貧弱の英雄

カタナヅキ

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後日談

第865話 獣人国の恐怖

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――王国で起きた火竜騒乱の事件から数か月後、獣人国の王都にが届けられた。獣人国の国王は家臣を呼び集め、王国から送り込まれた代物を見て頭を悩ませる。


「こ、これは……本物なのか?」
「は、はい……間違いありません、調べた所によるとこれは本物の火竜のでございます」


獣人国の王都に送り込まれたのは王国で討伐された「火竜の頭部」だった。王国は冷凍保存を施した状態で獣人国の王都に送りつけてきた。

国王を始めに獣人国の家臣達は凍り付いた火竜の頭を見て恐怖を抱き、死んで尚も火竜の迫力は消える事はなく、その恐ろしい外見に震え上がった。


「ま、まさか……あの噂は本当だったのか。王国はあの火竜を討伐したという噂は……」
「し、信じられませぬ!!災害の象徴とさえ呼ばれた竜種を討伐するなど……」
「しかも密偵の情報によれば王国が倒した火竜は二頭との事です。つまり、王国は火竜を倒す程の戦力を所持していると……」
「馬鹿な、あり得ぬ!!王国はマジク魔導士が亡くなったばかり、それでいながら二頭の竜種を倒す戦力などいるはずがない!!」
「しかし、この火竜の頭は造り物とは思えぬ……本物なのか?」
「は、はい……それは間違いないかと」


獣人国の人間は王国から送り届けられた火竜の頭部を見て表情を青ざめ、この火竜の頭部を王国が送り込んだ理由、それは暗に王国は竜種を打ち倒せる戦力を保有している事を示したのだ。

仮に竜種の討伐となると獣人国の軍隊を率いても成功するかは分からず、そもそも獣人国の人間の大半は身体能力に優れてはいるが、魔法の類は不得手としている。魔法の力を無しで竜種に挑む事は自殺行為に等しく、王国よりも獣人国では竜種という存在は非常に恐れられている。

その竜種を二頭も王国は討伐したという事実と、送り込まれ来た火竜の頭部を見て国王は恐れを抱く。それは他の人間も同様であり、彼等は王国の力を見誤っていた。



――三人の魔導士の中でも最強と謳われるマジクが死亡し、更には王国の守護神であるロランが更迭されたという情報が届いた時、獣人国の軍人はこの絶好の機会を逃さずに軍隊を纏めて王国へ攻め入ろうと計画をしていた。



王国と獣人国は長らく戦は行ってはいなかったが、王国の最大戦力であるマジクが死亡、更には王国軍を統括する大将軍のロランが更迭されたとあれば獣人国は王国に攻め入る絶好の機会だった。しかし、それを予測していたかのように王国は火竜の頭部を送り込み、彼等に自分達の戦力を思い知らせる。

火竜の頭部を前にした獣人国の将軍や騎士や兵士達はその恐ろしい外見に気圧され、そんな恐ろしい生物の首を送りつけてきた王国にすら抱く。この火竜の頭部はただの贈り物ではなく、現在の王国は竜種すらも屠る戦力を有している事を示す証拠だった。

戦を仕掛ける事を主張していた将軍達も火竜の頭部を見せつけられた途端に意気消沈し、このまま王国との戦争を望んだとしても、全く勝てる気がしなかった。それほどまでに火竜の死骸は彼等に大きな影響を与え、国王は宣言した。


「……王国の使者に今までの非礼を詫びよう。これからも獣人国は王国との同盟関係を結び、両国の発展のために協力し合おうではないか」
「「「…………」」」


国王の言葉に戦を促していた軍人たちも何も言えず、誰一人として反対する事はできなかった。こうして王国と獣人国の不和は解決し、無事に両国はこれまで通りに良好な関係を結んだ――





※火竜の頭部を送りつけた主犯

国王「むむむ……獣人国にはどう対処すればいいかのう?」
イリア「火竜の頭でも切り取って送り届ければいいんじゃないですか?(適当な提案)」
アルト「そ、その手があったか!!」
アッシュ「うむ、悪くないな」
国王「ちょっ……」


こうして火竜の頭が送りつける事が決定しました(笑)


シノビ「ふうっ……これでリノ王女の一件は何とかなりそうだな」
クノ「良かったでござるな、兄者」
シノビ「だ、黙れ!!」
リノ「ほっ……」
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