貧弱の英雄

カタナヅキ

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王国の闇

第859話 火竜VS王国騎士団

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「アガァアアアッ!!」
「また火炎を吐き出すぞ!!防げっ!!」
「俺の後ろに下がれ!!」


ナイがシャドウを打ち倒した時、既に聖女騎士団は火竜と交戦していた騎士団と合流を果たしていた。王都中の戦力が集結し、火竜と激戦を繰り広げていた。

火竜が火炎の吐息を吐き出そうとした瞬間、バッシュは防魔の盾を構えると攻撃を受け止める準備を行う。火竜はバッシュに向けて炎塊を放つが、その攻撃に対してバッシュは逃げもせずに正面から受けて爆炎に飲み込まれる。


「バッシュ王子!?」
「そんなっ!?」
「……心配するな、俺は平気だ!!」


火竜の放った炎塊を受けたバッシュだったが、防魔の盾によって衝撃を地面に受け流す事ができた。ナイの反魔の盾のように魔法を跳ね返す事はできないが、防魔の盾も魔法耐性は高く、バッシュ自身も無事だった。

彼が生きている事を確認すると他の者達は安堵するが、即座にシノビは風魔を抜くと風の斬撃を放つ。彼の生み出す斬撃はリンの攻撃よりも威力は高く、火竜の顔面に目掛けて放つ。


「はあっ!!」
「ガアッ!?」
「怯んだでござる!!畳みかけるなら今でござるよ!!」


顔面に斬撃を受けた火竜は視界を一瞬だけ奪われ、その隙を逃さずにテン、ルナ、ランファンの三人が駆けつけ、それぞれが全力の一撃を繰り出す。


「おりゃあっ!!」
「とりゃあっ!!」
「ふんっ!!」
「グガァッ……!?」


三人は同時に火竜の右足に目掛けて武器を叩き付けると、流石の火竜も怪力自慢の三人の攻撃を受けて体勢を崩し、その隙にエルマが魔弓術で火竜の残された片目に向けて矢を放つ。


「視界を完全に奪えば……はっ!!」
「グガァッ……!?」


エルマの放った風属性の魔力を纏った矢が火竜の右目に向かい、既に左目はロランによって潰されているため、もう片方の目を貫けば完全に視界を塞ぐ事ができる。

しかし、エルマの放った矢に対して火竜は瞼を閉じる事で彼女の矢を弾く。火竜の瞼も頑丈な鱗で覆われており、残念ながら彼女の矢では威力不足だった。それでも火竜が瞼を閉じた事で視界を一時的に塞ぐ事に成功し、その間に他の者が動き出す。


「リンさん、合わせなさい!!」
「ちっ……今回だけだぞ!!」


ドリスはリンに真紅を突き出すと、不服な表情を浮かべながらもリンは暴風の魔力を送り込む。その結果、リンの真紅に普段以上の火炎が発生し、火属性と風属性の魔力を組み合わせた一撃を放つ。


「大爆槍!!」
「グガァアアアッ!?」


火竜の翼に目掛けてドリスは真紅を投擲し、羽根の部分に衝突した瞬間、大爆発を引き起こす。火竜は火属性には強い耐性を誇るが、流石に翼膜の部分は防御が薄く、大爆発によって片羽根が破れてしまう。

これで火竜は空を跳べる事はできなくなったが、片羽根を失った事で怒りを露にすると、胸元を赤く光り輝かせる。それを確認した者達は再び火竜が火炎の吐息を放つつもりだと判断すると、ここでエルマの傍にいたマホが合図を出す。


「儂が食い止める!!お前達は下がれ!!」
「は、はい!!」
「おい、下がれ!!」
「こっちだ!!」


マホの言葉に全員が従い、彼女は杖を構えると火竜の正面に移動を行う。火竜は口元から火炎を迸らせ、今度は炎塊を吐き出すのではなく、火炎放射の如く口内から火炎を吐き出す。


「アガァアアアッ!!」
「させぬわっ!!」


火竜が口内から火炎を吐き出した瞬間、マホは杖を構えて先端から竜巻を放出させて火炎を食い止める。彼女は他の建物に火炎が飛び火しないように上空に向けて竜巻を放ち、火炎が遥か上空へと放出させる。

火竜が放つ火炎は体内に経験石に蓄積されている火属性の魔力で構成されており、長時間は燃え続ける事はできない。それでも火属性と相性が悪い風属性の魔法で対応できるのはマホの腕前が並の魔術師とは比べ物にならず、それを路地裏から見ていたマリンは驚く。


「凄い……流石は魔導士」
「マリンよ……外はどうなっている」
「ゴウカ……目を覚ましたの?」


マリンは路地裏に運び込んだゴウカに視線を向け、彼は火竜に喰われた時に酷い怪我を負い、もう鎧は取り外していた。鎧の中身のゴウカは意外な程に若く、まだ年齢も20代後半ぐらいの男性だった。

ゴウカを治療しようにもマリンもゴウカも回復薬の類は持ち合わせておらず、他の人間に助けを求める事もできない。彼等も必死に戦っており、マリンも力を合わせたい所だが、彼女はもう杖も魔力を失っていた。


「ぐううっ……やっと、夢を叶える存在と出会えたというのに」
「ゴウカ……」
「悔しいな……これが、敗北か」


火竜の力を思い知ったゴウカは心底悔し気な表情を浮かべ、思えば彼の人生で敗北した事など初めての経験だった。戦って死ぬ事ができればまだ納得できたかもしれないが、今の彼は敗北しておめおめと生き延びている事に恥を掻く。
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