979 / 1,110
嵐の前の静けさ
第959話 王都
しおりを挟む
それから数日後、王都に飛行船が帰還すると造船所には聖女騎士団と兵士達が出迎え、その中にはナイを迎えに来たモモの姿もあった。だが、彼女は戻ってきた人間達からナイがゴノへ残った話を聞かされて衝撃を受ける。
「ええええっ!?ナイ君、帰ってこないの!?」
「すまない……色々とあってナイ君はゴノに残る事になったんだ」
「す、すいません……」
「いったい何があったんだい?土鯨は倒す事ができたんだろう?」
アルトとヒイロからナイが戻ってこない事を伝えられたモモは落胆するが、テンは任務は果たされたのにナイが戻らないのか気になり、詳しい事情を聞く。
テンもかつてはバートンと対峙した人間の一人であり、アルトは彼女にも話しておくべきだと判断した。そしてゴノの街を襲撃した魔物にバートンの「印」が刻まれていた事を伝えると彼女は酷く動揺した。
「鞭の紋様だって!?そんな馬鹿な……バートンは確かに死んだはずだよ!!」
「テン、落ち着きなさい。気持ちは分かりますが、間違いありません」
「エルマ……その紋様は本当にバートンが書き残した印だったのかい?」
テンと同じく王妃に仕えていたエルマもバートンの事はよく知っており、彼女もバートンを捕縛する際に同行していた。だからゴノの街を襲撃したトロールやロックゴーレムに刻まれた「鞭の紋様」がバートンの印と全く同じ物だと断言する。
「間違いありません、あの印はバートンが魔物を従えさせるために記していた契約紋です」
「そんな事、あり得るのかい?まさかバートンの奴に後継者でもいたのか?」
「そこまでは分からぬ。しかし、バートンと何かしらの縁がある人間の仕業なのは間違いないじゃろう」
「…………」
マホの言葉にテンは考え込み、聖女騎士団がバートンを捕まえた後は彼を尋問してこれまでの悪事を全て吐かせた。しかし、尋問の際にバートンが気になる事を言っていた。
「そういえばあいつ、捕まった後は黙り込んでいたけど……処刑される前に気になる事を言っていたね」
「気になる事?」
「あいつ、処刑前日にこんな事を言ってたんだよ。確か……私を殺しても、いや私を殺せば取り返しのつかない事になるぞ、とね」
王都にてバートンの処刑が実行される前、テンは彼の監視を行っていた時にバートンが残した言葉を思い出す。当時はただの負け惜しみだと思って特に気にかけもしなかったが、今となっては彼の言葉が気にかかった。
自分を殺せば取り返しのつかない事態に陥る、それだけを告げてバートンは処刑された。彼の言葉を知っているのは監視を行っていたテンと、彼女から報告を受けた王妃だけである。その王妃も死んでしまったため、テンだけがバートンの遺言を記憶していた事になる。
「私を殺せば取り返しのつかない事になる、か。他に何か言ってなかったのかい?」
「いいや、処刑が決まった日の前日に急に私にだけ話しかけてきたのさ。あたしがどういう意味なのか尋ねても、その後は気が狂ったように笑うだけで何も話さなかったよ」
「今となっては……ただの負け惜しみとは思えんな」
バートンの言葉を知ったマホ達は難しい表情を浮かべ、彼が何を言い残したかったのか気になった。しかし、既にバートンは処刑されている。王国では罪人の死体は即焼却されるため、死霊魔術師だろうとバートンを蘇らせる事はできない。
色々と謎を残して死んだバートンにテンは苛立ちを抱き、こんな事ならば処刑前に無理やりにでも言葉の意味を吐かせるべきだったかと考える。後悔しても今更遅く、重要なのはこれからの事だった。
「それでナイの奴はいつ戻ってくる予定なんだい?」
「少なくとも飛行船の点検が終わるまでは戻る事はできん。どうも今回の遠征で無理をし過ぎたようで、飛行船の整備に時間が掛かるとハマーン技師が言っておったぞ」
「えっ!?じゃあ、ナイ君にはすぐに会えないの!?」
「まあ、整備といっても一週間程度で終わるそうじゃ。整備が終了次第、迎えの船を出す。あの飛行船ならばすぐに迎えに行けるじゃろう」
「10日ぐらい経過すればナイ君も戻ってくるよ」
「10日か……はあっ、ヒナちゃんに無理を言って迎えに来たのにな~」
「な、なんかごめんね……」
10日後にはナイも一旦王都に戻ってくるという話を聞いてモモも落ち着くが、話を聞かされたテンは腕を組んだまま考え込み、どうにも嫌な予感が拭えなかった。
