989 / 1,110
嵐の前の静けさ
第969話 再襲撃と特訓の成果
しおりを挟む
「……ん?」
「どうかしました?」
「いや、今何か動いたような気がしたんだけど……」
会話の際中にナイは城壁から外の光景を見ると、遠方で何かが動いている事に気付いく。山育ちで常人よりも優れた視力を持つナイだからこそ見間違いは有り得ず、不思議に思った彼は「観察眼」の技能を発動して注意深く確認する。
目元を細めてナイは街に接近する影の正体を確かめた瞬間、衝撃の表情を浮かべる。ナイの様子が変わった事に気付いたフィルも視線を向けると、少し遅れて彼も街に接近する存在の正体を見抜く。
「あれは……まさか!?」
「トロール!?しかも何体もこっちに近付いている!!」
街に向けて接近しているのが「トロールの群れ」である事が判明し、しかも巨大な丸太を抱えて街の城門に向けて駆けつけていた。
――ウォオオオッ!!
数匹のトロールが丸太を抱えて城門に迫る光景を確認すると、ナイとフィルは城壁を駆けだしていた。基本的にトロールは力は強いが肥満体型で鈍重な動作の生物だが、街に迫るトロールは痩せていて筋肉質な体型をしていた。
通常種のトロールとは比べ物にならない動きの速さでトロールの群れは接近し、このままでは数十秒ほどで城門に到着する。即座にナイは城壁の上から飛び降りると、落下中にフィルに向けて言い放つ。
「あいつらを止めてくる!!」
「えっ!?ナ、ナイさん!?」
「ウォンッ!!」
既に地上にはビャクが待機しており、彼もトロールの接近に気付いていたらしく、城壁から降りてきたナイはビャクの背中に降り立つ。その姿を見てフィルは安堵するが、すぐに異変を知らせるために彼は城壁の各所に設置されていた鐘を鳴らす。
「敵襲!!敵襲!!」
鐘の音を鳴らしながらフィルは叫び声をあげると、城壁で見張りをしていた警備兵は驚いた表情を浮かべて城壁の外を伺う。既にビャクに乗り込んだナイはトロールの群れに向けて近付いており、両手に刺剣を構えていた。
(数は五匹!!それに武装もしている!!)
トロールは巨人族用の兜と皮鎧を身に付けており、恐らくはゴノの街の巨人族の冒険者を襲って奪った装備品だと思われた。しかし、足元の方までは装備は身に付けておらず、刺剣を取り出したナイはトロールの群れに放つ。
(磨き直したばかりだけど……仕方ないな!!)
後で血の汚れを拭うのに苦労する事になると予感しながらもナイは刺剣を構え、それぞれに装着された小型の風属性の魔石を起動する。アルトの改造で試験は風属性の魔力を利用して高速回転を行い、貫通力を極限に高めた状態で攻撃する事ができる。
ナイは「投擲」と「命中」の技能を発動させてトロールの群れに向けて刺剣を放つと、先頭を走っていたトロールは両膝を撃ち抜かれ、悲鳴を上げて倒れ込む。
「フガァアアアッ!?」
「「「ウオオッ!?」」」
先頭を走っていた個体が足の負傷で転んだ事で他のトロールも巻き込まれ、それを確認したナイはビャクの背中から降りて新しい刺剣を取り出す。
「ふんっ!!」
「フギャア!?」
真っ先に転んだトロールの兜の隙間に目掛けてナイは刺剣を放ち、的確に右目を貫く。片目を奪われたトロールは悲鳴を上げて暴れ出し、それを他のトロールが抑えつけようとした。
「ギャアアアアッ!?」
「ウガァッ!?」
「ガアアッ!!」
暴れる仲間を他のトロールは落ち着かせようとするが、その間にナイはビャクと並んでトロールの群れと向かい合う。トロールたちは自分達の前に現れた人間の少年に戸惑うが、ナイは堂々と旋斧を片手で持ち上げて宣言する。
「お前等の相手は僕達だ!!」
「ウォオオンッ!!」
「……フンッ!!」
ナイの言葉とビャクの咆哮を耳にしてもトロールの群れは怯まず、最も大柄なトロールが前に出てきた。自分よりも二倍以上の体格のトロールを前にしてもナイは怯えた様子も見せず、その事がトロールにとっては気に喰わない。
大柄なトロールはナイを叩き潰そうと丸太を持ち上げ、全力で上から叩き付ける。その攻撃に対してビャクは離れるが、ナイは旋斧を構えて刃の腹の部分で受け止める。
「フガァアアアッ!!」
「っ……!?」
草原に金属音が鳴り響き、正面からトロールの全力の一撃を受けたナイは足元に亀裂が走る。しかし、彼は口元に笑みを浮かべて逆に丸太を押し返す。
「その程度?」
「フゴォッ……!?」
「フガァッ!?」
「フゴゴッ!?」
一番体格が大きいトロールの攻撃を受けてもナイは倒れる所か正面から受け止め、さらには信じられない膂力で押し返す。トロールは丸太を押し返されていく感覚に戸惑い、必死にナイを押し潰そうと力を込めるが徐々に押し返されていく。
「うおりゃあっ!!」
「ウガァアアアッ!?」
「フギャッ!?」
「ギャウッ!?」
お得意の「剛力」の技能を発揮したナイはトロールの振り下ろした丸太を力ずくで弾き飛ばし、その反動でトロールは後ろに倒れ込んで他のトロールを巻き込む。この時に両足と片目を負傷したトロールを押し潰してしまい、情けない悲鳴が草原に響く。
腕力で押し負けたトロールはナイに対して怯えた表情を浮かべ、人間を相手に力で負ける事など初めての経験だった。高レベルの巨人族が相手であろうと腕力で押し負けた事など一度もなく、その巨人族よりも非力な種族の人間に自分の力が通じなかった事にトロールは衝撃を受けた表情を浮かべる。
「ウガァアアアッ!!」
「ガアアアッ!!」
追い詰められたトロールは無我夢中に丸太を振り回すが、それを見たビャクが飛び込む。鋭い牙がトロールの首元を切り裂き、トロールは首から大量の血を放出しながら倒れ込む。
「ギャアアアアッ!?」
「フガァッ!?」
「ウガァアッ!!」
「こっちも忘れるな!!」
ビャクの攻撃で仲間の一匹が倒された事に他のトロールは怒り、彼に集中攻撃を喰らわせようとした。しかし、それよりも先にナイはトロールの群れに向かうと、最初に両足を負傷したトロールを狙う。
旋斧を手にしたナイは片目を負傷したトロールの死角に移動すると、勢いよく旋斧を振りかざして胴体を切り裂く。身体を一回転させて相手を切り裂く「円斧」でトロールの胴体を一刀両断した。
「だあああっ!!」
「ウギャアアアッ!?」
「ウガッ!?」
「フガァッ!?」
別の仲間がやられた事に残りのトロールたちは動揺し、それでも残されたトロール達は一か所に集まって背中を合わせてナイ達に身構える。
(防御に集中している?やっぱり、普通のトロールじゃなさそうだ)
武装や丸太を武器として扱っている時点で野生のトロールではあり得ぬ行動であり、お互いを庇い合うように動くトロールの行動を見てナイは警戒心を高める。ビャクもナイの傍に移動して様子を伺い、睨み合う形となった。
ここまでの戦闘からトロールの群れは先日に街を襲撃したトロールの集団である事はほぼ確定しており、野生のトロールらしからぬ行動を取っている当たり魔物使いに鍛え上げられたトロールなのは間違いない。問題は魔物使いの姿が傍に見えない事だった。
(魔物使いはこの近くにいないのか?)
ナイはトロールの群れから視線を外して周囲の様子を伺うと、それを見たトロールの群れはナイが隙を見せたと判断して防御を解いて丸太を振りかざす。
「ウガァアアアッ!!」
「ウォンッ!!」
「おっと……」
ビャクが注意するように声をかけると、ナイはトロールが攻撃を仕掛けてきた事に気付いて横に跳ぶ。ナイが立っていた場所に投げ放たれた丸太が倒れ込み、まともに受けていたら大怪我を負っていた所だった。
丸太を手放したトロールは舌打ちするが、他のトロールも丸太を担いで攻撃の隙を伺う。しかし、ナイの方は投げ放たれた丸太に視線を向けてあることを思い出す。
(そういえば昔に丸太を武器にして戦った事もあったな……こっちの方が射程《リーチ》が長そうだし、久しぶりに使ってみるかな)
あろうことかトロールが手放した丸太をナイは拾い上げると、軽々と持ち上げて先ほど丸太を投げ込んだトロールに向けて繰り出す。
「どりゃあああっ!!」
「ブフゥッ!?」
「ウォンッ!?」
丸太を奪われたトロールは腹部に強烈な衝撃が走り、ナイの攻撃によって腹部を貫かれる。通常種のトロールは全身が脂肪の鎧を纏っているので打撃には強いが、生憎と今回現れたトロールは全身が筋肉質のため、まともに衝撃を受けて膝を着く。
思いもよらぬ反撃で倒れたトロールを見て他の個体も戸惑うが、ナイは更に丸太を担いだ状態で膝を着いたトロールの頭を足場にして空中に跳躍する。そのまま全体重を乗せてナイは他の二匹のトロールに目掛けて落下した。
「喰らえっ、丸太流星群!!」
「「ウギャアアアッ!?」」
「ウォンッ!?(なにその技!?)」
二匹のトロールを巻き込んでナイは丸太ごと地上へ激突すると、トロールたちは地面に転がり込み、ナイだけは無事に着地する。この時にナイは丸太を手放すと、倒れたトロールの一匹の足を掴み、ロランとの特訓で身に着けた技を試す。
ロランの訓練のお陰でナイは「強化術」を瞬時に発動できるようになった。しかし、長時間の強化術の使用は肉体に大きな負担を与えるため、発動するのは一瞬だけならば肉体の負荷はそれほどではない。
「どりゃああああっ!!」
「アアアアアッ!?」
「ウギャアッ!?」
「フガァッ!?」
脅威的な腕力でナイはトロールを持ち上げると、他のトロールを巻き込んで吹き飛ばす。その結果、三匹のトロールは派手に地面に倒れ込み、全身骨折でもしたのか動かなくなった。トロールを投げ飛ばすとナイは強化術を解除して一息吐く。
「ナイさん!!助太刀し……えっ!?」
「ふうっ……久々に良い運動になったかな」
「ウォンッ(もう遅いよ)」
フィルが城壁の警備兵を連れて援軍に駆けつけた時には既にナイの周りにはトロールの群れが倒れており、それを見た彼と兵士達は愕然とした――
「どうかしました?」
「いや、今何か動いたような気がしたんだけど……」
会話の際中にナイは城壁から外の光景を見ると、遠方で何かが動いている事に気付いく。山育ちで常人よりも優れた視力を持つナイだからこそ見間違いは有り得ず、不思議に思った彼は「観察眼」の技能を発動して注意深く確認する。
目元を細めてナイは街に接近する影の正体を確かめた瞬間、衝撃の表情を浮かべる。ナイの様子が変わった事に気付いたフィルも視線を向けると、少し遅れて彼も街に接近する存在の正体を見抜く。
「あれは……まさか!?」
「トロール!?しかも何体もこっちに近付いている!!」
街に向けて接近しているのが「トロールの群れ」である事が判明し、しかも巨大な丸太を抱えて街の城門に向けて駆けつけていた。
――ウォオオオッ!!
数匹のトロールが丸太を抱えて城門に迫る光景を確認すると、ナイとフィルは城壁を駆けだしていた。基本的にトロールは力は強いが肥満体型で鈍重な動作の生物だが、街に迫るトロールは痩せていて筋肉質な体型をしていた。
通常種のトロールとは比べ物にならない動きの速さでトロールの群れは接近し、このままでは数十秒ほどで城門に到着する。即座にナイは城壁の上から飛び降りると、落下中にフィルに向けて言い放つ。
「あいつらを止めてくる!!」
「えっ!?ナ、ナイさん!?」
「ウォンッ!!」
既に地上にはビャクが待機しており、彼もトロールの接近に気付いていたらしく、城壁から降りてきたナイはビャクの背中に降り立つ。その姿を見てフィルは安堵するが、すぐに異変を知らせるために彼は城壁の各所に設置されていた鐘を鳴らす。
「敵襲!!敵襲!!」
鐘の音を鳴らしながらフィルは叫び声をあげると、城壁で見張りをしていた警備兵は驚いた表情を浮かべて城壁の外を伺う。既にビャクに乗り込んだナイはトロールの群れに向けて近付いており、両手に刺剣を構えていた。
(数は五匹!!それに武装もしている!!)
トロールは巨人族用の兜と皮鎧を身に付けており、恐らくはゴノの街の巨人族の冒険者を襲って奪った装備品だと思われた。しかし、足元の方までは装備は身に付けておらず、刺剣を取り出したナイはトロールの群れに放つ。
(磨き直したばかりだけど……仕方ないな!!)
後で血の汚れを拭うのに苦労する事になると予感しながらもナイは刺剣を構え、それぞれに装着された小型の風属性の魔石を起動する。アルトの改造で試験は風属性の魔力を利用して高速回転を行い、貫通力を極限に高めた状態で攻撃する事ができる。
ナイは「投擲」と「命中」の技能を発動させてトロールの群れに向けて刺剣を放つと、先頭を走っていたトロールは両膝を撃ち抜かれ、悲鳴を上げて倒れ込む。
「フガァアアアッ!?」
「「「ウオオッ!?」」」
先頭を走っていた個体が足の負傷で転んだ事で他のトロールも巻き込まれ、それを確認したナイはビャクの背中から降りて新しい刺剣を取り出す。
「ふんっ!!」
「フギャア!?」
真っ先に転んだトロールの兜の隙間に目掛けてナイは刺剣を放ち、的確に右目を貫く。片目を奪われたトロールは悲鳴を上げて暴れ出し、それを他のトロールが抑えつけようとした。
「ギャアアアアッ!?」
「ウガァッ!?」
「ガアアッ!!」
暴れる仲間を他のトロールは落ち着かせようとするが、その間にナイはビャクと並んでトロールの群れと向かい合う。トロールたちは自分達の前に現れた人間の少年に戸惑うが、ナイは堂々と旋斧を片手で持ち上げて宣言する。
「お前等の相手は僕達だ!!」
「ウォオオンッ!!」
「……フンッ!!」
ナイの言葉とビャクの咆哮を耳にしてもトロールの群れは怯まず、最も大柄なトロールが前に出てきた。自分よりも二倍以上の体格のトロールを前にしてもナイは怯えた様子も見せず、その事がトロールにとっては気に喰わない。
大柄なトロールはナイを叩き潰そうと丸太を持ち上げ、全力で上から叩き付ける。その攻撃に対してビャクは離れるが、ナイは旋斧を構えて刃の腹の部分で受け止める。
「フガァアアアッ!!」
「っ……!?」
草原に金属音が鳴り響き、正面からトロールの全力の一撃を受けたナイは足元に亀裂が走る。しかし、彼は口元に笑みを浮かべて逆に丸太を押し返す。
「その程度?」
「フゴォッ……!?」
「フガァッ!?」
「フゴゴッ!?」
一番体格が大きいトロールの攻撃を受けてもナイは倒れる所か正面から受け止め、さらには信じられない膂力で押し返す。トロールは丸太を押し返されていく感覚に戸惑い、必死にナイを押し潰そうと力を込めるが徐々に押し返されていく。
「うおりゃあっ!!」
「ウガァアアアッ!?」
「フギャッ!?」
「ギャウッ!?」
お得意の「剛力」の技能を発揮したナイはトロールの振り下ろした丸太を力ずくで弾き飛ばし、その反動でトロールは後ろに倒れ込んで他のトロールを巻き込む。この時に両足と片目を負傷したトロールを押し潰してしまい、情けない悲鳴が草原に響く。
腕力で押し負けたトロールはナイに対して怯えた表情を浮かべ、人間を相手に力で負ける事など初めての経験だった。高レベルの巨人族が相手であろうと腕力で押し負けた事など一度もなく、その巨人族よりも非力な種族の人間に自分の力が通じなかった事にトロールは衝撃を受けた表情を浮かべる。
「ウガァアアアッ!!」
「ガアアアッ!!」
追い詰められたトロールは無我夢中に丸太を振り回すが、それを見たビャクが飛び込む。鋭い牙がトロールの首元を切り裂き、トロールは首から大量の血を放出しながら倒れ込む。
「ギャアアアアッ!?」
「フガァッ!?」
「ウガァアッ!!」
「こっちも忘れるな!!」
ビャクの攻撃で仲間の一匹が倒された事に他のトロールは怒り、彼に集中攻撃を喰らわせようとした。しかし、それよりも先にナイはトロールの群れに向かうと、最初に両足を負傷したトロールを狙う。
旋斧を手にしたナイは片目を負傷したトロールの死角に移動すると、勢いよく旋斧を振りかざして胴体を切り裂く。身体を一回転させて相手を切り裂く「円斧」でトロールの胴体を一刀両断した。
「だあああっ!!」
「ウギャアアアッ!?」
「ウガッ!?」
「フガァッ!?」
別の仲間がやられた事に残りのトロールたちは動揺し、それでも残されたトロール達は一か所に集まって背中を合わせてナイ達に身構える。
(防御に集中している?やっぱり、普通のトロールじゃなさそうだ)
武装や丸太を武器として扱っている時点で野生のトロールではあり得ぬ行動であり、お互いを庇い合うように動くトロールの行動を見てナイは警戒心を高める。ビャクもナイの傍に移動して様子を伺い、睨み合う形となった。
ここまでの戦闘からトロールの群れは先日に街を襲撃したトロールの集団である事はほぼ確定しており、野生のトロールらしからぬ行動を取っている当たり魔物使いに鍛え上げられたトロールなのは間違いない。問題は魔物使いの姿が傍に見えない事だった。
(魔物使いはこの近くにいないのか?)
ナイはトロールの群れから視線を外して周囲の様子を伺うと、それを見たトロールの群れはナイが隙を見せたと判断して防御を解いて丸太を振りかざす。
「ウガァアアアッ!!」
「ウォンッ!!」
「おっと……」
ビャクが注意するように声をかけると、ナイはトロールが攻撃を仕掛けてきた事に気付いて横に跳ぶ。ナイが立っていた場所に投げ放たれた丸太が倒れ込み、まともに受けていたら大怪我を負っていた所だった。
丸太を手放したトロールは舌打ちするが、他のトロールも丸太を担いで攻撃の隙を伺う。しかし、ナイの方は投げ放たれた丸太に視線を向けてあることを思い出す。
(そういえば昔に丸太を武器にして戦った事もあったな……こっちの方が射程《リーチ》が長そうだし、久しぶりに使ってみるかな)
あろうことかトロールが手放した丸太をナイは拾い上げると、軽々と持ち上げて先ほど丸太を投げ込んだトロールに向けて繰り出す。
「どりゃあああっ!!」
「ブフゥッ!?」
「ウォンッ!?」
丸太を奪われたトロールは腹部に強烈な衝撃が走り、ナイの攻撃によって腹部を貫かれる。通常種のトロールは全身が脂肪の鎧を纏っているので打撃には強いが、生憎と今回現れたトロールは全身が筋肉質のため、まともに衝撃を受けて膝を着く。
思いもよらぬ反撃で倒れたトロールを見て他の個体も戸惑うが、ナイは更に丸太を担いだ状態で膝を着いたトロールの頭を足場にして空中に跳躍する。そのまま全体重を乗せてナイは他の二匹のトロールに目掛けて落下した。
「喰らえっ、丸太流星群!!」
「「ウギャアアアッ!?」」
「ウォンッ!?(なにその技!?)」
二匹のトロールを巻き込んでナイは丸太ごと地上へ激突すると、トロールたちは地面に転がり込み、ナイだけは無事に着地する。この時にナイは丸太を手放すと、倒れたトロールの一匹の足を掴み、ロランとの特訓で身に着けた技を試す。
ロランの訓練のお陰でナイは「強化術」を瞬時に発動できるようになった。しかし、長時間の強化術の使用は肉体に大きな負担を与えるため、発動するのは一瞬だけならば肉体の負荷はそれほどではない。
「どりゃああああっ!!」
「アアアアアッ!?」
「ウギャアッ!?」
「フガァッ!?」
脅威的な腕力でナイはトロールを持ち上げると、他のトロールを巻き込んで吹き飛ばす。その結果、三匹のトロールは派手に地面に倒れ込み、全身骨折でもしたのか動かなくなった。トロールを投げ飛ばすとナイは強化術を解除して一息吐く。
「ナイさん!!助太刀し……えっ!?」
「ふうっ……久々に良い運動になったかな」
「ウォンッ(もう遅いよ)」
フィルが城壁の警備兵を連れて援軍に駆けつけた時には既にナイの周りにはトロールの群れが倒れており、それを見た彼と兵士達は愕然とした――
0
お気に入りに追加
66
あなたにおすすめの小説
無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……
karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる