967 / 1,110
砂漠の脅威
第950話 自分にできる事を
しおりを挟む
リーナの蒼月は所有者から水属性の魔力を吸い上げ、氷を生み出す事ができる。切り付けた相手を氷結化させるだけではなく、氷その物を生み出して刃に纏う事もできた。
ナイの旋斧も魔石から水属性の魔力を吸収すれば切り付けた相手を凍らせる程度の事はできる。しかし、リーナのように氷その物を生み出す事はできない。それに氷結化させる速度も蒼月の方が上で有るため、そういう意味ではリーナの蒼月の方がナイの旋斧よりも優れている。
そして土鯨との戦闘で最も役立つのが蒼月の力であり、リーナはナイの役に立つために今まで以上に蒼月の力を引き出す。アチイ砂漠に暮らす人々を救うため、巨人国のために戦う理由もあるが、一番に彼女が戦う理由はナイの役に立つためである。
(お願い蒼月!!僕の想いに応えて!!)
蒼月を信じてリーナは土鯨の背中に対して刃を繰り出すと、蒼月の刃に纏う氷の刃物がより鋭利に尖り、魔法金属級の硬度を誇る土鯨の外殻に突き刺さる。突き刺した箇所から水属性の魔力が流れ込まれ、土鯨の背中が徐々に氷結化していく。
「オアアアアッ!?」
「くぅっ……まだまだっ!!」
激しく土鯨は暴れようとするが、リーナは気合を込めて蒼月を握りしめて氷結化を続行する。遂には土鯨の動作が鈍り始め、背中の広範囲が凍り付いてしまう。
魔力を殆ど使い切ったリーナは蒼月を引き抜くと、彼女は虚ろな瞳で立っている事もできずに倒れ、土鯨の背中から転がり落ちようとした時、ナイがリーナの身体を受け止める。
「リーナ!!」
「あ、ナイ君……えへへ、頑張ったよ」
「ああ……よく頑張ったね」
ナイが自分を抱き留めてくれた事にリーナは嬉しく思い、そんな彼女をナイは地上に着地すると他の者に託す。
「ミイナ、リーナを頼んだよ」
「分かった」
「ナイ君……あともう少しだよ、頑張ってね」
「ああ、分かってる……ドリスさん、ヒイロ!!」
「は、はい!?」
「どうかしましたか!?」
リーナのお陰で芽生えた勝機を逃さず、ナイは土鯨の外殻を完全に破壊するためにドリスとヒイロを呼ぶ。いきなり呼ばれた二人は戸惑うが、そんな二人に対してナイは旋斧を剥ける。
「二人とも俺の旋斧に火属性の魔法剣を!!」
「えっ!?それはどういう意味ですか!?」
「まさか……」
「俺を信じて……二人の力も必要なんです」
ドリスとヒイロはナイの言葉に驚くが、すぐに彼の意図を察したのか二人は左右に分かれてナイが繰り出した旋斧に武器を構える。このままナイが土鯨の背中に移動して火属性の魔法剣を発動させて攻撃したとしても威力不足であり、それならば火力を限界まで上昇させる必要があった。
旋斧は「魔力を喰らう魔剣」であり、あらゆる魔力を吸収する事ができる。しかし、聖属性の魔力以外を吸収し過ぎると外部に発散しない限りは魔力がいつまでも刀身に蓄積される。それを利用してナイはドリスとヒイロの魔法剣の力を吸収し、火属性の魔法剣の力を上げようと考えた。
「爆槍!!」
「烈火斬!!」
「くぅっ……!!」
二人の魔剣と魔槍が刃に的中するとナイは力を込めて踏ん張り、やがて二人の武器に纏っていた火属性の魔力が旋斧に吸収される。限界まで魔力を吸収すると、土鯨に最大の一撃を繰り出すために今度はリンに頼む。
「リンさん、風の斬撃で僕を上に飛ばせますか!?」
「何!?」
「ミイナも手伝って!!俺を上まで投げ飛ばして!!」
「……分かった」
リンはナイの言葉に驚愕するが、ミイナはすぐに抱えていたリーナをヒイロに預けると、後ろからナイに抱きついて投げる準備を行う。リンの方は戸惑いの表情を浮かべるが、ナイの覚悟を感じ取って彼女も魔剣を抜く。
「ミイナ、投げて!!」
「てりゃあっ」
「上手く風に乗れ!!はああっ!!」
気の抜ける掛け声ではあるがミイナはナイを上空へ投げ飛ばすと、リンは威力を調整した風の斬撃を繰り出してナイの身体を風の力で浮上させる。
ミイナの怪力とリンの風の力でナイは土鯨の上空へと移動すると、旋斧を構えた状態で落下する。この時にナイは火属性の魔石から全ての魔力を引き出し、旋斧に送り込んで最大の一撃を喰らわせようとした。
(あの時のように……!!)
イチノに出現したゴブリンキングとの戦闘を思い出したナイは旋斧の力を信じて攻撃を繰り出すと、この時に旋斧の刀身から炎が放出され、まるで「火竜」のような姿へと変貌する。かつてゴブリンキングを倒した時と同様に炎の竜を纏ったナイは土鯨の背中に全身全霊の一撃を繰り出す。
「終わりだぁああああっ!!」
「ッ―――――!?」
土鯨の背中に強烈な一撃が繰り出され、火柱が誕生する程の一撃だった。そしてこの一撃で土鯨の全身の外殻に罅割れが広がり、遂に外殻を完全破壊する事に成功した。
リーナの頑張りとナイの渾身の一撃によって遂に土鯨の全身を覆い込む外殻は崩壊し、外殻に突き刺さっていた銛も全て抜けてしまう。そして外殻が破壊された直後に土鯨の本体が姿を晒すが、その姿を見た者は唖然とした。土鯨の中身は白色に光り輝く鯨だった。
ウオオオオオオッ――!!
全身が白く輝く土鯨は咆哮を放ち、全身を拘束していた銛が抜けた事で自由を得た土鯨は動き出す。土鯨は地中に逃げるのを止め、空高く浮き上がった。まるで鯨というよりはシャチやイルカのように浮き上がる姿に誰もが眼を奪われる。
「と、跳んだ!?」
「あの巨体で……」
「おい、まずいぞ!!あいつが向かう先には軍船が……!!」
跳ね上がった土鯨の姿を見て固まっていた者達が土鯨の進行方向の先に巨人国軍の軍船が待機している事を知り、このままでは土鯨と軍船が衝突してしまう。しかも進行方向の先に存在する軍船にはテランとバッシュが乗っている船だと判明し、慌てて他の者たちは後を追う。
「やばい、大将軍と王子が乗っている船だぞ!!」
「止めないと!!」
「と、止めろと言われても……どうやって!?」
地上の者達は慌てて土鯨を止めようと追いかけるが、砂船でも逃げ切れない程の移動速度を誇る土鯨に追いつけるはずもなく、土鯨はテランとバッシュが乗り込んだ軍船に迫る。
このままでは軍船に土鯨が衝突して乗組員が全滅してしまい、それを止めるためにリンやミイナが各々の魔剣を仕掛けようとしたが、その前に土鯨の上空に大きな影が差した。
『私達の事を忘れてませんか!?』
『こっちじゃ、化物がっ!!』
上空から大声量でイリアとハマーンの声が響き渡り、その声を聞いて驚いた誰もが空を見上げると、そこには飛行船スカイシャーク号の姿があった。最初の土鯨に攻撃された時に退避したと思われた飛行船だったが、また戻ってきて土鯨に向けて魔導大砲の砲口を構える。
当初の作戦では土鯨の外殻を破壊するために魔導大砲も使用される予定だったが、もう既に土鯨の外殻は存在せず、今ならば直接に魔導大砲で攻撃を与える事ができた。イリアは照準を定めると、改良した魔導大砲を発射させる。
『魔導大砲、砲撃《ファイア》!!』
『放てっ!!』
スカイシャーク号の口元の部分から砲台が出現すると、咆哮から赤色の光が発生した。まるで火竜の吐息の如く凄まじい「炎弾」が発射された。土鯨に向けて放たれた炎弾は見事に土鯨の正面に衝突すると、凄まじい爆発を引き起こして土鯨の肉体は爆炎に飲み込まれる。
オァアアアアアアッ――!?
砂漠中に土鯨の悲鳴が響き渡り、その声を聞いたナイ達はあまりの声量に耳を塞ぐ。やがて爆炎が消えると土鯨は全身から煙を吹き出し、動きを停止していた。
魔導大砲の一撃で事切れたのかと思われたが、しばらくの間は硬直していた土鯨だったが再び目を見開くと、再び軍船に向けて移動を開始する。
「ウオオオオッ……!!」
「なっ!?まだ動けるのか!?」
「化物め……不死身か!?」
再び移動を再開した土鯨に対してリンとガオウは驚愕し、慌てて後を追いかける。先の魔導大砲の一撃で土鯨の移動速度は落ちており、これならば軍船に辿り着くまでに追いつける。
『おい、まだ生きてるぞ!!早く次のを撃たんか!?』
『無茶言わないでください、魔導大砲は一発撃ったらしばらくは冷まさないと撃てないんです!!』
飛行船から慌てた様子のハマーンとイリアの声が響き渡り、二人のやり取りを聞いていた者達はもう飛行船からの援護は期待できない事を知って土鯨を止めに向かう。
「船を守れ!!」
『うおおおおおっ!!』
「こちらも負けていられませんわ!!バッシュ王子を救いますわよ!!」
『おおおおおっ!!』
瀕死の土鯨に向けて討伐隊と巨人国の兵士が迫り、それぞれの主君を守るために彼等は全力で戦う。しかし、死にかけの獣ほど厄介な生物は存在せず、土鯨は最後の力を振り絞って身体を跳ね上げた。
「オァアアアアッ!!」
「なっ!?」
「ま、また跳びやがった!?」
「そんな馬鹿なっ!?」
土鯨は跳び上がる姿を見て地上の者達は見上げる事しかできず、空高く舞い上がった土鯨は自分に攻撃を仕掛けた飛行船に突っ込もうとした。
せめて死ぬ前に飛行船を道連れにしようとした行動だろうが、土鯨にとって不運なのは土鯨の尻尾にしがみついた人間が存在した。それは誰よりも早くに追いついたナイであり、彼は空中にて土鯨の尻尾を切り裂く。
「うおおおおっ!!」
「オアッ……!?」
岩砕剣を振りかざしたナイは刀身に地属性の魔力を送り込み、限界以上に重量を増加させる。その結果、尻尾に予想外の重みが加わった事で土鯨は飛行船には届かず、地上へと落下していく。
「これで……終われぇええええっ!!」
「オアアアアアアッ!?」
土鯨が地上に墜落した途端に大量の砂煙が舞い上がり、瀕死の状態だった土鯨は強烈な衝撃を受けて今度こそ意識が飛んだ。
ナイの旋斧も魔石から水属性の魔力を吸収すれば切り付けた相手を凍らせる程度の事はできる。しかし、リーナのように氷その物を生み出す事はできない。それに氷結化させる速度も蒼月の方が上で有るため、そういう意味ではリーナの蒼月の方がナイの旋斧よりも優れている。
そして土鯨との戦闘で最も役立つのが蒼月の力であり、リーナはナイの役に立つために今まで以上に蒼月の力を引き出す。アチイ砂漠に暮らす人々を救うため、巨人国のために戦う理由もあるが、一番に彼女が戦う理由はナイの役に立つためである。
(お願い蒼月!!僕の想いに応えて!!)
蒼月を信じてリーナは土鯨の背中に対して刃を繰り出すと、蒼月の刃に纏う氷の刃物がより鋭利に尖り、魔法金属級の硬度を誇る土鯨の外殻に突き刺さる。突き刺した箇所から水属性の魔力が流れ込まれ、土鯨の背中が徐々に氷結化していく。
「オアアアアッ!?」
「くぅっ……まだまだっ!!」
激しく土鯨は暴れようとするが、リーナは気合を込めて蒼月を握りしめて氷結化を続行する。遂には土鯨の動作が鈍り始め、背中の広範囲が凍り付いてしまう。
魔力を殆ど使い切ったリーナは蒼月を引き抜くと、彼女は虚ろな瞳で立っている事もできずに倒れ、土鯨の背中から転がり落ちようとした時、ナイがリーナの身体を受け止める。