モモを先に帰した後、テンは聖女騎士団を集めて会議を行う。その中には魔導士のマホも含まれ、彼女はトロールとロックゴーレムの核に刻まれた紋様を書き写し、当時バートンを知っている女騎士達に確認を行う。
「儂が見た紋様はこの形をしておった」
「この紋様は……間違いない、あの時の!!」
「そんな馬鹿な……」
「むうっ……」
古参の団員であるアリシア、レイラ、ランファンは紋様を確認した途端に顔色を変え、この三人もバートンが魔物に書き残す契約紋の事を知っていた。
三人は直接的にバートンと接触した事はないが、彼が捕まった後に使役していた魔獣の死骸から契約紋を確認している。だからこそトロールとロックゴーレムに刻まれていた紋様がバートンが利用していた契約紋と同じ形をしている事に動揺する。
「あたしは魔物使いの事を良く知らないけど、魔物使いの連中は全員が同じ紋様の契約紋を刻んで魔物を使役するのか?」
「いや……それは有り得ない。魔物使いの契約紋は個人によって違うはずだ」
「しかし、バートンは間違いなく死んだ。万が一に奴が死霊使いに蘇らされたとしても、魔物使いの能力まで復活する事は有り得ん。そもそも死体の方も処分したからなのう……」
「いったいどういう事だい?あいつは間違いなく処刑された。まさかシン宰相があいつを密かに生かしてたとか……」
「それは有り得ん。シンにとってもバートンはこの国の害悪、殺す理由はあっても生かす理由はない」
シンはこの国を裏で支配していたが、決して悪人を許す程愚かな男ではない。彼はあくまでも王国にとって不利益な存在を消してきただけに過ぎず、バートンのような凶悪犯罪者を見逃す理由がない。
団員全員がマホの書き写した契約紋に視線を向けて俯き、新人の団員であるエリナは不思議そうに手を上げながら答えた。
「あの……ちょっといいですか?」
「エリナ?」
「実は私のおばあちゃんに聞いた事があるんですけど、確か魔物使いの契約紋は親子なら同じ契約紋になると聞いた事があります」
「何だと?」
エリナの言葉に驚いた表情を浮かべ、マホはこの時にエリナの「祖母」を思い出す。彼女の祖母はマホとも古い仲であり、彼女よりも年上で知識も豊富な人物だった。
「そういえばエリナ、お主の祖母はマリアだったな」
「マリア?」
「確かエルフの里の族長では……」
「はい、そうです。まあ、私の親は養子なんで血は繋がってないんですけど……」
エルフの里の族長であるマリアは実子は持たず、養子としてエリナの母親を引き取った。後に母親は結婚してエリナが生まれ、彼女はマリアの孫に当たる。
血は繋がっていないがマリアはエリナの事を両親以上に可愛がり、小さい頃から色々と教えてくれた。その中には魔物使いに関する知識も教え、彼女の話によれば親子同士ならば契約紋が全く同じに形になる事もあるという。
「魔物使いの間でも滅多にない事ですけど、実の親子が全く同じ契約紋を扱う事があるそうです」
「という事は……まさか、バートンの奴に子供がいたのかい!?」
「もしくはバートンの父親か母親が生きていたとも考えられるな」
「いや、それはあり得ぬ。バートンの両親は奴が子供の頃に殺されているはず……となると、子供の仕業か」
ここに来てバートンには子供がいた可能性が出てきた事にテン達は驚きを隠せないが、バートンが処刑される前日にテンは彼が告げた言葉を思い出す。
「まさか、あの言葉の意味は……」
「テン、どうかしたのか?」
「……こうしちゃいられない!!すぐに王城へ向かうよ!!」
「おい、テン!?急にどうした!?」
バートンの遺言、彼の契約紋を使う謎の魔物使い、そしてエリナの話を聞いてテンは全ての謎を解き明かす。バートンには隠し子が存在し、今回の一件はその子供の仕業で間違いない。
すぐに上の人間に報告へ向かおうとした時、彼女はここで何故か王妃の顔が浮かぶ。どうしてこの状況で王妃の顔が浮かんだのか分からずに彼女は立ち止まり、そんなテンを他の者は心配する。
「どうしたテン?」
「王城に行くんじゃないのか?」
「…………」
テンは他の者に声を掛けられても何も答えず、王妃と共にバートンを捕まえた日の事を思い出す。彼女はあの時にはっきりと聞いていた、バートンが王妃に氷漬けにされる直前に告げた言葉を――
『嫌だ、死にたくない……助けろっ!!早く助けるんだ!!』
まるで誰かに助けを求めるようにバートンは叫んでいた光景を思い出した。当時は混乱して敵も味方も分からずに助けを求めたのかと思ったが、もしもあの言葉が自分をや王妃や他の騎士ではなく、別の人間に告げた言葉だとすれば話は変わる。
バートンを捕まえた時、たった一人だけ聖女騎士団ではない人間が一人だけ居た。その少女はバートンが処刑されてからすぐに姿を消し去り、捜索が行われたが結局は見つかる事もなく行方不明のままだった。
「まさか……あの時の娘がっ!?」
「テン!?」
「どうしたんだ!?」
テンは今の今までどうして気付かなかったのかと狼狽し、そんな彼女に他の仲間達が心配そうに視線を向ける。しかし、当の本人は自分がとんでもない失敗をしてしまったのではないかと嘆く。
(あの娘がバートンの子供だとしたら……)
動揺のあまりにテンは身体の力が抜けてしまい、椅子に座り込んでしまう。そんな彼女を見て他の者たちは只事ではないと悟り、何が起きたのか彼女の口から明かされるのを待つ――
「ええええっ!?ナイ君、帰ってこないの!?」
「すまない……色々とあってナイ君はゴノに残る事になったんだ」
「す、すいません……」
「いったい何があったんだい?土鯨は倒す事ができたんだろう?」
アルトとヒイロからナイが戻ってこない事を伝えられたモモは落胆するが、テンは任務は果たされたのにナイが戻らないのか気になり、詳しい事情を聞く。
テンもかつてはバートンと対峙した人間の一人であり、アルトは彼女にも話しておくべきだと判断した。そしてゴノの街を襲撃した魔物にバートンの「印」が刻まれていた事を伝えると彼女は酷く動揺した。
「鞭の紋様だって!?そんな馬鹿な……バートンは確かに死んだはずだよ!!」
「テン、落ち着きなさい。気持ちは分かりますが、間違いありません」
「エルマ……その紋様は本当にバートンが書き残した印だったのかい?」
テンと同じく王妃に仕えていたエルマもバートンの事はよく知っており、彼女もバートンを捕縛する際に同行していた。だからゴノの街を襲撃したトロールやロックゴーレムに刻まれた「鞭の紋様」がバートンの印と全く同じ物だと断言する。
「間違いありません、あの印はバートンが魔物を従えさせるために記していた契約紋です」
「そんな事、あり得るのかい?まさかバートンの奴に後継者でもいたのか?」
「そこまでは分からぬ。しかし、バートンと何かしらの縁がある人間の仕業なのは間違いないじゃろう」
「…………」
マホの言葉にテンは考え込み、聖女騎士団がバートンを捕まえた後は彼を尋問してこれまでの悪事を全て吐かせた。しかし、尋問の際にバートンが気になる事を言っていた。
「そういえばあいつ、捕まった後は黙り込んでいたけど……処刑される前に気になる事を言っていたね」
「気になる事?」
「あいつ、処刑前日にこんな事を言ってたんだよ。確か……私を殺しても、いや私を殺せば取り返しのつかない事になるぞ、とね」
王都にてバートンの処刑が実行される前、テンは彼の監視を行っていた時にバートンが残した言葉を思い出す。当時はただの負け惜しみだと思って特に気にかけもしなかったが、今となっては彼の言葉が気にかかった。
自分を殺せば取り返しのつかない事態に陥る、それだけを告げてバートンは処刑された。彼の言葉を知っているのは監視を行っていたテンと、彼女から報告を受けた王妃だけである。その王妃も死んでしまったため、テンだけがバートンの遺言を記憶していた事になる。
「私を殺せば取り返しのつかない事になる、か。他に何か言ってなかったのかい?」
「いいや、処刑が決まった日の前日に急に私にだけ話しかけてきたのさ。あたしがどういう意味なのか尋ねても、その後は気が狂ったように笑うだけで何も話さなかったよ」
「今となっては……ただの負け惜しみとは思えんな」
バートンの言葉を知ったマホ達は難しい表情を浮かべ、彼が何を言い残したかったのか気になった。しかし、既にバートンは処刑されている。王国では罪人の死体は即焼却されるため、死霊魔術師だろうとバートンを蘇らせる事はできない。
色々と謎を残して死んだバートンにテンは苛立ちを抱き、こんな事ならば処刑前に無理やりにでも言葉の意味を吐かせるべきだったかと考える。後悔しても今更遅く、重要なのはこれからの事だった。
「それでナイの奴はいつ戻ってくる予定なんだい?」
「少なくとも飛行船の点検が終わるまでは戻る事はできん。どうも今回の遠征で無理をし過ぎたようで、飛行船の整備に時間が掛かるとハマーン技師が言っておったぞ」
「えっ!?じゃあ、ナイ君にはすぐに会えないの!?」
「まあ、整備といっても一週間程度で終わるそうじゃ。整備が終了次第、迎えの船を出す。あの飛行船ならばすぐに迎えに行けるじゃろう」
「10日ぐらい経過すればナイ君も戻ってくるよ」
「10日か……はあっ、ヒナちゃんに無理を言って迎えに来たのにな~」
「な、なんかごめんね……」
10日後にはナイも一旦王都に戻ってくるという話を聞いてモモも落ち着くが、話を聞かされたテンは腕を組んだまま考え込み、どうにも嫌な予感が拭えなかった。
モモを先に帰した後、テンは聖女騎士団を集めて会議を行う。その中には魔導士のマホも含まれ、彼女はトロールとロックゴーレムの核に刻まれた紋様を書き写し、当時バートンを知っている女騎士達に確認を行う。
「儂が見た紋様はこの形をしておった」
「この紋様は……間違いない、あの時の!!」
「そんな馬鹿な……」
「むうっ……」
古参の団員であるアリシア、レイラ、ランファンは紋様を確認した途端に顔色を変え、この三人もバートンが魔物に書き残す契約紋の事を知っていた。
三人は直接的にバートンと接触した事はないが、彼が捕まった後に使役していた魔獣の死骸から契約紋を確認している。だからこそトロールとロックゴーレムに刻まれていた紋様がバートンが利用していた契約紋と同じ形をしている事に動揺する。
「あたしは魔物使いの事を良く知らないけど、魔物使いの連中は全員が同じ紋様の契約紋を刻んで魔物を使役するのか?」
「いや……それは有り得ない。魔物使いの契約紋は個人によって違うはずだ」
「しかし、バートンは間違いなく死んだ。万が一に奴が死霊使いに蘇らされたとしても、魔物使いの能力まで復活する事は有り得ん。そもそも死体の方も処分したからなのう……」
「いったいどういう事だい?あいつは間違いなく処刑された。まさかシン宰相があいつを密かに生かしてたとか……」
「それは有り得ん。シンにとってもバートンはこの国の害悪、殺す理由はあっても生かす理由はない」
シンはこの国を裏で支配していたが、決して悪人を許す程愚かな男ではない。彼はあくまでも王国にとって不利益な存在を消してきただけに過ぎず、バートンのような凶悪犯罪者を見逃す理由がない。
団員全員がマホの書き写した契約紋に視線を向けて俯き、新人の団員であるエリナは不思議そうに手を上げながら答えた。
「あの……ちょっといいですか?」
「エリナ?」
「実は私のおばあちゃんに聞いた事があるんですけど、確か魔物使いの契約紋は親子なら同じ契約紋になると聞いた事があります」
「何だと?」
エリナの言葉に驚いた表情を浮かべ、マホはこの時にエリナの「祖母」を思い出す。彼女の祖母はマホとも古い仲であり、彼女よりも年上で知識も豊富な人物だった。
「そういえばエリナ、お主の祖母はマリアだったな」
「マリア?」
「確かエルフの里の族長では……」
「はい、そうです。まあ、私の親は養子なんで血は繋がってないんですけど……」
エルフの里の族長であるマリアは実子は持たず、養子としてエリナの母親を引き取った。後に母親は結婚してエリナが生まれ、彼女はマリアの孫に当たる。
血は繋がっていないがマリアはエリナの事を両親以上に可愛がり、小さい頃から色々と教えてくれた。その中には魔物使いに関する知識も教え、彼女の話によれば親子同士ならば契約紋が全く同じに形になる事もあるという。
「魔物使いの間でも滅多にない事ですけど、実の親子が全く同じ契約紋を扱う事があるそうです」
「という事は……まさか、バートンの奴に子供がいたのかい!?」
「もしくはバートンの父親か母親が生きていたとも考えられるな」
「いや、それはあり得ぬ。バートンの両親は奴が子供の頃に殺されているはず……となると、子供の仕業か」
ここに来てバートンには子供がいた可能性が出てきた事にテン達は驚きを隠せないが、バートンが処刑される前日にテンは彼が告げた言葉を思い出す。
「まさか、あの言葉の意味は……」
「テン、どうかしたのか?」
「……こうしちゃいられない!!すぐに王城へ向かうよ!!」
「おい、テン!?急にどうした!?」
バートンの遺言、彼の契約紋を使う謎の魔物使い、そしてエリナの話を聞いてテンは全ての謎を解き明かす。バートンには隠し子が存在し、今回の一件はその子供の仕業で間違いない。
すぐに上の人間に報告へ向かおうとした時、彼女はここで何故か王妃の顔が浮かぶ。どうしてこの状況で王妃の顔が浮かんだのか分からずに彼女は立ち止まり、そんなテンを他の者は心配する。
「どうしたテン?」
「王城に行くんじゃないのか?」
「…………」
テンは他の者に声を掛けられても何も答えず、王妃と共にバートンを捕まえた日の事を思い出す。彼女はあの時にはっきりと聞いていた、バートンが王妃に氷漬けにされる直前に告げた言葉を――
『嫌だ、死にたくない……助けろっ!!早く助けるんだ!!』
まるで誰かに助けを求めるようにバートンは叫んでいた光景を思い出した。当時は混乱して敵も味方も分からずに助けを求めたのかと思ったが、もしもあの言葉が自分をや王妃や他の騎士ではなく、別の人間に告げた言葉だとすれば話は変わる。
バートンを捕まえた時、たった一人だけ聖女騎士団ではない人間が一人だけ居た。その少女はバートンが処刑されてからすぐに姿を消し去り、捜索が行われたが結局は見つかる事もなく行方不明のままだった。
「まさか……あの時の娘がっ!?」
「テン!?」
「どうしたんだ!?」
テンは今の今までどうして気付かなかったのかと狼狽し、そんな彼女に他の仲間達が心配そうに視線を向ける。しかし、当の本人は自分がとんでもない失敗をしてしまったのではないかと嘆く。
(あの娘がバートンの子供だとしたら……)
動揺のあまりにテンは身体の力が抜けてしまい、椅子に座り込んでしまう。そんな彼女を見て他の者たちは只事ではないと悟り、何が起きたのか彼女の口から明かされるのを待つ――
0
お気に入りに追加
86
あなたにおすすめの小説

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?
歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。
それから数十年が経ち、気づけば38歳。
のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。
しかしーー
「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」
突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。
これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。
※書籍化のため更新をストップします。
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!
あるちゃいる
ファンタジー
山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。
気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。
不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。
どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。
その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。
『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。
が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。
そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。
そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。
⚠️超絶不定期更新⚠️

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる