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砂漠の脅威
第925話 霧の湖
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「そこまで言われると少し会うのが楽しみになって来たな」
「あまり期待せん方がいいと思いますがな……ん?」
「どうかしたか?」
「いや、窓の外が……」
会話の際中にハマーンは窓を見て疑問を抱き、何故か窓は曇っていて外の様子が見えなかった。別に気温はそれほど下がってはいないはずだが、窓全体が曇っていて外の様子が全く見えない事に彼は疑問を抱く。
しかし、窓が曇っているというのはハマーンの勘違いだった。真実は窓の外が霧に覆われていて外の様子が確認できなかった。何時の間にかマル湖に霧が漂っており、船の外は霧に覆われて全く見えない状況だった。
「な、何じゃこれは……霧か?」
「いったいどうなっている?さっきまでは晴れていたはずだが……」
「せ、船長!!大変です!!」
窓の外の変化に気付いたハマーンとバッシュは戸惑っていると、唐突に部屋の扉が開かれて焦った様子のドワーフが駆け込む。そんな彼を見て何事かとハマーンとバッシュは振り返ると、ドワーフは顔色を青ざめながら告げる。
「か、甲板で見張りをしていた連中が……次々と倒れています!!」
「何だと!?」
「いったい何が起きた!?」
「わ、分かりません!!急に霧が出てきたかと思うと甲板に立っていた奴が急に苦しみ出して倒れて……うっ!?げほっ、げほっ!!」
報告に訪れたドワーフも唐突に咳き込み、その様子を見てハマーンとバッシュはすぐに窓の外の霧を見て目を見開く。甲板で見張りを行っていた兵士が急に倒れたという事は、湖に立ち込める霧を吸い込んで体調不良を引き起こしたと考えるのが妥当だった。
即座にハマーンは報告に赴いたドワーフの介抱を行い、バッシュの方は窓から霧が漏れ出ないように塞ぐ事を命じる。既に霧は窓の隙間から入り込もうとしており、彼は急いで机を持ち上げて窓を塞ぐ。
「全員に通達しろ!!船の窓を全て塞ぎ、霧がこれ以上に中に入ってこないように封じろ!!」
「は、はい!!」
「おい、大丈夫か?」
「ううっ……げほげほっ!!」
バッシュの指示を受けて他の船員は慌てて駆け出し、報告に訪れたドワーフをハマーンは船内の医療室まで運び出す――
――同時刻、船の医療室には甲板で倒れた兵士達が運び込まれて治療が行われていた。ちなみに治療を行う医者はイリアであり、彼女も飛行船に搭乗していた。
「これは……ちょっとまずいですね」
「イリア、いったい何が起きてるんだ?どうして彼等は急に倒れたんだ?」
「ううっ……く、苦しい」
「……力が入らない」
医療室に運び込まれた人間の中にはヒイロとミイナも含まれ、彼女達も甲板で見張り役を行っていた所、湖に立ち込めた霧を吸い込んだせいで体調不良を引き起こす。
医療室に運び込まれた人間全員が激しく咳き込みながら苦しむ様子を見てイリアは考え込み、彼女は古城から回収した魔物図鑑を取り出してアルトに見せつける。
「これを見てください」
「これは……最近、君が良く見ている図鑑かい?」
「その図鑑の中に毒霧を生み出す魔物の事が描かれています。その図鑑によれば毒霧を吸い込んだ人間は身体の力が抜けて徐々に動けなくなると書かれています。症状は一致しているでしょう?」
「まさか……!?」
アルトは図鑑を確認すると、確かにイリアの言う通りに図鑑には「毒霧」を生み出す魔物の事が記されていた。
図鑑によれば魔物の正体は巨大な「亀」を想像させる姿をしており、この亀の背中には火山のような形をした甲羅があった。この甲羅の中央には大きな穴が存在し、そこから毒性の煙を火山の噴火の如く生み出す。その煙はまるで霧のように周囲に拡散していくため、厄介な事にただの霧と見分けがつかない。
この魔物の恐ろしさは毒で相手を弱らせた後に獲物の捕食を行う点だった。魔物が排出した毒は普通の人間ならば10分も吸い続ければ動けなくなり、更に毒霧を吸い続ければ意識を失い、最終的には死んでしまう。
しかも一番厄介なのは魔物は自分が生み出す毒煙に紛れて身を隠す事だった。霧の様に広範囲に毒煙を拡散させる事で視界を封じ込み、魔物を探し出すのも難しい。唯一の幸運はこの魔物は普段は地中の中に潜って身を隠すのだが、毒煙を吹き出し続ける際は地上に出現しなければならず、本物の亀の様に鈍重で素早くは動けない点だけだった。
「この魔物は山や湖など霧が立ち込める場所を好んで暮らすようです。本物の霧に紛れて自分の毒煙を生み出し、それを利用して山や湖に訪れた獲物を霧に扮した毒煙で弱らせて捕食するんですよ」
「まさか、こんな魔物が国内に存在したとは……」
「気付かないのも仕方ありませんよ。この魔物は実は滅多に地上には出現しません。生活の殆どは地中の中で過ごし、栄養を欲する時だけ地上に出てきます。それに十分な栄養を搾取すると数か月の間は地中に埋もれて出てくる事はありません」
「つまり……僕達がここへ来た時にこいつが現れたのは運が悪かったというだけか」
イリアの説明にアルトはため息を吐き出し、ともかく倒れた人間隊を苦しめる原因が分かった以上は放置はできなかった。
「この魔物の名前は……ポイズンタートルか、いかにもな名前だな」
「記録によればポイズンタートルは餌を捕食するまでは煙を吐き出し続けるようです。ちなみに一説によればこの煙はポイズンタートルのはい……」
「いや、それ以上は聞きたくない!!」
話が長くなりそうなのでイリアの説明をアルトは遮ると、彼は図鑑を確認してポイズンタートルを見つけ出すための手掛かりを探し出す。
「ポイズンタートルを見つけ出す方法は……感知系の技能を持つ人間なら探し出せるのか」
「ポイズンタートルは普通の魔物と比べても大型で生命力に溢れる存在らしいですからね。気配感知の技能を持つ人間が探すのが得策でしょう」
「となると……頼れるのはやはり彼か」
感知系の技能を持つ人間ならばポイズンタートルを見つけ出す可能性が一番高く、すぐにアルトは二つの感知系の技能を持つ人間の心当たりを思いつく。
「という事で話は聞いていたね、ナイ君。君の力が必要だ、どうか頼むよ」
「あ、うん……分かったよ」
「ううっ……気持ち悪いよう」
医療室の中にはリーナに膝枕を行うナイの姿があり、実はリーナも毒煙を吸い込んで体調不良を引き起こしていた。但し、彼女の場合は甲板に倒れているに人間を運び出す際に毒を吸い込んでしまい、現在はナイに介抱してもらっていた。
今の段階で動ける人間は実はかなり限られており、リーナ以外にもドリスやガオウも気分を害して横たわっていた。この二人もリーナと同様に甲板に倒れていた人間を救い出すために無茶をしてしまい、とても戦える状況ではない。
「ううっ……ふがいないですわ」
「ちくしょう……」
「ふむ……この二人は駄目ですね、とても動けそうにありません」
「イリア、君の薬で彼等を治せないのかい?」
弱り切っているドリスとガオウを見てイリアは二人が戦える状態ではない事を確認すると、ここでアルトがイリアならば毒を無効化する解毒薬を作れるのではないかと問う。他の者もイリアならば解毒薬を作れるのではないかと期待するが、イリアは黙って首を振った。
「毒の成分を詳しく調べないと解毒薬は作り出せません。一応は毒を調べる器材はありますけど、図鑑によればこの毒は自然と消えるらしいです」
「そ、そうなんですか?」
「ええ、この毒は身体の自由は奪いますが命を奪う程の効力はありません。毒煙が立ち込めていない場所に一時間も身体を休めれば感覚は取り戻せるはずです」
「一時間か……」
「といっても一時間もこの船が安全とは言い切れませんけどね。こうしている間にも船に毒煙が迫っていますから」
現在の飛行船は周囲が「毒霧」に覆われ、船内にも毒霧が流れ込んできていた。一応は全ての窓を塞ぎ、更には通路の方には本来ならば飛行船を浮上させるために用意した風属性の魔石を利用して毒煙が入り込めないように風圧の力で毒煙を遮断している。
風属性の魔石があれば新鮮な空気も作り出せるので今の所は医療室は安全だが、逆に言えば風属性の魔石が切れれば船内に毒霧が蔓延して全員の命が危うい。一応はまだ魔石には余裕があるが、早々にポイズンタートルを始末しなければ飛行船に搭乗している全員の命が危ない。
「ポイズンタートルを始末するしかないという事か。だが、こんな毒霧が蔓延している外でどうやって探し出せばいいんだ?」
「安心して下さい、様々な状況を想定して私は普段から色々と道具を持ち込んでいます。今回はこれを使って下さい」
「え、これって……白面の仮面!?」
イリアは自分が所持している収納鞄《ストレージバック》から仮面を取り出し、それを見たナイは驚愕する。彼女が取り出したのはかつて白面の組織に所属していた暗殺者が身に付けいた仮面だった。
「この仮面の効果は皆さんもよく知っているでしょう?白面の暗殺者は身体に毒が侵されても、この仮面を身に付けている間は毒が抑えられます。さらに私が改造を加えた事であらゆる毒を防ぐ機能も搭載しました!!」
「な、なるほど……つまり、この仮面を身に付ければ毒霧の中でも自由に動く事ができるのか」
「そういう事になりますね。それに私の改造も加えてますので簡単に外れる事はありませんよ。ですけど、仮面の数は四つしかありませんので外に出れる人数は四人という事になります」
「たったの四人、か……」
イリアの話を聞いたアルトは難しい表情を浮かべ、この毒霧を生み出すポイズンタートルがどの程度の力を持っているのかは不明な事もあって余計に不安を抱く。
仮面の数は四つ、即ち外に出向く事ができる人間は四人だけとなる。そして感知系の技能を持ち合わせるナイは調査に出向く事は確定しており、残りの三人はまだ毒霧にやられていない面子から決める必要があった。
「あまり期待せん方がいいと思いますがな……ん?」
「どうかしたか?」
「いや、窓の外が……」
会話の際中にハマーンは窓を見て疑問を抱き、何故か窓は曇っていて外の様子が見えなかった。別に気温はそれほど下がってはいないはずだが、窓全体が曇っていて外の様子が全く見えない事に彼は疑問を抱く。
しかし、窓が曇っているというのはハマーンの勘違いだった。真実は窓の外が霧に覆われていて外の様子が確認できなかった。何時の間にかマル湖に霧が漂っており、船の外は霧に覆われて全く見えない状況だった。
「な、何じゃこれは……霧か?」
「いったいどうなっている?さっきまでは晴れていたはずだが……」
「せ、船長!!大変です!!」
窓の外の変化に気付いたハマーンとバッシュは戸惑っていると、唐突に部屋の扉が開かれて焦った様子のドワーフが駆け込む。そんな彼を見て何事かとハマーンとバッシュは振り返ると、ドワーフは顔色を青ざめながら告げる。
「か、甲板で見張りをしていた連中が……次々と倒れています!!」
「何だと!?」
「いったい何が起きた!?」
「わ、分かりません!!急に霧が出てきたかと思うと甲板に立っていた奴が急に苦しみ出して倒れて……うっ!?げほっ、げほっ!!」
報告に訪れたドワーフも唐突に咳き込み、その様子を見てハマーンとバッシュはすぐに窓の外の霧を見て目を見開く。甲板で見張りを行っていた兵士が急に倒れたという事は、湖に立ち込める霧を吸い込んで体調不良を引き起こしたと考えるのが妥当だった。
即座にハマーンは報告に赴いたドワーフの介抱を行い、バッシュの方は窓から霧が漏れ出ないように塞ぐ事を命じる。既に霧は窓の隙間から入り込もうとしており、彼は急いで机を持ち上げて窓を塞ぐ。
「全員に通達しろ!!船の窓を全て塞ぎ、霧がこれ以上に中に入ってこないように封じろ!!」
「は、はい!!」
「おい、大丈夫か?」
「ううっ……げほげほっ!!」
バッシュの指示を受けて他の船員は慌てて駆け出し、報告に訪れたドワーフをハマーンは船内の医療室まで運び出す――
――同時刻、船の医療室には甲板で倒れた兵士達が運び込まれて治療が行われていた。ちなみに治療を行う医者はイリアであり、彼女も飛行船に搭乗していた。
「これは……ちょっとまずいですね」
「イリア、いったい何が起きてるんだ?どうして彼等は急に倒れたんだ?」
「ううっ……く、苦しい」
「……力が入らない」
医療室に運び込まれた人間の中にはヒイロとミイナも含まれ、彼女達も甲板で見張り役を行っていた所、湖に立ち込めた霧を吸い込んだせいで体調不良を引き起こす。
医療室に運び込まれた人間全員が激しく咳き込みながら苦しむ様子を見てイリアは考え込み、彼女は古城から回収した魔物図鑑を取り出してアルトに見せつける。
「これを見てください」
「これは……最近、君が良く見ている図鑑かい?」
「その図鑑の中に毒霧を生み出す魔物の事が描かれています。その図鑑によれば毒霧を吸い込んだ人間は身体の力が抜けて徐々に動けなくなると書かれています。症状は一致しているでしょう?」
「まさか……!?」
アルトは図鑑を確認すると、確かにイリアの言う通りに図鑑には「毒霧」を生み出す魔物の事が記されていた。
図鑑によれば魔物の正体は巨大な「亀」を想像させる姿をしており、この亀の背中には火山のような形をした甲羅があった。この甲羅の中央には大きな穴が存在し、そこから毒性の煙を火山の噴火の如く生み出す。その煙はまるで霧のように周囲に拡散していくため、厄介な事にただの霧と見分けがつかない。
この魔物の恐ろしさは毒で相手を弱らせた後に獲物の捕食を行う点だった。魔物が排出した毒は普通の人間ならば10分も吸い続ければ動けなくなり、更に毒霧を吸い続ければ意識を失い、最終的には死んでしまう。
しかも一番厄介なのは魔物は自分が生み出す毒煙に紛れて身を隠す事だった。霧の様に広範囲に毒煙を拡散させる事で視界を封じ込み、魔物を探し出すのも難しい。唯一の幸運はこの魔物は普段は地中の中に潜って身を隠すのだが、毒煙を吹き出し続ける際は地上に出現しなければならず、本物の亀の様に鈍重で素早くは動けない点だけだった。
「この魔物は山や湖など霧が立ち込める場所を好んで暮らすようです。本物の霧に紛れて自分の毒煙を生み出し、それを利用して山や湖に訪れた獲物を霧に扮した毒煙で弱らせて捕食するんですよ」
「まさか、こんな魔物が国内に存在したとは……」
「気付かないのも仕方ありませんよ。この魔物は実は滅多に地上には出現しません。生活の殆どは地中の中で過ごし、栄養を欲する時だけ地上に出てきます。それに十分な栄養を搾取すると数か月の間は地中に埋もれて出てくる事はありません」
「つまり……僕達がここへ来た時にこいつが現れたのは運が悪かったというだけか」
イリアの説明にアルトはため息を吐き出し、ともかく倒れた人間隊を苦しめる原因が分かった以上は放置はできなかった。
「この魔物の名前は……ポイズンタートルか、いかにもな名前だな」
「記録によればポイズンタートルは餌を捕食するまでは煙を吐き出し続けるようです。ちなみに一説によればこの煙はポイズンタートルのはい……」
「いや、それ以上は聞きたくない!!」
話が長くなりそうなのでイリアの説明をアルトは遮ると、彼は図鑑を確認してポイズンタートルを見つけ出すための手掛かりを探し出す。
「ポイズンタートルを見つけ出す方法は……感知系の技能を持つ人間なら探し出せるのか」
「ポイズンタートルは普通の魔物と比べても大型で生命力に溢れる存在らしいですからね。気配感知の技能を持つ人間が探すのが得策でしょう」
「となると……頼れるのはやはり彼か」
感知系の技能を持つ人間ならばポイズンタートルを見つけ出す可能性が一番高く、すぐにアルトは二つの感知系の技能を持つ人間の心当たりを思いつく。
「という事で話は聞いていたね、ナイ君。君の力が必要だ、どうか頼むよ」
「あ、うん……分かったよ」
「ううっ……気持ち悪いよう」
医療室の中にはリーナに膝枕を行うナイの姿があり、実はリーナも毒煙を吸い込んで体調不良を引き起こしていた。但し、彼女の場合は甲板に倒れているに人間を運び出す際に毒を吸い込んでしまい、現在はナイに介抱してもらっていた。
今の段階で動ける人間は実はかなり限られており、リーナ以外にもドリスやガオウも気分を害して横たわっていた。この二人もリーナと同様に甲板に倒れていた人間を救い出すために無茶をしてしまい、とても戦える状況ではない。
「ううっ……ふがいないですわ」
「ちくしょう……」
「ふむ……この二人は駄目ですね、とても動けそうにありません」
「イリア、君の薬で彼等を治せないのかい?」
弱り切っているドリスとガオウを見てイリアは二人が戦える状態ではない事を確認すると、ここでアルトがイリアならば毒を無効化する解毒薬を作れるのではないかと問う。他の者もイリアならば解毒薬を作れるのではないかと期待するが、イリアは黙って首を振った。
「毒の成分を詳しく調べないと解毒薬は作り出せません。一応は毒を調べる器材はありますけど、図鑑によればこの毒は自然と消えるらしいです」
「そ、そうなんですか?」
「ええ、この毒は身体の自由は奪いますが命を奪う程の効力はありません。毒煙が立ち込めていない場所に一時間も身体を休めれば感覚は取り戻せるはずです」
「一時間か……」
「といっても一時間もこの船が安全とは言い切れませんけどね。こうしている間にも船に毒煙が迫っていますから」
現在の飛行船は周囲が「毒霧」に覆われ、船内にも毒霧が流れ込んできていた。一応は全ての窓を塞ぎ、更には通路の方には本来ならば飛行船を浮上させるために用意した風属性の魔石を利用して毒煙が入り込めないように風圧の力で毒煙を遮断している。
風属性の魔石があれば新鮮な空気も作り出せるので今の所は医療室は安全だが、逆に言えば風属性の魔石が切れれば船内に毒霧が蔓延して全員の命が危うい。一応はまだ魔石には余裕があるが、早々にポイズンタートルを始末しなければ飛行船に搭乗している全員の命が危ない。
「ポイズンタートルを始末するしかないという事か。だが、こんな毒霧が蔓延している外でどうやって探し出せばいいんだ?」
「安心して下さい、様々な状況を想定して私は普段から色々と道具を持ち込んでいます。今回はこれを使って下さい」
「え、これって……白面の仮面!?」
イリアは自分が所持している収納鞄《ストレージバック》から仮面を取り出し、それを見たナイは驚愕する。彼女が取り出したのはかつて白面の組織に所属していた暗殺者が身に付けいた仮面だった。
「この仮面の効果は皆さんもよく知っているでしょう?白面の暗殺者は身体に毒が侵されても、この仮面を身に付けている間は毒が抑えられます。さらに私が改造を加えた事であらゆる毒を防ぐ機能も搭載しました!!」
「な、なるほど……つまり、この仮面を身に付ければ毒霧の中でも自由に動く事ができるのか」
「そういう事になりますね。それに私の改造も加えてますので簡単に外れる事はありませんよ。ですけど、仮面の数は四つしかありませんので外に出れる人数は四人という事になります」
「たったの四人、か……」
イリアの話を聞いたアルトは難しい表情を浮かべ、この毒霧を生み出すポイズンタートルがどの程度の力を持っているのかは不明な事もあって余計に不安を抱く。
仮面の数は四つ、即ち外に出向く事ができる人間は四人だけとなる。そして感知系の技能を持ち合わせるナイは調査に出向く事は確定しており、残りの三人はまだ毒霧にやられていない面子から決める必要があった。
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