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王国の闇
第863話 全ての後始末
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「――ナイ君、しっかりして!!」
「うっ……」
立ち尽くした状態で動けないナイの元にリーナは赴き、彼女はナイの肩を掴む。すると、ナイはリーナに振り返ろうとしたが、もう身体に力が入らず彼女の元に倒れ込む。
「わわっ!?ナ、ナイ君……?」
「……気絶したみたい」
リーナに抱きつく形で倒れ込んだため、彼女は頬を赤らめるがミイナが様子を伺うと既に意識を失っていた。気絶するのも無理はなく、もう彼は体力も魔力を使い果たしていた。
疲れ果てたナイをリーナは抱きしめ、もう彼の事を手放したくはないと思った。しかし、この英雄を自分だけ独り占めするわけにもいかず、ナイを抱きかかえて地上へ降り立つ。
すぐさま彼等の元に全員が集まり、飛行船の方から縄梯子でアルトの方も降りてきた。全員が意識を失ったナイを覗き込み、心配そうな表情を浮かべる。
「おい、起きな!!死んでるんじゃないだろうね!?」
「……大丈夫だ。かなり疲弊している様子だが、死んではいないよ。ゆっくりと休めば目を覚ますさ」
「よ、良かった……」
「心配かけさせるんじゃないよ……」
アルトの言葉を聞いて全員が安堵する中、ここでビャクが何かに気付いたように鳴き声を上げる。
「ウォンッ!!ウォンッ!!」
「わあっ!?びっくりした……どうしたの、ビャク君?」
「クゥ~ンッ……」
ビャクは火竜の死骸に視線を向けると、そこには二つの大剣が地面に突き刺さっていた。片方は岩砕剣であるが、もう片方は刃が砕けたはずの旋斧だった。
何故か旋斧は刃が元通りの状態に復元しており、どうやら火竜を倒した時に生命力を吸収した事で刃が復元されたらしい。しかもグマグ火山で火竜を討伐した時よりも刃が真っ赤に染まっており、どうやらまた火竜の魔力を全て吸収して新たな「進化」を果たしたらしい。主人と同様に規格外の魔剣にアルトは唖然とする。
「全く、なんて魔剣だ……いや、ここまでくるともう聖剣にも劣らないね」
「聖剣は言い過ぎじゃないかい?」
「何を言うか!!二頭の竜種を屠った剣じゃぞ?後の世にこの二つの大剣は聖剣として扱われる事になってもおかしくはないぞ!!」
マホの言葉に全員がナイの所有していた二つの大剣に視線を向け、確かにこの二つの聖剣がなければ火竜は倒せなかった。そう考えるとこの大剣は聖剣にも匹敵する価値ある代物になったといっても過言ではない。
主人と共に成長してきた旋斧は遂に「伝説の聖剣」に匹敵する存在へと成長を果たす。そして製作者の鍛冶師の願い通り、何者にも壊されぬ剣としての役目を果たした。
「さあ、この英雄を城まで運ぼう。イリアがきっと僕達のために薬を作ってくれているはずだよ」
「イリアさんがですか……変な薬を作ってないといいですけど」
「はははっ……有り得るな」
目を覚ましたヒイロの言葉にアルトは否定できず、実際に彼女は王城の方で新しい回復薬の制作を行っていた。だが、こんな場所にいつまでも意識を失った英雄《ナイ》を放置するわけにもいかず、アルト達は彼を王城まで運び込む――
――こうして後の時代に「火竜騒乱」と呼ばれる事件は集結し、事件の発端である宰相は死亡が確認され、その協力者であったシャドウは死亡、彼に従っていた白面もほぼ全員が投降した。
白面は逃走した所で彼等の身体が毒に蝕まれており、逃げたとしても長生きはできない。だからこそ殆どの白面が投降して国から解毒薬を受け取り、これからは罪を償うために監獄へ送り込まれる。彼等にも情状酌量の余地はあり、罪を償った獣人は彼等の国に送り返す事が決まる。
しかし、白面に所属する者達はは小さい頃に獣人国から攫われて暗殺者として育てられてきた。だからこそ暗殺者以外の生き方など知らない者は、今更国に戻って自由になっても何をすればいいのか分からない。そんな彼等を導いたのは意外な事にシノビとクノであった。
和国の再興のために二人は白面の腕を見込み、今度は「黒面」と呼ばれる新しい組織を形成する事にした。黒面は主に諜報活動に特化した組織であり、この国を裏で支える組織にさせる予定だった。白面からすれば主人がシャドウからシノビに代わっただけであるが、シノビは彼等を毒などで行動を制限はしない。
黒面は表向きは城の兵士として振舞い、その裏では諜報活動を行う。しかし、これまでのように毒による行動制限はないため、彼等は普通の人間のように平和な日常生活を送れる。仕事を与えながらも彼等は自由な時を与える事で普通の人間の生活に慣れさせる。もしも他に仕事をしたいことがあれば彼等の自由にさせる、そういう取り決めでシノビは彼等を指導した。
ちなみに後の時代では黒面の活躍があまりにも大きすぎて国王はシノビとリノ王女の関係を許し、彼に和国の領地の管理を任せる事になるのだが――それはあくまでも未来の話である。
――そして事件が集結してから数日後、遂に今回の事件で活躍した人間の表彰が行われ、一番最初に表彰される人間は決まっていた。
「うっ……」
立ち尽くした状態で動けないナイの元にリーナは赴き、彼女はナイの肩を掴む。すると、ナイはリーナに振り返ろうとしたが、もう身体に力が入らず彼女の元に倒れ込む。
「わわっ!?ナ、ナイ君……?」
「……気絶したみたい」
リーナに抱きつく形で倒れ込んだため、彼女は頬を赤らめるがミイナが様子を伺うと既に意識を失っていた。気絶するのも無理はなく、もう彼は体力も魔力を使い果たしていた。
疲れ果てたナイをリーナは抱きしめ、もう彼の事を手放したくはないと思った。しかし、この英雄を自分だけ独り占めするわけにもいかず、ナイを抱きかかえて地上へ降り立つ。
すぐさま彼等の元に全員が集まり、飛行船の方から縄梯子でアルトの方も降りてきた。全員が意識を失ったナイを覗き込み、心配そうな表情を浮かべる。
「おい、起きな!!死んでるんじゃないだろうね!?」
「……大丈夫だ。かなり疲弊している様子だが、死んではいないよ。ゆっくりと休めば目を覚ますさ」
「よ、良かった……」
「心配かけさせるんじゃないよ……」
アルトの言葉を聞いて全員が安堵する中、ここでビャクが何かに気付いたように鳴き声を上げる。
「ウォンッ!!ウォンッ!!」
「わあっ!?びっくりした……どうしたの、ビャク君?」
「クゥ~ンッ……」
ビャクは火竜の死骸に視線を向けると、そこには二つの大剣が地面に突き刺さっていた。片方は岩砕剣であるが、もう片方は刃が砕けたはずの旋斧だった。
何故か旋斧は刃が元通りの状態に復元しており、どうやら火竜を倒した時に生命力を吸収した事で刃が復元されたらしい。しかもグマグ火山で火竜を討伐した時よりも刃が真っ赤に染まっており、どうやらまた火竜の魔力を全て吸収して新たな「進化」を果たしたらしい。主人と同様に規格外の魔剣にアルトは唖然とする。
「全く、なんて魔剣だ……いや、ここまでくるともう聖剣にも劣らないね」
「聖剣は言い過ぎじゃないかい?」
「何を言うか!!二頭の竜種を屠った剣じゃぞ?後の世にこの二つの大剣は聖剣として扱われる事になってもおかしくはないぞ!!」
マホの言葉に全員がナイの所有していた二つの大剣に視線を向け、確かにこの二つの聖剣がなければ火竜は倒せなかった。そう考えるとこの大剣は聖剣にも匹敵する価値ある代物になったといっても過言ではない。
主人と共に成長してきた旋斧は遂に「伝説の聖剣」に匹敵する存在へと成長を果たす。そして製作者の鍛冶師の願い通り、何者にも壊されぬ剣としての役目を果たした。
「さあ、この英雄を城まで運ぼう。イリアがきっと僕達のために薬を作ってくれているはずだよ」
「イリアさんがですか……変な薬を作ってないといいですけど」
「はははっ……有り得るな」
目を覚ましたヒイロの言葉にアルトは否定できず、実際に彼女は王城の方で新しい回復薬の制作を行っていた。だが、こんな場所にいつまでも意識を失った英雄《ナイ》を放置するわけにもいかず、アルト達は彼を王城まで運び込む――
――こうして後の時代に「火竜騒乱」と呼ばれる事件は集結し、事件の発端である宰相は死亡が確認され、その協力者であったシャドウは死亡、彼に従っていた白面もほぼ全員が投降した。
白面は逃走した所で彼等の身体が毒に蝕まれており、逃げたとしても長生きはできない。だからこそ殆どの白面が投降して国から解毒薬を受け取り、これからは罪を償うために監獄へ送り込まれる。彼等にも情状酌量の余地はあり、罪を償った獣人は彼等の国に送り返す事が決まる。
しかし、白面に所属する者達はは小さい頃に獣人国から攫われて暗殺者として育てられてきた。だからこそ暗殺者以外の生き方など知らない者は、今更国に戻って自由になっても何をすればいいのか分からない。そんな彼等を導いたのは意外な事にシノビとクノであった。
和国の再興のために二人は白面の腕を見込み、今度は「黒面」と呼ばれる新しい組織を形成する事にした。黒面は主に諜報活動に特化した組織であり、この国を裏で支える組織にさせる予定だった。白面からすれば主人がシャドウからシノビに代わっただけであるが、シノビは彼等を毒などで行動を制限はしない。
黒面は表向きは城の兵士として振舞い、その裏では諜報活動を行う。しかし、これまでのように毒による行動制限はないため、彼等は普通の人間のように平和な日常生活を送れる。仕事を与えながらも彼等は自由な時を与える事で普通の人間の生活に慣れさせる。もしも他に仕事をしたいことがあれば彼等の自由にさせる、そういう取り決めでシノビは彼等を指導した。
ちなみに後の時代では黒面の活躍があまりにも大きすぎて国王はシノビとリノ王女の関係を許し、彼に和国の領地の管理を任せる事になるのだが――それはあくまでも未来の話である。
――そして事件が集結してから数日後、遂に今回の事件で活躍した人間の表彰が行われ、一番最初に表彰される人間は決まっていた。
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