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嵐の前の静けさ
第966話 火口の異変
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身体が回復するまで休んだ後、ナイはビャクとプルリンと共に火山の火口へ向かう。前回の時は火口に近付くと熱気が強まってかなり苦しい思いをしたのだが、火山の中腹部分に到達しても気温が特に上がった様子はなく、むしろ逆に温度が下がったかのように寒くなった。
「くしゅんっ!!ううっ……なんでこんなに寒いんだ?」
「ウォンッ……(毛布が欲しい)」
「ぷるんっ!?(そんなにあったかそうな毛皮を生やしてるのに!?)」
以前に訪れた時と比べて火山全体の気温が明らかに下がっており、本当に自分が同じ火山を登っているのかと疑問を抱く。この場所には数百のマグマゴーレムが生息しているはずなのだが、何故か村で遭遇した新種のゴーレム以外はゴーレムを見かけいない。
嫌な予感を抱きながらもナイ達は遂に火山の頂上部へと到着すると、そこでナイは異様な光景を確認した。前回の時に火口に到着した時はマグマで溢れていたにも関わらず、何故か現在のグツグ火山はまるで死火山のようにマグマが消え失せていた。
「ど、どうなってるんだ?」
「ウォンッ……」
「ぷるぷるっ……」
火口には大量のマグマゴーレムが生息していたはずだが、現在は火口の頂上部は隕石が落ちてきたクレーターが出来上がっているだけでマグマも湧きあがっていない。しかも異変はそれだけではなく、火口の岩壁には色を失った硝子の様な水晶が大量に埋め込まれていた。
「これは……魔石?」
ナイは岩壁から完全に魔力が失われた魔石の原石を発見し、引き抜こうと掴んだ途端、簡単に壊れてしまった。魔石は魔力を失うと強度が落ちて砕けやすくなり、原因は不明だが火口付近の火属性の魔石の原石が全て魔力を失っていた。
この場所で何が起きたのか見当はつかないが、ドワーフ達の話によると少し前に火山に隕石が落下し、巨大な火柱が火山から上がったという。それが原因なのかは不明だが、今のグツグ火山はマグマも火属性の魔石を生み出せる状態ではない。
(ここで何が起きたんだ?)
消えてしまったマグマゴーレムの大群、そしてナイが先ほど倒した新種のゴーレム、色々と気になる点はあるが今の時点では何も分からない。ひとまずはナイはゴノに戻って報告を行う事にした――
――翌日にゴノに帰還したナイはグツグ火山の異変を皆に知らせた。話を聞いた者達は想定外の事態に動揺する。
「グツグ火山からマグマゴーレムが消えた?しかも見た事もないゴーレムが現れただと?」
「い、いったいどういう事ですか?数百のマグマゴーレムが何処に消えたのですか?」
「分かりません……けど、火山の周辺を調べた限りではマグマゴーレムが他の地域に逃げた形跡は見つかりませんでした」
「そうですわね、となると隕石が落ちた時にマグマゴーレムが全滅したと考えるべきでしょうか……」
ナイの話を聞いたドリスは火口付近に生息したマグマゴーレムの大群は、隕石の落下時に消滅し、火口で起きた火柱はマグマゴーレムが全滅した際に起きた現象ではないかと推測する。
火柱の正体は隕石の落下の衝撃でマグマゴーレムの大群が爆発し、その影響で火属性の魔力が暴発して天に打ち上がった。だが、問題なのは隕石が落ちた後に火山が活動を停止した事だった。
「その火柱の原因がマグマゴーレムのせいだとしても、どうしてグツグ火山は活動が停止したんだ?隕石が落ちたら火山は止まるもんなのか?」
「そんな話は聞いた事もありませんわね……ですけど、隕石が落下した際に火山が何らかの影響を受けた可能性は大いにありますわ」
「そうですね……」
「う~ん……」
隕石が火山に落ちる事が前代未聞であり、王国の歴史でこれまでに起きた事は一度もない。だからこそドリスの仮説が一番可能性が高いが、ナイが気になったのは火山の火口付近の魔石が色を失っていた事に違和感を抱く。
「マグマゴーレムが全滅して火山が活動を停止した理由が隕石だったとしても……どうして火口付近の魔石は魔力を失ってたんでしょう」
「ん?どういう意味だ?」
「だって、おかしくないですか?マグマゴーレムが消えたのは隕石が落下して跡形もなく吹き飛んだとしても、魔石の場合は魔力だけが失われた原石が残ってたんですよ?もしもマグマゴーレムが隕石の落下で爆発したとしても、魔石だけが無事に残ってしかも魔力だけが抜けた状態で埋まっているなんてあり得ますか?」
「た、確かに……それはおかしいですよね?」
「言われてみれば……仮に火山の活動が停止したとしても、魔石から魔力が失われる原因の説明にはなっていませんわ」
ナイの指摘に他の者たちも同意し、火山が活動を停止したら火属性の魔石を作り出す機能が失われるだろうが、既に誕生していた火属性の魔石から魔力を失われる理由にはならない。つまり火山付近の魔石が魔力を失った原因は別にあると考えられる。
「坊主の話を聞く限りだと、その黒いゴーレムは魔力を奪う能力があるんだろう?なら、そいつが火口の魔石の魔力を奪ったんじゃないか?」
「でも、火口には数百の魔石があるんですよ?それを全部吸収するなんて……」
「単体とは限らないだろ。もしかしたら他にも同じ奴が居るんじゃないのか?」
「あ、なるほど……でも、火山を調べた時は一匹しか見かけませんでしたけど」
火山から帰還する前にナイは念のために他にゴーレムが存在しないのか調べたが、村で発見したゴーレム以外の個体は確認できなかった。しかし、ガオウの言う通りにナイが発見したゴーレムの他に別個体が居る可能性は十分にある。
恐らくはナイが倒した「漆黒のゴーレム」は、火山が隕石に落下した際に誕生した新種のゴーレムの可能性が高い。魔法を吸収する能力を持ち合わせ、奪い取った魔力は身体に埋まった黒水晶に蓄積できる特殊能力を所持していた。
「魔力を吸収……まるでナイさんの魔剣みたいですわね」
「えっ?」
「ナイさんの魔剣も魔法の力を吸収するのでしょう?そういえば今まで聞く機会はありませんでしたけど、ナイさんの旋斧はどのような素材で作られているのか気になりますわ」
「素材と言われても……詳しい話は聞いた事がないんです」
ナイはドリスの言葉に言われてみて確かに彼女の言う通りに旋斧の「魔力を喰らう能力」と、新種のゴーレムの「魔法攻撃を吸収する能力」は非常に似ている。
外部から受けた魔法攻撃を吸収できるという点は共通しており、ナイはゴーレムを倒した時に手に入れた「核」を思い出す。通常のゴーレムとは違い、新種のゴーレムの核は魔石の類ではなく、金属の塊に等しい。
「そういえばゴーレムを倒した時にこんな物を手に入れたんですけど……」
「何だそれ?石炭……いや、違うな」
「これは金属ですか?」
「鉄の塊に見えなくもないですが……」
回収したゴーレムの核をナイが見せると他の者たちは不思議そうに覗き込み、試しに触れてみるが特に何も反応しない。こちらの核はナイが強化術を発動させた状態で攻撃を仕掛けても傷一つ付かず、恐らくは魔法金属の類だと思われた。
「こんなの俺も見たことないな……爺さんなら何か分かるかもしれないな」
「爺さん?」
「ハマーン技師の事ですわね」
「確かにドワーフのハマーン殿なら何か分かるかも……ドワーフ?」
ガオウはハマーンに金属の塊を見せる様に提案するが、この時にフィルはある事を思い出し、他の者たちも顔を見合わせる――
――しばらく時間が経過すると、ナイ達の元にグツグ火山に暮らしていたドワーフ達が訪れる。彼等は自分達が呼び出された理由が分からずに混乱するが、ナイが回収した金属の塊を見せると驚いた表情を浮かべた。
「こ、こいつは……!?」
「何だこれは……ただの鉄の塊じゃねえな」
「むむむっ……これを何処で手に入れた!?」
「いや、その……」
金属の塊を見せた途端にドワーフ達は集まり、目を見開きながら覗き込む。ナイ達は彼等の反応を見てやはりただの金属ではないのかと思い、手に入るまでの経緯を話す。
「その塊はナイさんがグツグ火山で遭遇したゴーレムを倒して手に入れた物です」
「ゴーレム!?こいつはゴーレムの核なのか!?」
「しかし、あの火山にはマグマゴーレムしかいないはずだぞ!?マグマゴーレムの核は火属性の魔石のはずだ!!」
「いったいどんな奴だった?」
「えっと……全身が黒くて、それと黒色の水晶のような物が身体中に埋まっていました」
鍛冶師達にナイは説明しながら核とは別に回収した「黒水晶」を取り出す。それを見た瞬間、ドワーフの鍛冶師達はナイから奪い取るように黒水晶を取り上げて虫眼鏡で覗き込む。
「な、なんじゃこれは!?魔石のように見えるが、ただの闇属性の魔石ではなさそうだぞ!!」
「こんな物、見た事がない!!」
「むむむっ……これは時間を掛けて調べる必要があるな。貰っておくぞ!!」
「おい、こら!!勝手に持って行こうとするんじゃねえっ!!そいつは坊主の倒したゴーレムから手に入れた戦利品だぞ!!」
勝手に核と黒水晶を持って出て行こうとしたドワーフ達にガオウが先回りして注意すると、彼等は不満そうな表情を浮かべる。しかし、ドワーフの代表格の村長が前に出ると、彼はナイの装備を確認して腕を組む。
「ふむ……見た限り、随分と装備が汚れておるようだが手入れはちゃんとしておるのか?」
「え?あ、そういえば最近は急がしくて……」
「いかんぞ!!一流の戦士ならば常日頃から装備の手入れをせねばならん……という事で儂等がお主の装備を見直してやろうではないか。それでこの二つを調べる事を許してくれんか?」
「ええっ!?」
思いもよらぬ提案にナイは呆気に取られるが、ここに集まった鍛冶師達は元々はグツグ火山に暮らしていた優秀な鍛冶師揃いであり、彼等の手にかかればナイの装備の手入れは瞬く間に終わる。それどころか前よりも装備を強化してくれるという。
その後、色々と話し合った末にゴーレムから回収した核と黒水晶は、一時的に彼等に預ける事にした。今の段階ではナイ達が所持していても正体を調べる事はできず、次に飛行船が訪れる時に返却する事を条件にナイ達はドワーフ達に核と黒水晶を貸す事にした――
「くしゅんっ!!ううっ……なんでこんなに寒いんだ?」
「ウォンッ……(毛布が欲しい)」
「ぷるんっ!?(そんなにあったかそうな毛皮を生やしてるのに!?)」
以前に訪れた時と比べて火山全体の気温が明らかに下がっており、本当に自分が同じ火山を登っているのかと疑問を抱く。この場所には数百のマグマゴーレムが生息しているはずなのだが、何故か村で遭遇した新種のゴーレム以外はゴーレムを見かけいない。
嫌な予感を抱きながらもナイ達は遂に火山の頂上部へと到着すると、そこでナイは異様な光景を確認した。前回の時に火口に到着した時はマグマで溢れていたにも関わらず、何故か現在のグツグ火山はまるで死火山のようにマグマが消え失せていた。
「ど、どうなってるんだ?」
「ウォンッ……」
「ぷるぷるっ……」
火口には大量のマグマゴーレムが生息していたはずだが、現在は火口の頂上部は隕石が落ちてきたクレーターが出来上がっているだけでマグマも湧きあがっていない。しかも異変はそれだけではなく、火口の岩壁には色を失った硝子の様な水晶が大量に埋め込まれていた。
「これは……魔石?」
ナイは岩壁から完全に魔力が失われた魔石の原石を発見し、引き抜こうと掴んだ途端、簡単に壊れてしまった。魔石は魔力を失うと強度が落ちて砕けやすくなり、原因は不明だが火口付近の火属性の魔石の原石が全て魔力を失っていた。
この場所で何が起きたのか見当はつかないが、ドワーフ達の話によると少し前に火山に隕石が落下し、巨大な火柱が火山から上がったという。それが原因なのかは不明だが、今のグツグ火山はマグマも火属性の魔石を生み出せる状態ではない。
(ここで何が起きたんだ?)
消えてしまったマグマゴーレムの大群、そしてナイが先ほど倒した新種のゴーレム、色々と気になる点はあるが今の時点では何も分からない。ひとまずはナイはゴノに戻って報告を行う事にした――
――翌日にゴノに帰還したナイはグツグ火山の異変を皆に知らせた。話を聞いた者達は想定外の事態に動揺する。
「グツグ火山からマグマゴーレムが消えた?しかも見た事もないゴーレムが現れただと?」
「い、いったいどういう事ですか?数百のマグマゴーレムが何処に消えたのですか?」
「分かりません……けど、火山の周辺を調べた限りではマグマゴーレムが他の地域に逃げた形跡は見つかりませんでした」
「そうですわね、となると隕石が落ちた時にマグマゴーレムが全滅したと考えるべきでしょうか……」
ナイの話を聞いたドリスは火口付近に生息したマグマゴーレムの大群は、隕石の落下時に消滅し、火口で起きた火柱はマグマゴーレムが全滅した際に起きた現象ではないかと推測する。
火柱の正体は隕石の落下の衝撃でマグマゴーレムの大群が爆発し、その影響で火属性の魔力が暴発して天に打ち上がった。だが、問題なのは隕石が落ちた後に火山が活動を停止した事だった。
「その火柱の原因がマグマゴーレムのせいだとしても、どうしてグツグ火山は活動が停止したんだ?隕石が落ちたら火山は止まるもんなのか?」
「そんな話は聞いた事もありませんわね……ですけど、隕石が落下した際に火山が何らかの影響を受けた可能性は大いにありますわ」
「そうですね……」
「う~ん……」
隕石が火山に落ちる事が前代未聞であり、王国の歴史でこれまでに起きた事は一度もない。だからこそドリスの仮説が一番可能性が高いが、ナイが気になったのは火山の火口付近の魔石が色を失っていた事に違和感を抱く。
「マグマゴーレムが全滅して火山が活動を停止した理由が隕石だったとしても……どうして火口付近の魔石は魔力を失ってたんでしょう」
「ん?どういう意味だ?」
「だって、おかしくないですか?マグマゴーレムが消えたのは隕石が落下して跡形もなく吹き飛んだとしても、魔石の場合は魔力だけが失われた原石が残ってたんですよ?もしもマグマゴーレムが隕石の落下で爆発したとしても、魔石だけが無事に残ってしかも魔力だけが抜けた状態で埋まっているなんてあり得ますか?」
「た、確かに……それはおかしいですよね?」
「言われてみれば……仮に火山の活動が停止したとしても、魔石から魔力が失われる原因の説明にはなっていませんわ」
ナイの指摘に他の者たちも同意し、火山が活動を停止したら火属性の魔石を作り出す機能が失われるだろうが、既に誕生していた火属性の魔石から魔力を失われる理由にはならない。つまり火山付近の魔石が魔力を失った原因は別にあると考えられる。
「坊主の話を聞く限りだと、その黒いゴーレムは魔力を奪う能力があるんだろう?なら、そいつが火口の魔石の魔力を奪ったんじゃないか?」
「でも、火口には数百の魔石があるんですよ?それを全部吸収するなんて……」
「単体とは限らないだろ。もしかしたら他にも同じ奴が居るんじゃないのか?」
「あ、なるほど……でも、火山を調べた時は一匹しか見かけませんでしたけど」
火山から帰還する前にナイは念のために他にゴーレムが存在しないのか調べたが、村で発見したゴーレム以外の個体は確認できなかった。しかし、ガオウの言う通りにナイが発見したゴーレムの他に別個体が居る可能性は十分にある。
恐らくはナイが倒した「漆黒のゴーレム」は、火山が隕石に落下した際に誕生した新種のゴーレムの可能性が高い。魔法を吸収する能力を持ち合わせ、奪い取った魔力は身体に埋まった黒水晶に蓄積できる特殊能力を所持していた。
「魔力を吸収……まるでナイさんの魔剣みたいですわね」
「えっ?」
「ナイさんの魔剣も魔法の力を吸収するのでしょう?そういえば今まで聞く機会はありませんでしたけど、ナイさんの旋斧はどのような素材で作られているのか気になりますわ」
「素材と言われても……詳しい話は聞いた事がないんです」
ナイはドリスの言葉に言われてみて確かに彼女の言う通りに旋斧の「魔力を喰らう能力」と、新種のゴーレムの「魔法攻撃を吸収する能力」は非常に似ている。
外部から受けた魔法攻撃を吸収できるという点は共通しており、ナイはゴーレムを倒した時に手に入れた「核」を思い出す。通常のゴーレムとは違い、新種のゴーレムの核は魔石の類ではなく、金属の塊に等しい。
「そういえばゴーレムを倒した時にこんな物を手に入れたんですけど……」
「何だそれ?石炭……いや、違うな」
「これは金属ですか?」
「鉄の塊に見えなくもないですが……」
回収したゴーレムの核をナイが見せると他の者たちは不思議そうに覗き込み、試しに触れてみるが特に何も反応しない。こちらの核はナイが強化術を発動させた状態で攻撃を仕掛けても傷一つ付かず、恐らくは魔法金属の類だと思われた。
「こんなの俺も見たことないな……爺さんなら何か分かるかもしれないな」
「爺さん?」
「ハマーン技師の事ですわね」
「確かにドワーフのハマーン殿なら何か分かるかも……ドワーフ?」
ガオウはハマーンに金属の塊を見せる様に提案するが、この時にフィルはある事を思い出し、他の者たちも顔を見合わせる――
――しばらく時間が経過すると、ナイ達の元にグツグ火山に暮らしていたドワーフ達が訪れる。彼等は自分達が呼び出された理由が分からずに混乱するが、ナイが回収した金属の塊を見せると驚いた表情を浮かべた。
「こ、こいつは……!?」
「何だこれは……ただの鉄の塊じゃねえな」
「むむむっ……これを何処で手に入れた!?」
「いや、その……」
金属の塊を見せた途端にドワーフ達は集まり、目を見開きながら覗き込む。ナイ達は彼等の反応を見てやはりただの金属ではないのかと思い、手に入るまでの経緯を話す。
「その塊はナイさんがグツグ火山で遭遇したゴーレムを倒して手に入れた物です」
「ゴーレム!?こいつはゴーレムの核なのか!?」
「しかし、あの火山にはマグマゴーレムしかいないはずだぞ!?マグマゴーレムの核は火属性の魔石のはずだ!!」
「いったいどんな奴だった?」
「えっと……全身が黒くて、それと黒色の水晶のような物が身体中に埋まっていました」
鍛冶師達にナイは説明しながら核とは別に回収した「黒水晶」を取り出す。それを見た瞬間、ドワーフの鍛冶師達はナイから奪い取るように黒水晶を取り上げて虫眼鏡で覗き込む。
「な、なんじゃこれは!?魔石のように見えるが、ただの闇属性の魔石ではなさそうだぞ!!」
「こんな物、見た事がない!!」
「むむむっ……これは時間を掛けて調べる必要があるな。貰っておくぞ!!」
「おい、こら!!勝手に持って行こうとするんじゃねえっ!!そいつは坊主の倒したゴーレムから手に入れた戦利品だぞ!!」
勝手に核と黒水晶を持って出て行こうとしたドワーフ達にガオウが先回りして注意すると、彼等は不満そうな表情を浮かべる。しかし、ドワーフの代表格の村長が前に出ると、彼はナイの装備を確認して腕を組む。
「ふむ……見た限り、随分と装備が汚れておるようだが手入れはちゃんとしておるのか?」
「え?あ、そういえば最近は急がしくて……」
「いかんぞ!!一流の戦士ならば常日頃から装備の手入れをせねばならん……という事で儂等がお主の装備を見直してやろうではないか。それでこの二つを調べる事を許してくれんか?」
「ええっ!?」
思いもよらぬ提案にナイは呆気に取られるが、ここに集まった鍛冶師達は元々はグツグ火山に暮らしていた優秀な鍛冶師揃いであり、彼等の手にかかればナイの装備の手入れは瞬く間に終わる。それどころか前よりも装備を強化してくれるという。
その後、色々と話し合った末にゴーレムから回収した核と黒水晶は、一時的に彼等に預ける事にした。今の段階ではナイ達が所持していても正体を調べる事はできず、次に飛行船が訪れる時に返却する事を条件にナイ達はドワーフ達に核と黒水晶を貸す事にした――
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