「リーナ!!」
「あ、ナイ君……えへへ、頑張ったよ」
「ああ……よく頑張ったね」
ナイが自分を抱き留めてくれた事にリーナは嬉しく思い、そんな彼女をナイは地上に着地すると他の者に託す。
「ミイナ、リーナを頼んだよ」
「分かった」
「ナイ君……あともう少しだよ、頑張ってね」
「ああ、分かってる……ドリスさん、ヒイロ!!」
「は、はい!?」
「どうかしましたか!?」
リーナのお陰で芽生えた勝機を逃さず、ナイは土鯨の外殻を完全に破壊するためにドリスとヒイロを呼ぶ。いきなり呼ばれた二人は戸惑うが、そんな二人に対してナイは旋斧を剥ける。
「二人とも俺の旋斧に火属性の魔法剣を!!」
「えっ!?それはどういう意味ですか!?」
「まさか……」
「俺を信じて……二人の力も必要なんです」
ドリスとヒイロはナイの言葉に驚くが、すぐに彼の意図を察したのか二人は左右に分かれてナイが繰り出した旋斧に武器を構える。このままナイが土鯨の背中に移動して火属性の魔法剣を発動させて攻撃したとしても威力不足であり、それならば火力を限界まで上昇させる必要があった。
旋斧は「魔力を喰らう魔剣」であり、あらゆる魔力を吸収する事ができる。しかし、聖属性の魔力以外を吸収し過ぎると外部に発散しない限りは魔力がいつまでも刀身に蓄積される。それを利用してナイはドリスとヒイロの魔法剣の力を吸収し、火属性の魔法剣の力を上げようと考えた。
「爆槍!!」
「烈火斬!!」
「くぅっ……!!」
二人の魔剣と魔槍が刃に的中するとナイは力を込めて踏ん張り、やがて二人の武器に纏っていた火属性の魔力が旋斧に吸収される。限界まで魔力を吸収すると、土鯨に最大の一撃を繰り出すために今度はリンに頼む。
「リンさん、風の斬撃で僕を上に飛ばせますか!?」
「何!?」
「ミイナも手伝って!!俺を上まで投げ飛ばして!!」
「……分かった」
リンはナイの言葉に驚愕するが、ミイナはすぐに抱えていたリーナをヒイロに預けると、後ろからナイに抱きついて投げる準備を行う。リンの方は戸惑いの表情を浮かべるが、ナイの覚悟を感じ取って彼女も魔剣を抜く。
「ミイナ、投げて!!」
「てりゃあっ」
「上手く風に乗れ!!はああっ!!」
気の抜ける掛け声ではあるがミイナはナイを上空へ投げ飛ばすと、リンは威力を調整した風の斬撃を繰り出してナイの身体を風の力で浮上させる。
ミイナの怪力とリンの風の力でナイは土鯨の上空へと移動すると、旋斧を構えた状態で落下する。この時にナイは火属性の魔石から全ての魔力を引き出し、旋斧に送り込んで最大の一撃を喰らわせようとした。
(あの時のように……!!)
イチノに出現したゴブリンキングとの戦闘を思い出したナイは旋斧の力を信じて攻撃を繰り出すと、この時に旋斧の刀身から炎が放出され、まるで「火竜」のような姿へと変貌する。かつてゴブリンキングを倒した時と同様に炎の竜を纏ったナイは土鯨の背中に全身全霊の一撃を繰り出す。
「終わりだぁああああっ!!」
「ッ―――――!?」
土鯨の背中に強烈な一撃が繰り出され、火柱が誕生する程の一撃だった。そしてこの一撃で土鯨の全身の外殻に罅割れが広がり、遂に外殻を完全破壊する事に成功した。
リーナの頑張りとナイの渾身の一撃によって遂に土鯨の全身を覆い込む外殻は崩壊し、外殻に突き刺さっていた銛も全て抜けてしまう。そして外殻が破壊された直後に土鯨の本体が姿を晒すが、その姿を見た者は唖然とした。土鯨の中身は白色に光り輝く鯨だった。
ウオオオオオオッ――!!
全身が白く輝く土鯨は咆哮を放ち、全身を拘束していた銛が抜けた事で自由を得た土鯨は動き出す。土鯨は地中に逃げるのを止め、空高く浮き上がった。まるで鯨というよりはシャチやイルカのように浮き上がる姿に誰もが眼を奪われる。
「と、跳んだ!?」
「あの巨体で……」
「おい、まずいぞ!!あいつが向かう先には軍船が……!!」
跳ね上がった土鯨の姿を見て固まっていた者達が土鯨の進行方向の先に巨人国軍の軍船が待機している事を知り、このままでは土鯨と軍船が衝突してしまう。しかも進行方向の先に存在する軍船にはテランとバッシュが乗っている船だと判明し、慌てて他の者たちは後を追う。
「やばい、大将軍と王子が乗っている船だぞ!!」
「止めないと!!」
「と、止めろと言われても……どうやって!?」
地上の者達は慌てて土鯨を止めようと追いかけるが、砂船でも逃げ切れない程の移動速度を誇る土鯨に追いつけるはずもなく、土鯨はテランとバッシュが乗り込んだ軍船に迫る。
このままでは軍船に土鯨が衝突して乗組員が全滅してしまい、それを止めるためにリンやミイナが各々の魔剣を仕掛けようとしたが、その前に土鯨の上空に大きな影が差した。
『私達の事を忘れてませんか!?』
『こっちじゃ、化物がっ!!』
上空から大声量でイリアとハマーンの声が響き渡り、その声を聞いて驚いた誰もが空を見上げると、そこには飛行船スカイシャーク号の姿があった。最初の土鯨に攻撃された時に退避したと思われた飛行船だったが、また戻ってきて土鯨に向けて魔導大砲の砲口を構える。
当初の作戦では土鯨の外殻を破壊するために魔導大砲も使用される予定だったが、もう既に土鯨の外殻は存在せず、今ならば直接に魔導大砲で攻撃を与える事ができた。イリアは照準を定めると、改良した魔導大砲を発射させる。
『魔導大砲、砲撃《ファイア》!!』
『放てっ!!』
スカイシャーク号の口元の部分から砲台が出現すると、咆哮から赤色の光が発生した。まるで火竜の吐息の如く凄まじい「炎弾」が発射された。土鯨に向けて放たれた炎弾は見事に土鯨の正面に衝突すると、凄まじい爆発を引き起こして土鯨の肉体は爆炎に飲み込まれる。
オァアアアアアアッ――!?
砂漠中に土鯨の悲鳴が響き渡り、その声を聞いたナイ達はあまりの声量に耳を塞ぐ。やがて爆炎が消えると土鯨は全身から煙を吹き出し、動きを停止していた。
魔導大砲の一撃で事切れたのかと思われたが、しばらくの間は硬直していた土鯨だったが再び目を見開くと、再び軍船に向けて移動を開始する。
「ウオオオオッ……!!」
「なっ!?まだ動けるのか!?」
「化物め……不死身か!?」
再び移動を再開した土鯨に対してリンとガオウは驚愕し、慌てて後を追いかける。先の魔導大砲の一撃で土鯨の移動速度は落ちており、これならば軍船に辿り着くまでに追いつける。
『おい、まだ生きてるぞ!!早く次のを撃たんか!?』
『無茶言わないでください、魔導大砲は一発撃ったらしばらくは冷まさないと撃てないんです!!』
飛行船から慌てた様子のハマーンとイリアの声が響き渡り、二人のやり取りを聞いていた者達はもう飛行船からの援護は期待できない事を知って土鯨を止めに向かう。
「船を守れ!!」
『うおおおおおっ!!』
「こちらも負けていられませんわ!!バッシュ王子を救いますわよ!!」
『おおおおおっ!!』
瀕死の土鯨に向けて討伐隊と巨人国の兵士が迫り、それぞれの主君を守るために彼等は全力で戦う。しかし、死にかけの獣ほど厄介な生物は存在せず、土鯨は最後の力を振り絞って身体を跳ね上げた。
「オァアアアアッ!!」
「なっ!?」
「ま、また跳びやがった!?」
「そんな馬鹿なっ!?」
土鯨は跳び上がる姿を見て地上の者達は見上げる事しかできず、空高く舞い上がった土鯨は自分に攻撃を仕掛けた飛行船に突っ込もうとした。
せめて死ぬ前に飛行船を道連れにしようとした行動だろうが、土鯨にとって不運なのは土鯨の尻尾にしがみついた人間が存在した。それは誰よりも早くに追いついたナイであり、彼は空中にて土鯨の尻尾を切り裂く。
「うおおおおっ!!」
「オアッ……!?」
岩砕剣を振りかざしたナイは刀身に地属性の魔力を送り込み、限界以上に重量を増加させる。その結果、尻尾に予想外の重みが加わった事で土鯨は飛行船には届かず、地上へと落下していく。
「これで……終われぇええええっ!!」
「オアアアアアアッ!?」
土鯨が地上に墜落した途端に大量の砂煙が舞い上がり、瀕死の状態だった土鯨は強烈な衝撃を受けて今度こそ意識が飛んだ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
45
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる