貧弱の英雄

カタナヅキ

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後日談

第872話 モモとのデートとリーナの決意

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――復興が始まってから一か月近くの時が経過した頃、ナイは商業区の方にてモモと二人きりで赴く。まだ完全に復興は終わってはいないが、それでも大分建物の修理は進んでおり、二人は前々から約束していた通りに遊びに向かう。

色々とあってナイもモモも碌に休む暇がなく働いていたが、今日一日は二人とも自由な時間を取れた。なので久々に遊びに来たのだが、ナイは待ち合わせ場所にて緊張してながら待っていた。


(何だろう……ドキドキするな)


モモと一緒に遊ぶ事自体は別に初めてではないが、先日にナイは彼女に告白された事を思い出し、そのせいで今まで以上にモモの事を女の子として意識してしまう。

ナイはモモの事を今まで女友達のように思っていたが、まさか彼女が自分の事を異性として見ているなど思いもせず、自分が好かれていると知ったナイは落ち着かない。


(モモが僕の事が好き、か……なら僕はモモの事をどう思ってるんだろう?)


今一度、モモが来るまでの間にナイはモモに対しての気持ちを考え、今までは彼女の事は友達のように思ってきた。しかし、告白されてからはナイのモモに対する気持ちは少しずつ変わり始めていた。

ナイが暮らしていた村は同世代の女の子は一人もおらず、まともに女の子と話した事があるのは王都でモモやヒナと知り合った時ぐらいである。だからナイは昔から好きな女の子などできたことがない。

女性に対して可愛いや綺麗などという感想を抱いた事はあるが、それが異性として意識したなく、恋愛感情に関しては一般の男性よりも疎い。だが、モモに告白された時にナイは彼女の事を少しずつ意識し始める。


「ナイく~ん!!お待たせっ!!」
「あ、モモ……」


モモの声が聞こえたのでナイは顔を上げると、彼女が走ってくる様子が見えた。普段とは違って今回の彼女は可愛らしいワンピースを身に付けており、その姿を見てナイは素直に可愛いと思った。


「ごめんね、支度に少し時間が掛かって……待たせちゃったかな?」
「いや……俺も今着たところだから」
「そ、そうなんだ……な、なら行こうか?手を繋いでも良い?」
「い、いいけど……」


何気ない会話だが、普段と違って二人は初々しい表情を浮かべ、お互いの手を繋ぐ。この時にモモはヒナの助言を思い出し、手を組んだ状態でナイの方に身体を近づける。

手を握りしめた状態でモモはナイの身体に擦り寄り、その彼女の行動にナイは驚くが、決して拒んだりはしない。今までのナイならば特に意識はしなかっただろうが、モモの事を異性として意識し始めたナイはモモの行為にドキドキとしていた。


「じゃあ、行こうか……」
「う、うん……」


二人は商業区の中を歩き回り、少しずつではあるが関係を発展させていた――





――ナイに想いを寄せるのはモモだけではなく、もう一人の少女が存在した。その少女はリーナであり、彼女はナイが先日にモモと二人きりで仲良く歩いているという話を聞いた時からどうにも落ち着かなかった。


「はあっ……」
「どうしたんだい、さっきから溜息ばかりじゃないか」
「あ、ごめんね……大丈夫、ちゃんと警戒はしているから」


リーナはアルトの護衛として彼と同行しており、今回はアルトが魔道具の開発に必要な素材集めの手伝いのために来ていた。冒険者達も街の復興作業に協力しているので普通の依頼は受けられず、この手の護衛の仕事はリーナも久しぶりであった。

リーナはアルトとは昔からの付き合いであり、彼女は公爵家の娘という事もあって国王からも気に入られていた。国王としてはいずれはリーナをアルトの結婚相手にしたいと考えているが、当の本人はアルトの事は親友だとは思っているが一度として男性として意識したことはない。

アルトの方もリーナの事は大切な幼馴染だとは思っているが女性として意識した事はなく、そもそも彼は恋愛にはあまり興味はない。但し、正確に言えば自分自身の恋愛には興味はなく、他人同士の恋愛には話は別だった。


「もしかしてナイ君の事を考えていたのかい?」
「えっ……ど、どうして分かったの!?」
「君がそこまで悩む相手と言えば彼ぐらいだからね。やれやれ、罪作りな男の子だね」


図星を突かれたリーナは驚いた表情を浮かべるが、アルトは大分前からリーナがナイの事を異性として意識している事を見抜き、正直に言えばアルトとしては幼馴染としてリーナの恋愛は応援してやりたい。

最近のナイはモモと仲が良くなってきており、このままリーナが何も進まなければ二人の関係は更に進展してしまう。そう思ったアルトはここからリーナが巻き返すには彼女が積極的に動かなければならないと指摘する。


「リーナ、はっきりと言わせてもらうが君はナイ君の事が好きなんだろう?」
「えっ!?べ、別にそんな事は……」
「僕達の間に隠し事は無しだよ。なら、言い方を変えようか。ナイ君の事が気になってるんだろう?」
「……う、うん」


リーナはアルトの言葉を否定せず、彼女にとってナイはもう誰よりも大切な男性であり、その気持ちは日増しに大きくなっていく。


「よし、それならこれから作る僕の魔道具を彼に渡してあげると良いよ。きっと、喜んでくれるだろうからね」
「魔道具?そういえば今日は何を作るつもりなの?」
「新しい魔法腕輪だよ。ナイ君が身に付けている今の物よりも高性能な奴を作るのさ。それを君が渡してくれたらナイ君も喜ぶよ」
「えっ!?でも、いいの?アルト君はそれで……」
「僕の事は気にしなくていいんだ。その代わりに今日は色々と頑張ってもらうよ」
「わ、分かった……ありがとう、アルト君」


アルトの言葉を聞いてリーナは決意を固めた表情を浮かべ、そんな彼女にアルトは微笑むが、親友が取られた様な気して少し寂しい思いも抱く――
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