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嵐の前の静けさ
第954話 狼煙
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――マホ達が商団の調査中、城壁にてロックゴーレムの集団が現れて襲撃を仕掛けてきた。現場に居合わせた兵士と冒険者が対処を行う間、城壁の上の兵士は狼煙を上げようとしていた。
「早く狼煙を上げろ!!魔導士様を呼び戻すんだ!!」
「わ、分かっている!!よし、火が付いたぞ!!」
トロールの集団に襲われた商団の調査へ向かう前、マホは万が一の場合が起きた時は狼煙を上げる様に警備兵に命令していた。緊急事態が起きた時は狼煙を上げて自分達に危険を知らせるように伝え、何名かの兵士はすぐに狼煙を上げようとした。
城壁の上から狼煙が上がり、これを確認すれば街から離れていたマホ達が戻ってくる。魔導士のマホは飛行魔法も習得しているため、それほど時間を掛けずに戻ると予想された。
「よし、煙が上がったぞ!!これで魔導士様も……」
「な、何だっ!?どうなってるんだ!?」
狼煙を上げる事に成功した兵士達は喜び掛けたが、この時に彼等は他の場所からも煙が上が定る事に気付く。東西南北の全ての城壁から狼煙が上がっており、それに気づいた兵士達は何が起きているのかと混乱する。
「ど、どうして狼煙が……」
「まさか、他の城壁でも何かあったのか!?」
「いったい何が起きてるんだ!?」
城壁の上の兵士達は何が起きているのか理解できず、彼等は唖然と見つめる事しかできなかった――
――その一方で狼煙を確認したマホはエルマとフィルと共に馬に乗って街へ向かっていた。飛行魔法を使えば一瞬で移動は行えるが、飛行魔法は魔力の消耗が激しいため、戦闘に備えてマホはできる限り魔力を温存させる。
「老師!!また煙が上がりました!!」
「うむ……」
「いったい何が起きてるんだ!?」
街から次々と上がる狼煙を確認してエルマとフィルは焦りの声を上げるが、マホは冷静に考える。街で緊急事態が起きている事は把握しているが、こんな時だからこそマホは冷静さを欠かない。
状況から考えて街が何者かの襲撃を受けているのは確かだが、狼煙の数が異常なまでに多い。東西南北の城壁から煙が上がっているのを確認すると、マホは一先ずはフィルとエルマに指示を与える。
「エルマ、お主は西側に回れ。フィルよ、お主は東側に回るのじゃ」
「分かりました!!」
「魔導士殿はどうされるのですか?」
「儂は飛行魔法で上空から様子を確認する。ここまで近づければ十分じゃ、北と南は儂に任せよ」
ある程度まで街に接近するとマホは無理を承知で杖を掲げ、風属性の魔力を肉体に纏わせて飛翔する。飛行魔法は魔力の消耗が激しいため、魔導士であるマホでも長時間の発動は肉体の負担が大きい。それでも馬のお陰で距離は縮めたため、彼女は覚悟を決めて飛行魔法を発動させた。
マホは街の状況を確認するため、上空から街の様子を観察する。彼女は上空から東西南北の城壁を確認すると、各城壁にロックゴーレムの集団が兵士と冒険者と交戦している事が判明した。
(ロックゴーレム?この街を襲っておるのはトロールではなかったのか?いや、今は気にしている場合ではないか)
前回に街を襲撃したのはトロールという報告を受けていた彼女は、ロックゴーレムが街を襲撃している事に疑問を抱くが、すぐに頭を切り替えて対処を行う。
(広域魔法で一掃させる事もできるが、それだと他の人間を巻き込んでしまう。そもそも時間が掛かり過ぎるし、儂の魔力も持たん……ならば東西の城壁はエルマとフィルに任せて北と南は儂が何とかするしかあるまい)
ロックゴーレムは東西南北の城壁に出現しており、最初にマホは南の城壁に向けて移動する。彼女は空から城壁の上に降り立つと、居合わせた兵士達は驚いた声を上げる。
「うわっ!?そ、空から女の子が!?」
「馬鹿、よく見ろ魔導士様だ!!女の子じゃないぞ!!」
「むっ、失礼な!!いや、今は構っている場合ではないか……」
兵士の言葉にマホはむっとした表情を浮かべるが、今は彼等に付き合っている暇はなく、城壁の上から地上の様子を伺う。
地上ではロックゴーレムの集団と兵士と冒険者達が交戦していたが、状況は圧倒的にロックゴーレム側が優勢だった。魔物退治に慣れているはずの冒険者達でさえもロックゴーレムには苦戦し、上手く立ち回れない。
「な、何なんだこいつら!?普通のロックゴーレムじゃないぞ!!」
「くそっ、こいつら変な動きをして……ぐはぁっ!?」
「嘘だろ、俺達は白銀級冒険者なんだぞ!?なんでロックゴーレム如きに……うわぁああっ!?」
「ゴオオオッ!!」
高階級の冒険者でさえもロックゴーレムの動きに付いてこれず、次々と打ち倒されていく。街を襲撃したロックゴーレムは野生種ならばあり得ない動きを行い、そのせいで魔物との戦闘慣れしている冒険者達さえも翻弄される。
「早く狼煙を上げろ!!魔導士様を呼び戻すんだ!!」
「わ、分かっている!!よし、火が付いたぞ!!」
トロールの集団に襲われた商団の調査へ向かう前、マホは万が一の場合が起きた時は狼煙を上げる様に警備兵に命令していた。緊急事態が起きた時は狼煙を上げて自分達に危険を知らせるように伝え、何名かの兵士はすぐに狼煙を上げようとした。
城壁の上から狼煙が上がり、これを確認すれば街から離れていたマホ達が戻ってくる。魔導士のマホは飛行魔法も習得しているため、それほど時間を掛けずに戻ると予想された。
「よし、煙が上がったぞ!!これで魔導士様も……」
「な、何だっ!?どうなってるんだ!?」
狼煙を上げる事に成功した兵士達は喜び掛けたが、この時に彼等は他の場所からも煙が上が定る事に気付く。東西南北の全ての城壁から狼煙が上がっており、それに気づいた兵士達は何が起きているのかと混乱する。
「ど、どうして狼煙が……」
「まさか、他の城壁でも何かあったのか!?」
「いったい何が起きてるんだ!?」
城壁の上の兵士達は何が起きているのか理解できず、彼等は唖然と見つめる事しかできなかった――
――その一方で狼煙を確認したマホはエルマとフィルと共に馬に乗って街へ向かっていた。飛行魔法を使えば一瞬で移動は行えるが、飛行魔法は魔力の消耗が激しいため、戦闘に備えてマホはできる限り魔力を温存させる。
「老師!!また煙が上がりました!!」
「うむ……」
「いったい何が起きてるんだ!?」
街から次々と上がる狼煙を確認してエルマとフィルは焦りの声を上げるが、マホは冷静に考える。街で緊急事態が起きている事は把握しているが、こんな時だからこそマホは冷静さを欠かない。
状況から考えて街が何者かの襲撃を受けているのは確かだが、狼煙の数が異常なまでに多い。東西南北の城壁から煙が上がっているのを確認すると、マホは一先ずはフィルとエルマに指示を与える。
「エルマ、お主は西側に回れ。フィルよ、お主は東側に回るのじゃ」
「分かりました!!」
「魔導士殿はどうされるのですか?」
「儂は飛行魔法で上空から様子を確認する。ここまで近づければ十分じゃ、北と南は儂に任せよ」
ある程度まで街に接近するとマホは無理を承知で杖を掲げ、風属性の魔力を肉体に纏わせて飛翔する。飛行魔法は魔力の消耗が激しいため、魔導士であるマホでも長時間の発動は肉体の負担が大きい。それでも馬のお陰で距離は縮めたため、彼女は覚悟を決めて飛行魔法を発動させた。
マホは街の状況を確認するため、上空から街の様子を観察する。彼女は上空から東西南北の城壁を確認すると、各城壁にロックゴーレムの集団が兵士と冒険者と交戦している事が判明した。
(ロックゴーレム?この街を襲っておるのはトロールではなかったのか?いや、今は気にしている場合ではないか)
前回に街を襲撃したのはトロールという報告を受けていた彼女は、ロックゴーレムが街を襲撃している事に疑問を抱くが、すぐに頭を切り替えて対処を行う。
(広域魔法で一掃させる事もできるが、それだと他の人間を巻き込んでしまう。そもそも時間が掛かり過ぎるし、儂の魔力も持たん……ならば東西の城壁はエルマとフィルに任せて北と南は儂が何とかするしかあるまい)
ロックゴーレムは東西南北の城壁に出現しており、最初にマホは南の城壁に向けて移動する。彼女は空から城壁の上に降り立つと、居合わせた兵士達は驚いた声を上げる。
「うわっ!?そ、空から女の子が!?」
「馬鹿、よく見ろ魔導士様だ!!女の子じゃないぞ!!」
「むっ、失礼な!!いや、今は構っている場合ではないか……」
兵士の言葉にマホはむっとした表情を浮かべるが、今は彼等に付き合っている暇はなく、城壁の上から地上の様子を伺う。
地上ではロックゴーレムの集団と兵士と冒険者達が交戦していたが、状況は圧倒的にロックゴーレム側が優勢だった。魔物退治に慣れているはずの冒険者達でさえもロックゴーレムには苦戦し、上手く立ち回れない。
「な、何なんだこいつら!?普通のロックゴーレムじゃないぞ!!」
「くそっ、こいつら変な動きをして……ぐはぁっ!?」
「嘘だろ、俺達は白銀級冒険者なんだぞ!?なんでロックゴーレム如きに……うわぁああっ!?」
「ゴオオオッ!!」
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