908 / 1,110
番外編 獣人国の刺客
閑話 アルの思い出
しおりを挟む
――まだナイがアルと一緒に暮らしていた頃、冬の季節の中でも一番寒い時期にナイは高熱を出して倒れてしまった。怪我の類ならば回復薬や薬草(三日月草)でどうにかできるが、病気の等の場合は回復薬は当てにならない。
アルは必死に看病を行ったがナイの熱が下がる様子はなく、このままではまずいと思った彼はイチノにいる医者のイーシャンの元まで彼を連れ出そうと考えた。しかし、当時の冬は一段と雪が積もっており、馬で移動する事も困難な状態だった。
「ナイ、しっかりしろ!!僕の事が分かるか?」
「ううっ……」
「駄目だ、熱が引かない……このままだと持たないぞ」
ナイを心配したゴマンが彼の家に訪れ、必死にナイに声をかけるが既にナイは意識を失って声も聞こえない状態だった。このままではナイは助からないと思ったアルは覚悟を決めたような表情を浮かべる。
「……ゴマン、ナイの事は任せたぞ」
「爺さん!?何を言ってるんだよ、何処へ行くつもりだ!?」
「今のナイを助けるには特別な薬草が必要だ……そいつを採取してくる」
「や、薬草って……今、何時だと思ってるんだよ!?それに外は吹雪なんだぞ!?」
既に時刻は夜を迎え、更に今夜は吹雪で普通ならば山に登るどころか家の外に出るのも危険な状況だった。しかし、アルはナイを救うために彼はゴマンに任せて外へ出向く。
「いいか、ゴマン!!俺が戻ってくるまでナイを頼むぞ!!」
「ま、待てよ爺さん!!ならせめてこれを……」
「盾……ああ、ありがとよ」
ゴマンは止めても無駄だと悟ると、彼はアルに「反魔の盾」を渡す。冬の時期を迎えたと言っても山の中には魔物もいるため、アルはゴマンが自分の家から勝手に持ち出した反魔の盾を受け取る。
彼にナイの事を任せてアルは山へと向かい、解熱効果の高い特別な薬草を採取するために山へと向かった――
――吹雪の中、アルは雪に覆われた山道を登り、途中で何度も足を滑らせて転びそうになったが彼は山頂へ向かう。彼が求める薬草は山頂に存在し、彼は黙々と山頂へ向けて移動する。
(くそっ……この道で合ってるのか?)
吹雪のせいで碌に眼も開ける事ができず、自分が本当に山頂に向けて移動しているのかも怪しく、それでもアルは足を止めない。愛する子供を救うためならば彼はどんな犠牲を払ってでも薬草を採取するつもりだった。
(待っていろよ、ナイ……!!)
アルは山頂へ向かって歩いていると、不意に彼は気配を感じ取って後方を振り返る。すると、そこには数匹のゴブリンがアルを追いかける姿があった。
『ギギィッ……!!』
「ちっ……こんな時に限って邪魔するんじゃねえ!!」
迫りくるゴブリン達に対してアルは悪態を吐き、彼はゴマンから受け取った反魔の盾と手斧を取り出す。ゴブリンなんかに構っている暇はないのだが、ゴブリン達は雪山の中にわざわざ入ってきた獲物を逃すつもりはない。
ゴブリン達はアルに徐々に迫り、その様子を見たアルは手斧で彼等と戦おうとした時、ゴブリン達の背後から狼の声が響く。
「ウォオオンッ!!」
「ギィアッ!?」
「ギャウッ!?」
「ギャアアッ!?」
「うおっ……お、お前は!?」
ゴブリン達の背後から襲い掛かったのは「ビャク」であり、どうやらアルの後を付いて来ていたらしく、ビャクはアルに襲い掛かろうとしたゴブリン達に噛みつく。だが、この当時のビャクはまだ子供であり、ゴブリンの一匹がビャクを蹴り飛ばす。
「ギイイッ!!」
「キャインッ!?」
「ビャク!!くそっ、待ってろ……すぐに助けてやる!!」
「クゥンッ……ウォオンッ!!」
ビャクが蹴飛ばされたのを見てアルは咄嗟に彼を助けようとしたが、すぐにビャクは起き上がるとアルに向けて鳴き声を放つ。その態度にアルは戸惑うがビャクの意図を察する。
(お前、まさか俺に先に行けと言ってるのか?)
この場所までビャクがアルを追いかけてきたのは彼の手助けのためであり、そのためにビャクはゴブリン達を相手に襲い掛かった。その事を知ったアルはビャクの心意気を無駄にせず、ここは彼に任せて先に進む事にした。
「すまん、ビャク……先に行くぞ!!」
「ウォオオンッ!!」
『ギィイイッ!!』
今はゴブリンに構っている暇はなく、アルはこの場をビャクに任せて自分は山頂へと向かう――
――夜明けを迎えた頃、徹夜でゴマンはナイの看病を行っていたが一向に戻ってこないアルの身を心配する。
「だ、大丈夫かな爺さん……もう夜が明けたのに」
「う、ううんっ……」
「ナイ……だ、大丈夫だからな。きっと爺さんは戻ってくるからな」
ナイの手を握りしめながらゴマンはアルが戻るのを待つと、不意に出入口の扉が開け開かれる。驚いたゴマンは扉の方向を振り返ると、そこには大量の薬草と全身が返り血塗れになったビャクが立っていた。
「はあっ、はあっ……ま、待たせたな」
「クゥ~ンッ……」
「じ、爺さん!?」
アルは山頂に生えていた薬草の回収に成功し、ビャクの方もゴブリン達を倒す事に成功して戻ってきた。だが、二人とも疲労の限界を迎えたらしく、家の中に入った途端に倒れ込む――
――その後はゴマンは村の大人を呼んできてアルの介抱を行い、ナイの方はアルが採取した薬草を調合した薬を飲んだ事で無事に快復する。ビャクの方は特に大きな怪我はなく、ナイとアルが寝込んでいる間はゴマンが面倒を見てくれた。
ちなみに反魔の盾をゴマンが勝手に持ち出した事は彼の父親が激怒したが、アルが事情を説明すると息子が他人のために反魔の盾を持ち出した事に感動し、それ以降はゴマンが反魔の盾を持ち出す事を正式に許可してくれた。
この一件でビャクはアルとナイの命の恩人ならぬ恩犬という事で他の村人にも受け入れられ、彼は可愛がられるようになった――
アルは必死に看病を行ったがナイの熱が下がる様子はなく、このままではまずいと思った彼はイチノにいる医者のイーシャンの元まで彼を連れ出そうと考えた。しかし、当時の冬は一段と雪が積もっており、馬で移動する事も困難な状態だった。
「ナイ、しっかりしろ!!僕の事が分かるか?」
「ううっ……」
「駄目だ、熱が引かない……このままだと持たないぞ」
ナイを心配したゴマンが彼の家に訪れ、必死にナイに声をかけるが既にナイは意識を失って声も聞こえない状態だった。このままではナイは助からないと思ったアルは覚悟を決めたような表情を浮かべる。
「……ゴマン、ナイの事は任せたぞ」
「爺さん!?何を言ってるんだよ、何処へ行くつもりだ!?」
「今のナイを助けるには特別な薬草が必要だ……そいつを採取してくる」
「や、薬草って……今、何時だと思ってるんだよ!?それに外は吹雪なんだぞ!?」
既に時刻は夜を迎え、更に今夜は吹雪で普通ならば山に登るどころか家の外に出るのも危険な状況だった。しかし、アルはナイを救うために彼はゴマンに任せて外へ出向く。
「いいか、ゴマン!!俺が戻ってくるまでナイを頼むぞ!!」
「ま、待てよ爺さん!!ならせめてこれを……」
「盾……ああ、ありがとよ」
ゴマンは止めても無駄だと悟ると、彼はアルに「反魔の盾」を渡す。冬の時期を迎えたと言っても山の中には魔物もいるため、アルはゴマンが自分の家から勝手に持ち出した反魔の盾を受け取る。
彼にナイの事を任せてアルは山へと向かい、解熱効果の高い特別な薬草を採取するために山へと向かった――
――吹雪の中、アルは雪に覆われた山道を登り、途中で何度も足を滑らせて転びそうになったが彼は山頂へ向かう。彼が求める薬草は山頂に存在し、彼は黙々と山頂へ向けて移動する。
(くそっ……この道で合ってるのか?)
吹雪のせいで碌に眼も開ける事ができず、自分が本当に山頂に向けて移動しているのかも怪しく、それでもアルは足を止めない。愛する子供を救うためならば彼はどんな犠牲を払ってでも薬草を採取するつもりだった。
(待っていろよ、ナイ……!!)
アルは山頂へ向かって歩いていると、不意に彼は気配を感じ取って後方を振り返る。すると、そこには数匹のゴブリンがアルを追いかける姿があった。
『ギギィッ……!!』
「ちっ……こんな時に限って邪魔するんじゃねえ!!」
迫りくるゴブリン達に対してアルは悪態を吐き、彼はゴマンから受け取った反魔の盾と手斧を取り出す。ゴブリンなんかに構っている暇はないのだが、ゴブリン達は雪山の中にわざわざ入ってきた獲物を逃すつもりはない。
ゴブリン達はアルに徐々に迫り、その様子を見たアルは手斧で彼等と戦おうとした時、ゴブリン達の背後から狼の声が響く。
「ウォオオンッ!!」
「ギィアッ!?」
「ギャウッ!?」
「ギャアアッ!?」
「うおっ……お、お前は!?」
ゴブリン達の背後から襲い掛かったのは「ビャク」であり、どうやらアルの後を付いて来ていたらしく、ビャクはアルに襲い掛かろうとしたゴブリン達に噛みつく。だが、この当時のビャクはまだ子供であり、ゴブリンの一匹がビャクを蹴り飛ばす。
「ギイイッ!!」
「キャインッ!?」
「ビャク!!くそっ、待ってろ……すぐに助けてやる!!」
「クゥンッ……ウォオンッ!!」
ビャクが蹴飛ばされたのを見てアルは咄嗟に彼を助けようとしたが、すぐにビャクは起き上がるとアルに向けて鳴き声を放つ。その態度にアルは戸惑うがビャクの意図を察する。
(お前、まさか俺に先に行けと言ってるのか?)
この場所までビャクがアルを追いかけてきたのは彼の手助けのためであり、そのためにビャクはゴブリン達を相手に襲い掛かった。その事を知ったアルはビャクの心意気を無駄にせず、ここは彼に任せて先に進む事にした。
「すまん、ビャク……先に行くぞ!!」
「ウォオオンッ!!」
『ギィイイッ!!』
今はゴブリンに構っている暇はなく、アルはこの場をビャクに任せて自分は山頂へと向かう――
――夜明けを迎えた頃、徹夜でゴマンはナイの看病を行っていたが一向に戻ってこないアルの身を心配する。
「だ、大丈夫かな爺さん……もう夜が明けたのに」
「う、ううんっ……」
「ナイ……だ、大丈夫だからな。きっと爺さんは戻ってくるからな」
ナイの手を握りしめながらゴマンはアルが戻るのを待つと、不意に出入口の扉が開け開かれる。驚いたゴマンは扉の方向を振り返ると、そこには大量の薬草と全身が返り血塗れになったビャクが立っていた。
「はあっ、はあっ……ま、待たせたな」
「クゥ~ンッ……」
「じ、爺さん!?」
アルは山頂に生えていた薬草の回収に成功し、ビャクの方もゴブリン達を倒す事に成功して戻ってきた。だが、二人とも疲労の限界を迎えたらしく、家の中に入った途端に倒れ込む――
――その後はゴマンは村の大人を呼んできてアルの介抱を行い、ナイの方はアルが採取した薬草を調合した薬を飲んだ事で無事に快復する。ビャクの方は特に大きな怪我はなく、ナイとアルが寝込んでいる間はゴマンが面倒を見てくれた。
ちなみに反魔の盾をゴマンが勝手に持ち出した事は彼の父親が激怒したが、アルが事情を説明すると息子が他人のために反魔の盾を持ち出した事に感動し、それ以降はゴマンが反魔の盾を持ち出す事を正式に許可してくれた。
この一件でビャクはアルとナイの命の恩人ならぬ恩犬という事で他の村人にも受け入れられ、彼は可愛がられるようになった――
0
お気に入りに追加
73
あなたにおすすめの小説

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる