951 / 1,110
砂漠の脅威
第934話 イリアの過去?
しおりを挟む
ナイ達を見失った巨大ゴーレムは火口へ戻ると、その様子を岩陰で見ていたナイ達は安堵する。どうやら獲物を見失った事で巨大ゴーレムは諦めたらしく、今の内ならば逃げ切れるだろう。
「ふうっ……死ぬかと思った」
「私も本当に今回ばかりは駄目かと思いましたよ。でも、どうして見逃したんでしょうね」
「あの巨大ゴーレムが僕達を襲ってきたのは火属性の魔石を奪ったと勘違いしてたからだと思います」
ナイは火口にて自分が火属性の魔石を掘り起こそうとした時、巨大ゴーレムが現れて襲い掛かってきた事を話す。その話を聞いたイリアは巨大ゴーレムが自分達を狙った理由を知ってため息を吐き出す。
「なるほど……つまり、さっきの巨大ゴーレムは自分の餌を奪おうとした私達を敵と認識して襲い掛かって来たんですね」
「多分、鍛冶師さん達を襲ったマグマゴーレムも火属性の魔石を掘り起こそうとしたから襲われたんじゃないかな?」
「そう考えると納得できますね」
火山を訪れた鍛冶師達がマグマゴーレムに襲われたのは彼等が採掘しようとした火属性の魔石が原因であり、マグマゴーレムからすれば自分達の餌でもある火属性の魔石を奪いに来た人間を許せずに襲い掛かってきたと考えるべきだろう。
これまでドワーフ達がマグマゴーレムに襲われなかった原因は火口付近には近づかなかったからであり、火口に生息しているマグマゴーレムは火口に一番良質な火属性の魔石を捕食していたからこそ鍛冶師達は襲われる事はなかった。
だが、この世界全体で魔物の数が増え続けており、このグツグ火山に生息するマグマゴーレムも数を急速に増えてきた。その影響で火口付近に採取できる魔石は全てなくなってしまい、餌が不足したマグマゴーレムは今度は火口付近ではなく、火山の中腹にも赴いて餌となる火属性の魔石を探し始めた。
ドワーフ達は運悪くマグマゴーレムに見つかってしまい、自分達の餌となる火属性の魔石を奪おうとする相手を見てマグマゴーレムは襲い掛かってきた。それが今回の事件の全貌である。
「あんな化物がいる以上はこの火山でこれ以上に火属性の魔石の採掘は難しいですね……残念ですけど、グツグ火山の住民には注意しておきましょう」
「流石にあんな化物がいたらこの火山では暮らせませんよね」
「そうでもないですよ?要は定期的にマグマゴーレムを倒して数を減らせばいいだけです。ですけど、あれだけ巨大なマグマゴーレムとなると合体前のマグマゴーレムの数も相当な数ですね……」
マグマゴーレムの大量発生が今回の事件の要因であり、マグマゴーレムの数が減ればグツグ火山で誕生する火属性の魔石の原石を独占される事はなく、今まで通りにドワーフ達も生活ができる。
だが、ドワーフ達が今まで通りの生活を取り戻すにはナイ達が遭遇した巨大ゴーレムを何とかせねばならず、あれほどの化物を倒す手段をドワーフ達が持ち合わせているとは思えない。流石にあれほどの大物を仕留めるのは冒険者でも不可能だと思われた。
「あの巨大ゴーレム、間違いなく竜種級にやばい奴でしたね」
「今回は運よく生き残れたけど……また現れたら今度は殺されるかもしれないな」
「シャアアッ……」
早く逃げようとばかりにリザードマンが二人の服を咥えて引っ張り、原因を突き止めた以上は長居は不要と判断してナイ達は山を下りる事にした――
――巨大ゴーレムが現れた事に関してはナイ達はドワーフ達に報告を行い、最初に話を聞かされた時は到底信じられなかったが、マグマゴーレムに襲われたドワーフの中に巨大ゴーレムを目撃した人物も居た。
「じ、実は俺……皆に内緒で火口でも魔石を掘り起こしていたんだ。あそこなら一番質のいい魔石が採れるからな。だけど、最近は何故か火口付近の魔石が見かけなくなったんだ」
「何だと!?お前、そんな事をしていたのか!!」
「あれほど火口には近づくなと言っただろう!!」
「す、すまねえ……でも、俺だって生活のために仕方なかったんだよ。けど、実は前に火口の近くでとんでもない大きさのマグマゴーレムを見かけたんだ。あの時は怖くなって逃げ帰ったけど、冷静に考えたらあんな大きさのマグマゴーレムがいるはずがねえ……だから夢か幻を見たと思ってたんだ」
「……でも、実際にはその巨大なマグマゴーレムは実在していたというわけですか」
ドワーフの中には巨大ゴーレムを確認した者もいたが、あまりに現実離れした巨大なマグマゴーレムの姿に発見した者は頭が理解できず、恐怖のあまりにただの幻だと思い込んでいたらしい。
しかし、現にグツグ火山の火口にはマグマゴーレムの大群が合体してキングゴーレム級の大きさを誇る巨大ゴーレムが実在するのは確かだった。今の段階ではこの巨大ゴーレムが火口から離れる様子はないが、このまま火山の魔石が喰いつくされればグツグ火山の麓に存在するドワーフの里も危険に晒される。
「そ、そんな化物が俺達の火山に住み着いているなんて……な、なあ!!あんた達でそいつをどうにかできないのか?」
「不可能ですよ。第一に私達はアチイ砂漠に向かわないといけないんです、この場所に留まる時間もそう残されていません」
「そんな!!あんたら、それでも国を守る騎士かよ!?」
「都合の良い時だけ助けてもらえるなんて思わないでください。貴方達は昨日、バッシュ王子に対して何て言ったのか忘れましたか?」
「そ、それは……」
イリアの言葉にドワーフ達は罰が悪い表情を浮かべ、彼等はこの国に暮らす民ではあるが王国に忠誠を誓っているわけではない。現に王族であるバッシュが火属性の魔石を求めた時も相応の対価を彼等は求めた。
危険が迫った時にこの国の民衆として守ってもらい、それ以外の時は王族相手であろうと対価がなければ要求は受け付けないというのはあまりにも都合がいい話だった。イリアも王族に仕える身として彼等に注意する。
「勘違いしないでくださいよ、私達は人助けのためにここへ訪れたんじゃありません。ここへ立ち寄ったのは魔石を買い取るために来ただけです。命を賭けて貴方達を助ける理由もありません」
「こ、この人でなしがっ!!」
「その人でなしに治療してもらったのは誰ですか?私達がいなければここにいる怪我人は全員が死んでたんですよ」
「うっ……」
「イリアさん、それ以上は……」
ドワーフ達はイリアの言葉に言い返す事はできず、グツグ火山で起きた問題は火山を管理する彼等が解決しなければならない。それに今回の騒動に関してはドワーフ達にも問題はある。
巨大ゴーレムやマグマゴーレムが火山の魔石を独占した理由は、ドワーフ達が日頃から魔石を採掘して火山内の魔石が減少していたのも原因の一員である。つまり、今回の事態はドワーフ達にも責任があり、その事を自覚していない彼等にイリアは言い放つ。
「今回の騒動の原因は貴方達がこの火山を独占して魔石を採掘し続けてきたのも理由の一つです。命が惜しいのであれば火山を捨てて何処か別の場所に暮らしてください」
「そ、そんな事を言われても……」
「俺達はここで生まれ育ったんだぞ!?他に生き場所なんて……」
「生まれ故郷を失うなんて事は今の時代では珍しくもありません……ここにいる私もナイさんも故郷を失っています」
「えっ?」
生まれた時から火山で暮らしてきたドワーフ達達にとってはイリアの言葉を納得できるはずがないが、彼女は自分の故郷も失われた事を話す。そんなイリアの過去があるのはナイも初耳であり、彼女も自分と同じように故郷を失った人間とは知らなかった。
イリアの過去は前に聞いた事はあるが、どうやらイリアの故郷は現在はもうなくなっているらしく、その理由はナイと同じように魔物に滅ぼされたからだと語る。
「私の暮らしていた街はもう跡形もなく滅びました。魔物に滅ぼされたんですよ、もう戻っても誰も住んでいません。ですけど、これは別に珍しい事でも何でもないんです。この王国だけでも数年間でどれだけの村や街が魔物の被害でなくなったのか知っていますか?」
「そ、そんな事を言われても……」
「貴方達はまだ生きています、でもこの村に残り続ければいずれは死んでしまうでしょう。決めるのは貴方達です、この村から逃げるというのであれば近くの街まで飛行船に乗せてあげてもいいですよ。私の方から王子に話は通しておきます」
「ま、待ってくれ!!」
「待ちません、これ以上に貴方達と話す暇はありませんから……自分達の問題は自分達で解決して下さい」
「「「…………」」」
ドワーフ達は立ち去るイリアとその後ろに続くナイに声を掛ける事はできず、彼等はどうするべきかお互いの顔を見るが、すぐに答えなど思いつくはずがなかった――
――帰り道の途中、ナイはリザードマンに乗り込んで黙っているイリアに何と話しかければいいのか分からなかった。ナイはイリアの故郷が滅んでいるなど知らず、どんな声を掛けようかと悩んでいると、唐突にイリアが振り返って話しかける。
「ナイさん、さっきの話は忘れてください」
「えっ……それって、故郷の事?」
「そうです」
ナイはイリアの方から故郷の話題を出した事に驚き、やはり彼女も失った故郷の事を思い出すのは辛いのかと考えたが、ここで衝撃の一言を告げる。
「だって私の故郷は滅んでませんから」
「えっ」
「あんなのその場しのぎの嘘ですよ、嘘!!」
「ええっ!?」
思いがけないイリアの言葉にナイは驚愕し、そんな彼に対してイリアは悪びれもせずに嘘を吐いた理由を話す。
「あの人たちの態度を見ているとこっちもイライラして、つい口からでまかせをいっちゃったんですよ。最後のあの人たちの顔を見ました?私はすっきりしましたね」
「な、なんでそんな嘘を……」
「まあ、いいじゃないですか。大切なのはあの人たちに危機感を与える事です。あれでもまだ反省しないようなら本当に知った事じゃありませんよ」
悪びれもせずにイリアは笑いながら飛行船へと向かい、そんな彼女の言葉にナイは増々イリアという人物の事が良く分からなくなった――
「ふうっ……死ぬかと思った」
「私も本当に今回ばかりは駄目かと思いましたよ。でも、どうして見逃したんでしょうね」
「あの巨大ゴーレムが僕達を襲ってきたのは火属性の魔石を奪ったと勘違いしてたからだと思います」
ナイは火口にて自分が火属性の魔石を掘り起こそうとした時、巨大ゴーレムが現れて襲い掛かってきた事を話す。その話を聞いたイリアは巨大ゴーレムが自分達を狙った理由を知ってため息を吐き出す。
「なるほど……つまり、さっきの巨大ゴーレムは自分の餌を奪おうとした私達を敵と認識して襲い掛かって来たんですね」
「多分、鍛冶師さん達を襲ったマグマゴーレムも火属性の魔石を掘り起こそうとしたから襲われたんじゃないかな?」
「そう考えると納得できますね」
火山を訪れた鍛冶師達がマグマゴーレムに襲われたのは彼等が採掘しようとした火属性の魔石が原因であり、マグマゴーレムからすれば自分達の餌でもある火属性の魔石を奪いに来た人間を許せずに襲い掛かってきたと考えるべきだろう。
これまでドワーフ達がマグマゴーレムに襲われなかった原因は火口付近には近づかなかったからであり、火口に生息しているマグマゴーレムは火口に一番良質な火属性の魔石を捕食していたからこそ鍛冶師達は襲われる事はなかった。
だが、この世界全体で魔物の数が増え続けており、このグツグ火山に生息するマグマゴーレムも数を急速に増えてきた。その影響で火口付近に採取できる魔石は全てなくなってしまい、餌が不足したマグマゴーレムは今度は火口付近ではなく、火山の中腹にも赴いて餌となる火属性の魔石を探し始めた。
ドワーフ達は運悪くマグマゴーレムに見つかってしまい、自分達の餌となる火属性の魔石を奪おうとする相手を見てマグマゴーレムは襲い掛かってきた。それが今回の事件の全貌である。
「あんな化物がいる以上はこの火山でこれ以上に火属性の魔石の採掘は難しいですね……残念ですけど、グツグ火山の住民には注意しておきましょう」
「流石にあんな化物がいたらこの火山では暮らせませんよね」
「そうでもないですよ?要は定期的にマグマゴーレムを倒して数を減らせばいいだけです。ですけど、あれだけ巨大なマグマゴーレムとなると合体前のマグマゴーレムの数も相当な数ですね……」
マグマゴーレムの大量発生が今回の事件の要因であり、マグマゴーレムの数が減ればグツグ火山で誕生する火属性の魔石の原石を独占される事はなく、今まで通りにドワーフ達も生活ができる。
だが、ドワーフ達が今まで通りの生活を取り戻すにはナイ達が遭遇した巨大ゴーレムを何とかせねばならず、あれほどの化物を倒す手段をドワーフ達が持ち合わせているとは思えない。流石にあれほどの大物を仕留めるのは冒険者でも不可能だと思われた。
「あの巨大ゴーレム、間違いなく竜種級にやばい奴でしたね」
「今回は運よく生き残れたけど……また現れたら今度は殺されるかもしれないな」
「シャアアッ……」
早く逃げようとばかりにリザードマンが二人の服を咥えて引っ張り、原因を突き止めた以上は長居は不要と判断してナイ達は山を下りる事にした――
――巨大ゴーレムが現れた事に関してはナイ達はドワーフ達に報告を行い、最初に話を聞かされた時は到底信じられなかったが、マグマゴーレムに襲われたドワーフの中に巨大ゴーレムを目撃した人物も居た。
「じ、実は俺……皆に内緒で火口でも魔石を掘り起こしていたんだ。あそこなら一番質のいい魔石が採れるからな。だけど、最近は何故か火口付近の魔石が見かけなくなったんだ」
「何だと!?お前、そんな事をしていたのか!!」
「あれほど火口には近づくなと言っただろう!!」
「す、すまねえ……でも、俺だって生活のために仕方なかったんだよ。けど、実は前に火口の近くでとんでもない大きさのマグマゴーレムを見かけたんだ。あの時は怖くなって逃げ帰ったけど、冷静に考えたらあんな大きさのマグマゴーレムがいるはずがねえ……だから夢か幻を見たと思ってたんだ」
「……でも、実際にはその巨大なマグマゴーレムは実在していたというわけですか」
ドワーフの中には巨大ゴーレムを確認した者もいたが、あまりに現実離れした巨大なマグマゴーレムの姿に発見した者は頭が理解できず、恐怖のあまりにただの幻だと思い込んでいたらしい。
しかし、現にグツグ火山の火口にはマグマゴーレムの大群が合体してキングゴーレム級の大きさを誇る巨大ゴーレムが実在するのは確かだった。今の段階ではこの巨大ゴーレムが火口から離れる様子はないが、このまま火山の魔石が喰いつくされればグツグ火山の麓に存在するドワーフの里も危険に晒される。
「そ、そんな化物が俺達の火山に住み着いているなんて……な、なあ!!あんた達でそいつをどうにかできないのか?」
「不可能ですよ。第一に私達はアチイ砂漠に向かわないといけないんです、この場所に留まる時間もそう残されていません」
「そんな!!あんたら、それでも国を守る騎士かよ!?」
「都合の良い時だけ助けてもらえるなんて思わないでください。貴方達は昨日、バッシュ王子に対して何て言ったのか忘れましたか?」
「そ、それは……」
イリアの言葉にドワーフ達は罰が悪い表情を浮かべ、彼等はこの国に暮らす民ではあるが王国に忠誠を誓っているわけではない。現に王族であるバッシュが火属性の魔石を求めた時も相応の対価を彼等は求めた。
危険が迫った時にこの国の民衆として守ってもらい、それ以外の時は王族相手であろうと対価がなければ要求は受け付けないというのはあまりにも都合がいい話だった。イリアも王族に仕える身として彼等に注意する。
「勘違いしないでくださいよ、私達は人助けのためにここへ訪れたんじゃありません。ここへ立ち寄ったのは魔石を買い取るために来ただけです。命を賭けて貴方達を助ける理由もありません」
「こ、この人でなしがっ!!」
「その人でなしに治療してもらったのは誰ですか?私達がいなければここにいる怪我人は全員が死んでたんですよ」
「うっ……」
「イリアさん、それ以上は……」
ドワーフ達はイリアの言葉に言い返す事はできず、グツグ火山で起きた問題は火山を管理する彼等が解決しなければならない。それに今回の騒動に関してはドワーフ達にも問題はある。
巨大ゴーレムやマグマゴーレムが火山の魔石を独占した理由は、ドワーフ達が日頃から魔石を採掘して火山内の魔石が減少していたのも原因の一員である。つまり、今回の事態はドワーフ達にも責任があり、その事を自覚していない彼等にイリアは言い放つ。
「今回の騒動の原因は貴方達がこの火山を独占して魔石を採掘し続けてきたのも理由の一つです。命が惜しいのであれば火山を捨てて何処か別の場所に暮らしてください」
「そ、そんな事を言われても……」
「俺達はここで生まれ育ったんだぞ!?他に生き場所なんて……」
「生まれ故郷を失うなんて事は今の時代では珍しくもありません……ここにいる私もナイさんも故郷を失っています」
「えっ?」
生まれた時から火山で暮らしてきたドワーフ達達にとってはイリアの言葉を納得できるはずがないが、彼女は自分の故郷も失われた事を話す。そんなイリアの過去があるのはナイも初耳であり、彼女も自分と同じように故郷を失った人間とは知らなかった。
イリアの過去は前に聞いた事はあるが、どうやらイリアの故郷は現在はもうなくなっているらしく、その理由はナイと同じように魔物に滅ぼされたからだと語る。
「私の暮らしていた街はもう跡形もなく滅びました。魔物に滅ぼされたんですよ、もう戻っても誰も住んでいません。ですけど、これは別に珍しい事でも何でもないんです。この王国だけでも数年間でどれだけの村や街が魔物の被害でなくなったのか知っていますか?」
「そ、そんな事を言われても……」
「貴方達はまだ生きています、でもこの村に残り続ければいずれは死んでしまうでしょう。決めるのは貴方達です、この村から逃げるというのであれば近くの街まで飛行船に乗せてあげてもいいですよ。私の方から王子に話は通しておきます」
「ま、待ってくれ!!」
「待ちません、これ以上に貴方達と話す暇はありませんから……自分達の問題は自分達で解決して下さい」
「「「…………」」」
ドワーフ達は立ち去るイリアとその後ろに続くナイに声を掛ける事はできず、彼等はどうするべきかお互いの顔を見るが、すぐに答えなど思いつくはずがなかった――
――帰り道の途中、ナイはリザードマンに乗り込んで黙っているイリアに何と話しかければいいのか分からなかった。ナイはイリアの故郷が滅んでいるなど知らず、どんな声を掛けようかと悩んでいると、唐突にイリアが振り返って話しかける。
「ナイさん、さっきの話は忘れてください」
「えっ……それって、故郷の事?」
「そうです」
ナイはイリアの方から故郷の話題を出した事に驚き、やはり彼女も失った故郷の事を思い出すのは辛いのかと考えたが、ここで衝撃の一言を告げる。
「だって私の故郷は滅んでませんから」
「えっ」
「あんなのその場しのぎの嘘ですよ、嘘!!」
「ええっ!?」
思いがけないイリアの言葉にナイは驚愕し、そんな彼に対してイリアは悪びれもせずに嘘を吐いた理由を話す。
「あの人たちの態度を見ているとこっちもイライラして、つい口からでまかせをいっちゃったんですよ。最後のあの人たちの顔を見ました?私はすっきりしましたね」
「な、なんでそんな嘘を……」
「まあ、いいじゃないですか。大切なのはあの人たちに危機感を与える事です。あれでもまだ反省しないようなら本当に知った事じゃありませんよ」
悪びれもせずにイリアは笑いながら飛行船へと向かい、そんな彼女の言葉にナイは増々イリアという人物の事が良く分からなくなった――
0
お気に入りに追加
62
あなたにおすすめの小説
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!
夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。
ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。
そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。
視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
不遇な死を迎えた召喚勇者、二度目の人生では魔王退治をスルーして、元の世界で気ままに生きる
六志麻あさ@10シリーズ書籍化
ファンタジー
異世界に召喚され、魔王を倒して世界を救った少年、夏瀬彼方(なつせ・かなた)。
強大な力を持つ彼方を恐れた異世界の人々は、彼を追い立てる。彼方は不遇のうちに数十年を過ごし、老人となって死のうとしていた。
死の直前、現れた女神によって、彼方は二度目の人生を与えられる。異世界で得たチートはそのままに、現実世界の高校生として人生をやり直す彼方。
再び魔王に襲われる異世界を見捨て、彼方は勇者としてのチート能力を存分に使い、快適な生活を始める──。
※小説家になろうからの転載です。なろう版の方が先行しています。
※HOTランキング最高4位まで上がりました。ありがとうございます!
〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。
だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。
十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。
ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。
元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。
そして更に二年、とうとうその日が来た……
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草
ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)
10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。
親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。
同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……──
※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました!
※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる