
「結局、マグマゴーレムとまともに戦えるのはリーナだけか……」
「私は一番相性が悪そうですね……」
「ドリス、お前も役に立てないんじゃないのか?」
「失礼な!!私ならばマグマゴーレムだろうと爆散させる事ができますわ!!リンさんの方こそ役に立たないのでは!?」
「何だと、この爆発女!!」
火属性の魔剣の使い手であるヒイロはマグマゴーレムと相性が悪く、同じく火属性の魔槍の使い手であるドリスにリンはからかう。それに切れたドリスは言い返すと二人は取っ組み合いの喧嘩を始めた。
結局のところはマグマゴーレムの対抗手段を持つのはリーナしかおらず、彼女以外の者は熱耐性の高い装備を整えて戦うしかなかった。遠距離攻撃ができる魔術師を一人でも多く必要となるが、この時にガオウはある人物を思い出す。
「そういえばマリンの奴はどうした?あいつ、最近は姿を見てないが……」
「マリンか……確かにマリンがいれば心強いな」
マリンとは王国に所属する黄金級冒険者の中で唯一の「魔術師」であり、元黄金級冒険者のゴウカと組んでいた冒険者だった。彼女は火属性の魔法を得意とするが、それ以外の属性の魔法も扱えるため、彼女が同行してくれれば大きな戦力になるのは間違いなかった。
しかし、肝心のマリンは最近は王都では姿を見かけておらず、ガオウ達も居場所を知らない。既に王都を発っている可能性は高いが、その辺は冒険者ギルドに問い合わせる必要があった。
「まあ、マリンの奴はおいといて……他にマグマゴーレムに対抗手段を持つ奴はいないのか?」
「ふむ……」
ガオウの言葉にマホは腕を組み、彼女はしばらくの間考え込んでいたが、やがて覚悟を決めた様にアッシュに告げた。
「アッシュよ、氷華をここへ持ってきてくれるか」
「何!?あの氷華を?」
「氷華というと……」
「……王妃様の魔剣だよ」
氷華の名前が出た途端に会議室の雰囲気が変わり、アッシュは驚いた表情を浮かべてテンに至っては表情を引きつらせる。他の者たちもどうしてここで「氷華」の名前が出てくるのかと戸惑う。
「マホ魔導士、どうしてここで氷華の名前を持ち出すんだい?」
「テンよ、お主の気持ちは分かるが今は国の危機じゃ。氷華の使い手が見つかればマグマゴーレムに対抗できる戦力が増える」
「簡単に言うんじゃないか……氷華を扱える人間は王妃様以外にはあり得ないよ、絶対にね」
「テン!!老師に向かってなんて口を……」
テンは不貞腐れた様に鼻を鳴らし、そんな態度に流石のエルマも黙ってはいなかったが、それを止めたのは意外な人物だった。
「待てよエルマ……俺もあの魔剣を使いこなせる人間がいるとは思わないぜ」
「ガロ!?貴方まで何を……」
「そうか、ガロ……お主はあの魔剣の恐ろしさを知っておるな」
口を挟んだのはエルマと同じくマホの弟子であるガロであり、彼はかつて氷華と炎華を手にして戦った事があった。あの時は緊急事態という事でマホは彼に二つの魔剣を託したが、ガロは戦闘の最中に仲間を守るために氷華の力を引き出そうとした。
結果から言えば氷華の力を解放した瞬間、ガロは魔剣を制御できずに魔力を強制的に奪われ、周囲一帯を凍り付かせた。この時にガロは氷華を止めるために彼は右手首ごと切り裂き、どうにか暴走を止めた。その後はテン達が駆けつけてくれたお陰で治療が間に合い、なんとか腕は繋ぎ止める事ができた。しかし、あの時に援軍が遅れていばガロは右手を失っていたかもしれない。
「あの魔剣の恐ろしさは俺が良く知っている……正直、あんなの扱いこなせる人間がいるとは思えねえよ」
「ふんっ……その小僧の言う通りさ。氷華にしろ炎華にしろ、あの魔剣を制御できるのは王妃様以外にはあり得ない」
「確かにお主等の言う通り、二つの魔剣を同時に制御できるのはジャンヌだけだった。しかし……片方だけならば話は別とは思わんか?」
「何だって?」
マホの言葉にテンは胡散臭い表情を浮かべるが、そんな彼女に対してマホはヒイロに視線を向けた。ヒイロは自分が見られている事に気付いて呆気に取られた表情を浮かべる。
「えっ……ま、まさか私の事ですか?」
「うむ、お主は前に炎華を使ったな?その時にガロのように魔剣を手放すために手首を切り落としたか?」
「ええっ!?いやいや、そんな事をするはずありませんよ!?」
かつてヒイロは王都に現れた火竜との戦闘の際、彼女は炎華を手にして戦った。この時の彼女は一撃だけ火竜に攻撃を加えた後、炎華を手放して気絶してしまう。しかし、ガロの時と違って彼女は炎華を暴走させる事はなく、その力だけを引き出して戦い抜いた。
「炎華の力を使いこなす事はできなかったが、ヒイロはこうして無事に生きておる。これはヒイロが火属性の適性が高く、ガロの場合は水属性の適性はあったが力を使いこなせなかった……と、儂は考えておる」
「じゃ、じゃあ……俺が氷華を使いこなせなかったのは適性が低かっただけなのか?」
「うむ、ヒイロと同じぐらいに適性が高ければお主も氷華の暴走を防ぐ事ができた……かもしれん」
「……それがどうしたんだい、ヒイロだって炎華を一度使ったら倒れたんだろ?それに重要なのは炎華じゃなくて氷華だよ。氷華を使いこなせる人間を見つけなければ意味ないじゃないかい」
「まあ、待て。話は最後まで聞かんか」
マホが言いたい事はガロが氷華を暴走させたのは彼が水属性の適性が低すぎたのが原因であり、逆に言えば水属性の適性が高い人間ならば氷華の暴走を抑えて力を使いこなす可能性がある事を説明する。
彼女は水属性の適性が高い人間を集め、その中から氷華を使いこなせる人間がいないかどうかを確かめる「選抜」を行う事を提案した。
「テンの言う通り、氷華を完全に使いこなせる人間がいるかどうかは分からん。しかし、完璧に使いこなせずともその力を引き出せる人間は必ずおるはず。それを確かめるために氷華が必要なんじゃ」
「……あたしは反対だね、どうせ見つかりっこないよ」
「テン、いい加減にしなさい!!」
「ふんっ」
テンは氷華が王妃以外の人間の手に渡る事自体が気に入らず、不貞腐れた態度で自分を注意するエルマから顔を反らす。そんな彼女の態度にエルマは注意しようとするが、会議室の扉が開かれてアッシュが命じた兵士が氷華を運び出す。
「儂も大嫌いじゃ。奴等に生半可な武器で攻撃すると溶けてしまうからな」
「魔法金属製の武器を持ち合わせていない方はどうしようもありませんからね……」
黄金級冒険者組はリーナ以外の者はマグマゴーレムと戦う事に難色を示し、物理攻撃しかできない彼等にとってはマグマゴーレム程に厄介な敵はいない。
マグマゴーレムは名前の通りに溶岩のように性質を持つ特殊な肉体で構成されており、彼等と戦うという事は武器を溶岩の中に突っ込む事に等しい。魔法金属の武器ならばある程度は耐えられるが、仮に武器が耐えられたとしても攻撃を仕掛ける側もマグマゴーレムの熱気に耐えるために相応の装備を整えなければいけない。
「人手を集めても人数分の熱耐性の高い防具も揃えなければならんし、第一にマグマゴーレムを倒せるだけの戦力はこの国では王国騎士か白銀級以上の冒険者しかおらん」
「マホ魔導士はマグマゴーレムを一気に倒せる魔法とか使えないのか?」
「難しいのう……奴等とは儂も相性が悪い」
魔導士であるマホでさえもマグマゴーレムを一気に大量に倒す術は持ち合わせておらず、その理由は彼女は「風属性」の魔法の使い手なのが原因だった。マグマゴーレムは体内に「火属性」の魔石の核を保有しており、魔法の相性的にマホはマグマゴーレムとは相性が悪い。
火属性は風属性の魔力を取り込む性質があるため、魔導士の位を持つマホでもマグマゴーレムを倒すのは一筋縄ではいかない。もしもマジクが生きていれば彼の雷属性の魔法でマグマゴーレムを一気に掃討できた可能性もあったが、それでも数百匹のマグマゴーレムを駆逐するのは流石にマジクでも不可能である。
「この中で一番相性がいいとしたらリーナだけか」
「う、うん……でも、流石に僕一人だけじゃどうしようもできないよ?」
リーナの扱う「蒼月」は冷気と氷を生み出す能力を持つため、マグマゴーレム(というよりはゴーレム種全般)とは相性が良い。実際に過去に彼女はマグマゴーレムを討伐した経験もあり、集められた戦力の中では唯一にマグマゴーレムの対抗手段を持ち合わせている。
しかし、いくらリーナでも一人で何百体ものマグマゴーレムを倒せる自信はなく、彼女以外に対抗手段がある人物と言えば一人しかいない。
「そうだ!!ナイさんなら旋斧に水属性の魔力を送り込んで対抗できるのは!?」
「うん、できると思うけど……」
「それは無理じゃな」
ヒイロがナイならば旋斧を利用してマグマゴーレムに対抗できる事を思いつくが、すぐに否定したのはナイではなく、彼の隣の席に座るハマーンだった。
「残念じゃが坊主の旋斧は今は儂が預かっておる。色々と事情があって旋斧は今は坊主に返す事ができん」
「えっ!?ど、どうしてですか!?」
「ちょいと坊主の旋斧を調べる必要があってな……今は返すわけにはいかん」
「ですが師匠、ナイ君も旋斧がなければマグマゴーレムと戦えないのでは……」
「何と言われようと今は返す事ができん。すまんな……その代わりと言ってはなんだが、旋斧は返す時に新しい機能を付けておく」
「新しい機能?」
「期待してくれて構わんぞ。上手くいけば魔法剣を強化できるかもしれん」
ハマーンは旋斧を返す事はできないが、その代わりに返却する際は旋斧を更に強化させる事を約束した。この国一番の鍛冶師であるハマーンがそういうのならば仕方ないが、グマグ火山に赴く時はナイは「岩砕剣」しか扱えない事になる。
「結局、マグマゴーレムとまともに戦えるのはリーナだけか……」
「私は一番相性が悪そうですね……」
「ドリス、お前も役に立てないんじゃないのか?」
「失礼な!!私ならばマグマゴーレムだろうと爆散させる事ができますわ!!リンさんの方こそ役に立たないのでは!?」
「何だと、この爆発女!!」
火属性の魔剣の使い手であるヒイロはマグマゴーレムと相性が悪く、同じく火属性の魔槍の使い手であるドリスにリンはからかう。それに切れたドリスは言い返すと二人は取っ組み合いの喧嘩を始めた。
結局のところはマグマゴーレムの対抗手段を持つのはリーナしかおらず、彼女以外の者は熱耐性の高い装備を整えて戦うしかなかった。遠距離攻撃ができる魔術師を一人でも多く必要となるが、この時にガオウはある人物を思い出す。
「そういえばマリンの奴はどうした?あいつ、最近は姿を見てないが……」
「マリンか……確かにマリンがいれば心強いな」
マリンとは王国に所属する黄金級冒険者の中で唯一の「魔術師」であり、元黄金級冒険者のゴウカと組んでいた冒険者だった。彼女は火属性の魔法を得意とするが、それ以外の属性の魔法も扱えるため、彼女が同行してくれれば大きな戦力になるのは間違いなかった。
しかし、肝心のマリンは最近は王都では姿を見かけておらず、ガオウ達も居場所を知らない。既に王都を発っている可能性は高いが、その辺は冒険者ギルドに問い合わせる必要があった。
「まあ、マリンの奴はおいといて……他にマグマゴーレムに対抗手段を持つ奴はいないのか?」
「ふむ……」
ガオウの言葉にマホは腕を組み、彼女はしばらくの間考え込んでいたが、やがて覚悟を決めた様にアッシュに告げた。
「アッシュよ、氷華をここへ持ってきてくれるか」
「何!?あの氷華を?」
「氷華というと……」
「……王妃様の魔剣だよ」
氷華の名前が出た途端に会議室の雰囲気が変わり、アッシュは驚いた表情を浮かべてテンに至っては表情を引きつらせる。他の者たちもどうしてここで「氷華」の名前が出てくるのかと戸惑う。
「マホ魔導士、どうしてここで氷華の名前を持ち出すんだい?」
「テンよ、お主の気持ちは分かるが今は国の危機じゃ。氷華の使い手が見つかればマグマゴーレムに対抗できる戦力が増える」
「簡単に言うんじゃないか……氷華を扱える人間は王妃様以外にはあり得ないよ、絶対にね」
「テン!!老師に向かってなんて口を……」
テンは不貞腐れた様に鼻を鳴らし、そんな態度に流石のエルマも黙ってはいなかったが、それを止めたのは意外な人物だった。
「待てよエルマ……俺もあの魔剣を使いこなせる人間がいるとは思わないぜ」
「ガロ!?貴方まで何を……」
「そうか、ガロ……お主はあの魔剣の恐ろしさを知っておるな」
口を挟んだのはエルマと同じくマホの弟子であるガロであり、彼はかつて氷華と炎華を手にして戦った事があった。あの時は緊急事態という事でマホは彼に二つの魔剣を託したが、ガロは戦闘の最中に仲間を守るために氷華の力を引き出そうとした。
結果から言えば氷華の力を解放した瞬間、ガロは魔剣を制御できずに魔力を強制的に奪われ、周囲一帯を凍り付かせた。この時にガロは氷華を止めるために彼は右手首ごと切り裂き、どうにか暴走を止めた。その後はテン達が駆けつけてくれたお陰で治療が間に合い、なんとか腕は繋ぎ止める事ができた。しかし、あの時に援軍が遅れていばガロは右手を失っていたかもしれない。
「あの魔剣の恐ろしさは俺が良く知っている……正直、あんなの扱いこなせる人間がいるとは思えねえよ」
「ふんっ……その小僧の言う通りさ。氷華にしろ炎華にしろ、あの魔剣を制御できるのは王妃様以外にはあり得ない」
「確かにお主等の言う通り、二つの魔剣を同時に制御できるのはジャンヌだけだった。しかし……片方だけならば話は別とは思わんか?」
「何だって?」
マホの言葉にテンは胡散臭い表情を浮かべるが、そんな彼女に対してマホはヒイロに視線を向けた。ヒイロは自分が見られている事に気付いて呆気に取られた表情を浮かべる。
「えっ……ま、まさか私の事ですか?」
「うむ、お主は前に炎華を使ったな?その時にガロのように魔剣を手放すために手首を切り落としたか?」
「ええっ!?いやいや、そんな事をするはずありませんよ!?」
かつてヒイロは王都に現れた火竜との戦闘の際、彼女は炎華を手にして戦った。この時の彼女は一撃だけ火竜に攻撃を加えた後、炎華を手放して気絶してしまう。しかし、ガロの時と違って彼女は炎華を暴走させる事はなく、その力だけを引き出して戦い抜いた。
「炎華の力を使いこなす事はできなかったが、ヒイロはこうして無事に生きておる。これはヒイロが火属性の適性が高く、ガロの場合は水属性の適性はあったが力を使いこなせなかった……と、儂は考えておる」
「じゃ、じゃあ……俺が氷華を使いこなせなかったのは適性が低かっただけなのか?」
「うむ、ヒイロと同じぐらいに適性が高ければお主も氷華の暴走を防ぐ事ができた……かもしれん」
「……それがどうしたんだい、ヒイロだって炎華を一度使ったら倒れたんだろ?それに重要なのは炎華じゃなくて氷華だよ。氷華を使いこなせる人間を見つけなければ意味ないじゃないかい」
「まあ、待て。話は最後まで聞かんか」
マホが言いたい事はガロが氷華を暴走させたのは彼が水属性の適性が低すぎたのが原因であり、逆に言えば水属性の適性が高い人間ならば氷華の暴走を抑えて力を使いこなす可能性がある事を説明する。
彼女は水属性の適性が高い人間を集め、その中から氷華を使いこなせる人間がいないかどうかを確かめる「選抜」を行う事を提案した。
「テンの言う通り、氷華を完全に使いこなせる人間がいるかどうかは分からん。しかし、完璧に使いこなせずともその力を引き出せる人間は必ずおるはず。それを確かめるために氷華が必要なんじゃ」
「……あたしは反対だね、どうせ見つかりっこないよ」
「テン、いい加減にしなさい!!」
「ふんっ」
テンは氷華が王妃以外の人間の手に渡る事自体が気に入らず、不貞腐れた態度で自分を注意するエルマから顔を反らす。そんな彼女の態度にエルマは注意しようとするが、会議室の扉が開かれてアッシュが命じた兵士が氷華を運び出す。
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